2024/07/21 のログ
ご案内:「設定自由部屋4」にレオンハルトさんが現れました。
レオンハルト > 【お約束待機中】
ご案内:「設定自由部屋4」にアイシャさんが現れました。
レオンハルト > イフレーア・カルネテル家の対外交渉はだいたいが自分に回ってくる。
それが自分の一芸であるし、自分の得意分野なのでそのこと自体に文句はなく、
むしろありがたいこととも考えている。

とは言え、自分だけでは得意とは言えないことも色々ある
そういう時は家族に頼ることも時としてはある。

今日手にしている者もそういう類。
すぐ下の妹からお願いされた物品だが、ものとしては複数見つかり、
状況から本物と偽物が存在しているようですらあった。

だが物品鑑定は自分の範疇外。
故に、末妹に鑑定を依頼して、最も良いと判断されたものを調達したというわけだった。

これで注文は完遂できただろうという安堵と、家族の役に立った嬉しさと、品物とを手に
すぐ下の妹……アイシャの部屋へとやってきたのだ。
扉を軽くノックして

「アイシャ、レオンハルトだ。部屋にいるかい?」

扉の外から声をかける。
家族とは言え、これはマナーだ。
まずは、室内からの反応を待つ。

アイシャ > 「…んん…もう、これもだわ」

去年気に入ってきていた茜色のワンピースをしまいこんで、結局は白と灰色の淡いストライプが入ったワンピースに袖を通す。
気にいっていた服たちがすべて過去のものになってしまったのは、この盾に伸びずに一部だけが育ってしまった今の体つきのせいだ。
母や姉のようにどうして上にも伸びなかったのだろうと、自分の体つきを恨めしく思う。

「とにかく、今のうちに直しを頼んでおかなくちゃ…」

そうしなくては、次の季節に着るものが何もなくなってしまう。
去年はそれで一つの季節の間ずっと大変な思いをしたものだ。

ひとしきり落ち着いたところでソファに腰掛ければ、昨日書庫から引っ張り出してきた本を読みだそうとページをめくったところでその思考を中断するノック音が聞こえた。
続いて聞こえた名前に、本を置いて扉へと小走りで近づいた。
返事をするよりも先に扉を開けてしまうのは嬉しさゆえの先走りでもある。

「兄さま!
…あっ、ええと、はい、います…」

ぱっと喜びの表情を見せたのもつかの間、少しの間が空く。
今の自分の出迎え方は淑女としての礼儀がなっていない自覚がある。
少しばつが悪そうな顔であとから付け足す返事をつけて中へと促した。

レオンハルト > 返事より先に開く扉。それに一瞬ビックリした表情を見せる。
普段は家族の中でもそういう表情を滅多に見せない自分故に、アイシャは珍しいものを見れたのかもしれない。
が、次の瞬間には小さく噴き出して、楽し気な笑い声がこぼれる。

「ははははっ……ああ、アイシャ。部屋にいてくれたよかったよ。
いきなり扉が開いたのはびっくりしたが、そこまで楽しみにしていてくれたのなら冥利に尽きるというものだ。」

淑女としての礼儀についても、喜びの表情の後の間、それが彼女自身が理解している証でもある。
ならば、あえて自分から言う必要もないだろうし、何より家族の間なのだから気にすることでもないだろう。
だからこそ、妹の行動を笑って肯定してから、手にしている包みを持ち上げて。

「アイシャに頼まれていたものが手に入ってね。これを届けに来た。
あとは、時間も空いているからアイシャも時間があるなら少し話をしていこうかと思ってね。
……話と言っても雑談だよ?別に勉強の話ではない。」

言葉を向けてから、どちらかというと彼女にとっては厳しい教師に分類されるかもしれない己の誘い故に、
あまりいらないかもしれない言葉を少しだけ付け加えてしまった。

アイシャ > 「もうっ、そんなに笑わないで。
…でも、兄さまがそんなに驚くだなんて珍しいわ。
今の兄さまのお顔は、わたしだけの宝物ね」

少しだけ唇を尖らせたが、次の瞬間には自分の礼儀がなっていなかったこともそっと許してくれる優しさが嬉して、はにかんだような表情にすぐに変わってしまった。

掲げられた包みを見れば、再びぱっと表情は輝いて自分よりも背の高い兄を見上げる。

「勿論だわ、大歓迎よ。
今日はわたしが兄さまを独り占めね、ふふ。
そうだわ、折角だからお茶を用意してもらいましょう」

丁度廊下を通りかかった使用人が居れば二人分の茶の用意をするように頼んだ後、部屋の戸から離れて自分もソファへと改めて腰掛けながら空いているソファを手で示して兄にすすめる。
今日は勉強ではないと聞けばさらに心も踊るというもの。

