2025/07/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」にリンランさんが現れました。
■リンラン > 昼下がり――ギルド窓口には珍客が訪れていた。
ギルド職員が、思わず席を立ち、身を乗り出してカウンター向こうを見下げてしまうのも無理は無い。
パンダである。
大男一人も押し込めてしまえそうな巨大な行商用の背負い籠を背負った、
正真正銘フワフワもこもこ愛らしい小さな二足歩行のパンダであった。
まるで歩く熊猫縫いぐるみ、シェンヤン風の民族衣装を纏った紛うこと無きパンダが、
トテチテトテチテと擬音まで引き連れてそうな足取りで入ってきて、
カウンターにすら届かぬ背で、まんまるおめめでギルド職員を見上げているのだ。
「美味絶品滋養強壮解毒消毒悪霊退散、
――…ついでに精力絶倫もお付けするネ。
仙境由来の摩訶不思議、オイシイ仙桃は如何あるか?」
そしてこのパンダ、人語を喋った。
背負い籠の中は桃がたんまりと入っていた。相当に重そうだが、
仔パンダは何食わぬ涼しげなパンダ顔で背負っている。
「冒険者に便利ネ。効能ミラクル、味美味し。如何か?」
こてん、パンダが首を傾げれば、
ギルド職員はすっかり「はわわ~~~♡」である。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」にテイラーさんが現れました。
■テイラー > ギルド内依頼書提出窓口、付近。
依頼書の制作を羽ペン片手に、
えーこれ王国語で何と書くんだったか……なんて苦戦していた折。
ふと視界の端を掠めたフワフワころころのシルエットを二度見。
「……ほう……」
パンダだ。
子パンダ?
随分と小さな体躯に随分と大きな背負い籠を平然と担いだ、四足歩行じゃなくって二足歩行の。
珍しい生き物が珍しい格好で珍しい様相なものだからつい目が奪われたが感心したのは別の所。
(……“同族”なんか久しぶりに見たな……)
こっちは人であっちは熊猫という根本的な種族差があるがあれは間違いなく己と同族だと感じる。
身体の周りを流れる気の流れ、体躯の中を流れる霊力の巡りが明らかに通常の種族とは異なる……
“仙人”だ。
まだかなり年若いようで若干の荒さはあるが、むしろあの年若さであれほど流麗であるのは驚嘆すべきか。
羽ペンと書類を一旦机へと置いてから、そちらへ向けて、かつ、こつ、革靴の硬い音を鳴らしながら近付いていき、
「随分といい出来の仙桃だね。
このあたりの土地は霊脈が荒い、こうは中々出来ないよ」
背負い籠の中を伺ってみれば思わず喉が鳴るような芳醇な香りと瑞々しさを湛えた桃がぎっしり。
彼女のセールストークについ横から割って入って、顎に手を添えればふむふむなんて頷きを幾度か。
「お嬢さん。俺にも幾つか貰えるかい? お値段は?」
■リンラン > 『パンダちゃん撫でてもいいでちゅか…?』
愛らしく稚いイキモノを見れば幼児語になってしまうのも致し方ない。
が、屈強な元冒険者だろうギルド職員がデレデレのはわわ顔でパンダに話し掛けるのも目に余るものがあろう。
とはいえパンダは馴れたもの。表情筋の少なさも何の問題にならないふわもちプリティフェイスで
「おさわり1回20ゴルド貰うネ。よろし?」
商魂逞しく話していたところ… 新たな客だろうか。近付いてきた。
パンダが、くるりと振り返る。高い位置にある相手の顔を見上げ。
「仙桃欲しいか?よろしヨ。
琳嵐、仙境ではチョットした仙桃マスターね!
そうそう!この辺り、霊脈荒いヨ。お客サンよく御存知ネ――…… ??
