2025/07/09 のログ
ネーラ > 「私も嫌いではない方じゃが。夏だからといってあまり開放的になるとな。」
フードをグッとさらに目深におろし。
「聖教の連中が出張ってくる。面倒なことじゃ…」
やれやれ、と老人じみて独語している。

その聖教の連中でさえ、影で修道女に売春をさせているとかいう噂。
聖教のくせに我ら魔女のお株を奪うとは、地獄を恐れぬか、信仰を失ったか。
…と思わないでもない。

「やれやれじゃ」

ぱたぱたとサンダルの音をさせ、依頼掲示板の前に来る。掲示物を見るため、フードを下ろすと、到底肥満とは見えない、見ての通りの顔が現れる。

「遺跡に幻獣。奴隷都市ではいまだに混沌として危険、か。」
悪徳が悪徳としてそのままある分、あの街はまだ正直だ、とは思う。
「もっとも、まあ行かぬに越したことはないが…」
メガネの鼻を片手の人差し指で持ち上げて。

ネーラ > ぞくり、とする。眉を寄せつぶやく。
冷気が効きすぎておる、と。
ケープの喉元のボタンを外す。フードの部分に全部押し込んで、そうしてフードの淵についたジッパーをギュギュッとあげた。
ボール状になったそれを、肩からかけた小さなショルダーの中に、なんと入れてしまう。
バッグの中に収納用亜空間があるのだ。


「……うむ、よかろう。」

褐色肌に、カフェオレ色の総クロシェレースワンピース。ウェッジソールサンダルは南国の少女のよう。
些細だが、どうにも人目を寄せるのが、斜めにバストにスラッシュが入っているこの有様。
尚且つワンピースの丈が結構膝上丈という際どさ。
そしてこの樽をふたつ積んだようなダブルバレルシルエットである。

さらに破壊力が累乗しているのはギルド内を歩き回る姿なのだが、身動きするたびに下着の存在が窺えない。着ている服自体は節度があるようで、しかしどこかが人さじ低俗なのである。

呆然としている冒険者の少年と目が合うと、やけに優しく微笑んだ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/冒険者ギルド」にケストレルさんが現れました。
ネーラ > さりとて、いかにも女好きそうな熟年冒険者には一瞥もくれない。
気まぐれである。

ケストレル > 「はー暑い暑い
 こうも暑くちゃ昼間っから動こうって冒険者が出ねえのも頷ける」

ギルドの戸を開け、外の暑さに対する愚痴を溢しながら男が一人、カウンターへと向かった
依頼帰りなのか採集物の詰まった麻袋を卓上に置き、受付と二言三言、言葉を交わしてからカウンターを離れる
成果の確認を待つ間、果実水の一杯でも飲もうかと知覚のテーブルにつき

「……おん? あんな人この辺りの冒険者に居たか?」

ギルド内を歩く女の姿を目に留め、緩く頭を傾ける
どこか町の中で見かけた気もするが、もしかすると他人の空似かもとも思えて
暑さのせいで思考も碌にまとまらない、と一旦女から視線を外して、給仕へと果実水を注文した

一度見た女性であれば忘れないもんだけどな、と独り言ちつつ

ネーラ > 「………」
一通り本日の掲示物を見るのは終わった模様。
「こんなところかの。ふん。」

こちらはこちらで、猛禽めいた顔の若い冒険者にふと目を止める。
酒場のナンパ師か?と、週末のバーホッピングの記憶を辿る。
彼女は平民区域の、風俗街寄りのところの雑貨屋の店主であるが、娼館の従業員の健康をみたり、ギルド職員の相談に乗るなどもしている。
何かのおりに見たかもしれないし、先週末の平民区域の水遊び場での水着姿など見たやもしれぬ。
一人で退屈であるし、よかろ、つぶやいて。
「相席、よろしいか?…ほぉう、依頼か。ご苦労様じゃ」
二、三相手の顔を見て、なんとなく人柄を慮る。

ケストレル > 果実水が運ばれてくるのを待つ間、携えていた荷物から手拭いを取り出して汗を拭う
自前で多少なりと冷却の魔法を掛けてはみたものの、表の暑さの前では付け焼刃程度にしかならず、気持ちヒヤッとするかな、程度の効果しか得られなかった
それでも無いよりはマシ、と顔を拭い首筋を拭いていれば、声が掛かって反射的に振り仰ぐ

「おっ? どーぞどーぞ
 こんな美人さんからの相席の申し出があるなんざ、暑い中汗水垂らした甲斐があるってもんだ」

見れば、先程目にしたギルド内を揺蕩う様に歩いていた女が居た
改めてその姿を見ても、見覚えがある気はするが確固たる自信は無く、であればこれまで声を掛けた女性ではないのだろうと結論付ける
相席の申し出を快活な笑みを浮かべて了承し、一度席を立って彼女が座れるようにと椅子を引いた

