2025/01/13 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート・ファルズフ大聖堂」にカイルスさんが現れました。
カイルス > 隻眼の男は紙袋を手にして、大聖堂の孤児院を訪れていた。そろそろ太陽が天辺にのぼる頃合いだ。

「やーどうも、シスター。これ子供達に。中庭に知り合いが来るんで、ちょっと借りていいかな?」

聖都の孤児院暮らしの子供達にとって、王都富裕地区にある菓子店の甘味は宝石のようなものだ。
子供らは紙袋を受け取ったシスターに蟻のように群がった。シスターは微笑みつつ、手洗いをしてから食堂に集まるよう告げる。
素直に従っている子供たちの姿を眺め、男の口許は自然と綻んだ。

「さて、依頼人はどなたかな……」

男は主教の連絡役よりこの場所に向かうよう指示を受けていた。冒険者ではなく掃除屋としての仕事。
主教の神罰執行人たる男に指示できるのは主教関係者のみ。
指定場所から逆算して考えるに、依頼人は聖バティスタ派の誰かか。
精鋭で名高い騎士達を動かさない――あるいは、動かせない理由があるのだろう。
何にせよ男がやることは変わらない。姿を捉え、狙い、撃ち、殺す。それだけだ。

カイルス > 六時課の鐘が鳴った。男の表情が厳しいものへと変わる。
この場所は物理的・魔術的・社会的に安全な場所だ――少なくとも、依頼人にとっては。掃除屋との接触は見られたくないものだ。
掃除の仕事を頼む際に遅刻などありえない。おそらく依頼人は生きてはいないだろう。
眼帯の奥で右目を見開き、周囲を睥睨する。敵対存在なし。一定速度以上で接近する存在なし。
当面の危険はなさそうだが、長居は無用と言えそうだった。

「……まずは本部に向かうか。菓子代を経費として請求しないと」

そう呟いた後に、へらっとした表情を浮かべる。孤児院を辞去した男は、足取り軽く姿を消してしまった。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート・ファルズフ大聖堂」からカイルスさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート・ファルズフ大聖堂」にアガタさんが現れました。
アガタ > 新しい年を迎え、それに連なる祭礼もしばらくは続く。表向きであれ、奥向きであれ。
聖堂らしい壮麗さと、清廉さを備えた装飾が大聖堂のそこかしこを彩り、普段よりも華やかな印象を与えるのは確かだろう。

聖女を思わせる白百合と、白薔薇が丁寧に花瓶に活けられている。
そのなかで役目を終えた花を抜き取り銀盆に集めているのはカソック姿の従士だった。

馥郁と薫る花の香に、祭儀のための香が緩く漂う。
銀盆には巡った花瓶から一本二本と引き抜いた花が積み重なる。
役目を終えたとはいえ、これらもまた使い道があるということで、このまま廃棄されるわけでもない。

───聖堂内で花の飾られてない場所を探す方が少ないだろうが、衛士としての役割もある女にとってはそのついでと言えなくもない。
活けなおすよりは余程好い、と回収作業を買って出たのは、風雅を解す心持の必要なそれよりは武骨な自身には向いていると判断したためだ。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート・ファルズフ大聖堂」にルーベルさんが現れました。
ルーベル > 年明けの祭礼で人の出入りも激しいファルズフ大聖堂。
そう信心深いわけでもない者もこの時ばかりは主神の名を関する都に訪れては、新たな年のことを祈念する。

ルーベルもそんなものの一人。神、神力、聖力、聖女。
そういった、超常のもの自体のほうには興味も向くが、こと信仰となると、そこまでの畏怖をもって神に祈るわけではない。
魔王、魔族やらが跋扈する中で、人間にばかり都合の良い超常の存在などいるものだろうかと訝しんですらいる。

もちろんそれを表に出すような幼稚さはない。織り込み済みで、敬虔なふりもしよう。
浄財などと。金銭に清らかもなにもないだろうと思いながらも、各種の見返りがあるから少なくない金品も納めようし貴重品も寄進しよう。…特に。この大聖堂を拠点とするバティスタ派と呼ばれる会派は近年著しい勢力拡大もしており。

