2025/07/08 のログ
オドグ > 自分より背の高い女が自分の脚元にひれ伏し、あまつさえ絶頂する様を見た肥満男は、濡れそぼった秘所から器具を離して満足げに息を吐いた。

「残念ながら、ミランダが今見せた特異な反応により、魔族の手の者ではないかという疑惑は深まってしまったなぁ」

いたぶるような口調と共に、好色さを隠そうともしない男の目が魔女の肢体を這い回る。そして黒犬を一瞥した後、彼女の腕を引いた。

「ほれ、さっさと支度をせんか。お前も犬の格好になって、あやつをもてなしてやれ」

先程まで魔女に害をなし得る男達を威嚇していた黒い犬は、今は達したばかりの主を見て、尾を打ち振って股間をいきり立たせている。この後行われることへの期待に笑みを深めた肥満男が、言葉を続けた。

「愛し合う主従の姿、ぜひ見物したいものだなぁ?ええ?」

ミランダ > 「と、め………て、ぇ」

二度、三度。
淫核に触れたままの器具と胸の頂への責めに耐え切れずに達する魔女。
その証とばかりに噴きだされてしまう潮と愛液。
ぐちゃぐちゃに混じったそれが床と器具……あと男の手と腕も盛大に汚してしまうだろう。

「はぁ……ぁ、は……こんな責め方されたら、イクに決まって……」

暴論に毒づきながら、次はこの男だろうか?
潤んだ青い目が男を見上げ、その下半身にも向けられていたのだが――。

「…………え?」

なんとも間の抜けた声である。
予想外の言葉とともに腕をとられる。
男と愛犬、どちらにも視線を送り若干の混乱。

「なに、言って――……」
ばう、と男の言葉を肯定するように犬が吠える。 ひざまずけ、と。

「~~~っ!」

達したばかりで力の入らない身体を引き寄せられ愛犬の前へ。
投げ出されるかのように床へと放たれれば四つん這いである。

鼻息荒く興奮した愛犬が飼い主……雌の顔に鼻を寄せ、首を振るう。
こちらに下半身を向けるように、と。
立場逆転――。

「こん、の……ゲス……」

ぺた、ぺた。とひじを突きながら回れ右。
怒気を含んだ顔を見下ろしている男へと見上げて向けながら――なんの遠慮もなく、「いつものように」愛犬が雌の背中に乗り上げる。

はっ、はっ、はっ。と鼻息荒く「なれた仕草」で既に先走りをだらだらと垂らしている肉棒を何の遠慮もなく雌犬の穴に突き刺すだろうか。

「は、ぅ――」

青い目が見開かれ、隠し切れない欲情の色。
開かれた唇の端から唾液が垂れ、膣内を、肉襞を抉る犬の肉棒に屈服するように女の頭が垂れ床に擦り付けられた。

犬の鋭い爪が背中に食い込み、二本脚。
だらしなく舌を垂らした雄が夢中で腰を振り始めるだろう。

命じた男の要求通り――いや、それ以上の見世物だろうか?

オドグ > 「おっほほほ、予想以上だぁ」

さきほどまで忠犬だったのが、今や嬉々として主である魔女を犯している。当たり前のように繰り広げられる獣姦の見世物に、慣れた様子で犬の男根を受け入れ、腰を突き出し上半身を倒す魔女の仕草に、小柄な肥満男は手を叩いて喜んだ。

「ううむ。んっふふふ、迷うなあこれは。犬に欲情する変態女。肉便器にすべきか出し物にすべきか。ひとまず、どちらも出来るように躾けておこうか」

そう言った肥満男は、魔女を犯す犬の背後に回って右手を変形させる。細い触手にしたそれを、犬に犯される秘所の直ぐ真後ろにある窄まりに捩じり込んだ。

「犬のチンポで感じるド変態なら、両穴責めもいけるだろう?」

嘲りと欲情の混じった肥満男の言葉と共に、先端から濃い粘液を滴らせる触手がずぶずぶと尻孔を掘る。小指ほどの太さのそれが奥まで突っ込まれ、吐き出される粘液が腸内を清めていく。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にミランダさんが現れました。
ミランダ > 豊満な乳房を床に潰し、突き出すように腰が浮く。
へこへこと腰を動かす雄の一物は人間と違い細かなトゲが生えている。
膣内を引き裂く痛みと快楽。
乱れる雌は顔を見せられないとばかりに床に額を擦り付けながら首を振る。

「うる、さ……ぁ、ぁ……ぅ!」

侮蔑の言葉を笑いの声に拍手。
見世物じゃない、と否定しようとするが、できない。
男に構わず腰を振る雄。 ぐ、ぐ、ぐ。と種付けのために奥へ奥へと遠慮なく押し付け、女の子宮口を圧迫する。

「ひ、ぐっ――」

悲鳴のような雌の鳴き声。
背後へと回った男に、雄が「旦那もいっとく?」とばかりに視線を向け――その右手が触手に変わったことにきゃいん、と驚きの声が上がった。
腰の動きも止まったところに――不浄の穴へと滑り込まされる触手。
ひくつく様を見せていた穴へと滑り込んだソレに思わず女の顎があがる。

「ぁ……な、に。 入れ……てっ」

滑り込み、犬の肉棒と擦り付けられるソレ。
肉棒とは明らかに違うソレを確認しようと振り返ろうとするが……メスは突っ伏してろとばかりに雄に圧し掛かられて敵わない。

「誰が、ど変態……なもの、ですか……ぃ……や。 つめ、た……ぁ、ぁ…」
お尻の穴を犯す謎の粘液。 冷たさが火照った身体を冷やし、余計に意識を集中させられてしまう。
きゅぅ、と膣内と尻穴が締まり、雄のピストン運動で愛液がさらに飛び散った。

オドグ > 「良いぞぉミランダ。たまらん雌っぷりだ。犬にハメさせるには勿体ない気もするが、だからこそ良いという考えもある。宴では、あの男爵に抱かれる機会を作ってやるからな」

