2024/05/16 のログ
ご案内:「墓地」にメアリさんが現れました。
メアリ > こんな夜遅くともなれば頼りになるのは夜空に浮かぶ月の光くらい。
そんな薄い光に照らされた人気のない墓地の中で、何処からともなく地面を踏む微かな足音が聞こえると
時が止ったかのようなその墓地で影がひとつ揺らぐ。

足音の主はあるひとつの墓の前でぴたりと足を止めると、墓に刻まれた名前を静かに見つめ
出来たばかりであろう生傷だらけの美麗な顔を僅かに和らげては小さく息を零すと共に唇を開く―――

「……ごめんね、久しぶりに会いに来たのに、今日はお花持ってきてないの。」

墓の下に眠る誰かに親し気に話しかける女は、ぽつ、ぽつ、と言葉を零しながらゆっくりしゃがみ込み
膝を緩く抱えながら、墓石に刻まれた名前に指先を伸ばして、そこに溜まる土埃を払った。

「次に来るときはちゃんと、好きだったお花持ってくるからね、今日は許して。」

そのまま滑るようにして地面にべったりと腰を落とせば、墓地に一瞬風がびゅう、と走り
女の髪や頬を撫でるようにして抜けてゆく。

メアリ > こんな時間に女が一人佇んでいれば、墓荒らしか、それこそ化けて出た幽霊かと勘違いでもされるかもしれない。

「――……私はどうするのが正解なんだろうね。
貴方ならすぐ、正しい答えを見つけられたのでしょうけど。
頭の悪い私にはさっぱりで。」

何かを思うようにしばし黙り込んだ女は、また墓の中に眠る相手に向けて一方的に話しかけるも当然
いくら待とうが返答など返ってくる訳もなく、女もそれを理解して最後にはどこか自嘲気味に小さく笑った。

――風が近くの木の葉を撫でる音に耳を傾けながら女は黙り込み、時間と切り離されたようなその場所で
ぼんやりと墓石を見つめていたが、しばらくすると音もなくゆっくりと立ち上がり、尻に付いた砂ぼこりを叩いてから
最後に名残惜しそうな視線をそこへ向けた。

「また来るね。おやすみ、アル……。」

微笑みを向けてそう呟けば踵を返し、女はその場を後にする。
人の気配が消えた深夜の墓地は再び静寂に包まれることとなり――…。

ご案内:「墓地」からメアリさんが去りました。