「さ、どうぞ
 ついでに何か頼むかい? 丁度もうすぐ果実水が来るから、そン時にでも頼めば良いし」

一見すれば平凡な冒険者だが、所作のひとつひとつに僅かな気品が窺える事だろう
仮にも貴族の家で育ち、騎士としても活動するのがその由縁である

ネーラ > 「そうか、では」
彼が引いた椅子に座る。
一連の動作に澱みがなく、かつはきびきびとして、これはそもそもの生まれが良さそうな、いやそもそも純粋に冒険者か?とあたりをつけた。
「もちろん、よく冷えた果実水など大変結構じゃな。」
よく見ると顔も凛々しい。
いいのではないか?
ちょっと眼光にトロン、としたものがよぎってしまう。
いやいや、いやいや。と心の中でちょっと自制した。

「さっきから何度か私を見ているが、どこかで?」
ふふ、と口調の古さの割には優しい所作で薄く笑う。
それは街での雪吊りの人影が、彼の胸に抱えた母への思いか。
「週末の酒場で、私は見たような気もするが?」
この辺りで雑貨屋を営むネーラという、よしなにの、と笑い。
ネーラの体型と、その服装をこう近くで見るならば、その服装がもし目に留まれば、よく見ると大概な服装であることが、わかるやもしれない。

ケストレル > 「そりゃあ――お、丁度来たみてえだ
 良ければお先にどうぞ、俺が来る前から居たんだろ?」

女を席に着くのを見届けるのと同時に、果実水が運ばれて来た
給仕に礼と、同じものをもう一つ、と注文を告げ、届けられた果実水は女の前へと置く
よく冷えたグラスに注がれた果実水を譲る事に名残が惜しくなかったと言えば嘘になる
が、それ以上に瑞々しさに満ちた女の肢体に否応なく視線は惹き付けられ


「……え? ああ、いや。姐さんみたいな美人は一度見たら忘れねえと思うんだけどな?
 週末の酒場……ああ、そういや依頼終わりで盛大に飲み明かした覚えはあるけどよ」

なるほどその時に見かけたのだろうか、記憶が朧気なのは酔いも回っていた所為かと納得する
しかし、そんな状況下で果たして己が声を掛けることが無いだろうか、という別の疑問も去来して

「ああ、ネーラさんね。 俺はケストレル、ケストでもトリーでも呼びたいように呼んでくれりゃ良い
 それよか、雑貨屋さんがギルドに居るなんて……ギルドへの納品か、それとも依頼でも出しに来たんで?」

ネーラ > 「では、お先に」
自然にレディーファーストができるその様子、彼女の体に視線を注いでも節度がある所作。
(ぁ、これは…イケメン…)
ちょっとキュンとした


「まぁまぁ、大方仕事明けの宴会で強かに飲んでいたのやもしれぬし、なんとなくでも覚えていてくれるのは、嬉しいものじゃよ?でも、顔ではない方を覚えていたということは、ないか?」
そういえば彼が酔っているときにナンパされていた気もする。
でもそのとき彼女も相当飲んでいたから…お互いに記憶が曖昧で。
なんか彼女は酒の勢いでハグしたような、諸肌脱ぎかけたような。
どれがどの週末のことであったか‥!?

今に集中しよう、

す、と果実水を口に含み。カップを置いた手を引く時に自分の胸元をす、と撫でて意味ありげに唇を引きあげた。

「うむ、ケストレル、よろしく頼むぞ。私がここにいるのはな、お前のような冒険者に依頼を出すためでな。あとはまあ、時流を見るためか。納品できるような身分になるといいのじゃが。」

零細の身ではな、とちょっと苦笑した

ネーラ > (以後、雑談はしばらく続いたが、その詳細はもしかしたらべつの機会になるのかもしれない。ケストレルの記憶に、顔と名前と姿を残すことはできたかも。冒険者とあればこれは客になりうるとお店の場所も教えた次第にて)
ご案内:「王都マグメール 平民地区/冒険者ギルド」からネーラさんが去りました。
ケストレル > 身元が必要以上に割れるのを防ぐため、市井の冒険者然とした言動を意識してとるものの
育ちが育ちの所為かどうしても隠し切れない育ちの良さは出てしまう
本人も気付かない程度、ではあるが

