2024/11/16 のログ
ご案内:「魔族の国・欲望の街「ナグアル」」にネヴェドさんが現れました。
ネヴェド >  
「相変わらず、賑々しい街だな…」

中央広場…その活気のある往来に、訪れた黒髪の魔族の女は嘆息する
国境の砦(タナール)にほど近い我らが鎧都市も物々しい活気はあるが、大きく違って見える

「我々の街に比べれば、全く人間の脅威に晒されない…という程でもないのだろうが…」

それにしても、平和な光景
この魔族の国に在って、まるで人間の国の交易都市の様な…

「──…と、そうじゃない…。お上りさんに来たわけではないからな…」

はた、とこの街に来た理由を思い出し、中央区の大きな建物へと足を向ける

ネヴェド >  
或る意味では最前線であり城塞でもある鎧都市グレイゼルへの物資の買い付け
そして交易の打診は以前から行っている
無論国境に近い分危険は伴う故に簡単に進む話でもなかったが、街同士の繋がりが何らかの形で得られる…それだけでも意味がある

そんな中で、魔王教会という名の施設の話を聞いた

己の信奉する魔王に祈りを捧げ届けという、巨大施設だ

──自身の崇拝する魔王など決まっている。

自身を戴き、宝冠を手にした力の象徴たる魔王…
彼には…祈るまでもない、手の届く、届かせてもらえる場所に在るからだ。では……?

ネヴェド >  
豪華絢爛華美、少々の物々しさも感じるのは流石、魔王への祈りを捧げる場所といえる
内部の巨大な祭壇には、既に本日祈りを捧げに来たのだろう魔族達の供物が並ぶ

女は祭壇へと近づき、片膝をつき頭を垂れる

「───……」

瞳を閉じ、脳裏に浮かべるのは──かつて女を求め戴いた魔の王の数々だった

──魔王ノクスヴィンディス…優雅なれど暴風が如き破壊の魔王
──魔王カオスヴァルム…混沌の剣を手にした、荒ぶる力の魔王
──魔王フェルナマリシア…地獄の女王と呼ばれた、恐怖の魔王
──魔王ネクロス…死霊の王を名乗る、強欲の魔王

──そして、魔王ザッハリア…荒廃と絶望を司る魔王…その孤独から、己を創造し妻とした古き魔王

祈りは、届かないだろう
どの魔王も、既にこの世には存在していない
斃され、滅され、あるいは封印されて、己を手放した
己を所有した魔王は、さらなる力を持つ魔王に討たれ、奪われるのが運命
永命なれど衰えはあり、そこに永遠はない──

「……私は、我が主のもの。我が主こそ私の全て」

「去れど、忘却の彼方へと追いやったわけではありません」

ネヴェド >  
新たな王に戴かれながら、"過去"への想いは禁忌
例え未練などがなかろうとも、その手中にある内は確かに我が主であった方々だ

「──こうして祈ることくらいは許されましょう」

両膝をつき、靭やかな五指を紡ぎ、改めてその瞼を閉じ──数瞬の時が過ぎる

ゆっくりと開かれた瞼、翠玉の瞳に映るのは…目を閉じる前となんら変わらぬ祭壇の姿
過去の魔王はもういない
祈りなど届こう筈もない

これは、常に争いの渦中にあり、新たな争いを生む…自らの存在への懺悔である

立ち上がり、捧げられた供物などを見下ろせば、…小さく首を傾げる

「………」

「……何か、買って来たほうが良かったのだろうか…」

こういった風習も習慣も作法も、いまいち縁がなかった女は考え込む様な素振りで魔王教会を後にした

ご案内:「魔族の国・欲望の街「ナグアル」」からネヴェドさんが去りました。