とある薬のこともあって、裏に表にとその信徒を増やしている会派であるから。
他の会派と比べても多額の喜捨を行い、そして、本来はあるべきでない見返りを受け取らんと、聖堂内を歩く。
そして見つける、長杖を持つ従士。すらりとした肢体はもとより、それを他の修道女よりもしゃんと見せるような体幹が美しく、男の目を惹いた。

「…もし、そこの。この札を貰ったが、あとはどのようにすればよいのかな」

ちゃらりと、音を鳴らし見せるのは免罪符。喜捨により古い年の罪が贖われたという名目で配られる『客のランク』を示すもの。男が持っているのは、相応に会派にも貢献のある銀札に蒼の紐が付いているもの。しっかりと偽造できぬよう聖女の力により聖別と言われる処置までされた代物。

これを見せて案内をと問うこと自体が、目を付けた相手への誘いのサインとなっていて。あとは奥向きの祭礼場へと案内するか、それ以外の場所でと招くのかは、誘いを受けた者次第というところ。反応を窺うように向ける暗金の瞳がわずかに興味深そうに細まるのは、覗いた双眸の色味の違いのせい。
聖堂にあってなおどこか神秘的な従士に、己も知らぬうち、こくりとのどを揺らしてしまう。

アガタ > 「───はい、何かお困りごとでしょうか」

呼びかけに視線を転じる。
銀盆に乗せられた花は、その外見はいくらか劣っていようともまだ甘い香りを放っている。
とはいえそれを客人格だろう信徒に見せられるものでもない。
だからそばにいた同じように室礼を整えている修道女に一度預けると、歩を向ける。
気配のあまりない足さばきで相手のそばに歩み寄り、向けられた札に視線を寄せる。

大聖堂に訪れる人々は様々で身分について表立って問うことはない。
それでも喜捨によって成り立つ運営は、それを齎す『太い信者』の存在を無視することはできない。
信仰とはまた別の利害で成り立っていることを理解しつつ。
だからこそ見せられた札の意味を知らない、とするには女はこの修道会のありようを理解しすぎていた。
相手のランクは最上──ではないがそれでも無視できるランクではないだろう。

最上の相手であれば恐らくは聖女様自身が迎えるための指示が降ろされているだろうから。

「………私は従士のため、満足できるかは補償いたしかねますが。
…………そうですね、どうぞこちらへ」

相対する人物が己の色違いの双眸に興味深そうな視線を向けるのには慣れているのか、さしてたじろぐ様子は見せず。

すい、と長杖を携えていないほうの掌を上に向け、指をそろえて案内するのは奥に向かう為の扉。
心なしか、花の甘い香りが強くなるのは──そちらにも祭儀を行うための部屋がいくつかあるためなのだろう。
幾度か利用しているのであれば好みの部屋があるのかもしれないし。
そうしたことを事務的な口調で問いかけながら、歩み寄った時と同様に先に立って歩く姿は女性にしては早い歩調だった。

ルーベル > 良く良く振る舞い方を心得ている。それが、目の前の相手への第二の印象だった。
教会にと身を寄せる者にはいろいろな事情があるものか、そもそもの身の上が教会に縁があるもの。
どちらにしても、その立場が高くなるものほど立ち振る舞いが洗練されていくし、そつなくなっていく。
逆に言えば、そうでないものは形ばかり、言葉ばかりの礼儀しか心得ない者も多いというのに。

その点彼女は、もともとがそういった教育を受けているものらしい身のこなしと、優雅にも見えながら隙の無さも思わせる足遣いをしている。後ろ暗いことを内部で処理するような者というのは、どこの組織でもいるものだけれど、彼女がそう、だとしても疑いがないくらいに。あとは、しっかりと礼を弁え、用の済んだ華を目に入れないようにと配慮するあたりも好ましく。

であれば、教会の『裏向き』の決まり事も当然、遺憾なく応対するだろうと―…そう思えば、やはり。
余計もなく。嫌味にならない程度の前置きもしながら、過不足なく。
型に嵌ったと言えばそうかもしれないが、男にとっては案内そのものに余計なものがない分には何の文句もない。
だから、彼女が掌で指し示す先。鼻を擽る香りがより濃ゆく甘さを乗せていくのに、小さく息を吐きながら。