……ナンで御存知あるか????」
調子よく話をあわせかけて、ふと。パンダが訝しむ。
豆粒のようなうるつやお目々をしぱつかせて、相手を見遣り……
半人前のパンダは気の巡りを漸く、覗くことに到ったか。
「お客サン、仙境の御仁か?」
■テイラー > いかつい顔したマッチョな体躯のギルド員が、ひっどい顔してひっどい言葉遣いで……きっつい。
うわあって感じの目付きになってしまいそうなところサングラスの位置を直して隠しつつの、
自分のもちもちボディの価値をようくわかっているらしき『おさわり1回20ゴルド』に軽く噴く。
「ふっふっ。
仙桃マスター? 過言ではなさそうだ。仙境でもこう丸々と実るにはかなり手間が要る」
ひょいっと一つ手に取らせて貰えば、その見目の大振りさ以上にずしりとした重量感がある桃をしげしげと眺める。
ともすれば夏の日差しのような眩しさすらある色艶。その匂いだけでも舌に甘さを感じるような芳しさ。
仙桃の達人といってもこれは確かに頷かさるを得ないとしきり頷いては、
「はじめまして、同胞よ。故有って名は明かせぬが、テイラーと呼んでくれ」
真ん丸お目々をしぱしぱ瞬かせている様ときたらギルド員の気持ちもちょっとわかる愛らしさ。
可愛らしさに口元を綻ばせながら自己紹介。
彼女の目には物理的には結構な背丈の大男が。“そういう目”で見ればまるで音をも吸い込む程に深く積もった雪原にも似た、まるで今にも消え入りそうな程静かに流れる気の流れが伺えるだろう。同郷ではないが同種の、それも結構高位そうな仙人である事も。
■リンラン > 「あいやァ…珍し。人界降りて初めてネ。テイラー様、我は琳嵐と申すある。」
目を凝らせば、男の持ち得る気の流れが可視化された。
見てくれから想像つかないが、随分と澄んだ静寂を宿す、乱れ無き霊気の溜まりを感じれば
男の身分とて想像が付くというものだ。熊猫族の娘っ子は、両手を胸の前で組み合わせる立礼を。
畏まった挨拶も、まるまるころころとしたパンダが行えば酷く可愛らしいもので。
「霊脈弱い。でも霊脈重なる巡りよき箇所、琳嵐見つけたネ。
仙境の桃と味わい少しチガウね。 テイラー様、ヒトツ差し上げる。食べてみるよろし。」
男の手の取った桃は、成る程、良く肥えて日を浴び霊気を蓄えた、ずっしり重いまんまる桃。
細かく生えた産毛も色艶も素晴らしい仕上がり、鼻先寄せずとも瑞々しい芳香が漂う代物で。
効能については――仙人ならば御存知の、あら不思議なミラクルである。
ふんすと小さな鼻先から息を抜いて、パンダはテイラーを見上げている。
その仙人、霊気を覗いてなお仙人であることを訝しんでしまう程度に俗馴れした風体で。
■テイラー > 「俗世から登る事はあっても降りる事は滅多にないからな。我らが同胞たちは。
況して絶滅したともよく聞く熊猫族とここで会えるとは夢にも思わなんだよ。
会えて光栄だ、マスター琳嵐」
右手を持ち上げれば小指から畳んで正拳を作るとそれを左手で包み胸の前に持ち上げる。
彼女の愛らしい拝礼に王国人の格好で返礼するからこっちはこっちでやや妙ちくりんか。
「ああ、弱い、挙句、此処ら近辺は殊にそうだが淀みがひどい。
故にこの出来が不思議で仕方ないんだが、成程、仙境の子供を見つけたのか、慧眼だね。
折角だからお言葉に甘えて……」
言通り、出来の見事さに感嘆する眼差しが半分、出来栄えに訝しむのが半分といった具合にまじまじとしげしげと眺めるまんまる桃。
聞いてみれば余程運がいいのと目がいいのと、そしておそらく、土いじりの才能もあるらしい様子にまた感心した声を上げる。
