2024/10/12 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート・ファルズフ大聖堂」に聖バティスタさんが現れました。
聖バティスタ >  
コツ、コツ…と。
聖堂の回廊に軽やかな足音。

その姿を見たシスター達は一様に驚き、慌てる様にその姿勢を正す──。

聖バティスタ派騎士修道会グランドマスター。
聖女と崇められる、その名を組織に関する少女の姿に。

『聖女様──、何故、大聖堂に…』

今日は大礼拝の儀ではない。
唐突な訪問に、司祭達は慌てているらしかった。

「…あら」

清らかな鈴の音の様な声が廊下に響く。

「特別な用事がなくては、私が聖堂に足を踏み入れてはいけませんか?」

問いかけにとんでもありませんと首を横に振る司祭達──。

『せめて事前にお聞きしていれば──』

「いいのよ。気にしなくても。
 私が訪れるたびに何かさせては、それも手間でしょう」

ひらりと小さな手のひらを揺らして見せ、軽い足音を響かせ、聖女は回廊を歩み進めてゆく。

聖バティスタ >  
回廊の角を曲がると、聖女は足を止める。

ピタリと立ち止まり、耳をすませば。
背後…ここからでは見えぬ、曲がった回廊の先ではぱたぱたと慌てる司祭達の足音が聞こえる。

「……ふむ」

細く小さな顎先、同じく小さな手指をあて、思案する様に小さく吐息が溢れる…。

「……大礼拝って今日じゃなかったっけ」

そういえばおつきの聖天騎士達も、付き従いながらもどこか不思議そうな顔をしていたような。

───ああ、じゃあ…。

「(一日、間違えたわね)」

聖バティスタ >  
再び、歩き始める。
カツカツと、少し早足。

「黙って付き従うのも良いけれど、誰か一人くらい聞きなさいよね…」

まったく、聖女の言う言葉を一から十まで信を置き、疑わない。
それはいいけれど、聖女の言うことが間違っていたら一体どうするのか…。
いや、彼らの中では聖女が間違いを言うことなどあり得ないに違いない。
狂信とは、そういうものだ。

「はぁ…どいつもこいつも、アホかしら」

ちっ、と舌打ちを零しつつ、向かうのは己の私室。
仕方なし、色々な事情があって前日入りした…ということにする。

今日は聖堂に宿泊し、明日の大礼拝に余裕を持って備えれば良い。

聖バティスタ >  
丸一日も聖堂で過ごすなんで、退屈極まりない。
私室の前まで来れば、入口前に衛士を務める聖騎士が立つ。
来る筈のない聖女の姿にやはり驚き、狼狽を見せている…。

ワンパターンに若干イラッとしつつも、慈愛に満ちた笑顔で微笑みかける。

「警護の任、ご苦労さまです…」

「明日の大礼拝に先んじて、本日は大聖堂に宿泊しようかと思いまして──。
 "神の塩粒"にて清められた司祭を二人程、準備と遣いに手配していただけますか?」

方便である。
明日までの退屈な時間を潰すための…。
爛れに爛れた淫蕩に溺れさせ、玩ぶための子羊に過ぎない。

『はっ…了解いたしました。聖女様』

聖バティスタ >  
『あの、しかし…』

聖騎士の中には、狂信者にはまだほど遠い者もいる。
こうして、聖女の言葉に疑いを持ち、言葉を返す者も存在するのだ。
内心、さっさと手配してこいよと思いつつも、今は聖女モード。
清らかで清純な微笑みを崩さず、あくまでも淑やかに。

「どうかされたのですか? 何か、疑問でも──」

『い、いえ…あの──』

聖騎士は言葉を選ぶため、しどろもどろと口を噤む。
…じれったい、言いたいことがあるならさっさと言えば良いのに。

「よろしいのですよ」

「人のすべての言葉は神がお許しになられたもの…」

「どうぞ、あなたの言葉で紡いでください」

にこり。
清らかスマイル──。

『はっ、あ…で、では……』

聖バティスタ >  
『その……大礼拝の儀は……明後日ではありませんか?』

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート・ファルズフ大聖堂」から聖バティスタさんが去りました。