2025/07/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に アメリア・ストライデンさんが現れました。
アメリア・ストライデン > 平民地区の片隅の小さな喫茶。
普段は朝の早くから店を開いている事が多いが、この日は珍しくお昼のころ合いを過ぎてから。
なので普段はいるお昼を食べにくる客もいない閑古鳥状態。

そんな店内でカウンター席で肘をついてのんびりとし。

「今日は本当に遅くなったから……お客さん、来るかしら」

来なければ来ない、それで終わることではあるが趣味の店でも来てほしいと思うのは当然。
ただ店を開けるんが遅かったのも事実なので、今回ばかりは高望みはせず。
繰れば御の字、そう考えては店内で新メニューを考えて時間をつぶし。
暑さを感じれば店の隅に置く魔道機械に魔力を注いでは室内を冷やして。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアードルフさんが現れました。
アードルフ > 今しがた王都についた船より降り立った男。背負い袋をパンパンに膨らませ長い船旅で凝った身体を解すように大きく背伸びを一つ。
そしてそれに呼応するようにして鳴るのは腹の虫。

「まだ……やってるか……?」

街中の時計を見上げ既に昼食と言うには過ぎた時刻。ダメ元で向ける足、太陽に照らされ前より浅黒くなった肌にじんわりと汗が浮かんだ。
そうして辿り着いた店の前、窓から覗き込むと見知った姿が一人、双眸を細め口角が自然と吊り上がるのは、帰ってきたことを実感したためか。

「まだ、やってるか?」

背負っていた袋を足元に、扉を開けて主へと問いかける。
室内の冷たい空気が心地よくて、開け放しはよろしくないだろうと後ろ手にその扉を閉めた。

アメリア・ストライデン > もともと趣味の店なのでお客が来なければ閉めるのも自由。
近場で適当に薬草を採取してポーションでも作るほうがいいかもしれない。
そう考えて椅子を立とうとした所で鳴るドアベル。
お客かと思い視線を向けると知った顔がいて。

「いらっしゃい、いいタイミングだったわよ」

ちょうど閉めようと思っていたがお客が来たなら話は別。
カウンター裏に回って接客のスタイルとなり、空いている席にどうぞと進めて。

アードルフ > 随分と街を開けた気がする。それ故に見知った顔を見るだけでどこか安心するのだから不思議な物。
いいタイミングだと、カウンターの内側へ回る姿に、彼女が座っていた場所へ変わる様に腰を下ろし。重い荷物を足元に、その中から一つ取り出す細長い箱。

「とりあえず……なんかこう、出来立てって感じの物をくれないか。
長い船旅は乾きものしかなくてな……。」

もう、干し肉や硬く乾燥したパンは懲り懲りだと肩を竦め注文する。
そして取り上げた箱をカウンターに置くと。

「それと、アメリアにお土産だ。東の国で使う、風扇ぎだそうだ。」

木製の骨組みに薄紫色の紙が張られた所謂扇子の類。旅先でふと、思い出して買ってみた。そう、ただふと。

アメリア・ストライデン > そういえば最近顔を見ず、店の前を通っても開いていなかったなと思い出し。
てっきりタイミングが合わないだけかと思っていたが、荷物を見るにどこかに行っていた様子。
この街は犯罪やそれに伴う失踪もあるので無事でよかったと思うことにして。

「難しい注文ね、それ……文句は聞かないわよ?
船旅って遠出してたのね」

船上だと干し肉や硬いパンは当たり前、運が良ければ新鮮な魚が出るかもしれないがそれは運しだい。
そんな話と注文を聞けば、簡単にできるものと考えては材料を取り出し料理をはじめ。

「私に?ありがとう、大事にするわ」

カウンターに置かれた箱、それを料理の手を止めて開けてみれば木製の東の国の扇子といわれるもの。
色合いも好きな色でセンスもよく、笑みを浮かべてありがとうと口にすれば箱を閉じてカウンター裏に大事にしまい。