既に魔女を参加させることは決定事項、と言わんばかりな肥満男は、腸内が洗浄され終えるのを見計らい、触手を操って良く締まる尻孔を解す。

「ああ、ワシのことは気にするな。いつもやっているように、主人を悦ばせてやれ。手伝ってやろう。そうだな。こう、ふむ。マンコの裏を弄ってやるのはどうだ?」

少し前まで犬に威嚇されていた肥満男は、今や犬をけしかける側。というよりは協力関係か。触手が尻孔を掘る角度を変え、獣の男根に押し入られた膣奥と子宮の裏をマッサージするかのように腸壁を擦る。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にミランダさんが現れました。
ミランダ > 「ち、が……雌犬、なんか……じゃ」

もう乱れを取り繕えない雌。あまりにも侮辱的な言葉を否定しようとするも、その合間合間にこぼれる甘い息は隠しようがない。

協力関係となった男と雄犬。
未知の触手による尻穴への責め。
子宮の裏側、予期せぬところからの刺激に――

「ぃ……ぁ。しら、ない。 そんなの、しらな……ぁ、ぁ……」

ぞくりと背中が震え、きゅぅ、と肉襞が犬棒に絡む。
そこをトゲで裂かれ、いつもよりもきつい締め付けに愛犬の腰の振りが早くなる。

「……きちゃ、ぅ。 いつもより――すごい、の――っ!」

うつぶせで背後から二穴責めで突かれながら快楽に溺れる雌。

「ぃ、ぐ……ィ、くぅ――!」

膣穴と尻穴、両方を犯す犬棒と触手をきゅうきゅうと心地よく締めあげながら女が達する。

同時に、膣内を犯す犬棒の先端からも種付け液が放出され――長い、長い射精を身震いしながら雌が受け入れる。
どくん、と震えるたびに、女の膣が締め上げようとするのが尻穴を通じて触手にも伝わってしまうだろうか。
……長い種付けを終えてすっきりとした雄犬は「空いたぜ?」とばかりに、愛液と種付け液が混じって垂れ流しひくつく秘所を男へと見せるように離れて壁際に伏せるだろう。

オドグ > 「そうだともミランダ。お前は犬ではない。犬ではないというのに、自ら進んで雌犬になった変態女だ」

呼吸するように魔女を侮辱しながら、肥満男は尻孔に突き入った触手を動かし続ける。そして犬に中出しされて二度目の絶頂を迎えた女を見下ろし、腹を揺すって笑う。

「くくっ!お前の忠犬の仕草、見せてやりたいものだなぁ。こいつ、ワシに使用済みマンコを譲りおったぞ?ほれ、締めろ」

犯されたばかりの魔女の巨尻を掴んだ肥満男は、犬の精液で満たされた膣内に、躊躇うことなく男根を挿入する。

太さは人並みでトゲが生えているわけでもないが、オドグのソレはとにかく長い。一突きで子宮口を押し上げた後、尻孔を掻き混ぜながらテンポよく腰を打ち付ける肥満男は、突き出された魔女の巨尻をぺちぺちと平手で叩く。

「ふむ。犯されたてにしては悪くないマンコだ。それともケツ責めが気に入ったのか?お前のような強気な女に限って、ケツほじりが病みつきになるものだからな」

下品な言葉で侮辱しながら、背の低い肥満男はすらりとした魔女の両穴を嬲り、「犯し心地」を品定めする。

「決めたぞ。ミランダお前、ワシの肉便器になれ。勿論、忠犬に抱かれるのは許すぞ。ワシは肝要な男だからな。分かったな!」

一方的な通告の後、肥満男はピストン運動を速める。贅肉たっぷりの身体がスタイルの良い女体に覆いかぶさり、長いペニスが幾度も子宮口を叩いた。

ミランダ > 「――――ぁ」

背後から注がれる言葉。
たしかに、自分で宣言したようなものだという言葉に耳まで真っ赤に染めてしまう。

尻穴への責めと犬の中出しで達してしまう身体。
休む間もなく――。

「は、は……ぁ……は、ぃ……」

快楽に堕ちてしまった身体では否定もできず。
挿入される熱い肉棒に顎があがる。
ひじはついたままだが、上半身が軽く起こされ、豊満な乳房が前後に揺すられながら背後から犯される。
男の打ち付けと同時に、犬の爪痕が痛々しく残る尻を叩かれれば、心地よさげに揺れるだろうか。
合わせるように女の腰も男の前後運動に合わせるように揺れるだろう。

「あ、ありがとう……ございま、す」

快楽に流されて思考能力が落ちる。
とろりと垂れた青い目が半身で後ろへ向けられ、覆いかぶさる男と顔が触れそうになる。
だらしなく垂れた舌が唇の間から覗くだろう。

「お尻、も気持ちぃ……でも、中、おま〇……こ。 なか、なかで……ぃぐ、また、ぃぐ――」

背後からの所有物宣言。こく、こくと何度か頷きながら子宮口を小突きあげる長い肉棒を肉襞を絡めて歓迎し――物欲し気に締めてしまうだろう。

オドグ > 「腰が動いているぞミランダ。お前は無類のチンポ好きだ。肉便器に打ってつけの本性だな」

魔女の尻肉をつまみ、軽く平手打ちを見舞いながら、長いペニスで膣内を抉る。銀髪に漂う女の匂いを胸いっぱいに吸い込んで、肥満男は力強いピストンで新たな「犠牲者」を追い詰めていった。

「くくっ!会ったばかりの男に犯されて出た言葉が有難うございます、か。良いぞミランダ。これから毎日ワシのチンポを突っ込んでやる。ケツにも挿れてやるからな」

所有物宣言からの、間髪入れずに両穴征服宣言。相手への労わりの欠片もない、女を性処理の道具としか見ていない、卑劣な肥満男の物言い。それを諫める者は、この部屋にはいない。