「早速見せてくださる?
兄さまが選んでくださったならきっと素敵に違いないわ」

レオンハルト > 「流石に俺だって驚くさ。他のきょうだい達より反応が鈍いだけで。
……そうだね、今のはアイシャだけの宝物にしておいてくれ。」

家族だけの時は一人称が変わる。
それはリラックスしている証でもあって。

包みを見て見上げる顔を見下ろす形。
このように喜んでもらえるからこそやってよかったと思うもの。

アイシャが茶を頼み、部屋へと招かれれば室内へ。
そして進められたソファに腰を掛ければ、包みをテーブルの上へと。

「ああ、もちろん。いくつかの宝飾店に依頼してね。
コンペの形にしたんだが、流石にこういうものについては俺よりも詳しい子がいるだろう?
だから、最終判定はプシュケに任せた。
その分、もの自体は間違いないはずさ。」

そんな言葉を口にしながら包みを解けば、小さな箱。
その箱を開いて、アイシャの方へと向けると、
その中には、アンティークの銀貨を使ったネックレス。
とはいえ、ごてごてしたものではなく、だからと言って質素すぎることもなく。
趣味が良いと言えるデザインのものが現れることだろう。

アイシャ > 「あら、鈍いだなんて思っていないわ。
兄さまはきょうだいの誰よりも冷静だということでしょう?
わたしは、冷静な兄さまも驚いた兄さまもどちらも大好きだわ」

テーブルの上に置いていた二冊の本は近くの飾り棚の上に一度移せばその上に置かれた包みが開かれるのを期待いっぱいの瞳で見つめる。
箱のふたが開かれたなら、上がるのは囁くような感動の声。

「とっても素敵だわ…」

銀は触れるとどうしても曇りやすい。
だから箱をそっと両の手で、鳥の雛を収めるかのように持ち上げる。
箱ごと傾ければ、アンティークならではの甘い輝きが瞳にやさしく輝く。

「プッシィが選んでくれたのなら本当に間違いがないわね。
こんな素敵なものになるなんて…やっぱり兄さまに相談して本当に良かった」

そっと箱を膝の上に下した少女は、銀貨と暫し見つめあう。
見つめあううちに、銀貨の上は小さな星のような光がちらつき始めた。

「…"どうか、花嫁の未来が喜びで満ち足りたものになりますように“」

"それ"は精霊に願う加護の言葉。
どうやら古き銀に宿るのは心根の優しい精霊のようす。
姿かたちは見えなくとも、少女の願いに耳を傾け、その願いを叶えることを約束するように銀貨の上で星屑のような光がキラキラと踊り、それから儚く消えた。

加護を与えるというほどのものではない。
だが、少なくとも花嫁がこの首飾りに失望されることがない限り、その生活は財産に困ることはないだろう。
銀貨のネックレスは近いうちに職を辞す、長く少女に仕えてくれた侍女への贈り物にと求めたものだ。

「さあ、これでいいわ。
ありがとう兄さま、本当に素敵なものを贈ってあげられる」

レオンハルト > 見せた宝飾品を気にいってくれたのは、その表情と声を耳にすればすぐに分かること。
ひとつの大仕事を終えた安堵を内心で噛みしめていれば、一つだけ残っている疑問が首をもたげる。

アイシャは物持ちが良い方だ。
だから、衣服にしても気に入ったものを繕って長く使うタイプと思っている。
そんなアイシャが強い熱を込めて欲しいと言ってきたときに、常のアイシャとの間で違和感を感じたその部分。

だが、そのネックレスにアイシャが向けた『祝福の言葉』がその疑問を氷解させる。
そのネックレスはアイシャ自身が使うものではなく……

「ああ、そういえばそうだったね。アイシャの侍女で一人、婚姻で職を辞す子がいるんだった。
その子に、というわけか。……花嫁には忘れられない素敵なプレゼントになるだろうね。
俺やプシュケが尽力したからだけではなくて、このネックレスには本当に素敵な魂が込められているから。」

アイシャの言葉を受けて、己も言葉を付け加える。
同じものを探すのは難しくはない。
だが、このネックレスは間違いなく唯一無二のものになったのだ。
その侍女にとっては、長く仕えた主の手によって、己の婚姻の祝福という未来への贈り物として。

アイシャ > 「そうなの。
本当に長く私のわがままを聞き続けてくれたんだもの。
だから、特別なものにしたかったのよ」

次の出番の日まで休んでもらうように箱にそっと蓋をすると一度ソファから立ち上がる。
包みは改めて送るためのものを自分で用意するまでの仮として元のように戻し、飾り棚の中の引き出しへとそっと隠した。