「いやいやいや、流石に酔っててもそこまでの事はしてねぇって!
 むしろそんな事してたら逆に覚えてるっつーか、覚えてねえと勿体無いっつーか」

揶揄いとも思えない女の言葉に、面食らった様に慌てふためき
しかし酒の席での事とあれば、強く否定しきれないのもまた事実
覚えていないという事がこれほど口惜しいものか、と内心歯噛みをするとともに、酒に飲まれる真似はすまいと心に刻む

……まあ、どう考えても身に覚えが無いし、その場に居た同業者に訊けば潔白は明らかなのだが

「へえ、やっぱり依頼を……一度ギルドは通して貰うけど、良けりゃ詳細を聞いても?
 というか、せっかくの機会だからネーラさんの事をもっと教えて頂いても良いすかね?」

果実水で喉を潤す姿に自然と口内に唾液が溢れ、グラスを離れた手が丘陵を辿る様に喉を鳴らす

続いて運ばれて来た果実水を受け取って席に着き、多少浮足立ちながらも彼女との会話に興じたことだろう―――

ご案内:「王都マグメール 平民地区/冒険者ギルド」からケストレルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」にドリィさんが現れました。
ドリィ > 白昼の冒険者ギルド――。

時刻柄訪れる冒険者も少なく、人影疎らな中、
年季の入ったソファに背を預け、黒革のパンツに包まれた長い脚をゆったりと組んで
依頼書を眺める女の姿があった。
煉瓦色の髪は午后の陽光に艶めきをピンクに透かせ、
夕暮彩の眼差しは手許に真摯に据えられていた。
もう片手、併設の酒場でテイクアウトした、蝋紙に包まれたサンドウィッチが今日のお供だ。

今日も今日とて若手ギルド職員にオネガイして掲示前の手頃な依頼を見繕って貰ったのだ。
女の長い繊指が、紙を捲る。ンー…、と小さく唸って

「討伐はぁー… 一人じゃあ、ちょぉっとメンドイかなァー…」

とはいえ、採取は報酬が比較的安価なのが悩みどころ。
行くなら他に、女としては付加価値が欲しい。何れも決め手に欠けていた。
唇が僅かに尖り、愛嬌を模してピヨピヨと揺れ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」に憂炎さんが現れました。
憂炎 > からん、と真ん丸な氷がグラスにあたり涼しげな音を立てる。

茹だるような熱気に汗は額から首からあちらこちらに浮かんで流れて汗だくで
こんな日のこんな時間に出歩くもんじゃないな……等と後悔した用事の帰り道。
ギルドの併設酒場に入ったのは偶然だったがついでに旧知の友人と軽く喋ってから帰ろうと、
オレンジジュースのグラスを左手にひょいっとギルドの内部へと内部連絡廊下から入った折。

「……うん?」

ンー……と漏れた声音とも吐息ともつかない音に、サングラスとその奥の綴じた瞳が振り向いた。

(……この音は……)

甘い色合いを乗せた甘ったるすぎない軽やかな息遣いと声色には、聞き覚えがあった。
友人とも知人とも言えない間柄だけれど以前こんな暑い時期に聞いたことのあるもの。
続く、依頼内容を吟味しているらしい言葉に、ああやはり彼女だと当たりを付ければ、かつこつと硬い音を鳴らしてその音の近くへ赴いて。

「ドリィ? やあ、久方ぶり」

ひらりと右手を緩やかに持ち上げてから声を掛ける。

ドリィ > 「もぉちょっと、こぉ――… 」

紡ぐ言葉はささやかな。生温い微風に揺らいで消える程の独白。
愉しそうか――そうでないか。
女の判断基準は常にそこに重きを置いていたから、
「やぁーめた!」なんてギルド員に依頼が突っ返される事もしばしばだ。

今日も今日とて気乗りしない顔。形良くぽってりとした唇を親指で、むにゅんと捻じ曲げて――
「ンーーー………」
あ、コレはまた突っ返されるな、なんて横目で見守ってた若いギルド員が察した頃合に。
硬質な音色と伴い、近付いてくる一名があった。――掛かる声。
女は夕暮彩の双眸をもちあげて、瞬く。その瞳がまぁるく見開かれる事暫し。

「あら?」 

疑問符は、

「あらあらあら――――… ?」

弛く、みるみると穏やかに解れてゆき。その口角が音に軽やかなわらいを含ませた。
興味深く見仰ぐ視線の気配が、彼に届くかは知れないけれど。

「――誰かと思ったら、――…水辺のトビウオさん。」

憂炎 > 彼女の内容の何かがお気に召さないらしい悩ましげな声音と、
度々困ったような疲れたような吐息を零す職員の息遣い。
何となし現況が測れるような有様。
くつくつ、と若い職員には申し訳ない話ではあったがついつい笑いが溢れてしまった。

