2023/08/14 のログ
ご案内:「欲望の街『ナグアル』第五位統治区画」にサテラさんが現れました。
ご案内:「欲望の街『ナグアル』第五位統治区画」にエルビー・カルネテルさんが現れました。
■サテラ >
欲望の街、ナグアル。
ここは、多くの魔族にとって都会とも言える華やかな街である。
しかし、そこにも、どこか田舎めいた穏やかで静かな区画も存在する。
それが、序列第五位、サテラ・ケイローンの統治する区画である。
「――ん~~っ!
今年もいい感じに実ったわね」
半人半馬の少女とも大人とも見える魔族、サテラは、自分の管理する果樹園で、赤く色づいた柔らかな果実を手に取って、頬ずりしている。
ここは果樹園の中で、所謂、桃を育てている一画だ。
「……うん、虫食いも少ないし、綺麗な色。
んー、そろそろ収穫していい頃合いよね」
なんて、育ちが早く、すでに熟しきっている果実を丁寧に収穫して、手に提げた籠に入れながら、果樹園をのんびりと見て回っていた。
この時間が、サテラにとっては静かな、最上級の癒しの時間である。
とはいえ、収穫の際は人を雇って果樹園も大わらわとなるのであるが。
■エルビー・カルネテル > 突如、果樹園の一角に眩い光が出現する。
その光はあっと言う間に消え、学生服の少年が姿を現す。
「……ここは、どこだ?」
余はエルビー。学院の生徒である。
今しがた、余は転送魔法の実習をしていたのだが。
どうやら転送先の設定を誤ったのか、はたまた事故なのか。
とにかく、今の余は見慣れる場所にいるわけだ。
顔に冷や汗を浮かべつつ、辺りを見渡す。
どうやらここは果樹園か何かで、桃を栽培しているようだ。
匂いと色づきからしてそろそろ収穫時期だろうか?
おお、甘い香りが漂ってくるぞ。
それはそうと、桃に頬擦りをしている女性が目に入る。
その女性はどうやら下半身が馬である。
ケンタウロスなのだろうか。
上半身から下半身まで引き締まった良い体をしている。
…いかんいかん、今はそんなことを考えている場合ではないぞ。
余は首を左右に振った。
■サテラ >
「――ん?
んわっ!」
急に近くに魔力の流れが産まれて、ぎゅっと収束していく。
少し警戒しつつ、流れを追っていけば、突然の光に目がくらんでしまった。
「うう……目がしょぼしょぼする……。
もう、なんなのよー」
片手で目を擦りながら、光の発信源へ近づいていくと、一人の魔族。
見た目はかなり人間らしいが、サテラの感覚はそれが魔族であると察知していた。
「あら――えーっと」
少し戸惑いながら、金髪の魔族の元に歩み寄っていく。
「男の子……だよね?
どうしたの、こんなところに。
なにかトラブルでも起きちゃった?」
自分で言うのもなんだけれど、サテラの果樹園は、本当にそれ以外に何があるわけでもない。
他人が平時にやってくるだけでも珍しい事なのである。
■エルビー・カルネテル > 事故とはいえ、転送魔法を発動させることを事前に用意していた余に対し、
相手は完全な不意打ち。
どうやら見た目からして強力な魔族のようだが、それでも眩しいようだ。
なんだか悪いことをしてしまっているな。
「なんだか事故で飛ばされたようでな。
農作業中にもうしわけないな。
余はエルビー。
とある学院の男子生徒なわけだが…。
ここはどこなのだ?」
余は女性の顔を眺めつつ、名前だけを伝えた。
余の認識が正しければ、魔族と思われる相手に苗字迄教えるのはまずかろう。
「ここは果樹園なのか?
一人でやってるようだが。
そもそも、ここはなんて言う場所なのだ?」
目の前の女性は穏やかそうで、しかも綺麗。
余は現状がつかみ切れていないながら、突然の出会いに少し興奮している。
■サテラ >
「あらら、うーん、転送事故かな?
災難だったね、えっと、エルビーくん?」
そう声を掛けながら近づいて、右手を差し出そう。
「わたしはサテラ。
ここはわたしの果樹園で、街の名前はナグアル。
よかったね、他の……変な区画に飛ばされなくて」
くすくす、と苦笑めいて笑いながら、自己紹介をするだろう。
■エルビー・カルネテル > 「そうそう、転送事故だ。
学院の授業の中で魔法の実習があるのだが、
これが余は本当に苦手でな。
いつもいつも苦労している。」
差し出された右手を掴む。
おお、手の感触が柔らかいぞ。
「ふむ、サテラと呼んでいいのか?