その頃合いでちょうどノックが部屋に響けば茶の準備ができた知らせ。
今度は慌てて飛び出すこともなく、侍女たちが粛々とテーブルの上に茶の準備をそろえ、そして速やかに退出していく。
部屋には気に入りの紅茶の香りとささやかな焼き菓子の甘く香ばしい香りが残る。

「そうそう、聞いて兄さま。
わたし、漸くひとりで紅茶を買いに行けるようになったのよ。
茶商のおじさまったらびっくりしていたわ」

ティーポットを持ち上げればまずは兄のカップに。
それから自分の前のカップにと順に紅茶を注ぐ。
一杯目は何も入れずに楽しむのが好きだ。
気にいっているさわやかな香りも、昔からずっと変わらない。

一口飲んで、それから少しだけ憂鬱気な呟きを漏らす。

「仕えてくれる皆もそうだけど…兄さまやきょうだいの皆も、いつかは結婚しちゃうのかしら」

それは貴族の子女であれば避けては通れないものだろう。
ちらりと、兄のほうを見やるのは他のきょうだいの婚姻に関する噂の有無を知っているかと問うため。

レオンハルト > 「なるほどね。アイシャのその心根はきっと彼女をより幸せにしてくれるだろうね。」

本当に心優しい妹の頼まれごとを全力で努めて良かったと、片付ける様を見ながら心穏やかに。
そうしていれば、ティーセットを届けた使用人が速やかに退出するまで、その所作を受け入れて、二人とも静かにしていて、その後、アイシャがまた口を開く。

「おお、それはすごいじゃないか。
いつもの茶商だろう?だとすれば、この家からも結構な距離があっただろうに。」

自分で買い物に行けたと誇る妹の様子に心からの賛辞を贈る。
心に傷を負ったからこそ、外の世界が怖くなってしまった妹が、
自ら外に出て買い物が出来たというのだ。
それこそ賞賛に値することだと。

そうしていれば、先に注いでくれた紅茶の入ったカップ。
妹が彼女自身のカップにも注ぎ終えるまでそのまま待って、カップを取るタイミングは自分が合わせて同時にと。
長幼をなど、いらぬマナーは考えれば幾らでもあるが、きょうだいの間であれば気にすることもないというかのように。

己は元々紅茶は常にストレートで楽しむタイプだ。
お茶請けで味は変化するので、紅茶自体は変える必要がないと考えるため。
紅茶の香りや味に雑味が入るくらいなら、なにも入れない方がいいという小さなこだわり。

そんな中で、憂鬱げなつぶやきを口にするアイシャ。
その内容が自分への問いかけだと認識した己は、少しだけ考えてから口を開く。

「ソル兄さまは、相変わらずプシュケにご執心だ。
他の女には目もくれないだろうね。

アリマ姉さんは一番よくわからない。
ただ、浮いた話は聞かないね。

俺はいろんな意味でそれどころではない。
母上の噂を消すのが大変だなのに、最近は父上まで面白いことになってしまうことがあるみたいだしね。

テミス、アステリア、プシュケはまだ幼い。
あの年齢での婚姻申し込みは、父上も、母上も認めないだろうね。
特に母上は、子が産めるように体が出来なければアステリアとプシュケは絶対に嫁には出さないだろうし、
テミスについては特に可愛がりたい様子だから、まだまだ手元に置いておきたいんだろうね。

まぁ……」

自分の知っている範囲の内容だけを言葉にしておいて、一呼吸おいてから紅茶を一口楽しんで、今一度開くのは

「……俺だって全てを知っているわけではないから、こっそり誰かと愛を育んでいました、となればどうにも分からないが。

まぁ、俺を含めてウチの家族は『仲が良い』だろう?
そういう意味でも、他に目がいかない、のかもしれない。」

特に噂に強くなくても、親きょうだいで体を重ねることも当たり前に行われる家だ。

己はそんな中でもアイシャは特に大切に扱ってしまっている所がある。
美しく、愛らしいのだから、劣情を感じないわけがない。
だが、過去があるからこそより大切に扱いたいと思う自分もいて。
それが、疎外感になっていなければよいがとも悩むという、我ながらなかなかに複雑な感情を抱いているのだった。

アイシャ > 「そう、だから今日のこのお茶の葉は私が買ってきたものよ。
とっても怖かったけれど…でも、楽しかったわ。
ひとつでもできることが増えると、嬉しいものね」

ちょっとだけ誇らしい気持ちになって胸を逸らしたものの、その動きに合わせて少しばかり胸の重みが揺れて憂鬱な気持ちになる。
ああ、いったい今年は何着直しを頼まねばならないのか。