遠慮するのも申し訳ないので有り難く、礼をもう一つしたのち齧り付いてみれば……
「美味い。俺が仙境で作ってもこうはいかないんじゃないか? 本当に見事だな……」
顎に負担なく歯で難なく齧り取れる柔らかさ、途端から溢れ返る果汁ごと果肉をごくんと飲み干せば、肚に染みる旨味と効能にまた首肯を一つ。
頻り褒めそやしながらもぐもぐもぐと咀嚼する傍ら、じいっと、じぃ~っと、矢鱈注がれる視線に気付いて、くふっ、とまた思わず笑気が出る。
「そう見てくれるな、まあ名を明かせぬあたりでお察しの通り訳有りなのさ。
本当はきちんと名乗りたいところだが俺と会ったと知れたら君の先達からお小言の一つや二つは貰うだろう。勘弁してくれ」
邪仙、外道の類でないことだけはその気の流れからよくわかるだろうが、
何ならそちらのほうがまだ良いらしい“不心得者”であるらしい事を可笑しそうに語らって。
■リンラン > 「コチラこそ、テイラー様に会えて光栄ネ。
尤も、琳嵐まだ修行中の道士ある。未熟者ゆえ、桃マスターなれどマスターは恥ずかしヨ。」
表情筋の足りない獣顔のパンダは、それでも口角あたりをふっくりさせて笑顔を象る。
ちんまいパンダがくりくりの双眸を男に向けて仰がせるさまは、ギルド内の視線が否応にも集まった。
ジリ貧で糧も無く行き倒れていたら妙に気の満たされる場所を偶然見つけ。
勝手に仙桃を植えて闇栽培してるのだなんて其処迄詳しく教えられないが、それはともかく。
パンダは相手が桃を食すのをじっと見守って。
「旨いか? 良かったある!!琳嵐、仙境でも桃作りだけは御師サマより上手かったネ。」
むふー、とぽっこりお腹を反らして自慢げだ。
殊に位の高いであろう仙に褒められれば更に鼻高々であり、思わず咀嚼風景を凝視してしまっていた。
流石に見すぎたか。返ってくる声に、パンダがくりくり黒目をぱちこんと瞬かせ。
「あい。承知したネ。
テイラー様、すっかり人界に馴染んでいらっしゃるゆえ。
琳嵐、熊猫族屈指の美少女ゆえに人界を魅了してしまうのは致し方無しあるが、
テイラー様みたいになりたいある。つい眺めてしまったヨ。」
教えを乞いたげに熊猫もっふりハンズをもじつかせ。
■テイラー > 「そう、ならば、琳嵐と呼ばせて貰おう。
……随分と有望株な未熟者だよ、ふふふふふ」
ふっくら、もんにゅり、もっちり持ち上がった口角に、
まーたギルド員が黄色い悲鳴を上げているし周りもデレ顔。
可愛いなぁとは思うから己もついつい口元が緩くなる。
運も実力の内ではあるから、もし、場所の仔細を聞いても評価は下がらないし、闇栽培に関しては……困った顔をするが言えた身の上でもないから忘れたふりでもするだろうが、兎角、“将来有望”と評しながら桃はあっという間にぺろりと平らげてから『ご馳走様』と手を合わせる。
「ああ、本当に美味い、仙境のそれより確かに味は濃いがこちらのほうが好みだな。
どうしても食べたい時はこっそり里帰りしたものだがこれからは贔屓にさせておくれ」
膝を追って屈み込めば、目線を合わせる。黒眼鏡を外して、切れ長の瞳孔と灰色の瞳を、手袋を外して、大きな手を、覗かせれば手を伸ばして、ふふん! とばかりドヤっているパンダの頭をくしゃくしゃくしゃと撫でくりまわして褒めちぎった。
「仙界を降りてもう百年程になるからこなれてもくるものさね。
少々、程度だがね? 仙人の世界も深いが人の世界もやはり深い。
知らぬことのほうがまだまだ多い勉強中の身の上だが……
それで良ければ、知っている事を教えようか? 確かに美少女だ。危ない目に遭いそうなところ放っておくのも忍びないし」