ナグアル…聞いたことがあるな。
確か魔族の街だったか。
実際に来たのは初めてだな。
他はやはり物騒なエリアがあるのか?」
サテラは果樹園の経営者なのだろうか。
しかし、ナグアルと聴いて余は少し驚いた。
余が普段いるのは人間の街マグメールで、ナグアルは所謂タナールの砦を超えた先のはず。
なんだかとんでもない距離を移動してきたようだ。
しかし、サテラはなんだか優しい。
余はじっと手を握っていた。
■サテラ >
「転送魔法かぁ。
わたしも、最初は苦手だったっけなぁ」
握手をしたら、なかなか話してもらえない。
サテラは、目をなんどか瞬かせる。
少年とは思えないくらい、綺麗な肌をしているようだ。
「うん、サテラでいいよ。
そっかナグアルは初めてなんだ?」
だとしたら、普段はこちら側で暮らしている魔族じゃないのかもしれない。
(砦の向こうなのかな。
学院って事は、王都の方かな)
と、少し少年がどこから来たのかと考えて。
「あ、うーん……物騒というか、個性的と言うか……。
すごく凝ったダンジョンを作ってる子もいるし、生体実験大好きな困ったのもいるし……」
もし、そんな区画に飛ばされていたら、少なからず大変な思いをしたことだろう。
勿論、サテラは少年がどれだけの力を持っているかは、おおよそにしかわからないので、もしかしたら安易に突破できてしまうのかもしれないが。
「うちは、一応、平穏と平等がウリだからね。
安全面には自信があるよ」
両親の代から、何十年もかけて作った統治体制である。
基盤の強さと柔軟さには自信があった。
■エルビー・カルネテル > 「余は他の魔法も軒並み苦手でな。
学院の魔法の授業ではいつも苦労しておる。」
あっと、そろそろ手を放さないと嫌がられそうだな。
余はサテラの瞬きからその辺りを察して、慌てて手を離した。
余の身体をなんだか見てる気がする。
ううむ、今日はまだそれほど汚れてないはずだが。
「そうなのだ。
名前は知っていたが来たことはなくてな。」
当たり前だが、お互い不意の遭遇である。
サテラがこちらを見ては色々と考えているようだ。
余はとりあえず、笑顔を見せておこう。
「おおぅ、そうだったのか。
噂通りに恐ろしい場所もあるわけだな。
流石魔族の街だな。」
余はサテラの説明に恐怖と期待の表情を浮かべる。
ちょっと見てみたい気もするが、実際に行ったら恐ろしそうだ。
「ん? となると、サテラはこの区画の領主となるわけか。
これは凄いな。
始めてきたナグアルで早くも領主と会えるとは。
しかもサテラは良い人そうだし、余は運がいいのかもな。」
余は果樹園を見渡してから、再びサテラの顔を見た。
この人ならいきなり余を襲ってくる感じもしなそうに思える。
■サテラ >
「魔法が苦手かー。
確かに、コツを掴むまではコントロールが難しいかもね」
放してもらった手で、人差し指を立てて頬に手を当て首を傾げた。
「あはは、みんな本当に自由にしてるからね。
ヘンなところは沢山あるよ。
恐ろしいかは……えっと――うん、あると言えばある、かな」
ちょっと思い出したくない記憶を思い出しつつ。
苦い笑顔を浮かべるのだった。
「ふふっ、別にすごくはないよ。
わたしの場合、ほとんど両親から継いだだけだしね。
それにぃ――魔族を見た目で判断しちゃダメだよ?
わたしだって、実は怖い人かもしれないよ?」
顔の左右で手を広げて、がおー、と言って見せる。
勿論、顔は笑っており、ほんの少しも怖さなんて感じないだろう。
どちらかと言えば、平凡な村娘とでも言った方が相応しいような雰囲気すら持っている。
■エルビー・カルネテル > 「今日みたいに派手な転送事故を起こしたことは珍しいのだがな。
学院の魔法は難しい。」
余は両手を広げ、大げさに肩を竦めた。
「自由か…魔族の自由はちょっと過激になりそう
いや、人間でもそれは同じか。
やっぱりあるのか。他の領域を周る時は気を付けないと駄目そうだな。」
サテラの表情が物語っている。
余は苦笑を浮かべ、頬を指で掻いていた。
「おお、怖い怖い。」
余は笑みを浮かべながらもたじろいで見せた。
無論、戯れの類であるが。
「しかし、こんな楽しい領主さまのエリアなら余も住んでみたくなったな。
どこか空いている物件などはないのか?