「犬チンポの中出しでイったのだから、ワシのチンポでもイかせてやる。出すぞ!マンコ締めろっ!」

ぱぁん、とひと際強く巨尻を叩いた後、肥満男は魔女の身体に圧し掛かり、体重をかけて長いペニスをねじ込みながら射精した。物欲しげに狭まる膣奥に、先程の犬の射精に劣らぬ量と濃さの白濁液を注ぎ込む。

ミランダ > 「だっ、て……きもちぃ――……肉便器、だなんて――」

肯定と否定と思考能力が落ちた頭では考えられずに口が回る。
しかし、否定の言葉の直後に矯正とばかりの平手打ちに小さく悲鳴が上がり。

「ぁ――は、ぃ。 肉便器、で、すっ――!」

都合の良い精処理道具、ベッドの上ではなく床で犯されるのはまさに道具としての扱われ方。
被虐心が芽生え、心地よさげにその宣言を受け入れてしまう。

一際大きなスパンキング。 掌の痕がくっきりと残ってしまうほどの力強さ。
起こしていた身体は、圧し掛かられることで雌犬らしく胸と一緒に床に押しつぶされた。

「ぁ、ぁ――なか、なか……ぃ、く――は、ぃ――!」

締めろ。という有無を言わせぬ言葉にきゅぅ、と啼くように肉棒に絡みつく。
両足は踏ん張る男の太腿の後ろへと回されて、さらに奥の種付けを求める。
すでに愛液と先走り汁と種付け汁がごちゃごちゃに混ざった結合部から跳ねた愛液がさらに床を汚し、射精の脈動を膣内から感じ取れば全身を震わせてそれに悦び震えるだろうか。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にミランダさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にミランダさんが現れました。
オドグ > 「ふうぅっ、良かったぞ?ミランダ。そうやってチンポを離さないでいるところなど、正にワシが求める肉便器だな」

中出しの後、両脚を絡められたままの肥満男が、平手打ちで腫れ、犬の爪で傷ついた魔女の巨尻を撫で回す。

「ポーション店は宴が終わるまで閉めておけ。チンポ好きのお前を立派なチンポ狂いに躾けて、匂いを嗅いだだけで股を濡らすように仕立ててやる。良いな?」

まるで当然の権利のように相手の生活へ口を出した男は、人と獣の精液で満たされた膣内を長いペニスで掻き混ぜる。

「昼も夜も、可愛がってやるからな」

魔女の身体に圧し掛かった肥満男がそう囁きかける間にも、膣内に入った長ペニスは活力を取り戻していった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からオドグさんが去りました。
ミランダ > 何度目かの絶頂に身体の力がぬけ、足を離さないように絡めていた力も抜けて浮いた腰が沈んでいく。
完全にうつぶせの状態となってしまい快楽の余韻に溺れる魔女。

労うような愛撫に蕩け切った青い目が覆いかぶさる男に向けられて。

「――ぁ」

所有物としての宣言を小さく頷くことで受け入れよう。

「……次は、せめてベッドで」

ちょっとだけ調子を取り戻してそんなことを言うけれども――生意気だとばかりに、このまま次は寝バックの姿勢で分からされたりするだろうか――。

まだまだ、「宴」までは日にちが残っている――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からミランダさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にジャックさんが現れました。
ジャック > 夏の熱気と人の熱気で咽せ返るほどに蒸し暑い大通り。
幾つもの飲食店に雑貨店に宝石店が並んだ軒先の一つの喫茶店は
涼を求めて、昼時の休憩に、書類仕事にと人が混み合っていた。
よく効いた空調で涼しく、くるりくるりと回るシーリングファンに木目の内装は涼しげで、
頼んだアイスティーは氷がたっぷり入って冷たいけれど氷で薄くならないように濃い目の味わい。
固定ファンも中には居そうな塩梅の一席でぐったりと暑さにへばっている金髪茶筅髷。

「年々酷くなってる……ぁ、はい、はい、どーぞどーぞ困った時はお互い様っすぅ……」

自分がまだ五つになったかならないかぐらいの頃も暑いは暑いがこうまで暑くなかったような……
等とお天道様に文句たれても仕方ない事だけれどついつい文句も零してアイスティーを啜っていた折。
店員から、お客様の混雑具合的に相席をお願いするかもと言われると嫌な顔もせずこくこくと頷く。

「さーせん、ついでに注文おねしゃす、えーとこのオムライスを特盛でこのサラダ付けて……」

メニュー表を開くと、アイスティー一杯でじっくり粘るのも悪いからついでに昼飯も食おうと注文。
あれにこれにそれにそれも……と結構な量を頼んでから、また背凭れに背中を深く預けてだらけた格好に。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にギンジョウさんが現れました。
ギンジョウ > 熱気熱気熱気。

いや本当に勘弁していただきたいものである。
ぱたぱたと着物の胸元を扇ぎながら店の扉をくぐった。
あんまりにも暑い、酷い暑さである。
そんなことを考えながら女は店員に「一人です。」と声をかける。
いつの間にか混雑していた店内。
先に来ていたらしい金髪茶筅髷の男性…もう少し若い、少年の居るテーブルに歩み寄っていき、
申し訳なさそうに相席になるとのことを告げられた。

「私は全然構いませんよ、すみません、相席させていただいてよろしいですか?」

しっとり汗ばんだ肌に張り付く髪を撫で付けるようにして払いながら、
にっこりと女は微笑んで、
そう金髪茶筅髷の少年に小首をかしげて尋ねる。

ジャック > 酷暑を、茹だるような暑さというが比喩ではなく事実茹で上がってしまいそうな暑さ。
道行く人達も多くは額に汗しており冷えた店内に入った折には爽快感を多く伴うだろう喫茶店内。
幾人かの、或いは幾人もの男達が入ってきた女に季節柄とは違う意味で熱を上げた。
少年の方はそろそろ机に突っ伏しそうな勢いのところ運ばれてきた食事に目を取られてそれどころでなかったが
声を掛けられて『ん~?』とそこでようやく目を向ければまずやはり美貌に目が向いてちょっと目を丸くした。