もじもじ、ちらちら、伺う視線に笑みを讃えたまま小首を傾げ、
「勉強代ということなら心配要らない。たった今、報酬は貰っているから」
人差し指を立てれば、報酬はさっき頂いたとっても美味しかった仙桃、と付け加える。
■リンラン > パンダが自慢に胸を反らす。
仙の御墨付きを得られたなら品質は折り紙付きである。
これ見よがしにギルド員にも、後の販売契約見据えてふんすと鼻息荒く得意気にすれば
ギルド員の黄色い悲鳴も熱視線だって幾らだって受けとめよう。
「人界の仙桃、精霊の影響強いゆえ、味は濃いが熟れるの早いネ。
テイラー様のお口に合ったならよかたある。
桃マスターも悪くはないケドも、琳嵐も早く仙籍を貰いたいネ。日々是修行ある。」
わざわざ視線を合わせてくれ、大きな掌でわしゃわしゃと頭を撫でてくれる男に、
パンダがつぶらな瞳を擽ったげにしぱしぱさせて。
「ほぉ。テイラー様は百年人界にいらっしゃるか。大先輩ある!
琳嵐、まだコチラのコト何も知らぬゆえ、教えてくれたらとても嬉しヨ。
勉強代、桃でよろしいあるか? 幾らでも差し上げるゆえ、仰るよろし!」
ぱぁ、とパンダの小粒の眼差しが心なしか喜色に輝いた。
黒い肉球乗ったもふもふハンズが胸の前、再度組み合わされて感謝を伝えれば、
男に学びを得るべく、熊猫娘はポテポテとギルド酒場の方に歩き出そうか。
奇妙かつ歩く縫いぐるみめいたマスコットの登場に酒場はこれまた色めき立つが…
そこは同行者が何とかしてくれるだろうと。
そんなこんなで、きっとほどなくして始まるのは
パンダ娘を生徒に据えた、マグメール初級講座である筈で――。
■テイラー >
「遠くない将来きっと俺を超ゆる立派な仙となれるだろう」
仙桃のお味も彼女の将来も仙御墨付き。
人差指を立てては唇に立てて、小頸傾げては悪戯っ気もどこか含んだ笑みでウィンク一つ。
膝を屈めて腰も屈めてわしゃわしゃわしゃと撫でた毛並みは思った以上に心地良く、
『本っ当愛らしいなぁ……』何て零しながらに随分触らせて貰ってから漸く離れた。
「では、大先輩より、ふふ、擽ったいな、うん、よろしい! 大先輩からの授業を始めよう
……良いところもあるのだが悪いところも結構あるものだからねぇ、ここは……先ずは、おっと、
そうだね少し落ち着いたところで冷たいものでも飲みながらにしようか?」
ぽてぽてぽて、ちっちゃい足が小さな足取りで真ん丸なシルエットを揺らして歩いていく様子ときたら、ギルドから酒場への短い道中から店内に至るまであっちこっちに『何あれかっわよ!』『まんまる~っ♡』『え、え、さ、さわってもいいかな隣の人飼い主かな!』云々とあちこち黄色い声やら好機の声やらが盛り沢山。それを、ひとまずペットのふりしておいてとか打ち合わせて捌くのに結構時間を使わされたものだから講義は、お茶だけじゃなくてお夕飯の時間にもなったとか何とか――……
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」からリンランさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」からテイラーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にポリアンさんが現れました。
■ポリアン > 「。0(やめといた方が良いんじゃないかなぁ…)」
冒険者ギルド併設の酒場、端の席。
真ん中の辺りで、盛り上がった連中が腕っぷし勝負を始めたのだが
明らかにギルドの職員に怒られる流れなので、完全に傍観を決め込んで居る
