2025/07/27 のログ
■篝 > 忍び込む理由は特にないが、身分を偽ると言う点において制服は扱いやすい。
メイド服、学生服、踊り子の服等々。一目見てそれとわかるので、無理に嘘を吐かずとも相手が勝手にそう勘違いしてくれる。
とは言え、学院の制服そのものが古着屋にはないので、遠目に見てそれらしく見えるものを探す。
「んー……」
ハンガーに掛けられた群れの中から、白いシャツと、地味な色合いのスカートやワンピースなどを幾つか見繕い、ついでに耳を隠す為の帽子も探して。
色々な組み合わせを考えて見たが、如何せん、ファッションに興味が一切ない小柄には難易度が高すぎる。
頭上に疑問符を幾つも浮かべながら、値段と相談しつつ、以前、貴族の邸宅街で見かけたご令嬢が纏っていた制服を思い起こし、近しいものを選ぶことで事なきを得た。
次はメイド服……だが、これに関しては迷うことは無い。
正式なメイド服でならそこまでどれも大差がない。
頭に被るものが、ホワイトブリムか、キャップかと言う違いくらいで、他の部分は誤魔化しが効く。
数種類並んだメイド服の中から、比較的新しくて丈夫そうなものを選んだ。
「後は――」
私服。或いは、人ごみに紛れ込むための服。
憂鬱な気分が足取りにも顕著に表れ、重い、重い、歩みで店内を物色して回る。
■篝 > 現状、一番の問題はこの黒い忍装束にある。
暗殺ギルドで張り出されていたと言う、依頼書通りの格好のままでいるのは流石に拙い。
その依頼を進んで受ける者がいなくとも、丁度見かけたから小遣い稼ぎに――などと、軽い気持ちで襲われるのは避けたいところ。
今の服装に近く、物をいっぱい隠せて、体格を誤魔化せる服。希望はそれ。
これが見つからなければ、苦肉の策として師のお古を譲ってもらえないか交渉すると言う方法もあるが……。
結局、忍装束になってしまうわけで、悩みどころである。
「んなぁー……」
口から半分魂が抜け掛けているような間延びした声を漏らしつつ、安売りのワゴンを物色して。
街娘が着ていそうな服と、ラフなパーカーを手に取り、そろそろ頭の中の計算機が煙を上げ始めるのを感じながら、予算にまだ余裕があることを確認する。
大丈夫そうだ。
試着室へ向かおうと振り返りかけたその時。
ふと、店の角のマネキンで遮られた奥ばった所に、埃を被ったマネキンがあることに気付いた。
そのマネキンが纏うのは、白い――
「ミレーの服……」
思わず足を止め、ストールの中に隠した耳がピンと立つ。
近付いて見れば埃は被っているが服自体は目立った汚れもなさそうに見える。
■篝 > きっと、この服を己が着る機会は二度とない。
ミレー族であることを誇りに思える者であれば、躊躇わず袖を通すことが出来るのだろうが。
己はそうではない。差別され迫害される異種族の服なんて、トラブルの素。危険が過ぎる。
「…………っ」
そう、わかっているのに―― 否、わかっているから。
腕に抱えていた服の束を近くの棚の上に置き、マネキンから白いワンピースに似た民族衣装を脱がせ、パタパタ、ぽふっん!と埃を払って、他の服と一緒にまとめて抱え試着室へと足早に入った。
きっと、今ここでしか着られない。これを逃したら、二度とない。
だから人目のない試着室の中でだけは、と。
記憶にもほとんど残っていない、今は亡き故郷の名残に触れてみたい。
カーテンをしっかり閉じたことを確認してから、ストールを解いて、袖やら懐にしまい込んだ暗器を丁寧に床に並べていく。
そうして、黒装束を脱ぎ捨てて、白い衣装へ袖を通す。
袖には金糸で細かな刺繍の装飾が施され、腰の赤いリボンにも同様にそれがある。
縫い目も丁寧。良い職人が仕立てたことが伺える。
本来は、かなり高価な品なのだろう。曰く付きの服でなければ、と惜しく思う者もいただろうか。
襟を正し、帯を締めて結び、少し長めの袖を揺らして鏡を見る。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にレモンさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からレモンさんが去りました。
■篝 > 似合っている……のか、己では判断が出来ない。
が、着心地が良いことはわかった。色も、毛並みと同じ白だから、悪くはない……と、思う。
この服は、どう言った場で着る服なのだろうか。
装飾の多さから見て、普段着とは考えにくい。
ぐるぐると思考を回し続けながら、服の丈を確認する。少し大きいけれど、許容範囲。
でも。
「……この服じゃ、今よりもっと目立つ。隠れなきゃ……いけないのに……」
