2025/07/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 朝の廃神社」にキタさんが現れました。
キタ > 気持ちの良い朝陽、昨夜少し降った雨が朝露として残り煌めく時刻。
平民地区の端の端。木々のトンネルの先にある朽ちた参道と鳥居。其の奥の廃神社。
木々のトンネルの先に何かがある、それを示すのは清涼な水の流れる水路の存在程度。
その源たる手水舎には、小鳥や小動物が、涼や水を求めて訪れる。勿論その中にヒトも……。

「嗚呼──本当にもう、困った子達……。」

言葉は困惑を、しかし表情は緩み柔和な笑みを浮かべていた。巫女が手水舎へと足を運ぶ。
柄杓の柄を足場に水を啄んでいる様子が見て取れたが、巫女の姿に飛び立ってしまう。その反動で水の中に落ちる柄杓。

褐色の肌、袖を捲りその指先を冷たい水に浸して柄杓を拾い上げれば、他にも散らばったそれらを整えてゆく。
自らが他所で吸い上げ、水源へと流し満たすこの手水舎は、有り体に言えば女の体液そのもの。
作業を終えて、手を水の流れる岩に添えれば水面を覗き込む。そのまま赤い舌を覗かせれば、人と思えぬ長さまで伸びるそれが水面を叩き身体へと取り込んでゆく。

今日の水は、妖精の泉からくみ上げた物。良く澄んでいて、女の身体を通した事で甘く。
さりとて水路を通って流れ街へ届くころには希釈され無害化する。

小さな日陰にもなるその場所は、涼をとるにはもってこい。柱も屋根も朽ちかけた社殿が視界に入るから、雰囲気も別の意味で、涼を与えよう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 朝の廃神社」にリュコスさんが現れました。
リュコス > (……居やがる。木っ端の人攫いや薬売り流した与太じゃなかったてぇわけか)

木々の谷間に潜み、息を殺し、影も落とさぬように風景に溶け込むミレーはその姿を遠目に見ていた。
頭頂から伸びる三角の狼耳がぴくぴくと動く。何ぞを話しているのか聞き取ろうとする。
異国情緒溢れる情景にある紅白の女こそが、とある貴族に調査を依頼された少女を拐かす怪異とやらか。
聞こえる女の喘ぎ声、その主かあるいは……

『行方不明が出たっていうんならまだしも…恋人同士が人目を忍んで盛り合ってるだけじゃないんですかね?』

鼻息荒く、娘が心配だとのたまう依頼主に肩をすくめて言っては見た。
だが実際にいる以上は、報告をあげねばなるまいか。

(霊気に満ち満ちた場所……でも土着の霊なら最近目撃されるようになったってことと辻褄が合わないよな。
 流れものか逸れものが単に住み着いただけじゃねえのか…にしてもなんだこの匂いは……う、ん!?)

木の実のみずみずしさと違う甘さに鼻をひくつかせていたが、不意に耳をうつ水音。
そこに顔を向けると、目ざとく見た。何やら祠のような、水を湛える場所に触れたもの…
触手のように伸びた舌である。

「ははぁ。無視して帰るわけにもいかなくなったな。
 くたびれ儲けはごめんだ。ちぃと脅かしてやるとするかね」

事の次第は問わねばなるまい。
そうして参道にあらわれたしなやかな足音の気配も、野の狼とそう変わらぬ。
振り向けばミレーの長身が、片手に剣を提げてはいる、ほんの数メートルの距離まで。

「勝手に此処に住み着いて、うら若き乙女をたぶらかす…
 困った娘さんがここにいるって聞いたんだけど、話を聞かせてもらえるかい?」

犬歯の目立つ歯で微笑んでいる。

キタ > 涼が身体を満たしてゆく。とはいえ元々己が吸い上げた水なのだから反芻に近い行為ではあるのだが、それでも汲み上げた場所の良さは残る。
そんな水辺に、また一羽二羽と小鳥が飛んできては水辺の主の隙を伺うように遠巻きに見ていた。