侍女が幸せになることを願う気持ちは本当だ。
だが、それでも自分が取り残される一抹の寂しさを感じずにはいられないのもまた事実。
だからこそ、きょうだいが結婚をして家を出る可能性を考えるほど、外の世界に未だひとりでは歩いていけない自分だけが取り残される恐怖を感じずにはいられない。

「やっぱり噂話は兄さまに教えてもらうのが一番だわ。
兄上とプッシィは昔から仲が良かったけれど…」

言外に伝わる長兄と下の妹の関係に少し口ごもって紅茶で言葉を流しこむ。
姉のことがわからないのは自分も同じだったから、無言のまま首を縦に振った。

「お母さまったら、本当に自由なんだから。
本当に兄さまは働き者ね。
お父さま…が、面白いの?何かあったのかしら」

下の三人に対する兄の考えに関しては同意が出来るもので、もう一度首を縦に振る。
他の誰かに目がいかない、それもうなずける話だ。

「だって、家族みんな素敵だもの。
…他の誰かなんて、霞んで見えてしまうのかもしれないわ」

紅茶をもう一口。
ふう、と息をついてカップとソーサーをテーブルの上に置いた。
ちらりと書庫から引っ張り出してきた本に視線を向けながら

「わたしだけね。
いつまでも、部屋の籠の中にいるのは」

呟きには寂しさと、ほんの少しの自嘲が混じる。

レオンハルト > 「ほう、それはますますこの紅茶が美味しく感じて来るな。
アイシャの初めてをいただいているようなものだ。
ああ、嬉しいだろう?
なんでも新しいことが出来るようになったリ、したりするのは本当にうれしいものさ。」

アイシャの胸が揺れるのは、己も目撃した。
ボディバランスを考えると、最も母の血を引いたのはアイシャなのかもしれない。
そんなことを考えはしたものの流石に口には出さなかった。

「なんだかんだで頼まれごとも一番多い分、全員とそれなりに会っているからね。」

長兄と末妹は、まぁ、そういうことだ。
ただ、末妹はそれ以外でもそういうことなのだから長兄も大変だろう。

「でもまぁ、そういうことをしても、父上と二人でそんな話で盛り上がると言うのだから、
夫婦仲が良いのはうらやむことなのかもしれないけれどね。

……おや、少し前に噂になっていたんだが、アイシャには届いていなかったのかな。
俺より上のきょうだいや母上がいらっしゃらない時に、父上付きのメイドが血相を変えて飛び込んできたんだよ。
話しも要領を得ないし、直接お会いした方がいいだろうと思って、父上の部屋へ俺が行った。
そしたら何が起きていたと思う?」

ここで言葉を切って紅茶を口にするが、楽し気と苦笑のちょうど中間くらいの表情のまま。
一息ついてから改めて口を開いたときの言葉は

「……父上が、アステリアやプシュケと同じくらいの女の子になってた。」

表情から楽しんではいるが、冗談を言っているのではないことは知れるだろう。

「ああ、そうだね。
家族誰を見ても、とても素敵で他所を見る気もなくなるのはわかる。

アイシャの言葉に同意してから、アイシャの視線の動きに吊られて己も同じ本に視線を向ける。
距離があるから書名が分かるかどうかはわからないけれど。

「そんなことはないさ。
この紅茶だって買えるようになった。
そう考えると、アステリアと同じくらいじゃないかな?
それに、アイシャも他のきょうだいとは比べるべくもない魅力があるからね。」

アイシャと一番年が近いのは己だ。
その分、アイシャに向ける思いが強くなるのもまた自然だったのかもしれない。

アイシャ > 「もう、兄さまったら!…でも、そうね。
次はどんなことをしてみようか、少しわくわくするわ」

言い方が少し気になってまた頬を膨らましもしたがすぐにそれも掻き消える。
きょうだいの話、両親の話。
兄が丁寧に教えてくれる部屋の外で起きていることは、自分にとっては同じ邸の中にいても目新しいことばかりだ。

「えっ……ええ?
おとうさまが…おんなのこ…。
おんなのこ…お父さまが…?」

驚きのあまり頭が追い付いて行かない。
見上げるほど大きく体格の良い父が、妹たちと同じくらいに。
思わず視線が天井を見上げ、そのあとにテーブルの上ぐらいに落ちる。

「世の中、不思議なこともあるものね…。
兄さま、その時もきっと驚いたお顔をなさったんでしょう?
もう、知っていたら絶対に会いに行ったのに!」

自分だけ知らないのは恐らく自分付の侍女たちの間で情報統制がとられていたからだろう。
理由は解らないが、恐らく余計な心配はさせまいとのことだろう。
あるいは、少女が知ったところで何かできることがあるわけでもないとの判断か。

