2023/09/17 のログ
ご案内:「魔の国辺境(過激描写注意)」にルージェさんが現れました。
ルージェ > 辺獄、夜を抱く森にて。

影絵の城は来訪者を拒むがごとくに死棘を纏う。
馥郁と薔薇の香気が蟠る一室。帳の降りた寝台に身を横たえるのはたった一人、その城に君臨する不死者。
射干玉の黒がシーツの上に流れを描き。閉ざした瞼が死蝋の頬に影を落とす。
眠っているのだと見えなくもないその姿。
眠りが、ソレに必要なのであればの話だが。

───だからそれは、紛い物の死に揺蕩う記憶の欠片を拾い上げる作業。

轟音が響く。崩れ落ちんばかりの勢いで雷霆が森を穿つ。
それは嵐の夜、狂気じみた夜。

──────互いの命を喰いあった記憶。

ルージェ > 砕けた硝子窓。固い靴底がその破片を踏みざりりと音を立てた。
雷光の明滅だけが周囲を照らす。
白と黒とに塗り替えられる情景の中、黒衣が躍る。
白衣が狂気を孕んだ声を上げる。

それは人と、人でないものが打ち合う一合。
人の首ひとつ刎ね切りそうな鋏がぬるりと黒光りする刃を翻す。

ヅ、と影から突き出た死槍がそれを阻み、打ち消しあう。哄笑は果たしてどちらのものだったか。

卓上を彩るすべてを、薙ぎ払う。
食器もグラスも、酒瓶も。すべて有象無象の破片と砕き、重厚な卓をそのまま蹴り飛ばした。

ゴヅ ────、と壁が軋むそれに、ぱらりと天井から木くずが滴る。
無残に赤く弾けるはずだった白衣は、ひどく、ひどく耳に触る笑い声をあげている。

『───────』

やり取りに意味があったのかなど知らぬ。
ただ、そこには、互いの持つ狂気を解き放つための時間が流れていた。

ただ、ただ、双方が─── ()したいと

炯と濡れる赤。もう忘れた男の目の色は果たして何色だったのか、記憶の欠片にすら浮かばない。
その歪んで整った造作も声色も、忘れ果てているというのにただ

鮮烈な殺意だけが記憶(ユメ)に残る。 

ルージェ > 戯けた(殺意)を謳いながら。
それは黒衣に杭を穿つ。

顔を焼き、眼球を咀嚼して。

■■■■■■

腹を裂いた鋏の感触は。
重く。

ああそれでも、その刹那は、殺意(アイ)を歌ってやったとも。

喜悦に歪んだアレの顔。
片目に宿った歪な半月(微笑み)

黒衣を深く染めた朱。床に転がった、脂肪に滑る鋏の刀身。

───────黒い爪紅を塗った指先がわずかに跳ねる。

(傷み)を拾い上げたかの如く。

ふ、と呼気が揺らぐ。身じろぎは甘い衣擦れを呼び、黒い流れがさらりと毀れた。
表情のない寝顔は、幼くも映るまま。

記憶の波間を、ふらりと彷徨う。

ルージェ > ───────そのまま、動けなくなるまでその身に鋏を入れられたのは、忘れ得ようもない。

悪夢というには甘く、艶夢というには血に染みて。

狂笑と狂気と狂愛と

死と痛みと苦しみと

己の肌を貫く刀身が、脂肪で曇るのを目にしたまま犯される狂おしさを。

そんなものもすでに遠い、疼きにもならない記憶となった。

薄らと開く双眸。その顔貌は過去の損傷など跡形も残さずすべらかな白。
睫毛に彩られた血赤の眼差しもかけることも曇ることもなく。やや緩慢な仕草で身を起こししながら小さく欠伸した。

「─────久しぶり、の」

口元を隠して目を細める女のその笑みの理由を知る者はおそらくはいない。

ルージェ > くしゃ、と潰されたバラの花びらが血痕のようにシーツの上にはらりと舞った
ご案内:「魔の国辺境(過激描写注意)」からルージェさんが去りました。