に、しても、相変わらずよく目立つ……
職員も冒険者も疎らで比較的静かなこの環境でなくとも、
外の大通りの雑踏と騒音でもきっと聞き取れるだろう
柔らかな仕草が柔らかく空気を揺らす動きと聞き心地のいい声に可笑しさとは違う意味でも口の端が撓む。

あら、あらあら、と、あらが立て続けに溢れている合間もひらりひらりと揺れた手はそのうち落ちて、
先程よりもより緩やかに解れていく笑気と見上げる視線に合わせて視線を交わすよう瞼が下向いた。

「今日は、浜に打ち上げられて暫く経った魚のような有様だけれどね。
 いやあ、暑い、本当に暑い。水分補給はちゃんとしている? ああ、良ければ……」

ぱたぱたと手団扇を仰いでいまだ引かない汗を室内の冷えた空気で癒やしながら、
淹れてもらったばっかりでもう霜が付き始めたグラスを彼女に差し出した。
まだ口は付けていないからご安心、などと嘯きながらちょいと八重歯を見せた悪戯っ気な笑みと共に小首を傾げる。

ドリィ > 若手ギルド員が眉に皺寄せて厳選した依頼書は、
斯くして女の傍らに置かれ、頭よりすっかりと忘れられる事となる。

だって、そりゃそう。
過日。女は男に囁いた。名前を、声を覚えていて、と。
ささやかにしてありふれた邂逅に、少しばかりの特別な後味を残すスパイスとして。
もしも、再び出逢えたなら、盲いた彼が、己の声を見つけたなら――…、と。
そんな遊興の一縷が、不意にあざやかに目の前に像を結んだなら。

女の空気は、破顔に、――ふ。弛み崩れ。

「あら。くれちゃうの? 有難う。」

差し出されたドリンクに、可笑しげに小頚を傾ぐ仕草。
グラスを受け取り乍らに――離れる間際、女の爪先が僅か、グラス持つ男の指先に触れた。
交錯する視線の接触に似て、グラスの水滴の冷涼で、その指先にマニキュアを施すみたく。

「そぉしたら、お礼に――… 
 記憶のなかの麗しの美女のー…、涼しげな生ボイスなんて傍らに、如何?」

――隣を誘う。かろり、融けかけた氷を一度グラス揺らして鳴らしながら。

憂炎 > ギルド員には悪い事をしてしまったらしい。
あぁあ……っ。て声があからさまに聞こえてきたから。
後で謝罪と埋め合わせをするべきなのだろうが後回し。

今は……

「どういたしまして?」

偶にはどこかに居やしないものかと首と耳とを巡らす事はあった、彼女との……
二度と無かったかもしれない二度目をまた見つけられたこの瞬間を楽しませて貰いたい。
空気も唇も息遣いもふわりふわりと解れていくその様子を写したサングラスを外せば、
懐に仕舞い込んでしまうと綴じた瞼越しに何も写していない瞳がじいっとその顔を捉える。

どうぞ、とグラスを差し出したままに首肯を一つ、その手が受け取ってくれれば離す間際――
猛禽類のような分厚い爪をつつつとなぞって濡らした細い手指と薄い爪先の感触。
指先も心根もどちらも擽ったくってまた喉が揺れて今度は肩も揺れて笑気を零してから、
つん、と一度だけ爪先同士を突っつき合わせてから受け渡して離れる。

「それでは、失礼させてもらおうかな。
 しかし久方ぶりに会ってみると……ふふ、そうだね、記憶というのは美化されるだなんて聞くが……あてにならならないものだ。
 実際は思い出の君より今の君のほうがうんと可愛らしく感じられる」

言葉を零す度に撓む唇も、涼しげな目元も、見えちゃいないが耳に捉えられるだけでも十二分で、
気障な台詞もつい零しながらお礼と断りに胸元で手を立ててからその隣の席へと腰を落ち着かせて貰う。

ドリィ > 男が目許を隠すサングラスを外す――
露わになる鋭角な輪郭に、綺麗に収まった閉じられた瞼、その双眼。
女はその容貌に不躾なまでに素直な眼差しを向ける。綺麗なものが好きなのだ。

「サービス精神旺盛、ね?エン。
 貰っておいて言うのもアレだけどー…
 ――…眺めながら飲むのが、お酒じゃあないのが少ぉし残念なくらい。」

告げながら、ささやかな出逢いの“挨拶”を終えた指先の湿りをグラスに戻し、
縁に口を寄せて一口二口と甘い酸味を含む。唇を湿らせて、潤いを舌先で舐めたなら。
依頼書を置いたのと逆、ソファの傍らを軽くぽすりと叩き鳴らして示してみせ、彼を招こう。