「アスティと一緒…ふふ、ちょっとだけ成長したものね。
…わたしね、海を見たことがないでしょう。
昨日書庫に知らない人がいて、少しだけ話をしたのだけど…。
今度は、海を見に行ってみたいわ。
その時には、兄さま一緒に来てくださる?」

本から視線を戻して兄を見上げる視線を送るのは、小さいころからのおねだりの時のお決まりの仕草。
何かと手間がかかる少女にあれこれ丁寧に世話を焼いてくれた人だ。
もちろん一番信頼しているし、自分でも彼に一番なついている自覚もある。
そして、彼が自分をとても甘やかしてくれていることも知った上で。

「おねがい、兄さま」

見上げて、ねがう。

レオンハルト > 「ああ。父上が、女の子。
その前日くらいにアステリアの前でプシュケと呼んでしまったみたいで怒られた、と言ってたから、
恐らく犯人は、我が家の小さい錬金術師だと俺は思ってるがね。」

この手の不思議な事件の犯人は、8割が母、2割が双子の姉だ。
この二人が腕利きの錬金術師なのだから、頭が痛い。
とはいえ、アステリアは化粧品作成の方が面白いのか、全然悪戯の範疇なのだが。

「驚いた顔をしていた、のは間違いないだろうね。
ただ、今日のアイシャに向けたほどは驚いてはいなかったはずだよ。
我が家で『そういう』問題は、驚きはするが不思議ではない。」

この手の問題を全て処理しているのだから仕方がないのかもしれない。
その分冷静になるのもまた当然なのだろう。

「……そういう意味では、今日のアイシャは勲章ものかな?
是非、アイシャだけの宝物にしてくれ、本当に。」

こうして改めて考えてみると、少し気恥しくなるから不思議だ。
そして、見に行ったのに、の言葉には笑顔を向けて

「表情には出ていなくても、だいぶ衝撃的だったんだよ。
この事をどうするかだけに集中して、他の事を考えていられなかった。
今度見つけたら、アイシャにも教えよう。
邸内でこんな刺激的な事があるなら、アイシャもきっと楽しめるだろうから。」

少し冗句めかした言葉ではあるものの、
次は間違いなくそうしようと考えた。
こういう刺激も外への興味になってくれるかもしれないし。

そして、海の話をしてくるアイシャ。
一通り、ひとしきり、その言葉を耳にしてから頷いて。

「ああ、もちろん。
アステリアはプシュケのためなら何でもできるそうだよ。
そういう意味では、距離が近すぎるのは考え物だがあの双子は良い意味で補完しあっているね。

ああ、俺がアイシャのお願いを断るはずもないだろう?
もちろん、喜んで一緒に行こう。」

見上げてくるアイシャの視線を、見下ろす形でしっかりと受け止めて、
きちんとその目を見て約束をした。

アステリアにとってのプシュケは、アイシャにとっては己だろうから。
だから、アイシャの願いは全てかなえてあげようと思っているのだ。

アイシャ > 「あら、それはお父さまが悪いわ」

理由を聞けばすぐに妹の味方につく。
父にとって少しでも良き娘でありたいとは常々思っているが、そのこととは話が別である。
もちろん、自分が妹手製の化粧品に世話になっていることもあるだろう。
今日もこの肌からはほの甘く野の花が香る。

「本当に?
兄さま、本当は驚いた顔をなさったのに隠しているなんてことはない?」

じ、と兄の表情をみて視線を送ったが、嘘でもなさそうに思える。
だから本当に、と念を押す言葉に満足そうな笑みを浮かべた。

「ええ、必ず教えてね。絶対よ。
ふふ、最初聞いた時にはびっくりしたけれど、何だか楽しみになってきたわ」

くすくすと、小さな笑い声。
独りで過ごすことが多いけれど、それでも少女の表情は何時でも変化に富んでいる。

妹たちの相互補完を例に挙げられると随分とお互いの距離が近い気もしたが、それでも自分のために心を砕いてくれる兄の気持ちがとても嬉しい。

「嬉しい!大好きよ、兄さま。
一日では惜しいから、何日かは近くに泊まって居てみたいわ。
朝起きたら海を見て、昼には海沿いの街を見て回って…夜になってもまたみにいったら疲れてしまうかしら。

家がちょっとだけ恋しくなったときは、昔みたいにまた一緒のベッドで寝てくださる?」

誘拐の被害にあってからというものの、よく独りで寝るのが怖いと泣きながら兄の部屋の扉を叩いたものだ。
随分長いこと一緒に寝て貰っていたのに、ある日ぱったりと扉を開けてもらえなくなったのはいつ頃だっただろう。
ティーカップを置いた指先を、そのころを懐かしむように、甘えるように兄の袖を手繰ろうと伸ばした。