それに気づけば舌をしまい、背筋を伸ばし今後のルーティーンへ向けて思考を切り替える。
布団を干し、畑に水を遣り……それから、とそんな思案をしながら振り向いたところで、身体が固まる。
それと同時に、気配を察した小鳥たちが一斉に羽ばたき逃げて行った。

「嗚呼──、どう、お話致しましょう?」

腕を振るえば女の首は胴と離れてしまう事だろうその距離。
はて、と心当たりのなさそうな様子で首を傾がせた。

恐らくはどう話したとしても都合よく解釈される気はする、が──。
困惑したように眉間に皺を寄せながら、まるで斬るよりも喰らいつく方がお似合いな口元に視線が向けられる。
そして結局言葉にするのは、そのままの言葉の通り取るならば、まさに誑かす。そんな……。

「誑かすだなんて、誤解ですわ。 
皆様、ここへは命の洗濯にいらっしゃるの。
何かを願い、忘れ、そして気分を、心を、身体を新たにして──。」

街中とは雰囲気が異なる場であり、大半はリフレッシュである。
ただし、勿論そういう事が無いわけではないから含みを持たせた物言いにはなった。

だから、一歩、一歩と足が下がる。しかしそれも水を水路へと流す手水舎の岩で出来た水の器に阻害される。
それに腰掛けるような恰好は、緋袴を濡らし、臙脂色へと変えて。
この場をどう切り抜けたものやら、落ち着かない視線は逃げ道を探した。

リュコス > (どんな化け物が出てくるかと思えば)

振り向いた顔にはほうと感嘆の息が漏れる。
視線が降りる。間近に寄ればゆったりした衣の下にも覗ける体つき。
ミレーは笑ったままだった。笑ったまま、手に提げた剣の切っ先を参道にそっと触れさせる。
きんと響く金属音が尾を引くなかで、彼女の後退に合わせて一歩、また一歩と。

「そりゃあ、なんのために?
 善意ってんなら見上げたもんだけど、それなら大っぴらにやりゃあいい。
 そして…見つかりたくなきゃあこっそりやるもんだ。
 それ以外の用事でここに来るあたしみたいなのが、出てくるかもしんないんだからさぁ」

へらついて笑いながらも、視線が一切女からぶれない。
獲物を狙う獰猛な獣の静かな歩みは止まらないままだ。

「あたしを差し向けたオッサンはな…ちょっとした程度のもんだが騎士団を持ってるお貴族さまだ。
 事と次第によっちゃあここに踏み込んでくる。あたしの報告次第でな?」

キリキリと参道を引っ掻いていた剣を持ち上げる。
水平になった時、木漏れ日を吸って鈍く刃が輝いて、その鋭さを見せつけるようだ。

「自己紹介はこれで十分だろぉ?
 あんたが何で、何のためにやってんのか、教えてよ。
 あたしはもう不安で不安で……たとえば……」

その切っ先は……彼女にではない。
ひときわ霊気を感じる拝殿のほうに、ぴたりと向けられた。視線は女性をとらえたまま。

「癇癪起こして、暴れまわっちまうかもね……?」

あそこに誰かがいるならそれもよし。霊脈や神体より呼び出されたものなら、より効く筈。
剣呑な空気を纏いながらだが、まだ話を聞く姿勢はある。
じっとりと汗が滲む…単に暑さが苦手なのだ。岩に滴る清水にも視線が動くほど。

キタ > まだ、この社に住み着いてから大して長くないとはいえ、明確に敵意、害意をもって接触をしてくる輩というのは居なかった。
参道から玉砂利に変わっても金属の刺す音は大して変わらずに物の怪を追い詰める。

向けられるのが害意なのであれば水を用いて撃退、も出来ないわけではない──が、
見事人質に取られたのは、この場の存在。
そして事を荒立てるつもりがそもそもない物の怪は、岩に手をつき、ぎゅ、とそれを握った。

「わたくしは、ただ、ここに在るだけですから。
皆さまが迷い視線を彷徨わせた時にふと、この森が目に入っただけのお話。
もし、ここへ入り浸っている事が問題だというのであれば──。」