座り際、向けられた言葉の気障な甘やかに、――…く、ふっ。女の肩がわらった。

「そりゃぁー…もぉ、日々愛らしさアップデートしてますから。数割増し?
 ついでにホラ、奇跡の再会で、ちょぉっとだけー… 恋する乙女モードなので…」

そんな風に宣いながら、組んでいた脚を解き。彼が盲いていると解りながら、
これ見よがしに態とらしく、髪を指櫛にて梳く仕草をしてみせるのだ。
まるで意中の相手を意識する仕草のように、
けれど初心な乙女を標榜するにはどうにも悪戯な眼差しを加味しながら。
その鋭敏な耳が、そんな気配をきっと察してくれるだろうなんて打算付きで。

憂炎 > じいっと向けられる視線に映る、唇、鼻梁、目元、首筋――……
それなりの歳だろうに髭の痕跡もない肌は汗の水気でより潤っていさえする様。
化粧でも施せば女形もやれるだろう整った輪郭は過日とまるで変わりない。

彼女と面と向かうとだらしなく緩み過ぎそうになる表情を指で揉む。

「なぁに、これぐらいはね、男としての嗜みのうちさ。
 お酒は、良ければこのあと二人でゆっくりと飲み交わしたいと思うが如何かな?」

招いてもらった席へと腰を落ち着ければ挨拶と同じぐらい緩い仕草でゆったりと足を組んで背を背凭れに預ける。
お酒と聞けば日が差している窓辺に見えてもないのに時間を確認するよう向けてから、
まるでワイングラスを摘んで一口を運ぶ真似をしてから一つお誘いを。

可笑しくてって堪らず、みたく、溢れる笑いにどうにも上機嫌そうな笑みは引っ込まずにまた一つ肩を揺らして。

「なるほど、どうりで愛らしく感じた訳だ、あのときより実際もっとと言われてみると納得しか……。
 ふふっ。ふふふふふふっ。ドリィ。そんなこと言ってくれると嬉しいけどね? そう言われると、ほら、見てくれ。
 折角の顔がこーんな有様になっちゃうから」

恋する乙女? と、首を傾げかけるのも束の間さらりと手櫛で梳かれた髪が奏でた音は普通の人にはとても聞こえぬ小さな音。しかし、この盲人にはよく聞こえる音に。愛らしさを見せつける仕草に。意中の人の視界に一層愛らしく写ろうといういじらしさのある仕草に。――そこにたっぷりと悪戯っ気を含んだ視線が細まる様相は言葉の弾みで聞き入っては、可笑しそうな笑気はそのうち笑い声としてしかと出てきてしまうし、嬉しすぎて表情だらしなくなる、なんてのたまって両の手と指を顔に押し当てれば揉み解した。

ドリィ > その容貌は鋭気を纏えば氷薄の趣さえ醸すだろうに、纏う空気は柔和だ。
その相好が破顔に弛むさまに、――つい。酒精を欲して、
グラス傾ければオレンジジュースだった、なんて一人コントを執り行うこと数回。

捗るオレンジジュースでの口中の潤いに、男の誘いが重なるなら、女の口角が得たりとばかり傾ぎ。

「お酒のお誘いも男の嗜みかしら? ――勿論、喜んで。
 一杯のジュースの肴にするにはーぁ……とても勿体無いし?」

指先が、グラスを摘まみ上げては見えじのワイングラスに捧げるよに乾杯、の手真似をしてから、
くぃ、と手首を返して残りを呷る。酒精を傾ける飲み方で、女の唇がジュースを最後の一滴迄嚥下して。
――… こと、ん。サイドテーブルにグラスを置いた。

乙女なんて名乗る初心な殊勝さ、己にあるのかと問われたら疑わしいし、
上司にドヤされる前に黒子宜敷く依頼書をそさくさ回収していった若手ギルド員が、
物言いたげな視線を此方に向けた気もしたけど。そこは当然華麗にスルー。恋は盲目であるからして。

「デショ? 可愛く見られたいって気持ちが女を可愛くするワケだしー…
 見えてないことを差し引いても、そぉーんな顔になってくれないとコッチが困っちゃう!
 