鏡に映った緋色は僅かに沈んだ色をして、残念だと言う。
値段を確認して、更に耳までぺたりと沈んだ。
これを買えば他の服が買えなくなる。
いやいや、着る機会のない服なんて、持っていても仕方がないのだ。端から買うつもりはないし。
ぐるぐるぐるる……。
迷いを振り切るように首を横に振り、白装束を脱いで、急ぎ他の服も試して行こう。
メイド服も、学院の制服擬きも、その他諸々特にサイズに支障はなく、値段もこれなら問題ない。
また、いそいそと黒装束を着こんで暗器を戻し、ストールを少し雑になりながら巻いて術を施せばあっと言う間に元通り。
買わないものは元あった場所へ帰してから、店主が腰かけるカウンターへ向かう。
■篝 > 店主が告げた値段は、小柄が頭の中で出した答えと同じだった。
首肯し、懐から取り出した革袋から、自分で稼いだゴルドで支払う。
それほど裕福ではない財布の中身はまだ底をつくには遠いが、それらは魔道具を買うために師から頂いたもの。
無駄遣いは厳禁である。
カウンターに並べられた硬貨を数える店主を見ながら、此方は購入した服を袋に詰めつつ。
「……魔道具を買いたいのですが、近くに良い店はありますか?」
感情の籠らない、男とも女ともつかない奇妙な声に店主は一瞬眉を顰めたが、すぐに表情を穏やかなものに切り替え、そうですねぇ、と顎を摩り。
『この通りの外れにある店など如何でしょう?
珍しいものが多く、冒険者の方もよく出入りされていますよ。
――ああ、でもね。昼間はやっていないんです。変わった店でして、日が沈んでからしか店を開けないんですよ』
「……そうですか。わかりました。では、日を改めます」
店主の声に謀りや悪意と言った感情は見られず、ただの世間話だと判断して小柄は素直に聞き入れた。
買い物を済ませればもうここに用は無いと言うように、後は踵を返し颯爽と出口へ向かう。
「またのご来店を~」と形式だけの挨拶もそこそこに聞き流し。
今日の戦利品を抱えて真っ直ぐ宿に戻ろう。
煩いのが帰ってくる前に、これらを厳重に隠すと言うミッションが待っているのだ。
日陰を行く小柄の背中は、買い物に向かう時よりも鬼気迫り戦場へ向かう戦士のようだったとか、いなかったとか――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」から篝さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にスイさんが現れました。
■スイ > ワシの名はスイ。 学院に通う生徒である。
今はいわゆる放課後で、物珍しさから街を散策している。
この街は非常に大きな街で、至る所に店があり、興味をそそられる。
もともとワシはこのあたりに住んでいたらしいが、詳しいことは思い出せない。
「うむ、これはよさそうじゃ。」
屋台で涼しげな飲み物は売っておる。
さっそく、購入を…。
「おおすまん、気づかなかった。」
誰かとぶつかってしまったようじゃ。
ワシは謝意を伝えつつ、相手の顔を伺う。
■スイ > ぶつかった相手に平謝りし。
なんとか許してもらえたので屋台で飲み物を買い。
自宅へと戻っていった。
次からは気を付けよう。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からスイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にポリアンさんが現れました。
■ポリアン > 娼婦街の用心棒と言うのは、割と需要がある
先ず、娼婦と言うのは何かとトラブルに巻き込まれ易いって事がひとつ
其の次に、娼婦街が其れなりに広くて、娼婦の数も多いって事がひとつ
王都は大きい、当然ながら色町の需要だって高い訳で、一大産業となる訳だ
警邏の衛兵たちが居るとは言え、彼らだって別に娼婦街を専属で警護して居る訳じゃないし
ある種決まり切った警備の計画は、抜け穴を見つけ易いのも事実
だからこそ、こうして冒険者や傭兵が、小銭稼ぎにでも警備や用心棒を頼まれる事は多いのである
「―――――……まぁ、其れは其れとして、暇な時は暇なんだけどねぇ…。」
平和、の二文字。
目が糸目になって仕舞う位に暇を持て余している警備の途中
少々欠伸を噛み殺しながら、娼館の一つ其の入り口付近の壁に凭れ乍ら、街を眺めていた
何も起こらない事こそが一番良いのは間違いない、が、其れは其れとして、立ちっ放しは精神的に疲れる
近衛兵だとかが、王城の前で微動だにせず一日構えて居られるのを、本当に尊敬するし
絶対に、あの仕事にだけは就きたくないとも思う。