「あら美人さん。て、失礼、どーぞどーぞ」

ごちゃごちゃと机の上を占拠していた昼飯の群れを自分の方へと引き寄せ対角線上を空けた。
べったりと背凭れにくっ付いていた背中をしゃんと伸ばして、だらしなく空いていた足も閉じて。

「すんませんね、ちょーど昼飯食おうと思ってたとこだったんで」

向けられた笑みに口端を釣り上げながらに頷いて、机をかなり占拠している事に謝罪しつつ、どーぞと掌で促す。

ギンジョウ > ゆで上がるようだと、口にしていれば女も頷いていたことだろう。
それほどに昨今の熱気は本当になんと言えば良いのか、異常ともいえそうなものだった。
爽快な涼やかさを持つ室内に足を踏み入れれば、ふは、と心地よさから思わず熱っぽい吐息を吐き出してしまった。
その様にも、きっと周りの男たちの熱気が上がったことだろう。
中には下卑た意思を持つ視線も混ざっていたことだろうが、さすがの女も今はそれの相手をする気力は無かった。
此方を見る少年の眼が丸くなるのを見て、女はまたにっこりと微笑んだ。

「うふふ、お上手ですね。ありがとうございます。」

途端、背筋をしゃんと伸ばして足を閉じる様子を見れば、
それでは失礼します、と向かい側の椅子に腰を下ろす。

「ふふ、いいんですよ、そんなに畏まったようなことしなくても。
 お見合いするわけじゃないんですし、お互いに楽にしませんか?」

冗談めかしてそう告げると、その方が嬉しいです、と笑って首を傾げて見せる。
そして自分はアイスティと軽いサンドイッチを注文する。
正直に言うと、食い気を満たしても別の欲が頭をもたげるのだが、
まぁ、今はそれは見て見ぬふり、目の前の少年も見た目がとても整っていて、
個人的に目の保養になっている…なんてことはさすがに口には出さなかった。

ジャック > 見目も格好も仕草も、吐息一つも色っぽい女には男なれば反応もするし邪な考えを抱くものもいる。
内幾人かが『坊主ちょっとそこ代わ……』等と言いかけて止まったのは少年の傍にある得物を見て、だ。
座席に無造作に転がされているがいつでも手に取れる位置にある、柄が握り込まれて変色した、刀――
女は欲しいが刃傷沙汰は御免という事だろう、踵を返した連中を一瞥程度してから溜息をつく。

「お世辞なんか必要ないぐらい美人さんだよ、にしてもそう器量良いと大変ね」

ああいうのが寄ってくるから、とは席にすごすご戻っていった男共を言って肩を竦める。

「んはは、お見合いて。でもまあほら飯食うにもあんな格好じゃあ、まして人がいる前じゃお行儀悪すぎるから」

品のある笑みと小気味いい冗談にからからと笑い声を上げ
“お行儀の悪い格好”を止めて手をひらりひらりと振る。
いただきます、と両手を胸の前であわせて早速スプーンでオムライスを掬えば大口開けてもりもりと食べ始めつつ。
彼女も昼飯を済ませにきたのかお茶と軽食を頼んでいるあたりでふと、そこでようやく、顔より下に目がいく。

「おねえさん、北方の人? えーとなんだっけかそれ、き……き……」

もぐもぐもぐもぐ。ごくん。
口から卵やらソースやらチキンライスが飛び出さないようにきちんと咀嚼し飲み込んでから
襟を合わせて重ねた衣を大きなベルト……帯といったかで留めた異国の格好。
しかし肝心の主体の名前がどうにも思い出せずに首を捻る。

ギンジョウ > 傍らの得物を見ればさすがに余計な手出しをする人間もいまい。
周りの男たちには、とりあえず愛想笑いを返しておく。
にっこり微笑んで、「引っ込んでいてくださいな。」とばかりの圧。
女も女とて、一応は冒険者、簡単に怯んだり悲鳴を挙げて男の後ろに隠れるようなもんじゃない。
そんなか弱い精神じゃやっていけないからだ。

「うふふふ、そう言っていただけて嬉しいです。
 なんだかご迷惑をかけてしまったみたいですね、申し訳ないですが…。」

男たちが席に戻っていくのを見て、やんわりと肩を竦めてしまう。
自分一人ならまだしも、たまたま相席しただけの少年に迷惑をかけてしまうのは申し訳ないのだろう。

「ん?ああ、着物のことですね。
 ええ、私も北の方…シェンヤンの方の出身です。
 といっても育ったのはこの王都なんですがね。」

そう話している間にそっとお茶と軽食を運んできてくれた店員を見てお辞儀を返してから、
そっと両手を合わせて「いただきます。」と野菜と卵のサンドイッチに噛り付く。
珍しい服装で視線を引くのも、目立つ顔で視線を引くのも、慣れているからか、
それでも不躾な感覚を覚えないからか、微笑みを崩さずに頷いて見せる。
元気そうに、でもちゃんと丁寧に食事を済ませながら問いかけてくる少年には、
思わず微笑まし気な笑みを浮かべてしまう。
こういう感情を抱く様になったのは年のせいだろうか…いや、まだそこまでいってないと信じたい。

ジャック > 顔は笑っているのに雰囲気がまったく笑っていない圧ばりっばり放つ女性と、見目は頼りなくも見えるが物騒な刀携えている少年、この一組に手出しするのは止めておこうと声を掛けようとした者はもちろん伺っていた視線が次から次へと引っ込んでいく。

「へーき。慣れてるよ、多分同業者だしさ。
 冒険者やってるジャック・ダニエル。
 んはは、覚えやすい名前だろ? どっかで同行することあったら宜しくなー」

気が強いのみじゃない彼女の雰囲気からして“同業者”なんて単語が出る。
所属が同じかは定かではないが稼業が同じなら何れ……という事もあるから軽く自己紹介。
北方でいうならイチロウ・タナカ的な名前を冗談めかして
『あ、偽名じゃねえんだなこれ本名なのよ』
等と偽名臭くもあるから断り入れつつ名乗り。

