2024/11/08 のログ
ご案内:「セレネルの海 海魔の巣窟」に海魔の巣窟さんが現れました。
海魔の巣窟 > ざー……ざー…………ざざ………

迷宮の浅い階層をさ迷い歩いても、深い階層に潜り最下層を目指しても、
迷宮の中に木霊する潮騒の音は何処までも何時までも侵入者の耳を擽る。

そこに波が無かろうと、そこから海が見えずとも、途切れ離れぬ潮騒の音。
此処はセレネルの海で見つかるダンジョンの中でも初級者向けのダンジョンである海魔の巣窟。

潮の満ち引きに合わせて一定期間浜辺に姿を見せるダンジョンで、中には特定の属性の魔物しか現れず、
しっかりと準備していれば対応が難しくない魔物ばかりであるうえに、よほどのことが発生しない限り、
死者が発生することなく、行方不明者であってもある程度の期間がたてば浜辺に打ち上げられて発見される
比較的安全なダンジョンである。

今宵そんなダンジョンを彷徨うのは魔物の中でも目立つのは、触手を伸ばせば人間の大人ほどのサイズにもなる
巨大なクラゲ『亡霊水母(ぼうれいくらげ)』と呼ばれるモンスターで、普段は深い階層に生息している海魔でも
厄介な部類のモンスターなのだが、今夜は比較的浅い階層をふわふわと漂っている。

天井近くすれすれに、半透明な触手をカーテンのように垂らし、ふわふわふよふよ。

薄暗いダンジョンの中では半透明な身体は視認し難いだろう、それを利用して触手に触れた獲物を捕まえ捕食する、
のだが、どうもタイミング的に繁殖期に当たるらしく、深い階層では繁殖相手が見つからず、こうして浅い階層まで
上がってきたようだ。

海魔の巣窟 > ダンジョンの通路に潮騒以外の音はなく。
ふわりふわりふよふわりと漂う化物水母が空気を揺らしても
一切の音はなく、半透明な触手が剥き出しの岩肌に触れても音はない。

浅い階層を形成しているのは天然の岩肌と変わらぬ物質。
奥へ奥へと足を踏み込まない限りはそこらの洞窟とあまりかわらぬ造りである。

その中を弱弱しい輝きで照らしているのは塩水でも育つ特殊な光苔と、
所々に点在する潮だまりに生息している発光する微生物。
当然だがこの微生物も非常に厄介で、ほんのりと輝く怪しげな光を
凝視していると一種の催眠状態に陥る事になるのだが、
普通に光源として使っている程度では、そこまで影響はないだろう。

ここは初心者向けと定義されているが立派なダンジョンである。
足を踏み入れる者はそれを忘れてはならない。

海魔の巣窟 > 浅い階層にあがってきた亡霊水母(ボウレイクラゲ)。
潮の香りのする空気を揺らしながら、薄暗い通路をふわふわと揺れながら浮いている。

いつまでも鳴り続ける筈の潮騒の音がだんだんと静かになると、それに合わせてか、偶然のタイミングか、浅い階層で浮いていた亡霊水母は再び迷宮の奥へと姿を消すのであった。

ご案内:「セレネルの海 海魔の巣窟」から海魔の巣窟さんが去りました。