そしてタイミングよくできた料理、オムレツをパン、水と一緒に小さなトレイに乗せて男の前にと置いて。

アードルフ > 「この注文を聞いたうえで干し肉に乾パンを出してくる。って事が無い限りは言わないって……。」

そういう悪戯をしそうではあるが、流石に乾パンを常備するのは現実的ではないだろうから。
安心してその料理をする姿を眺める。カウンターの醍醐味、
鼻腔を擽る卵と油の香り、乾パンと同じ素材と思えぬ程にふっくらとしたパン。
それが目の前に置かれれば、頂きますの手合わせすら惜しんだ。
雑に切り、パンに乗せて頬張る。この1ヵ月程感じなかった素材のうま味。暖かな温もりに俯いて、目を閉じ浸る。

「────!!! あぁ……これだよこれ、こういうので良かった……。こういうのが良い。」

一通り大袈裟と言えるほどの感激を味わって、半分程夢中になって口に運んでから、水を飲んでようやく一心地。
はぁ、と天井を仰ぎ見るようにして長い吐息を零すと、目尻からツゥ、と一筋雫が落ちた。

「そうしてくれ、流石にもう東の国へは懲りた……。いい酒も、料理法も仕入れはしたが流石に長い。」

思い出してまたげんなりと、感動したりげんなりしたり忙しい。そんなこんなで皿の上を綺麗に平らげると、満足げな笑みと共に。

「ありがとな、アメリア……。今最高に帰ってきたって気がする。」

見知った顔、手料理、トレイを端に避けてからカウンターに腕を伸ばし背伸びを一つ。それから、カウンター越しの相手を見つめて……

「帰ってきたのを実感したい、アメリア。」

そんな風に告げて両腕を広げてみようか。まだ店はまがりなりにも営業中だというのに。甘ったれた顔をして。

アメリア・ストライデン > 「そういう注文をすれば出てくるわよ?」

悪戯ではなく注文なら、とカウンターの隅に置かれたメニューに目を向け、そこには一番上に最安メニューで干し肉と黒パンが書かれている事実。
男の注文は簡単そうで難しいものであり、どうにも温かい食事に飢えているようなので簡単なものに決め。
普段は卵2つのオムレツだが豪華に3個にして焼き上げ。
それを提供すれば食べる姿を眺めて。

「次に行くときはお金をかけたらどう?いい客船ならそれなりのが食べれるわよ」

少なくとも干し肉固いパンではなく、豆のスープぐらいは付くと話し。
大げさに食べ進めていると思えば、今度は涙を流す様子にそこまでかとみてしまい。

「遠い国ほど乗り継がないと旅は過酷になるのが多いわよ…」

げんなりとした顔に割に合わなかったのねと同情し、綺麗に食べてしまえばトレイを下げて。

「どういたしまして。こんなので喜んでもらえるならよかった」

男の過剰といえる喜びには呆れながらも悪い気はせずに笑みをこぼすが。
続いた行動に、仕事中と言ってはあきれた目を向けて。

アードルフ > 「勘弁してくれ……俺が悪かった。」

確かに平時に安く酒のアテにするならばその組み合わせは良い選択肢なのかもしれない。ただ今は文字すら見たくもないあたり余程のトラウマ。
いつもより腹を満たす理由に男は気づけずに居た。もしそれを知らされたなら泣いて喜んだ、かもしれない。

「買い付けの予算が減って本末転倒なんだよな……、ただの旅ってんなら兎も角。まぁ、安かろう悪かろうだったな。確かに。」

乗り継ぎもなく貨物船染みた船だったのだから当然の事。とはいえまだ移動手段にまで掛けられるほど商売ッ気もなく。
両手を広げてみた物の、呆れた視線を一身に受ければ、ハグハグ、と腕を開閉してみせた。

「別に……ヤリたいってわけじゃ無い事も無いが……、ただアメリアの感触を思い出したかっただけなんだがなぁ。」

少しだけ、がっかりした様子を見せて、動いていた両手が膝に落ちた。
とはいっても冗談めかして笑みを浮かべれば、そういう視線だって今は好ましく想える程度に、単純に人肌恋しかっただけなのだ。

アメリア・ストライデン > 「ちゃんとしたメニューなのだけど?」

物好きもいるのできちんとしたメニューだと告げ。
ただ見たくなかったようだが、一応あると勧めていて。
余程に船旅は食生活があれだったのか、食べ方を見れば同情をして。