はぁ、とため息交じりの吐息を零し、向けられた切っ先に赤い瞳が揺れる。
それでも、此処を愛してくれた。気に入ってくれた子等のためにも、これだけは──。

「家庭に、しっかり居場所を、甘えられる場所を作るべきではありませんか?」

逃げ場を潰せば、また別の逃げ場を作るだけ。それがもっと深淵に近い、
危険な場所でないと誰が言いきれるだろうか。
とはいえ、正論であったとしてもそれは受け入れられないどころか、火に油を注ぐだけなのだろう。

「そ、それだけは……。」

刃が向けられた、自身の時には臆する事が無かった瞳が大きく揺れ、声も震えた。
最早拾ってもらった恩、というだけの理由ではなくなった場所。
一人だけの場所ではない。安息を求める子も、気に入ってくれた子も、愛を紡いだ方も居た、大切な場所である。

手水舎から腰を浮かせればその場に膝を付き見上げる形で伺おう。両手を胸の前で組み、今ここを破壊せんとする獣じみた粗野な相手へ。

「どのような答えをお望みですか……? この場が守れるのであればわたくしは……。私は」

胸の前で組んでいた手が伸びて相手の羽織物を掴む。
縋る視線は弱々しく、ただ掴んだ手の力だけは、この場が許されるまで離さないと、そんな意思を感じさせるもの。

リュコス > 「長いだけじゃなくてよく回るんだなぁ、その舌は」

言葉を聞いても、何処吹く風の有り様である。
口を開いて赤い舌を覗かせるそこに、彼女の言を嘲りはしても否定はせぬ。

「まあそうかもな…。
 あんただけがいる場所が、あんた以外なんでもある場所より良いってこともあるかも。
 そんだけ、あんたが床上手だってことなのだけかもしれないが。
 ここにじきに来る騎士団に、貴族に、物申してみるといいよ。
 てめえの妻や娘がここに来るのなら、それはてめえらが悪い。
 そっちの近くに居場所がないから、ここに甘えに来ているだけ……ってな。
 どのあたりで首を刎ねられるかは、相手次第になるかねえ」

少なくともこのミレーは最後までは聞いた。何を言うかの興味があったらしい。
温情や愛情といった事情で此処には来ていないミレーは、
ここに来るものたちは、そんな言葉を聞き入れはすまいと釈いてみせるや、
どこか哀れむように鼻を鳴らした。ろくでもないことになる確信をもったようだ。

「ああ?」

そこで、態度を変えて縋ってくる姿。怪訝になった。

「さてなあ。あたしにとっちゃあ、この駆け込み寺の大切さなんて他人の問題さ。
 居場所やなんかより、宿代と飯の種がないことにゃどうにもならん身空だ。
 権力ある者からすりゃ疑わしきは罰。清い場所が拓かれて壊されるなんてよくある話だよ。
 ま、恨むんだったら自分を…」

安い依頼だが、一銭にもならないことを選ぶ理由はない。
ここを平らかにして追い出してやれば、色もつくかもしれない。
そう思ったところで、視線がその顔や体つきに向けられた。少し思案する。

「………。そんなに大事かい。ここが?いや、入り浸る女がか。
 守るためなら意を曲げ、何でもする覚悟があるっての?」

にやついた表情を不意に真面目なものに変え、剣の切っ先が拝殿から彼女の首筋へと動く。
譲歩の姿勢かあるいは光明か、簡潔な質問をミレーは向けた。

キタ > 見られていた──、もとより背後に迫るまで気づかなかったのだから当然といえば当然。
結局どう言葉を尽くした所で所詮は第三者である。
聞く耳を持つ必要すらないのだから徒労といっても差し支えない。

そして語られる言葉も、正しいのだろう。
それがその家族にとってどんな結末を齎すか、想像に難くはないが、
それを家族愛と信じて止まない貴族ならば居場所を奪い、そして家族は壊れていくのだ。