 一応、遠回しに口説いてますしー…… ァ。 言っちゃった。」
 
女のハニーヴォイスは甘くも、炭酸水の軽妙さも忍ばせた。
表情を大仰に繕って――その声に感情の機微のささやかすらものせて喋れば、
最後の最後、喋りすぎた“遠回し”はうっかりか故意か。少しばかりの渋面にてスパイスもひと匙。
まぁいっか、とばかりに口調は隠しだての欠片無く、耳障り好く男に届き。

憂炎 > 舌の上に転がる爽やかな甘酸っぱさを口にする前から予感させる芳しいオレンジジュースだが?
何か物足りないな、酒精のほろ苦さとか樽の香りとか、あ、これお酒じゃなかった……云々
行われる一人コントにはその度口元に手を当てては大口開けて大笑いしないように気を付けるが笑いが止まらない。

「そう、それも。……えっちらおっちらストレッチしてるとこ見られた時よりは格好付いてるかなぁと思ってさ?」

プールではしゃぎ過ぎて疲れが溜まった筋や身体を解して、ん゛~とか、あ゛~とか声漏らした後よりか……
こんな偶然に喉を潤すものの一つでも差し出しながら彼女の魅力に当てられましたといった誘いの方が格好が付く。
過日の時には格好の理由で出来なかった事をぽつりと呟いたお誘いは、果たして、勿論と頷いて貰えばまた笑みに喉が鳴る。

乾杯、と、手真似に返す手首の傾げは、本当に硝子の器にたっぷり入ったワイングラスでも傾けるような絶妙な重さ。
ともすればグラスとグラスがかち合う軽やかな音まで聞こえてきそうな。
そんな芸ともクオリティ似通った酒を煽るような良い飲みっぷりに瞼を向け、そのあと置かれたグラスに手が伸びれば、返すのはこっちの仕事とグラスを手に取って。

「こぉーんな顔は見られたらちょっと恥ずかしいけどね? してやられたよ、参った。
 ……ちょっとお耳を拝借」

“うっかり”に、片眉と口の端片方だけが釣り上がって何とも奇妙なびっくり顔を披露したあとは両手を上げて降参のポーズ。
悪びれもなく何ならある種の爽快感すら伴うぐらいの悪戯っぷりにも
『こいつめ~』とか悪戯咎めるような口ぶりではあるけど怒気も何もありゃしない。
こっちこっち、と手招き一つ、彼女が耳を寄せてくれれば手を立てて内緒話みたく声を潜めて、

「俺も、もーっと、ドリィの可愛いところいーっぱい口説かせてね?」

お酒の席ではこっちもめいっぱい口説くから、なんて、ひそひそ、嘯き。

ドリィ > 酒精を含んだとて、微酔いに頬を染めて男にこてりと寄り添い肩を借りるタイプの女じゃない。
ともすれば酒とてジュースとてテンションは変わらぬのだし――… と、いうものでもなく。
矢張りそこは酒がいいのだ。イイ男がいるなら、殊更に。

「そぅ? 今日もスマートで素敵だケド、
 あの日はあの日で、ギャップにクるものが――…  クふ、ッ。」

思い出して笑いに息が零れた。
水際での邂逅はあれはあれでユーモラスで、男の魅力が詰まっていた、とは女の談。
見目の良い男の、肩の力が抜けた瞬間というのは味わい深いもの。
今この時も男が実は中々の笑い上戸で、先程から破顔の表情を小被害で済まそうと堪える様相だとか。
そういうささやかが、可愛らしくて見飽きない。――嗚呼、酒が欲しい、と、こうなるわけだ。

それにしても。盲の男はよく距離感を違えずにグラスの位置を掌握するものだ。
感心に眼差しは短い間、グラスを運ぶ、細面の繊細さに見合わぬ男らしさを備えた無骨な掌に向けられようか。
グラス持つ手許より、男の容貌に再度眼差しは侍る。
降参ポーズの後、女が興味深げに夕暮彩をちかりと燦めかせるのは、
男よりの手招きに。ン?なんて僅かなスタッカートを鳴らして耳を差し出せば

「――――… 」

今度は、女の眉が跳ねあがる番。にぃーっこり、と女の唇が屈託の無い綻びに弛む。
ふっくりと眇めた双眸と、笑いに揺らめく柔髪が、至近の男の頬を擽り。

「 ―――…そぅこなくっちゃ。
 格好良く口説いて貰えるまで、帰れないなって思ってたの!」

女の囁きが、とても愉快そうに甘やかに謳う。
それだって、水辺での口約束。表情よりも雄弁に、女の声は喜色を奏でた。

憂炎 >  
「い、言い出したのは俺だけども鮮明に思い返さなくていいのっ。
 余計なこと言ったぁ~。格好が付ききらんのはもう宿痾の類かなこれは……」

トビウオのあだ名を付けられるぐらい水面で跳ねていた事やら老人みたいな動きやら……
あれこれと像が浮かんでしまったようで堪らずの思い出し笑いな彼女に手を右に左に振る。
照れ臭くって仕方なくって、瞼は綴じたままだが視線を逸らすよう顔を傾けたり髪を手櫛で撫で付けたりと忙しない。
一見すると人が敬遠する事もあるかもしれない美貌だが中身はこう三枚目だったり笑い上戸だったり、
顔芸にあんまり向いていない性質の格好付けたがり屋さんなところも相変わらずの盲であった。