それと、家を持つにあたって何か条件はあるのか?」
魔族の街には前から興味を持っていた。
親しみやすい領主のエリアなら余としては願ったりかなったり。
と言っても学院もあるので2重生活になるか。
とはいえ、向こうが受け入れてくれないとどうしようもないのだが。
■サテラ >
「うん?
うちは、いつでも移住は歓迎してるよ。
住むなら、集合住宅と一軒家と、なんでも用意はできるけど。
エルビーくん、ちゃんと収入ってある?
うちは安全と生活の保障をする代わりに、しっかり税金を徴収してるの。
それが納められないと、むしろちょっと住みづらいかも?」
安定した生活を保障する代わりの、徴税である。
税を納めていれば、サテラをはじめとして、区画の行政が万が一の時もしっかり住民を保護できる。
しかし、裏を返せば。
税を納められないのであれば、なんの保護も認めてもらえないとさえ言えるのだ。
(まあ、その時はユーちゃんのとこを紹介してあげればいっか。
セーレちゃんとこも、暮らす分には不自由しないし……)
序列十一位の地区は契約と代価の街であるし、十位の地区は、安寧と微睡の街だ。
どちらも、魔族らしく暮らすには苦労しないだろう。
■エルビー・カルネテル > 「住むのなら一軒家がいいな。
余はもともと屋敷に住んでいるから集合住宅だと恐らく他の住人に迷惑をかけるだろう。
ちなみにサテラの領地での税金と言うのは何をどう納めればいいのだ?
余としてはせっかくだし、サテラの領地に住みたいが。」
領主がいる街である以上、納税は当たり前のことだろう。
余は自分が納税する側になることに新鮮さを感じている。
それに余としてはもっとサテラと色々話したい。
その為にもこの区画で住処を得るのは良い事だと思う。
サテラの様子から、他にも移住に適した区画があるようだ。
機会があればそちらも覗きにいってみたいな。
なんだか新しい発見がたくさんありそうで、余はドキドキしてきた。
■サテラ >
「おー、お屋敷住まいなんだ。
それじゃあお金持ちなのかな。
うちでの税は、基本的に住民が最も余裕をもって所有しているものを、金銭に換算したうちの一割を収める決まり――これは魔族のほうね?
だから、お金とは限らないし、農作物だったり、工芸品だったり、労働力だったり。
それを一年に一回、しっかりと納めてもらう決まりだよ。
エルビーくんは……お金持ってそうだし、お金になるかな?
自分で言うのもなんだけど……あんまり安い税金じゃないよー?」
そう、決して安い税率ではないのだ。
住民一人、または世帯一つごとに、一律で平等に、一割である。
それもあって、サテラの街に住むのは、最低限以上に余裕のある魔族ばかりなのだ。
「まあ、勿論、税収に関しても色々決まり事……人間の国家を参考にして色々と法を作ったり、なるべく豊かに暮らせるように保護はしてるけどね。
……あ、よかったらどうぞ。
採れたてだから、そのまま食べられるよ」
そう言って、籠からよく熟した桃を取り出して、少年に差し出した。
■エルビー・カルネテル > 「うむ。素性はあまり明かせないが余は金持ちだぞ。
なんだか自慢をするみたいでちょっと気が引けるがな。
なるほど。金銭で納めればいいのか。
もっとこう、血を抜かれるかそういうのではないのだな?
年に一回なら金額に寄るがまあいけるだろうな。
具体的な金額はわからんが、それでサテラの庇護下に入れるなら悪くないな。」
魔族の街とあって怖い想像をしていた余だが、どうやら杞憂の様だ。
サテラの言う安くないというのがどの程度かわからんが…。
余はここでの暮らしができそうなので、期待に胸を弾ませる。
「ほほう、人間の国家を参考にしてるのか。
ならサテラの役に立つような資料を今後余が持ち込んでやろうか。
余はこれから世話になるわけだし、それでサテラが喜んでくれるのなら大喜びだ。
おお、桃か。ありがたく頂くぞ。
…なあサテラよ。」
余は両手で桃を受け取る。
この時は笑みを浮かべつつ、桃を手に取ってじっと眺める。
だが…。
「よければ、皮を剥いてもらえると嬉しいぞ。」
チラリ、と見つめながらおねだり。
駄目そうなら自分で剥いて食べるが。
まあ、ちょっと甘えてみたくなったのだ。
■サテラ >
「お金持ちはお金持ちで理由があるんだから、自慢したっていいんだよ?