本能赴くまま、生きているのだろう。その象徴たる獣の様に。
それはそれで美しいとは思う。其の刃が、牙が己に向かないうちは……。

「貴女にとってそうであるように──ここには宿に困った方や食い扶持に困った方も来るのです。
私はまだどうなってもいいのです──だから、どうか……どうか。


      この場所だけは──。」


軍がきたとあらば首を刎ねられるだけならまだマシで、
慰み者にされ壊されるのは想像に難くない。
それでも、何れ手水舎が枯れてしまおうとも、この場所だけはと哀願する。

せせら笑うかのように己の覚悟を問いただす。首筋に添えられた切っ先へ、体重を預けるようにして膝を伸ばす。
ツゥ、と一筋の朱が差しそれは白衣の袂を赤く滲ませた。

「どうぞ、この首と引き換えに。お持ちになって。」

そう、赤い瞳を閉じて、獣へ向けて身体を預けた。剣が引かれる事がなければそのまま体の重みにてその身体が分かたれる。
もし引いたのであれば、獣の下腹部へとその顔が押し当てられることとなるか。

リュコス > 必死な哀訴に心動かされることはなくとも。
ミレーは静かに事の次第を見守って

「それじゃあ…」

リュコス > 【移動致します】
ご案内:「王都マグメール 平民地区 朝の廃神社」からリュコスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 朝の廃神社」からキタさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にグスタフさんが現れました。
グスタフ > 酒場の隅で、タバコを燻らせ。グラスを傾けている。
挟んだ煙草の灰が落ちる寸前で、灰皿に押し付けて。
ナッツをかじる。

ぼんやりと虚空を見上げて、何を思うか。

「……女抱きたいな」

欲望ド直球な呟きを残して、酒場の片隅で虚ろっている。

グスタフ > 夜の街に繰り出して、というのもここまで蒸し暑い夜には怠い。
怠さに寝るにも一人では持て余して、こんな酒場で……ぐだっている。

「蒸し暑すぎるんだよなぁ……」

冷たい飲み物を呷って、一杯は美味しいが二敗目は続かない。
煙草の消費が増えていく。

グスタフ > 「まあ、こんな気分を吹き飛ばすには……」

袋から取り出した丸く黒いシカの糞みたいなものを取り出し、飲み込んだ。
苦く臭い。まるでシカの糞そのものを飲み込んだような。

鼻をつまんで、水ごと飲み干すと身体の奥から湧き上がってくる活力。
覚醒した気分で、実際感覚も鋭くなってくる。
ヤル気にみなぎり主に股間が天を突いている。

「気分が盛り上がるのは良いんだが、この副作用は逆効果だよなぁ……」

グスタフ > 「こんなとこでグダグダしててもいかんな」

金置いて立ち上がると、大股開きで歩いて出て行った。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からグスタフさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/商業区域」にネーラさんが現れました。
ネーラ > ラグランスリーブの、ゆったりチュニックに。薄い布をロング丈のラップスカートに。

時間は正午ごろ。


歓楽街との間にある、自らの魔法道具店の前に、空の水瓶を置く。

古代語で何やら唱えている。


「大水霊セドナにかしこみ申す。開け水界の門。湖の貴婦人の裳裾に触れる清水の一端をここへ」

空気中から継ぎ目ひとつなく水が注がれる。

「白銀の紗幕となりて、潤せウンディーネ。」

印を切らず、ただ会話するように何気なく。寸毫の魔力も使わない。
水瓶の中の水が躍り上がるや霧になり、一帯の乾き切った煉瓦の上を何度も撫でる。

「これで少しは涼しかろう!…もうひと甕降らせておくか…」


同じ手順で同じ魔法を、繰り返し。
この道の筋一筋に白波走り、打水完了。

ネーラ > ……ふん。
道一筋程度の水走り、児戯ではあるが、人並みとはそのようなものらしい。
(せいぜい精力は善用せねばな)

右手を2つの水瓶のほうに伸ばし、念動でそっと壁際に押しやる。
店正面の向かって右にちょっと入り、生活スペースの入り口側の【郵便受け】を見ている。


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空である。店の前にデッキチェアを広げ、【質問は私まで】と、後入りに気後れないようにタテカンを据え、日陰で小説を読みながらチェアに背を預けくつろいでいる。