「それでも最悪の船旅よりはいいでしょ?最悪はあっちで働いて稼げばいいじゃない」

貨物船ならば寄港もせずに少ない人数で目的地まで向かうのが多い。
そこはどちらを優先するかは男次第だが、向こうで稼げばと告げて。
そして呆れた目で腕を開閉するのを眺め。

「そう言ってそのまま押し倒すでしょ?どれだけ船に乗ってたわからないけど…溜まってそうだし」

がっかりとしているが、そっちの欲に負けるでしょうと見返し。
冗談めかした笑みを見ては、おかえり、と告げて。

アードルフ > 悪かった。と再度告げるのは、今はこの店主に敵わないと悟ったから。
なんなら強引にでも出してきそうな勢いに、そうされたら逃げ出す事になりそうだから。

「まぁそりゃそうなんだが……そうなると、もっと会えなくなるだろ?」

顧客にも、勿論アメリアにも。そんな直接的には言葉にしなかったけれど、思いのほか知る人の居ない生活というのは心身にくるものだったらしい。

「そりゃ……まぁ……。ヤらないにしても、寝るまで離さないくらいには……いや。やっぱヤる。」

はい、触れてしまえば絶対にその欲に勝てませんと白旗。
そして改めて告げられる言葉に、笑みを一層深く刻んで。

「ん──、ただいま。 また、これからちょくちょく顔、出すからよ。」

そう、告げて立ち上がる。大いに名残惜しいし、未だちょっと諦めきれないけれど、このまま寂しさに任せて絡み続けるのも流石に未練がましいだろうと。
背負い袋を拾い上げると立ち上がり、腰の袋から会計をカウンターに置くと

「じゃ、ごちそうさん。」

アメリア・ストライデン > もう一度謝罪をする男に、不思議そうに首を傾げ。
ただメニューにあると教えただけなのに、よほどにそうだったのだろうとわかり。

「私は王都を離れるつもりはないし、貴方が無事に戻ってくれば会えるわよ」

もっと会えなくなるという男に、ここに居るから会えると返し。
冒険者をやっていたので出会いも別れもあるので、会えない期間が長いほどに元気だったのねと嬉しそうにするのだが。

「離さないなら変らないでしょ…ってするんじゃない」

素直に認めた様子に宜しいと頷き。

「えぇ、待ってるわよ。私もたまに顔を出すわ」

そう言い席を立ち、会計を受け取ればそれをしまい。

「お粗末様、今度飲みに行くわよ」

アードルフ > 重い荷物を背負いなおして、扉を潜ればなるドアベルの音は男には聞こえない。
腹も満ちて下らない会話で心も満ちた。
満足げな顔をして店に戻れば泥の様に眠るのだろうがそれはまた別のお話。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアードルフさんが去りました。
アメリア・ストライデン > 男が去っていくのを見送れば食器を洗ってしまい。
その後に今日は店じまいと閉店の札をつけて店じまいとして。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」から アメリア・ストライデンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にクレイさんが現れました。
クレイ >  
 街の広場。そこでは色々と出し物が出ていた。
 簡単に言ってしまえばお祭り会場。色々な職業の人達が集まっていた。そうなれば本来は騒動が起きそうな物ではあるが、それは出来ないだろう。

「お礼なんていらねぇって。いつも世話になってるしな」

 なんて言いながら祭りの企画者である商会の頭と気さくに話した男。
 この男は今回の護衛の責任者である。知り合いの傭兵や冒険者、騎士。果ては流れの剣士に魔法使い等々。戦場に立てば精鋭と呼ばれかねない奴らに声をかけている。結果、騒動など起こしたくとも起こせないほど盤石な警護が敷かれている。
 相応に報酬も必要ではあったが、そこは商会の資金力と男のコネで乗り切った。

「で、とりあえず俺は今日は上がらせてもらうぜ。折角だし祭りも楽しまないとな」

 なんて言いながら男はフラフラとお祭りの広場を歩く。
 そして知り合いの酒場や依頼主だった人物に会えば挨拶をする。それの繰り返しだ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からクレイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 朝の廃神社」にキタさんが現れました。
キタ > 高い陽、木々や建物が作る影は最小限になる時刻。
平民地区の端の端。木々のトンネルの先にある朽ちた参道と其の奥の廃神社。
木々のトンネルの先に何かがある、それを示すのは清涼な水の流れる水路の存在程度。
その源たる手水舎の前、小動物や鳥が遊んだ柄杓を治す巫女の姿。