「なるほど、なるほど。…そなたの薦める部屋などもあるのかのぅ」

すっと伸びた背筋で、音も少なく。それでいて早い歩調で進んでいくカソックの背を眺め、その腰下まで暗金を流しつつ。
そっとその隣にと並び立つように歩を刻み、腰元に手を伸ばしながら問うのは『彼女にも好みがあるのではないか』というような問いかけ。それにどう応じるかはあるだろうが―…やがて、辿っていくのだろう。もっと奥めいた場所か、あるいは地下か…彼女が招くままに。

ルーベル > (お部屋移動いたします)
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート・ファルズフ大聖堂」からルーベルさんが去りました。
アガタ > ──多分あまり聖堂を訪れる方ではないのだろう、という認識。
しきたり通りに案内しながら、問いかけには視線を返し、静かに首を横に振った。

「とくにはございません。選ぶ資格を持つのは──札を持つ方ですので」

相手が所持している免罪符を視線で示してから、彼が興味を持つなら一つ一つの扉を開けてその室礼を確認してもらうことだろう。
どの部屋にも花が飾られ、甘い香りを漂わせているのは零れる香りの濃さが物語っている。

アガタ > (移動いたします)
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート・ファルズフ大聖堂」からアガタさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート・ファルズフ大聖堂」にグアルティエロさんが現れました。
グアルティエロ >  
「んもう。こない散らかしてからに、しゃーないなほんま」

ファルズフ大聖堂礼拝堂。ステンドグラスから、あちらこちらの天窓から、西日が差し込む夕暮れ時。
ご近所の信者さん達から孤児院の子供達からが午後の礼拝と15時に配られるおやつを完食して談話しての解散後。
食べかすだの、食べ残しだの、忘れ去られた教本だの、何やってたんだか引っくり返った長椅子だの。
礼拝じゃなくてアトラクションショーか音楽系フェスと勘違いしてるんじゃないかって有様の散らかりっぷり。

「まーまーまーまー。元気なんはええこっちゃね。後で説教やけど。ガチのほうのな」

そこをぼやきながら箒と塵取り片手に掃いたり、よっこいしょー! と掛け声一つで長椅子を戻し後片付け中の男。
きらきらきらと差し込む光にあわせて色取り取りに変わる髪色に、あまり趣味が宜しくない上着の大層目立つ男。
おまけに独り言が多くてしかも訛っていてそのくせ妙に声が通るハスキーボイスというのだから閑散とした場での存在感はかなり大きい。

あっちに行って片付けて、ぼやいて、こっちに行って片付けて、ぼやいて、黙々……とは言い難いが地道に清掃活動中。

グアルティエロ >  
「しゃ。こんなもんやろ。てつどーてくれておおきにな」

途中に合流してきた同輩達とともに一区切りした頃には夕日もかなり傾いていた。
彼等彼女等にゆるゆるひらひら手を振って各々の持場へ戻っていく後姿を見送る。

自分にもまだまだ仕事はある。
孤児院の子たちに振る舞う晩御飯作り。
明日の説法の準備。
明日出す朝御飯や間食の仕込み。
明後日から地方巡りだからその荷造り。
等など、等など。それと。

「バティはんに挨拶せなかん。忘れとった。居はるかな」

ここな主に、そも、ただいまも言ってなかったし行ってきますも勿論言っていない。
こちらに帰ってきてからも忙しかったからすっかり忘れていた事を思い出した。
あらー。あちゃー。とか大きく空いた口を手で覆い隠してから、くしゃみ。ぶぇくし! 喧しいのを一つ出して、懐のハンケチで手を拭き拭き。

「まー別に言伝でもええんやけどさ。さてさてさてさて」

一応顔を出せるなら出しておくかと、聖浄の間やら、迎賓室やらを巡るため歩き出した。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート・ファルズフ大聖堂」からグアルティエロさんが去りました。