「そう、そうそう、キモノ。
 やっぱシェンヤンの人か、ああ、なるほどなるほど、どうりで王国語すんげぇ上手いと思った」

己の食事の合間合間に、彼女の食事の邪魔をしない程度にぽつりぽつりと雑談を交わす。
着物といわれて思い出したと手と手をぽんと叩いたりしながら視線の多くはその美貌に。
汗ばんだ首筋に艷やかな黒髪がしっとりと絡んだところ、広げた裾から伺えるたわわな実り、等に
目が落ちそうになるところないでもないがそこは眼筋に活を入れてなるたけ上の方に固定している。
目の保養とこっそり思われていた鋭利な線が多い顔付きをくしゃりと上機嫌に弛めつつお話していたら

「ん? んふふ。ふふふふふ。いやごめん、何かさぁ、時々お姉さんったら俺の事見る目がさ?
 年の離れた弟見るみたいな感じになってっからちょっと面白かった。
 ……いや俺そんなガキっぽかったかなーと思うとこないでもないんですけどぉー。“おねえちゃん”のいじわるぅー」

彼女の此方を見る目が、なんて話にも及んで、おかしそうにまた笑い声が上がって肩が揺れて。
後半わざとらしいぐらいに頬を膨らませては“おねえちゃん”などと身内の人みたいな呼び方で拗ねたふり。
口元も目元もずっと笑ったままの形だし口調も仕草もわざとらしいし、直ぐに怒っても拗ねてもないだなんて解るだろう。

ギンジョウ > 圧である。
こちら見た目ほわほわしているようで舐められやすい性質ゆえに、
多少なりとも自分の身を守る術は身に着けてきた。
視線が引っ込んでいくのを肌で感じながら、クスリと微笑みを浮かべる。

「それなら良かった。
 でも食事のときくらい静かにしていて欲しいものですよねぇ。
 ん、ふふ…、確かに覚えやすいですね。
 私はギンジョウ、こちらこそ同行することがあったらよろしくお願いしますね。」

王都で過ごした時間の方が長い身、彼の冗談めかした言葉に、
クスクスと笑ってはこちらも自己紹介を返した。
偽名であっても特に困ることは無いと思っていたが、
そこを念押しするように教えてもらえれば口元に手を当ててころころと笑い声を漏らす。

「ええ、ふふ、そう言っていただけると嬉しいものですね。」

シャキシャキとしたレタスとしっとりした卵と、そして少し硬めのパンを合間合間に咀嚼して飲み込みつつ、
視線を浴びればこてん、と小首をかしげて見せる。
艶ッとした黒髪が首筋に絡むのを指先で払いつつ、やがて薄いグラスに注がれた冷たいお茶の香りを堪能してはのどを潤す。

というところで、少年の言葉を聞いて思わずこほんっ、と小さく咳き込んだ。

「んっ、ふふふふ……。
 はは、吃驚した、おねえちゃんですかー。
 ジャックさんみたいな可愛らしい弟君ならいつでも欲しいところですねぇ~。」

ワザとらしい頬を膨らませた少年の言葉に、ころころとまた笑い声が漏れる。
怒っても拗ねてもいないのは分かっていたからこそ、
女は口元をナプキンで拭いながら、本心からの言葉を漏らすのだ。
可愛らしい冗談を言う少年剣士の姿、可愛らしく見えるのは嘘じゃない。

ジャック > 一昔前には大層流行りすぎて今時ありきたりすぎて廃れて久しく偽名扱いの“ジャック・ダニエル”。『何なら今時こそインパクトあるんだぜ!』等と無駄にドヤ顔からの無駄にキレのある動きまでしてサムズアップ。ころころと鈴が鳴るような聞き心地のいい笑いに、からからとまた通りのいい声質がよく通る笑い声を上げ、彼女の名乗りにも一つ頷き何度か口の中で繰り返してから覚えた。

「うん、育ちも王国ってだけあって喋りも訛りも普通に王国人ぽいよ。
 キモノ、着物か、何なら気付くの遅れて良かったまであるな……
 北方語はちょっと見たことあるけどまぁさっぱりわからんかったから」

すぐに装いに目が行っていれば髪の色目の色からして外国人かと勘違いしさぞ慌てたに違いない。
と、自信ありげに言う事じゃないけれど自信満々な様子で何度か頷いている。
オムライスやらサラダやらスープやら海老の揚げ物にポテトのマッシュに……
口から飛ばさないよう喋っている合間合間でも一口が大きいからそのうち皿は空に。
店員さんに下げてもらって段々と机の空き容量が増える中
残ったアイスティーを啜っていけばこれももう半分以下。

ふぅ、と一息ついて。

「んっふっふっふ。
 いや俺長男だから上がいるってなんか新鮮だなあ。
 じゃあ、ギンジョウさん、おねえちゃんってやっぱ呼ぶわー。
 あ、おねえちゃんか、ギン姉か、どっちがいい?」

お茶で潤うとより艶やかでさえある口元を指しては突っつく真似をして
意地悪に拗ねた弟の悪戯みたいな仕草。
悪ふざけにも可笑しそうにのってくれるものだから
“おねえちゃん”呼びが止まらないし二択まで出てきた。

ギンジョウ > どんな名前であっても、きっと彼にとっては大事な名前なのだろうと思えた。
そうでなければ彼の様に胸を張って微笑んで言う事は無いだろうと。
サムズアップまでしっかり添えられれば、「良いお名前です。」と心からの言葉が漏れた。
通りの良い笑い声が帰ってくれば、ふふ、とまた小さく笑んではちゅう、と艶っぽい唇がアイスティのストローを咥えた。

「そう言っていただけると…。
 もちろんシェンヤン地方も好きですが、私個人、王都に馴染みがありますのでね。」

ちゅー、とお茶を飲みつつ、色々な食事が彼の胃袋に消えていくのを感心して見つめる。
やはり年頃の男のこと言うのはよく食べるものなのだなァと。
こちらも彼の食自テンポに合わさる様に、サンドイッチを平らげて、
残ったアイスティを飲み干していくに至るだろう。