「ふふ──、いつもお転婆で、元気な事。」

その水を飲んだり、行水をしたりその結果であるから咎める事も対策を講じるという意図も無い。
褐色の肌、その指先を冷たい水に浸して軽く揺らす度に湧く事で生まれる波紋と弄る波紋が重なり小さな波となる。

小さな日陰にもなるその場所は、涼をとるにはもってこい。柱も屋根も朽ちかけた社殿が視界に入るから、雰囲気も別の意味で、涼を与えよう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 朝の廃神社」からキタさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 朝の廃神社」にキタさんが現れました。
キタ > 一つ一つを互い違いに直してゆく柄杓。清涼な水の流れに時折手を浸しながら、自らの首筋や頬に冷えた手を当てて涼をとる。
うっとりとした表情を浮かべるのはそれだけ、朝にも関わらず暑い証左。

「まだまだ、これから続くと思うと気が滅入るわね……。」

昨夜は雷鳴も轟き落ち着いて眠るとはいかなかった。
屋根も所々朽ちた社殿を見上げて、それでも不思議な空間で社殿の中だけは守られていた。
大分生活も落ち着いてきた中で、そろそろ朽ちた部分だけでも直したい。
そんな想いが湧いてくる。直すべき所で言えば、草の生い茂る玉砂利も
底の抜けそうな社殿の廊下も。破壊されて柵の無い賽銭箱も。

ここで住むとなったのだから、それくらいの恩返しはしなければ、そんな事をふと考える。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 朝の廃神社」に布都さんが現れました。
布都 >  
 珍しい依頼があった。
 平民地区にある一角、その周囲の住人もよくわからない建築様式の場所にある存在。
 それの調査という物だった。
 普段であればあまり依頼を受けるわけでは無い鍛冶師は、しかして、話を聞き、興味を持ち、珍しく依頼を受ける。
 そして、たどり着くのは。

「ふぅン。確かに、見知った所だ。」

 島国の戦装束を身に纏い、その国を持ってでも古風と言える大剣を持つ鍛冶師。
 神域、聖域と呼ばれる場所と認識できるのは、この場所の意味などを知るものだ。
 草履を履く足が、石畳、通路の端を進む。
 真ん中は天神様の歩く場所故。
 朽ち果てかけている、その神殿の場所を見回しながら、一歩、一歩。
 石畳を、草に覆われたその場所を進む。

キタ > 朝露が煌めく玉砂利の上。さぁ手直しをするにしても何から始めた物やら。
何分そういった知識は皆無のため所詮は思い付きの域を出なかった。

そんな朝の穏やかな時間に割り込む様聞こえてくるのは、己と同じ足音。
振り返ると、そこに見えたのは参道中央を外し歩む人影。
その姿はとても懐かしく見覚えのある装束だったためについ初対面であるにも関わらず破顔してしまう。

その来客へ向けて深く折った腰。どうぞ、と腕を広げて示すのは手水舎。
石畳から玉砂利へと来客の足元が変わった所で……

「ようこそお参り下さいました。」

そう柔和な笑顔を向けて挨拶を。しかし礼儀を知る相手に見せるには、この社殿は聊か口過ぎている。
その恥じらいが笑顔に少し翳りを載せた。玉砂利から伸び放題の草も、倒れている灯篭も
そのどれもが巫女が存在するにしては不自然だろうから。

布都 >  
 まずは、指し示される手水舎。
 成程、と納得したように、鍛冶師は武器を収める。
 とはいっても、持っている大剣の大きさから、背負う形になる。
 巫女に敵意はないという意図としては十分に伝わるだろう。
 そのうえで、手水舎に移動し、まずは静かにその前に立つ。
 心を落ち着ける時間を取り。背筋を伸ばして、手水舎を見やる。

 一礼を行い、そこに居るだろう、神仏に対しての礼を送る。
 右手で、柄杓を手にし、一杯水を汲む。
 柄杓の清涼な水で左手を綺麗に洗い流し、次に、右手を綺麗に洗い流す。
 再度、右手に柄杓を持ち、左手に水を汲み、口に含んで口腔を清める。