うっかりと取り落とす、こともなく瞼は綴じたまま顔すら向けずに掴んだ杯を傾けたり回したり、
あんまり器用な動きが出来なさそうに見えて手遊びに興じている分厚い爪と筋張った指に手の甲に。
傭兵時代の名残を色濃く残したその手から持ち上がってくる視線すら耳と気配で感じて察して、
内緒話の時なんか耳朶に触れるか触れないかの絶妙な距離感を探るのもお手の物。
ひそひそ、ひそひそ。
嘯いた内容に厭うどころか喜色をたっぷり浮かべてくれる唇に、んふふ、と嬉しそうな笑みがまた溢れた。頬を擽る柔髪の一房を、失礼と一言断りを入れれば、掌で持ち上げると薄い唇をそうっと近づけて僅かに触れる。まるで手の甲にキスを贈るように一つだけ僅かだけ触れて、

「まあ、ご覧の有様、よくよく格好良さが崩れるこんな男だけれど目一杯頑張るからどうぞご容赦を?
 あの時言えなかったことも含めて、いーっぱいね。全っ然言い足りなかったからさ」

髪の色はわからないけれど、口付けしたくなるぐらいに良い香りのする綺麗な髪の質のこと、瞳の色はわからないけれど、感情豊かに踊ってくれているのがわかって楽しくなる目元のこと。見えない部分は多いかわりに見えないからこそ解るところを一つ一つじっくりと語りたいと明かしては、偶に素の三枚目になるのは御免ね? 等と冗談めかしながらに腰を椅子から持ち上げる。

「じゃあ、お酒の席をご紹介させてもらおうか。お手をどうぞ? ドリィ」

盲が手を引かれるのではなく盲が手を引くだなんておかしな話ではあるが、目が見えないからってすっ転んだりはしないのは、今日もどこかにぶつからずにやってくるしグラスの位置を違えないのもそう、過日の折にも飛魚よろしく跳ね回っていた格好悪さとギャップ萌え? とやらと引き換えにした信頼はあるだろう。グラスを返却したら一緒に行こうと右手を力を抜いて差し出した。

ドリィ > 「そぉ? 格好好いだけのエンじゃあないから、こんなにトキめいてるのに?」

ふにゅんと女の唇がわらいのカタチに弛み乍らに、可笑しげに男の表情を覗き込む。
によによと細まる笑い猫みたいな双眸を、もし彼が目にしていたらどういう表情をしただろう。
男曰くの思い返されたくない出逢いの風景の締まらなさは、今、男の表情に俄に面影を残す。
美しいだけの男なら女は、幾らだって見つけられる。華やかな遊興の園なら尚更に。
この男の醸す、見目に似合わぬ人間臭い機微が女のお気に入りなので――…暫く黙って愛でるに留め。

本当に見えていないのかと訝しくなるほどの器用な内緒話を経て、
男の掌はこれまた迷いの欠片も無い動きで女の柔髪のひと房を拾い、唇を寄せた。
紳士然とした振る舞い、それもまたこの男なのだろう。
そこで気障を披露して女を酔わせるよりも、
時折栞の如くに挿まれる三枚目を予告して女に謝意を示すを選ぶ、人柄もまた。

「ええ。たまぁに覗く、そぅゆうトコロも込みで――…とても愉しみ。
 何を聞かせて貰えるのかしら?って ――…ふふっ。」

スマートなエスコートに女は、酷く慣れた手つきで嫋やかな指を滑らすよに重ねた。
ソファから立ち上がり、一度だけ、此方を何やら物言いたげに見ている若いギルド職員に、
男に渡したのと逆――空き手にて、ぴらぴらと指揺らすだけのユルい挨拶を済ませたなら。
それ以上の密着を求めるでも無く、まるで。唇の嘯いた、恋心の延長線の淑やかさにて。

憂炎 >  
「……そう言われると弱いね」

蠱惑的でさえある程たわわに撓んだ唇を、言葉の音の浮き沈みで、悪戯好きの猫よろしく細まる相貌を、言葉の音の反響で、可笑しく揺れて傾き覗き込んだその顔をまるで見えているみたく聞き取っては『弱い』という言葉通りに困り眉になった顔を披露しながら小首を傾げる三枚目。男は格好付けたがるものだし俺ときたら見目が良いから云々なんて持論も彼女の好いた所と主張されればどうにも、唇を何度か開けては言葉も出せずにぱくぱく開閉させるだけにとどめて最後にはやはり『参った』が飛び出るだけだ。