レオンハルト > 「ああ、あれは父上が悪い。俺もその場でそう言ったよ。」

双子とは言え、あの二人は結構見分けがつきやすい。
内気な姉と、不思議ちゃんの妹。
いや、妹は気が強い不思議ちゃんか。
だから、同じことを己も告げたのだ。

「ああ、本当に。
驚きと不思議が同時に来ることなんてめったにないんだ。
今日は、いきなり開いて驚いたのと、アイシャらしくない行動の不思議が同時に来たからね。

まぁ、あのネックレスの理由が分かれば当然のことだったが、
アイシャに上手に隠されたね。」

なので一本取られた、と付け加えて笑う。
必ず教えてにはもちろん、と請け負って。
妹の表情の変化は見ていて心地よい。
己にとっては、特に。

「そうだね。せっかく行くんだ。数日は滞在したいな。
折角なら、朝起きたら窓からすぐに海が見える宿にしようか。
それなら、日中と夜に歩き回っても、朝起きたらすぐに見える。
もちろん、全て波打ち際まで行くのも大歓迎だがね。

そうだな……」


海の話で心から喜ぶ様子にこちらの心も温かくなる。
一通りの希望を耳にして、その後に付け加えられた言葉。

珍しく、髪の毛をくしゃくしゃとかきむしって。
お互いに大人になっているし、『そういう』家族でもあるのだから隠しておくのも変な話だ。
そう考えれば、一度だけ深呼吸のあとで口を開く。

「もちろん、構わないんだが、以前一緒に寝て欲しいと言われても扉を開かなくなったことがあっただろう?
あれは、アイシャが美しく、愛らしくなりすぎて、襲ってしまうのではないかと怖くなったからなんだ。
あれ以来、俺も大人になったし、衝動よりも道理が勝るようになった。もう襲うなんてことはないだろう。ただ……」

袖に伸びてきた妹の指に、そっと己の指を絡めて結び

「……その時は、アイシャが望まない限り一線を越えることはしないから、その愛らしい姿に直接触れることは許してほしい。」

実は自分でも気にしていたことを告白できた安堵の様子と、
俺も男なんでね、と付け加えた言葉は薄い苦笑が混じっていた。

アイシャ > 兄が妹たちについて全く同じようなことを思っていたらしくて思わず笑ってしまった。
下の妹のことを不思議だと思ったことはないが、上の妹の内気さはよく理解しているし、どんな二人でも自分の妹達であることに変わりはない。

「別に、隠したつもりはなかったのよ。
でも、何処から伝わってしまうかわからなかったんだもの。
隠していて、ごめんなさい…」

少ししょげた気配と共に三つ編みの先がわずかに跳ねる。
けれどまたすぐに表情は明るく変わった。
随分と楽しみな不思議があるかもしれないし、楽しみな未来の話が更に笑顔に花を添える。
兄が語ってくれる旅のプランはとてもステキで、夢を見るかのようだった。

けれど、それが当の兄の行動によって少し雰囲気が変わっていくのを感じた。
何か考えがあるのか、別の何かがあるのかわからず、次の言葉を待つばかり。

「…兄さま」

少し、呆けたような声になってしまった。
急に扉を閉ざされたころは、嫌われてしまったのかと悩んだ時期もあった。
けれど、その理由を改めて聞けばじわりと眦があつくなる。

「それは、わたしが望んだら、もっと触れてくださるって、そういうこと…?」

絡まった指先を確かめるように、きゅっと力を籠める指先は少し震えて。

レオンハルト > 隠したつもりはなかった、と少ししょげる様子を見れば、いやいや、と軽く手を振って。

「いやいや、隠したことをどうこう言っているわけではないんだ。
むしろ、上手に隠したな、と感心しているくらいさ。
ああいうビックリなら構わないし、まぁ……

アイシャにみられるなら、別にいいさ。」

未来のプランの後、己が少し口ごもる所で、己の言葉を待つアイシャ。
そしてその理由を口にした後、呼ばれ、続いた言葉に、己の体にも少し熱がこもる。
こちらからも、妹の力に応じるように、こちらからも少し力を籠め返せば

「ああ、もちろん。……アイシャはどんな時でも俺の宝物だ。
アイシャが望むなら、望むままに。何でも応じるさ。
断る理由など、ない。」

急に扉を閉ざした頃は、自分が未熟だったのだと付け加えれば、
同じきょうだいにでもめったに見せない……いや、ほぼアイシャにしか見せたことのない穏やかな笑みを向けて返事を返した。