 少しだけ残った水で、柄杓を綺麗に清め、元の場所に戻す。

 それから初めて、ゆっくりと巫女の方に振り返り。

「ギルドの依頼を受けて来たンだけどさ。
 この、拝殿、使われてなくて久しい筈だけど、人がいるって聞いてね。
 調査に来たンだ。
 物珍しさというか、懐かしさもあるんだけどね。
 あンたは、派遣された巫女……なのかい?」

 彼女が管理しているには、お粗末と言って良いだろう。
 とはいえ、着たばかりというなら、未だというのも考えられる。
 とりあえず、話を聞こうという事で、鍛冶師は問いかけを見せる。

 口調が荒いのは、旦那から捨てられて、冒険者として過ごすのが長かったから。
 彼女のような、しとやかさは全くない、元、人妻は、黒い瞳で、じっと、巫女服姿の巫女を、懐かしむように見やる。

キタ > とても凛々しい。うっかりすれば見惚れてしまうだろう整った容姿と、そんな姿に良く似合う長尺の得物。
美丈夫と表現しては叱られてしまうだろうか…、
何れにせよ得物を収め手水舎へと向かう姿を見送り、その所作に一切の淀みがなく、出自が同じである事が知れれば、自然と両手が胸の前で合わされ、感嘆の声が零れた。

そして振り返る戦装束に嬉しそうな笑みを浮かべたまま、問われた言葉にはしばらく思案。
そして視線を外し、振り返るのは朽ちた社殿。

「派遣、と言って正しいのかどうか……、ただ、呼ばれたのだと思いますわ。」

自身をもってしても、記憶が曖昧であり。気づいた時には此処に『在った。』
それをどう説明したものか、流石に得物を持ち、ギルドからの調査と告げる相手へ自らの存在を明かすわけにもいかず。

「お陰様で風雨に困らず過ごせているものですから、私もお世話をして、少しでもお返しをと思いまして。」

そう、本心ではあるその言葉、紡いでから改めて向き直り、赤い瞳が黒い瞳を受け止める。
身体つきも、身長も、肌の色も近しいというのに佇まいは正反対な二人。
しかし言葉に嘘偽りの無い真っ直ぐさを感じれはそれはとても好ましいもの。

「それと、申し遅れましたが、私、キタと申します。」

そう、最後言葉を締めるように挨拶を向けた。
凛々しい貴女への求める説明には足りたろうか。そんな不安げな視線が黒い瞳へと返される。
結局は、廃墟に居付いた女は居た、という事になる。それが表沙汰となれば、そんな元々は漠然としていた不安が明確に突き付けられ、動揺に赤が揺れた。

布都 >  
「ふむ、呼ばれた……?
 詰まる処、貴殿は、この拝殿の主、神という事かい?」

 八百万の神のある国、全てに神仏は宿るという信仰の持つ民族。
 旅に出て、この国にやってきた理由も神の一言だ。
 よくよく見てみれば、人間と言う雰囲気ではなさそうな所もまた、神と言う答えにたどり着く。
 彼女の由来などは知らぬ、だからこその、確認作業。
 彼女が人に仇為す存在ならば切り捨てて報告すればいい。
 そうではないなら、別に安全だ、と報告する。

 信仰心や信心とは別の事として、鍛冶師は仕事に一途だった。

「キタだね、鍛冶師と呼んでくれ。名は、旦那と村から捨てられた際に、捨てた。」

 彼女(キタ)が、過去の鍛冶師の(布都の居た)里に縁のある存在であれば。
 本来の名を、布都を知っているだろう。
 それを口にしないのは、今言った理由から、だ。

 名乗りに、名乗り返さぬ失礼を知りつつも。
 それでも、名乗ることをしないのは、捨てた覚悟を持ったゆえに。
 なおも、問いかけるのであれば。
 知りたいのであれば、関係を深めて、心を開けば、という所か、先程伝えたように。
 過去を知って居る存在であれば、だろう。

 不安げな様子。
 しかしだ。鍛冶師は、にやり、と口角を上げる。
 獣の様な、荒々しい笑みとも見える笑みだ。

「そうさね。
 まどろっこしい事は苦手だし。
 あンたはどっちなンだい?」 

 だからこそ、鍛冶師は深紅の瞳を持つ彼女に問いかける。
 人に害為す気はあるのか、無いのか。
 それが知れるなら、それでいい。