空腹はこれで納まるが、別の欲が頭をもたげるのだった。
いや、さすがに食卓でそれを言葉にするほどの不躾さは持っていなかった。

「あら。うふふふ、それじゃあギン姉の方がいいですかね。
 私もこの名前、結構気に入っているんです。」

口許を指して突っつく真似をされれば、
悪戯にその指先を咥えるように浅く開いては赤い舌を覗かせてみせるだろう。
おねえちゃん系の呼び方二種類を選択肢として突き出されれば、
自分の希望を言いながらじゃれ合うことだろう。

ジャック > お世辞抜きの心からの褒め言葉だということが彼女の微笑みの柔らかさと瞳の柔和さからよくよく伝わる。
席を奪おうとした男共に向けたややきつめの眼差し以外はずうっと機嫌が良さそうな笑みはそれで増々
『んへへへ……♪』なんてちょっとだらしないという域まで差し掛かっていそうな緩々っぷり。

「シェンヤン、一度は行ってみたいんだよな、何分まだこっちでもぺーぺーで先立つもんもないからまだまだ先の話だけど。
 ……あ、そうだ、依頼で同行云々とはいったけどギン姉に北方語教えてもらうのもありかも」

燃費がいいのか単純に食が細いのかそれともはたまた別の理由か。
己はこれだけ食ってもまだ空きがあるぐらいだが彼女は軽食一つで満足そうな様子に
『よく足りんねそれで?』とかこちらはこちらで別の意味で感心しながら首を傾げた。

別の食欲がそそられているせいなのは素知らぬ事だが先程から一層増していく色気。
ストローを咥える唇がどうにも蠱惑的であるし、ふと突こうとした指に絡みそうな赤い舌……
ともすればぱくっといってしまいそうなほどうっかり近づけてしまってから慌てて引っ込めて。

「ギン姉のもいい名前だよねぇ、口にした時に口にしやすいい響きがいいもんよ。
 ふふふ、しかしまさかお姉ちゃんが出来るとは思わんかったよね、しかもだよ、
 年上の色っぽいお姉ちゃんとかもう弟的には堪らんので今度弟達に自慢してくる。
 ……あと妹達にも、もうどいつもこいつもお転婆でさぁもうほんとさぁ……」

気恥ずかしいやら、色っぽすぎてうっかりすると中てられそうになるわの色気にちょいとどきまぎ。
頬とか耳とかを僅かばかり赤らめてしまってアイティーと空調で十分冷えたはずがまた火照りはじめた顔を手団扇で仰ぐ。
彼女の色気の百分の一でいいからお転婆爆発の実際の妹達も見習ってくれないもんか、とは大家族の長男の悩みもぽろり。

ギンジョウ > 家族らしい家族を知らぬ自分でも、自分の名前は心地よいものに感じるものだ。
もちろん人に寄っては例外もあるだろうが、それでも心地よいものであるに越した事は無いのだ。
ちょっとだらしない、と彼が思うであろう笑みを見て、ふふふ、とまた満足げに笑うのだった。

「あら、私で良ければいつでも、個人レッスンしますよ?」

ぱたん、と再び両手を合わせて「ご馳走様」を済ませると、
彼は一杯食べるんだなァと思っていた自分に逆に問いかけられれば、
「私は普通だと思っていたんですが…。」と小首をかしげてしまう。

ちゅ、とストローから唇を離し、
指先がその唇から離れていくのを見れば、あら、と肩をすくませた。
ちょっと残念、という風に色気を帯びた笑みを見せて。

「ふふふ、きっとその弟さんも妹さんも、優しくて素敵なお兄さんが居て嬉しいんですね。
 お転婆なところを見せられる相手なんて、中々いませんからねぇ。」

ちょっとドギマギしている様子の少年にクスリと微笑むと、
ちゅう、とまたストローに吸い付くのだった。

「でも、私みたいになるのはあんまりお勧めできませんね。
 誰でもイイと思われやすいので。」

そんなこと無いんですがねぇ、と、小さく肩を竦めた。

ジャック >  
「そりゃありがたい、今度お願いしようかな。
 あっと勿論ちゃんとお礼はするから安心してくれ」

食後の礼を掌ぱたんと合わせる作法は奇しくも同じ。
王国風だと指を重ねて組むほうが一般的だがダニエル家はどちらかといえば北方式らしい。
少食だと指摘したら不可思議そうに首を傾げられたものだからまた喉と肩どちらも揺らし
『俺なら餓死するぐらい少ねぇって!』なんて笑った。
個人レッスンの件は言葉通り実に嬉しそうながらも金銭の件はご安心とはまたサムズアップ。
いかな“姉”でもそこらを無料にしてもらうのは不義理が過ぎる。

「ん~。ん゛~~~……! 信頼の形といえばそりゃあ聞こえはいいんだけども見たらびっくりするよ? マジで。
 今度紹介させてくんね? そしたらわかるしあいつ等もちったぁいい影響あるんじゃねえかなぁ」

その唇に、その舌に、ぱくりと咥えられてぬるぬると舐め回されでもしたらさぞ気持ちよさそうな……
指だというのに悦があるのだろうと感じさせる蠱惑さと差し出したらそうしてくれそうな色香にまたどぎまぎだ。
丸わかりな照れ隠しにがしがしと金髪を掻いてみたり視線を反らしてみたり。

「ギン姉みたいになるのは絶対無理だから、あいつ等。うん。絶っっっ対無理。ほんっっっと無理。
 ……あ~~~。さっきのみたいな? ほんと困るよな。あ、ギン姉これから何か予定とかある?
 なんだったら帰るとかなら近くまで送るよ。俺もナリはこうだけど得物があるしちったぁ威嚇になるだろ」

彼女みたいな色香を振りまくような美女に妹達がそうなるのは天地がひっくり返っても無理だと失礼千万なことを嘯きつつ。
ぽつり漏れた悩みに首をひねったのも僅かで思いついたのは簡単な護衛。
刃物持ってる相手が居れば帰り道ぐらいは安全だろう、と。