んっと、そうだねえ。
お金だったら、最初は総資産を計算させてもらって、そこから金銭的所得と同等と見做せる中から一割。
だから、沢山持ってると持ってるほど貰う事になるかなあ」
とは言え、その査定も厳しくはない。
平等に温情がかけられるため、大きな損と感じる事は少ないだろう。
それだけ、この地区での庇護は手厚いのだ。
「えっ、ほんと?
そうしたら、歴史書とか、古今の法を纏めたものとか、そういうのが読めると嬉しいな。
やっぱり、法整備、っていう点で見ると、人間社会って優秀だから……」
そう、人間の文明社会における法律は、魔族からすれば非常に洗練されているように見えるのである。
ただ、問題があるとすれば。
その法の運営が、人間の欲望に支配されているという事だろうか。
「――ほえ?」
ちょっと真面目な事を考えていた矢先に、拍子抜けするようなお願い。
それに、サテラは間の抜けた声を出して、それから笑った。
「もー、都会っ子めー。
こういうのはねえ、こーして――あー、んっ!」
自分もまた籠から桃を取り出して、皮ごと丸齧りした。
「んん~っ!
今年もよくできたなぁ」
右手で桃を、左手で頬をおさえて、満面の笑みで瑞々しい甘さを味わっている。
■エルビー・カルネテル > 「サテラの前では自慢できるかもしれんが。
他の者の前ではあまり自慢しない方がいいだろうな。
となると、納税額である程度暮らしぶりがわかるわけだな。
長者番付とか、納税者番付とかはつけないでくれよ?」
サテラの雰囲気からすると、どうやら査定はそれほど厳しくなさそうだ。
それでも余としては正直に納税するだろう。
サテラの統治に役立てるのであれば余としても有意義と言える。
「歴史書は…余が今いる地域では微妙だな。
なんというか、あまり詳しく触れるな的な空気が漂っていてな。
法整備に関する本なら法律集や判例集を持ってくればいいのかな?」
なるほど、人間の街が取っている方法を魔族流にして採用しているようだな。
それならば書店で売っている本などを取りそろえてくれば役に立つだろう。
趣旨が合わない箇所はサテラに変えてもらえばよい。
「えぇぇ!?
そのままいくのか?
余は自分で言うがお坊ちゃまだからそういうのは経験がないぞ。」
なんと、目の前でむしゃむしゃ食べているではないか。
余はぽかんと眺めるも、意を決して桃を丸かじりする。
ちょっと固いが、皮ごとも食べれなくない。
そしてよく実った桃はやはり美味い。
甘くて最高だ。
「サテラの農園はここだけなのか?
他にも作っていそうだが。」
両手で持った桃を齧りつつ、問いかける。
こういった食べ方はあまり経験がないので、どうしても口周りが汚れたりしてしまう。
■サテラ >
「あははっ、確かにお金に困ってる人からしたら、恨まれちゃうかもね。
それは勿論、一人一人がどの程度の水準の生活をしてるか、それを把握しておかなくちゃ、いざって時に助けてあげられないでしょ?
ふふっ、そんな悪趣味なランキング作らないよ~」
またまたぁ、と左手をひらひらさせて笑う。
「あ、判例集は嬉しいな!
やっぱりどれだけ公平にしようとしても、揉め事って尽きないから。
悪平等、って言葉もあるし、そうならないように、わたしは沢山学ぶ必要があるの」
安定と平等、そして安全と。
それを謳うからには、杓子定規な対応をしていてはいけないのだ。
柔軟さを得るためにも、よりたくさんのケースを知る必要がある。
上に立つ者こそ、より多くを学ぶ必要がある、それがサテラの考え方だった。
「あらあらあら~?
お坊ちゃまには、ちょっと刺激が強かったかしらー?」
なんて、なんだかんだと美味しそうに食べてくれる様子をにまにまとしながら見て。
籠から小さなハンカチを取り出すと、四つ足を折って、口元を拭ってあげるだろう。
「ん、他にもあるよ。
ここは桃だけど、向こうはブドウとマスカット、あっちは馴染みないかもだけど、ナシって果物を作ってるの。
あと、ここからちょうど反対の、向こう側には牧場もあるよ」
と、あっち、こっち、と指で方向を示しながら説明しよう。
■エルビー・カルネテル > 「把握するのはサテラの領地内の話でいいのか?