アイシャ > 「…上手に隠せていたかしら。
でも、兄さまがそう仰るなら信じるわ。
さっきのお顔はわたしだけのものね」

うん、うん、と自分の胸の内に刻み込むように、反芻しながら仕舞い込む。

今日は兄の色んな表情を見てばかりだ。
驚いたと思ったら、今度は柔らく穏やかな笑みまで振ってくる。
沢山、自分の胸の中に宝物が増えていく。

「…本当に?
わたし…わたし、あの時はきっと嫌われてしまったんだと思って」

ぽろぽろと涙が落ちる。

思えばあのころから家族としての愛情以外の何かを持ち始めていたのだろう。
美しい、愛らしいと兄は言ってくれたが、それでも自分の体がどこか疎ましいのもちょうど胸のふくらみ始めたころと兄が扉を閉ざしたころが重なったことも理由の一つだ。

自分も少しだけ大人になった。
あれからたくさん本も読んだし沢山のことも知った。
こういう家に育ちながら、それでも未だ最後のひとひらを頑なに守り続けていたのは

「…すき。
兄さまが、好き。大好きなの。
…わがままなのは、わかっているの、でも…

でも、でも、他の誰かの"いいひと"になんて、ならないで…!」

ぽろぽろと落ちる涙が止まらないまま請う。
永遠に自分だけのものにはなることがないと思っていた男から明かされた感情を手放したくなくて願う。

彼を自分につなぎ留めておくためなら、その最後のひとひらですら明け渡しても構わないと思うほど、強く。

レオンハルト > 「ああ、本当だ。俺もあの時は嫌われてしまうだろうと思ってた。」

同じようなことを考えていたんだな、とつぶやくように言葉を紡ぐ。
成長していく中で、より女を意識させるようになっていく妹に、
今のままではいつしか襲ってしまうだろうと感じる自分の中の獣を抑え込むために扉を閉ざした。
でも、理由を明かさなければお互いに傷を残す。

こういう家に育っているので、妹が自らを慰めたり、もしくは誰かと行為に及んでいる事も知っていたし、
そんな中でも一線を保ってそこを超えていないことも耳に入って知っていた。

ようやく己の中の獣を飼いならし、偶然ちょうど良い会話のタイミングが合ったために言葉にした秘密。
だが、その秘密はお互いのすれ違いを露にすることとなった。

妹の告白。涙を流しながら、強い感情の爆発と、秘めていた想いの告白。
それを向けられて、受け止めて、やっぱりあの日ではなかったんだな、と冷静な自分が自分につぶやきながらも、
熱い想いを秘めていた自分の行動はもう抑えることが出来ない。
緩く絡めていた手にもう少し力を込めてアイシャを引き寄せて、
逆の手でしっかりと抱き寄せれば、鼻が、吐息が触れ合うほどの距離で見つめ、返事の言葉を紡ぐ。

「……アイシャから言わせてしまったね。
本当は俺から言うべきだと思っていたのに。

俺も、アイシャを愛している。
だから、わがままでもなんでもないよ。

新しい傷をつけるのではないかと怖がってあの日は避けてしまったが……」

ここまで紡いでから、抱き寄せた手と反対の手。
つないでいたアイシャの手を己の胸元に当てさせて、己の早まっている鼓動を伝えながら、
自由になった手でアイシャの涙をぬぐう。
まだこぼれ続けているかもしれないけれど、まず一度。

「ああ、アイシャがそう望むなら、俺は誰かのものになどならない。アイシャのことも手放さない。
たとえ、社会的にお互いに伴侶を選ばざるを得なくなったとしても、倫理を外れても、
俺はアイシャを絶対に手放さない。」

倫ならぬ愛の告白。
この先、あらゆる障害があったとしても、常に隣にあり、常に愛することを誓う背徳の言葉。
近親相姦であり、もしそういう道となったのなら、不倫をも肯定して決して離さないと告げる言葉は、
あらゆる人倫を無視した愛を貫くという獣の誓い。
だが、それでも良い、とはっきりと口にした後で、そっと顔を寄せて己の唇を妹の唇に重ねた。
今は誓いというかのように重ねて触れ合う程度のキスだけれど、
朝夕、帰宅の挨拶のキスなどではなくて、間違いない愛情を込めた、道を外れるためのキス。

アイシャ > 兄の腕の中に、自分が収まっている。
本当にこれは現実なのだろうか、都合のいい白昼夢ではないのかと不安になったが、その思考を遮るように掌が兄の胸の鼓動を伝えてくる。

小説を読み漁っては昂る熱を抑えられずに、何度自分を抱くこの手を夢想に描いて自分を慰めたことか。
それが、今こうして自分の涙をぬぐい、この身に触れ、自分の誰にも許してもらえない愛を受け入れて、与えてくれるなどと、