ギンジョウ > 「うふふ、そんなことにお礼何ていりませんよ。
 むしろ今日、楽しい時間を頂いたお礼にしたいくらいです。」

今日の喫茶店は当たりだった。
食事とお茶の美味さに加え、とても素敵な出会いがあった。
笑う少年を前に、む~?と小首をかしげる。
男女差もあるだろうが、育ち盛りとそうじゃない者とで多少は差があるだろう。
けれども、個人レッスンと言えど、素人の教えに金銭をもらうのは…と思ってしまった。
そこはあれ、この素敵な出会いで帳消し…にならないだろうか。

「んふふ…可愛い。
 ええ、それはもちろん。
 私もお会いしてみたいわ。ジャックさんのごきょうだいに。」

丸わかりな照れ隠しを見れば思わず小さく本音が零れ落ちた。
いっそこの場所でその薄い唇に噛みついてしまおうか。
そんな欲が零れ落ちるほどに。

「ふふ、そう油断していると意外とそうなってしまうかもしれませんよ?
 “お兄ちゃん”としてはとても心配になってしまうかもしれませんねぇ。
 ん?予定はありませんけど……あら、そこまでしていただくのはさすがに申し訳ないですよ。」

それ、妹さんたちに失礼じゃ?とも思えるわけで。
そこに簡単な護衛の約束を申し出されれば、
うーん、と首を傾けつつも、ちょっと嬉しいかもしれないと思う気持ちがあるわけで…。

この場合、送られ狼になりそうだけど。

ジャック >  
「え? いやでもタダってのは流石に悪いし、うーんよし、わかった、何か考えとく今思い浮かばん。
 あと、そりゃお互い様だよ、ふふ、俺も楽しかった」

肩でも揉むか? 腰とか? 掃除とか洗濯とか炊事とか~……? 云々金銭以外のことを思い浮かべて結局後回し。
出会いのお礼と聞けば今日一番なんじゃないかってぐらいの大きな笑い声を上げて首を振り頭を振り手を横に振る。
自分だって楽しかったしそこはお互い様である。

「男の子に可愛いは褒め言葉じゃありまぇーんぅー。嬉しくない、事はない事もないけどぉー! 
 じゃ、今度紹介するよ、ほんっと、吃驚すること請け合いだから楽しみにしててくれ」

可愛い、等と聞けばまた膨れっ面をして見せるのだけれど振りはもう数秒保たずに解けて笑い顔に。
喉をしきりに慣らしてはお転婆娘のお転婆具合と元気爆発な弟達にはびっくりするぜ、と可笑しくて声を震わせ。
若干引き始めたもののまだ熱みがあって赤みが引き切らない頬といい耳といい、若干高鳴った心音といい、
色香についくらっといきそうになるところを雑談で誤魔化しているところもあるから……
ぱくっといけば、ぱくっといかれそうなぐらい無防備な唇ではあった。
男殺しの美女とはいうがこれはこれで彼女殺しの唇かもしれない。

「そ、やっぱお兄ちゃんとしては心配でさ、あ、“弟”としても心配かな?
 なーに全然迷惑じゃねえからギン姉さえよけりゃ暫くついていかせてよ。
 もし何かあったとしても正直魔物とかよか人間相手のが得意だしな、はっはっは」

これ使うまでもねぇだろ、とは刀の柄を指でこんっと弾いて見せるあたり喧嘩の腕にはそれなりに自信ある模様。
送られ狼の可能性なんてとんと考えちゃいないとろは危なっかしいが、無邪気なぐらいに護衛を張り切っている。
アイスティーも飲み干してしまえば、会計票を手にとって立ち上がり、件の刀も腰のバックルにベルトでぱちんと小気味よい金属音を立てて留めた。

ギンジョウ > 「いいんですよ、こちらとしても中々使わない言葉を忘れないようにするに丁度良いですし。」

クスクスと微笑みながら少年の頭を撫でるように手を伸ばす。
もちろん年頃の少年として、嫌がられればすぐ手を引っ込めるつもりで。

「あら、ごめんなさい。
 でも女の人から見て可愛いは褒めているつもりなんですよ。
 それは楽しみ。私きょうだいは居なかったから、楽しそうな家庭にお邪魔するのも初めてなんです。」

ふくれっ面をしている少年にクスクスと肩を揺らして、
いつかお会いできる彼のきょうだいたちの話を聞けば、
それはそれは楽しそうに目を細めるのだった。

それでもどこか赤らんだ顔も可愛らしく見えてしまうし、
テーブルに肘をつきながらその様をじっと見つめてしまうのだ。
ぱくっといきたい気持ちがあったのだ。

「ん、ん-…心配して欲しいのは別のところなんですが…。
 でも、そうですね、折角ですからお言葉に甘えちゃいましょうか。」

刀を持って見せる彼の姿が頼もしい。
送られ狼の危険性を考えていない所が危なっかしいけども、
無邪気な護衛の様子にはまた銀色の瞳を細めるのだ。

アイスティを飲み干して会計票を取って立ち上がれば、
そっと彼の横に並んで、少しだけ小さなその肩に身を寄せ、
ふに、と柔らかい身体を触れ合わせるようにして見せることだろう。

周りの男たちに見せつけるように。

ジャック > 伸びてきた掌にくしゃりと金髪が触れる。茶筅髷にしろ、括るために流してある髪にしろヘッドバンドで抑えて尚あっちこっちがピンピンと跳ねていて硬そうで事実硬めの髪質であるが触れてみると手触りは悪くない。癖っ毛すぎてどうしようもないが手入れはきちんとした艶色であることが伺えるだろうか。“可愛い”とあわせて子供をあやすみたいな仕草に、ふーんだ! 等と拗ねているがもう口ぶりばっかりで口元さえ拗ねのふりができていなかった。