こっちは所謂別荘になりそうだし、
もっと知りたいのであれば余の屋敷に来てもらわないといかんが。」
税金逃れ…そんな言葉を思い出した。
実際、こっちでは必要最低限の暮らしをするつもりである。
余の暮らしぶりの実態とはかけ離れているだろう。
目の前で笑うサテラがそこまで細かく調べたがるか。
余は首を傾げる。
「判例集と、学者の見解迄載せた本もあったと思うぞ。
難しくて余はちんぷんかんぷんだがな。
サテラは独学で学ぶつもりか。凄いなあ。」
農園の世話もしながら、法律の勉強もするらしい。
目の回る忙しさになりそうだ。
余はほほ~~っと驚いている。
「そうだな、普段の余は誰かが面倒を見てくれるからな。
おお、すまんな。」
にまにまと見ている様子に、余はちょっと嬉しくなった。
おまけに口元を布で拭ってくれる。
なんて優しいのだろう。
「そんなに色々作っているのか。
全部一人でやってるのか?大変だろう。
そうそう、桃のお礼として今度来るときは余が今住んでる地域で流行りのお菓子など持ってこようか。
この間はタピオカミルクティーなる飲み物を飲んでいてな。
興味あるだろう?」
指さして示された農園や牧場は結構遠く。
見て回るだけでも大変そうなほど。
よく働くなあ、余はサテラの馬の足を眺めていた。
■サテラ >
「この街の外にある資産については、あくまで自己申告かな。
もちろん、後々、虚偽だってわかったら、それなりの思いはしてもらうけど。
基本的には、この街に持ち込んでいるもので計算させてもらってるかなー。
流石に街の外の事までは面倒見切れないもん」
それは、魔族には珍しく善性を信じた上での取り決めだ。
それは、信用を裏切られた時に、相応の報いを与えられるだけの自信の裏付けでもある。
「基礎はパパとママに教えてもらったんだ。
でも、今は独学かなあ。
人の街にも、そのうち直接行ってみたいんだけどねー。
そこで教えを乞えるようなヒトに出会えれば一番なんだけど」
サテラは自分の一日を、忙しいとは感じていない。
忙しいと感じていたら、これだけの物事を並行して熟す事は出来ないだろう。
もちろん。
想定外の事に困らされて、ヘロヘロに疲れる事はあるが。
それも友人に癒してもらえているため、精神的にも肉体的にも、健康を保てているのであった。
「ぜーんぜん、大変じゃないよ。
全部、わたしが好きでやってる事だもん。
まあ……時々疲れちゃうときはあるけど、そういう時はちゃんと休んでるつもりだし」
それに、いつだってサテラの手伝いをしたいという住民たちはいるのである。
今だって、サテラが個人的に雇っている人間や魔族が煩雑な仕事を代わってくれていたりもするのだ。
まあ、そんな真面目な領主も、一皮剥けば、まだまだ少女な面もあり。
「えっ、お菓子!?」
人里のお菓子と聞けば、目がきらきらと輝くだろう。
「たぴおか……!
すごい気になる!」
うんうん、と勢いよく首を上下に振って、わくわくとした様子を隠したりはしない。
■エルビー・カルネテル > 「なるほど。
それならこの街に持ち込んだものだけで申告して、
それとは別に余が時々屋敷で手に入れた物をサテラに供出しようではないか。」
サテラはとても生真面目な感じがするな。
今どき人間の街でも珍しい位に他者を信じている。
余はサテラの人柄にどんどん惹かれていると思う。
「人の街か…。
興味があるなら余と一緒に来てみるか?
その代わり、その下半身は目立つので隠して貰った方がいいが。
余の屋敷の中からその格好でも支障は出ないし、なんなら家庭教師を用意するぞ。」
余はサテラのことが気に入った。
なので肩入れしていくつもりである。
「ほほう、人望があるようだな。
余は見て分かる通りのお坊ちゃんなので、農作業の手伝いはできんが。
他のことなら出来る限り協力しよう。」
抱えている農地に領地の面倒となると大変だろう。
余は腕を組み、何ができるか暫し思案…。
どうやら、お菓子には興味がある様子。
「ほほう。それならば余が今から屋敷に常備しているお気に入りの菓子を用意しようではないか。
余は学院の魔法は苦手だが、違う魔法は得意でな。」
余が両腕を伸ばし、軽く呪文を唱えると、二人の間にスコーンが入った皿とそれを載せた
小型のテーブルが現れる。 テーブルも白くて猫足の割と可愛らしいデザインだ。
「これは余が日頃食べているスコーンと言う菓子でな。
タピオカは流石に常備してないので、今日はこれで我慢してもらえるかな。」