ああ、本当に夢ではないのだ。

「嬉しい。
本当に…、夢じゃないのね」

至近距離で告げられる誓いの言葉に、自分もだと応えるように何度も頷いた。
柔らかく寄せられた唇はきっと互いに紅茶の香りが残るもの。
自分からもその誓いを肯定し、受け入れることを示すために唇を同じように重ねる。

この感情を自覚したときから既に倫理なんてものには別れを告げた。
今更あの道の上には戻れまい。
もちろん、戻る気も更々ない。

「わたしをずっと、兄さまだけのものにして」

自分を命尽きるまで支配するのは兄ひとりだけ。
兄にとっても、自分が運命の女であるように祈りを捧げながら、一度では足りないと二つ、三つと口づけを重ねた。

「兄さまになら、いくら傷をつけられても構わないのに」

胸の奥に残る傷が、痛みが、茨の道を歩む自分への罰であるならいくらでも受け入れよう。
体の傷は跡になってもいつかは癒えてしまう。
だから、何度でも、何度でもこの茨の痛みを自分だけに与え続けてほしいと願う。
震える指先を隠さないまま、兄の背に腕を回して、誰にも渡さないと告げるようにきゅっと力を込めた。

レオンハルト > 腕の中に妹を収め、口づけを落とせば、妹からも返ってくる口づけ。
お互いの想いは重なっていたのだと理解すれば、抱き寄せる腕に力がこもる。

「ああ、夢じゃない。
しっかりとアイシャの熱を感じているし、アイシャの重みも、アイシャの香りも、俺は間違いなく感じている。
これは、現実だ。」

夢ではない、と告げる妹に、己もまた夢ではないことをかみしめるように口にして。
己の誓いに頷く妹、少し離れていたお互いの距離が一気に近づいた。
お互いに、倫理は既に手放していた。
だから、獣と言われてもこの道を進むのだと。

「ああ、分かった。アイシャをずっと、俺のものにする。」
触れるだけのキスだけれど、お互いに何度も何度も繰り返していれば

「たとえそうだったとしても、愛する人を傷つけたいとは思わないだろう?
だから、アイシャの傷は別に俺のためにあるものではないことはわかってくれ。
これから人としておかしいとつけられる傷は、アイシャだけではなく俺にも刻まれる。
同じものが刻まれるのならば、二人なら乗り越えられるだろう。」

だから、過去の傷は違うのだ、と。
そして力を込めてしっかりと抱きしめてくる妹に、己もまたしっかりと抱きしめて応じてから、ふと、目に入る時計。

今一度、口づけをしてから額を合わせ、至近距離で穏やかに微笑めば

「アイシャ、俺は夜に、アイシャを抱こう。また、この部屋で。」

短い言葉だが、今まで守ってきたものを、自分がもらうという言葉。
そして、間もなく家族が集まる時間故に、一旦いつもに戻る必要があると。
ただ、胸にあてさせていた手を取って、己の股間にそっと指先を触れさせれば、
熱く固くなったものを感じさせるだろう。

「……本当はすぐにでも、抱いてしまいたいんだがね。」

そのまま暫し、名残惜しそうに抱き合っていたが、そろそろ時間に余裕がなくなるとなったころに、
身を離し、二人連れ立って食堂へと降りていくのだろう。
お互いの体から、菫の香りを漂わせながら。

アイシャ > 与えられる言葉が胸に響くたびに、また涙が溢れそうになるのを止められない。
けれどこれは喜びがあふれて形になったものなのだから、止まらなくても仕方がないだろう。

「もう、兄さまったら。
女性に重みはすこし宜しくないんじゃなくて?」

今の空気にはそぐわないかも知れない言葉だったが、少しくらいなら許されるだろう。
漸く涙も止まりそうなので、兄の胸に頬を寄せて、まるで自分の香りを染みつかせるようにその腕の名から身じろいで自分のおさまりのいい場所を探す姿は小動物にもどこか似て。

「…ええ。
兄さまと一緒なら、どこまででも」

たとえそれが深淵の底でもともに在れるのならば構わない。
その気持ちは、自分とて同じだから。
何度目かの口づけの後に囁かれる言葉に、目元には朱がのぼる。
指先から布越しに感じ取った熱にあてられて心なしか、体温が少し上がったような気すらした。

「…わたしが眠ってしまわないようにはやくいらしてね?」

本当は、とささやかれる言葉にぱっと散るのも頬の赤。
菫の香りはより甘やかに肌を彩りながら、それでも時間が来れば少しだけ顔を洗う時間を貰って二人で食堂へと向かう。
許されるなら、昔のように、兄の腕に自分の腕を絡めながら。

ご案内:「設定自由部屋4」からレオンハルトさんが去りました。
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