なお、連中の向こう側には既に、何時声を掛けてやろうかと
待機して様子見して居る職員の姿が見えて居るから、触らぬ神に何とやら。
―――自分は無関係ですよ、と言うアピールの為に、片手を掲げてエールを頼んでみる
うん、騒がしくて全然注文が聞こえないね。 難儀だね店員さん。
「エールふたつと、野菜の揚げ物一皿。 あと塩もー。 ……塩ー!」
聞き返されたので、少し声を張って注文を完了する。
やれやれ、此処を下町の酒場かなんかと勘違いしてや居ないだろうか
取り敢えず視線は逸らして置こう、とばっちりは御免である。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に金剛さんが現れました。
■金剛 > カランカランッ。
室内に入る扉のベルが鳴る音が響く。
冒険者ギルドに立ち寄った後、
ほどほどに懐が温まった後。
端の方の席に腰を下ろして軽く手を挙げて給仕を呼ぶ。
「エールを一つ、…いや、今はいい。」
酒を頼んだついでに、つまみや軽食はいかが?と問われると、
今はそこまで腹が減っていないからと首を左右に振る。
そうして一人涼しげな顔をして酒を愉しもうとしたとき、
腕っぷし勝負を観戦している一人が
「お前もどっちが勝つか賭けねぇか?」と、
無理くり肩を抱き寄せるようにして問いかけてきた。
「結構だ。興味がない。」
ぐ、とその手を押しのけようとしつつ、
エールが僅かに零れたことに眉を寄せた。
面倒なことに巻き込まれそうになっていると自分でもわかったので、
可能な限りそこから離れようと身じろぐ…。
■ポリアン > 程なくして到着するエールと揚げ物
其処まで時間のかかる料理では無いからだろう、ちゃんと塩も来た
余り大食漢では無いので、特段仕事の日でも無ければ、この位で充分だ
のんびりしとこ、と、喧騒には極力触れないつもり、だったのだが。
――何やら、面倒に巻き込まれて居る客が一人。
大分酒が回って居て、気が大きくなって居るのも在るだろう
面倒な酔客の絡み方だ、なんて思いつつに――ふと、一寸した助け舟の案が浮かべば。
「――――――やーやー、こっちこっち。」
―――ぶんぶんと手を振って、さも、自分が待ち合わせ相手ですとでも主張するかに。
にこやかな表情を赤髪の方へと向ければ、相手も、少々強引な対応をし易くなるだろう
もし、其れでも強引な腕を離さないようであれば、其の時は其の時。
まぁ、何せ場所が場所だから、如何か理性的な対応をして欲しい所存なのだけれど。
――最悪、御迎えに向かうとしようじゃないか。
■金剛 > 結構だ、と言っているのに、それを素直に聞き入れてくれない相手の男。
何ならその顔をまじまじと見て、「お前中々いい面してるなぁ。」なんて言ってくる始末。
「…気のせいだろう。」
面倒な酔客の相手をしながらも、これ以上巻き込まれるのは御免。
どうしたものかと困った顔を長い前髪の下に隠したままでいたその時、
遠くからまた別の男の声が聞こえた。
「…?…あ、ああ、すまん…。」
ぶんぶんと手を振っている、その男の方に近づこうとすれば、
「何だ先約があるのか。」と、さすがにそこまでわからずやじゃないらしい、
さっきの男の手が肩から浮いたのを確認すると、するりとその腕から抜け出る。
エールを持った手を軽く掲げると、そちらの方へ歩いていく。
「……すまんな、どうもああいうのの相手は慣れん。」
初めて目にする白髪碧眼の男に礼を言いながら隣に腰を下ろす。
あのやりとりの後に別の席に座るのは不自然と思ったからなのだが…。
「…今の詫びに、一杯分はご馳走させてくれ。」
