2025/06/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 路地裏酒場」にアードルフさんが現れました。
■アードルフ > ──カランコロン
開店を告げるカウベルの音。既に他の酒場は人で溢れるそんな時間。
元より生活のため、という店でないからというのもあるが薄暗い店内で店主たる男はカウンターに腰を下ろしアルバムを眺める。
大分日に焼け、酸化し色も正確に映し出していないその写真には男ともう一人の姿。
店主の手元と隣の席には同じ琥珀色の液体が入ったグラスが置かれ。
ただ何を口にするでもなく、そのアルバムをめくっては視線を移し、時折指先でなぞる。
静かな、ゆっくりとした時間が流れていた。
■アードルフ > 酒をチビリと口元へ運んではページをめくる。
それを何度か繰り返し、一冊目のアルバムが終わる。
アルバムの中の男の姿は変わらず、隣に佇む女性だけが老いてゆく。
時の流れとは残酷なもの、そしてその記憶の衰えというのも、残酷なもの。
「日だけは覚えてるが、もう何年たったか──」
既に土に還った。最後のページには今はもう朽ちて存在すらしないだろう墓石の写真。
煽る様に残った酒を全て喉へ流せば深い、深い溜息を零すのだろう。
何れは手の中のアルバムも、原型を留めない日が来るのかもしれない。
ならばいっそ、処分しなければとも、何度も何度も自問自答を繰り返していた。
思い出すのはこの日だけ、またそっとそのアルバムを閉じた。
隣の席の琥珀色は、氷が解けて大分薄い色に。何かの代わりにかグラスの周りの汗が一筋、落ちた。
■アードルフ > 所詮は趣味の延長。
そんな店、暫くは一人感傷に浸り。
翌日からはまた、気分良く酔い営業は再開されるのだろう。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 路地裏酒場」からアードルフさんが去りました。