「なーんか! 釈然としない! 最近会う人会う人年上が多いけど人ん事ガキ扱いして!」

彼女を実家に招く折には手紙の一つでも寄越してあって大層歓迎と……『ねーちゃんすげー色々すげー』という弟達の歓声、『……これが大人の女……おっぱい……おしり……!』という妹達の妬まし成分含んだ驚愕の声音と、『ついにうちの息子にも春が……』という手紙に書いてある内容勘違いした父母の感涙という9人規模の騒音で包まれる事になるのは、後の話。長男から弟に繰り下がった少年はじゃれ合いながら一応、本当に一応程度に、彼女の弁明に抗議を上げつつその無防備極まる唇といい顔といいは彼女が身体を寄せれば一層近く。

「じゃ、行こっか、ギン姉」

心配は別のところに? 何てまるで解っていない様子で首を傾げながら腕を組む。
見せつけるような様相に周りからは引っ込んだはずの視線がぎらりと鋭さを増すが

「はっ」

あからさまなぐらいに笑ってから二人連れ立って会計を終えれば、店の外に。
……先は、唇が近づいたぐらいであれぐらいどぎまぎしていたのに今は……
等という疑問も浮かぶかもしれないが浮かんですぐに解消されるだろう。
一生懸命、頑張って、余裕そうな顔を作っているだけで組んだ腕と近づいた胸板からは
細身がちな体型なわりに鍛えた形跡のある締まった筋骨の向こう側から心音がよく聞こえるから。
どきどきどきどき。
とそれはもう早鐘を打つ音がよくよく彼女の体躯に響くだろう。

「……い、い、い、行こかぁ。ギン姉ぇ」

帰路。人混みに紛れながら人混みに紛れそうな声音でどもった声音の少年は、おそらく。
彼女の塒に着いて、それじゃあ、と別れる前に引っ張られたらそのまま引っ張り込まれるに違いない。

ギンジョウ > 金髪が揺れて、その髪を乱さない程度になでなでと撫でる。
硬そうに見えて、実際硬めの髪質だが、手触りがとても柔らかくて心地よい。
拗ねているような雰囲気でも拗ねてない口許を見て、クス、とまた小さく微笑んだ。

「あら、可愛がりたくて仕方ないってことですよ?
 子供扱いって言うけど、大人になったら子供には戻れませんから。」

彼の家にたどり着いたときには色々な歓声と妬み交じりの驚愕の声に、やがて父母の感涙ととんでもないものに包まれただろう。
それを見てとても楽しげに笑う彼女の姿もあったことだろう。
そして彼のきょうだいたちときゃっきゃと戯れたりもすることだろうし、
きょうだいたちを抱きしめたりしてとても楽しい時間になることだろう。

「うふふ。」

ぎゅっと寄り添った身体、季節柄薄布ともいえるそれ越しの柔らかい感触が少年にも伝わるだろう。
余裕そうな姿を頑張って取り繕っている少年の姿がまた可愛くて、
こつん、と頭を彼の頭に寄せて、まるで付き合いたてのカップルの様に戯れながら歩き出すだろう。
そこで聞こえる脈動、とても心地よく身体に響くのだった。

「ええ、行きましょうか…♡」

帰路に着く間に少年の声が上ずっているのを感じながら、
それはそれは楽し気な女の声が響くことだろう。
そして最終的にはぐい、と袖を引っ張って、物陰に。

甘い甘い時を過ごしたに違いない。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からジャックさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からギンジョウさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 安酒場」にグリードさんが現れました。
グリード > 立ち飲みの安酒場、酒樽をテーブル代わりに道路端で飲む冷えたエールは心地よく喉を潤す。
空調を効かせず、安く済ませるという意味では理にかなった提供スタイル。店外で飲むのもたまには悪くないもの。

「くぅ…… はぁ、やっと洗い流れていくわ。やっぱこれに限るな。」

豪快に煽り、最初の一杯をほぼ二口で飲み切ってしまえば、給仕へ手を上げてもう一杯、と。
肴に提供された茹で豆を、口に運びながら。店内も立ち飲みスペースも程々に賑わうこの時間は、一人過ごすには少々寂しいものの、
余計な事を考えず、酒にだけ向き合えるそれはそれで貴重な時間。

二杯目が程なくして届き、それは流石に一杯目とは異なり、少量ずつ楽しんで行く。
目の前を行き交う人の流れ、それが各酒場や夜の店へ吸い込まれるその様を眺めながら。

グリード > 人通りも引き始めた宵の口。何杯目のエールになったか最早覚えても居ない。
少しふらつく足元をなんとか支えながら人気の減った街中を一人歩く。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 安酒場」からグリードさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/冒険者ギルド」にネーラさんが現れました。
ネーラ > 昼のことである。
砲弾を伏せたようなシルエットである。それがギルドに入来してきた。裾から褐色の足と、ウェッジヒールサンダルが覗くので、女性かなというのはわかる。
全身を覆うケープ。首の付け根の辺りから張り出して突き出た胸の傾斜のせいで、なんだかずんぐりむっくりして見える。
おまけに目深に被ったフードで顔立ちもわからない。

この酷暑である。

「…冷気付与式ローブ、上々の出来じゃな。」

今日はご依頼の申込みですか?とギルドの職員に聞かれる。
なおこの職員は男性だが、自意識が男性の同性愛者なので彼女の魔性には全く刺激されない。

「いや、暑すぎて客が来ぬのでな。人間観察に参った。」

ふぃー、と息を吐いてカウンター前のソファに座る。
往来する冒険者たちをみている。
病魔の力による第六感でだいたいみんなの体調を把握している。

「水不足に風邪か。未病じゃな…ほう」
ギルド職員を、マントの隙間から褐色の腕を出して差し招き。
(ひそひそ。あやつ、よくない病気を持っとるぞ。みたところ梅毒じゃぞ。はよう病院に繋げ。みただけではわからんぞ。)

世の乱れ、性の乱れの影である。

もう少し色ごとをタブーにしなければ、こんなに病が蔓延ることもあるまいに