ぐい、と自分の分のエールを傾けながら男に申し出た。
■ポリアン > 只の酒場じゃない、此処はギルドの施設なのだ。
当然ながら、同業者と問題を起こせば如何なるかなんてのは判って居たらしい。
……でも、偶に判って居ない連中が居るから、困って仕舞うのだけれども。
何はともあれ、解放されたなら助け舟を出した甲斐もあったと言う事
席に座る相手に、ひらひらと掌開閉しては、かるぅい挨拶展開しつつ
「今日は何時もに増して騒がしいからねぇ、ま、運が悪かったって事で。
いやぁ、良いよ良いよ、別に大した事じゃ無いし。 それに、僕はほら、これ以上は御腹に入んないからサ。」
テーブルの上に並んだ一皿が、本日の食事。
何なら、少し多いから摘まんでも良いよ、なんて声を返しつつ
暑い日には割増で美味いエールを流し込んでは、口元に笑顔で白髭を作るのだ。
「ま、折角だからさ、この一杯くらいは付き合って貰えたら嬉しいけどね。」
互いに、一杯のエール。 一気飲みする性質では無いから、そう短くは無いだろう、けれど。
油で揚げたナスに、塩を摘まんで振りかける。 其れを、其のまま齧る、素朴な食事が、エールには合うのだ。
其処に、相手の様に共連れが居れば、其れだけで贅沢な食事の時間になろう。
■金剛 > そんな場所で平気でタガを外す人間がいるから困ったものだ。
だが、今回はまだ物わかりのイイ相手だったのが幸いしたようだ。
どさくさに紛れて撫でられた腰のあたりを擦りつつ、
白髪の男の元へと歩き寄って行けばため息が一つ漏れた。
かるい挨拶を展開されれば、こちらは助けてもらった手前、
ぺこり、と小さく頭を下げる形をとる。
「そのようだな…、ギルドに寄るついでだったからこちらにしたが…。
……いや、だが、……いや、あまり言ったら逆に失礼か。
私は金剛、冒険者…です。…そうだな、ならば次に会った時にでもご馳走させてくれ。」
その時に、彼の気が向けば、の話だが。
見たところ少し年上だろうかと思わされる相手に小さく頭を掻いた。
「……そう、ですか。
ええと、それくらいなら…いつでも付き合う。」
ちびちびとエールを喉に流し込みつつ、
先に言われた通り、では失礼して、と、油で揚げられた野菜を一つ摘まんで塩を振りかけて一口。
とても美味。
くぅ、と小さく目をつむった後に、ふは、と吐息を吐き出した。
■ポリアン > 「そうだね、なら、其の時にまだ御腹に入りそうだったら、是非って事で。
ふぅん、金剛。 名前の響き的に、東国かな?」
あくまで、今は。 機会が在れば、勿論。 頂ける物は頂いておこう。
自分よりも背の高い相手、けれど、印象は少々年若く感じる。
男性だろうか、それとも女性だろうか、見目だけでは判断の付かない所は在ったが
――先刻、向こうの連中から離れた折、触れられて居た腰を払った動作を思い出す。
「僕はポリアン、君と同業だね。 ルーナジェーナって言うパーティの、一応、リーダーをさせて貰ってる。」
相手が名乗ったなら、此方も名乗り返すのが礼儀。
自分が所属して居るパーティの名前も伝えつつ、既に御互い口を付けた後だけれど
エールの器を軽く掲げて、遅まきながらの乾杯を。
――ルーナジェーナ。 知って居る者は知って居るし、知らない物は知らないだろう
もし噂でも耳にした事がるなら、実力者も居れば新人も居る、ピンキリ集団と言う評価が多い筈だ。
勿論、中にはとんでもない噂や悪評が混ざって居る可能性も在るが、そんなのはまぁ、世の中あるあるで。
「あ、一応メンバー絶賛募集中だから、君も、もし気が向いたら。」
あっさりと、先刻からずっと変わらないのんびりとした笑みと、非常に軽い調子で勧誘を持ちかけつつに