その唇はよく手入れされているのが伺える色艶で荒れも罅もなく口付け程近づくと、ふわり、と……
こんな距離でようやくわかるほど薄く淡く掛けられているのは紅茶にも似た甘酸っぱい薔薇の香水の香り。
彼女の柔髪に落とした口付けを『させてくれてありがと』なんてちょいとはにかんでから、

「さ、三枚目のところはあんまり期待してもらわなくても……
 ああ、言うまい、言えないし? 惚れた弱みとはこのことだ」

格好付けれたり付けれなかったり格好のことを気にしすぎて三枚目に成り果てたりでどうにも締まらないのは遺憾である。
肩を大げさに竦めて見せては、結局あれこれ言おうにも言えない辺りの事を『惚れた弱み』とは、
彼女がちょくちょくと覗かせてくれる初恋の乙女といった口振りに対するお礼とお返し。
ふふふ、と、人差し指を唇に添えて立てて含んだ仕草と笑いを一つ。
己の掌に彼女の指が添えられるまで待ってから包むように軽く握るのは、慣れを伺わせるエスコートのしかた。

『……ごめんね? 埋め合わせは今度するから』

そういえば忘れていた若い職員への謝罪と埋め合わせは本当に後の後になりそうだ。
彼女が職員に振った掌で思い出してはグラスをお返しした後掌を立てて唇だけで伝えつつ。

「それではこちらに。ああ、少し暗くなってくる頃だろう? 人通りも多い、足元気を付けて」

窓から差し込んだ日光は、傾いて西日になり、傾いて日没になり段々と通りに暗さを増していく。
耳だけじゃなくって体内時計もかなり良いようで日の具合もぴたりと言い当てながら、
職員に気を使うのは忘れるが彼女に気を使うのは忘れずに声も掛けつつ歩調を合わせて一つ二つと歩き出す。
それを羨ましそうな目で見送る冒険者と、それを恨みがましい目で見送る職員の、
視線を感じて笑っちゃ悪いがやはり笑い上戸だから笑ってしまいつつの。
歩く最中もぽつりぽつりと言葉を交わして歩む二人の背中はひっそりと人混みに紛れていくだろう。

ドリィ > ――惚れた弱味。
その言葉は、予期せぬものであったのだろう。女の双眸が暫しまぁるくなってから――…
ゆるやかく、ほどけるように破顔する。夕暮彩を細く眇め、擽ったげにしたのは僅かなこと。

男に預けた指腹の控え目に、指先の仄かな躊躇い匂わす奥ゆかしさを、恋慕の甘酸っぱさすら匂わせるのは
おそらく女の遊び心。一夜の遊興を全力で恋したがるがゆえの――きっと、たぶん。

男の気遣いを受けながら、この後は。
申し訳無いが若きギルド職員には分けて差し上げられぬ、女と男だけの、秘密の時間。
日は傾いたとて、闇を闇とせぬ男の隣、華は幽かに馨りつつに傍らを飾り。

酒精で口を湿らせて、次なる語りはしっぽりと――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」からドリィさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」から憂炎さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にネーラさんが現れました。
ネーラ > 褐色肌に銀髪の女。
夕方になり、住居を兼ねている建物…ここが店である…の前に出る。
クロシェレースのタンクトップトップス。冒険者用のデニム地を薄くした素材の、ホットパンツ。ラメ糸入りの、黒い麻ニットの羽織もの。ウェッジヒールサンダル。

「鍵はよし、と。」
結い髪を解いて風に馴染ませ、今日の仕事が終わった開放感を感じる。

夜の街はいい。空気が自由だ。

どこかへ向かうか、近所で飲むか。

ネーラ > 店のドアノブに手を置き、二、三のコマンドワードを唱える。
ドアノブが薄らとひかり、またおさまる。
施錠の魔法だ。彼女がいなければ開かない呪い。
鍵を破る手間を増やせば、盗人は防げる。

近所の、娼館の嬢がネーラに挨拶する。

「ん、気をつけるんじゃぞ。」
会釈。心の中で(酒も控えいよ)と呟く。
いくら病を御する年を経た魔女とはいえ、自ら酒に浸るものまでは救えない。
酔いは冷ませるが、酒を求める心までは治せないから。

魔女は意外と人を地獄に誘わない。
地獄への鍵はいつだって人の心よな、と魔女は考える。

建物の門前に蛍光石のランタンを灯す。

「さて…」

後ろを振り向いたとき、そこに誰かいるかもしれない。