――けれど、最後に。 まるで、確信めいてこんな事を言うのだ。
「―――――君、可也強いでしょ?」
■金剛 > 「ああ、そういう事なら構わない。
…いや、あー…まぁ、言ってもいいことだな。
私はシェンヤンの方の小さな村の出でな。」
今は、機会があれば。
そうであっても借りを返す機会を与えられるのであれば喜んで。
背の高さは自分より少し小柄に見えるが、そんな彼の落ち着きよう、
そして、先ほどの突発的な意識の回り具合から年上と思うことにした。
「ポリアンさん、ああ、るーなじぇー…な、聞いたことはある。
でもお会いするのは初めてだな。…リーダーともあれば色々気苦労もあるでしょうね。」
パーティの名前まで告げられれば、ああ、と少し合点がいった様子。
口を付けた後などと細かいことは気にせずに、遅まきの乾杯をこちらも返す。
まぁ、自分が抱いているそのパーティのイメージ。
言ってしまえばいろんな人がいる集団と受け取っている。
ピンキリと言ってしまえばそれまでだが、
少なくともそのリーダーともあればしっかりしているのだなと心の中で頷いた。
「はは、私なんかでお手伝いできることがあればしますが…。
さすがにいきなりパーティ入りは…、そうですね、縁があればと言うことで。」
あまり団体で動くことをしない身。
小さく口元に笑みを浮かべて言うと、再びエールに口を…。
「……さて、それはどうでしょうね。」
付けようとしたところでの男の言葉に誤魔化すように笑みを浮かべた。
■ポリアン > 「嗚呼、成程。 最近シェンヤンから流れて来る人も多いからね。
此処は如何かな? まぁ、少しでも馴染んでくれて居れば良いのだけど。」
――異なる文化から、異なる文化へと身を寄せるのは、中々に勇気が居る事だ。
一時の旅人ではなく、こうして冒険者として活動して居る所を見るに
恐らくは、この地に居付こうとして居る様に、推測出来るから。
一応は、地元民を代表して、此方での暮らしぶりを少しだけ、問うてみよう
エールを飲み、揚げ物を齧り、のんびりと人と話す。
――こういう、成り行きの縁と言うのは楽しい物。 知らぬ相手でも、興味を抱けば言葉を交わせる辺りが
きっと、リーダー、なんて物に祭り上げられた要因のひとつかも知れない
其れと、何となく間に入って緩衝材になる所。
「気苦労…、……ふふ、まぁ、無いと言えば嘘になるけれど。
それでも、他の所よりは、随分と楽な物だよ。 何せ、メンバーへの制約は無いからね。
活動は自由、個人行動も問題無し、あくまで自由気ままを優先して貰ってるし
唯一在るのは、ほら、『人様に迷惑をかけ過ぎない』って約束事だけだから。」
ぴ、と人差し指立てながら、自らのパーティがどんな集団なのかを軽く説明しよう。
集団での行動を強制して居る訳では無く、どちらかと言えば互助組織に近い
同じ名前を掲げつつも、自由な活動を推奨して居るし、勿論チーム内で協力する事も歓迎だ
必要な時に、必要な助けを得られる様に。 ……其れが、方針と言うものだ。
「……だから、勿論、気が向いたらで構わないよ。
此処でそんな無理な勧誘をしても、ほら、さっきのアレと変わらなくなるし。
……其れに、多分僕はほら、純粋な腕っぷしじゃあ、君には適いそうにないしね。」
笑みは保ったまま。 けれど、少しだけ怜悧に、彼女の眼を見る。
見定める様な其の瞳が、けれどすぐに、のほほんと破願して。
また、一口エールを、ごくりと煽るのだ。
「―――止めなかったら、さっきの男も危なかったでしょ。
そうなったら、君だってギルドに目を付けられるからね。」