2023/12/05 のログ
■アルマース > 深夜に目が覚めて――
うまく寝直せずに街へ繰り出しても、行くあてが無いのはどこでもあまり変わらない。
田舎は店が閉まってしまうし、都会でも開いているのは酒場や賭場や――女一人でふらっと入れる安全な場所では、あまりない。
踊り子の仕事のある日なら、夜遊びを提供する側として、行き場はあるけれど。
それでも朝までやっている娯楽施設は数少ないし、そもそも夜遊びする側になるほど懐が温かいわけでもない。
宿の部屋で、寝られずに朝を待つくらいならと外へ出て、野良猫の後をついて歩いていたら、寒くてなおさら目が冴えてきた。
白い息を吐きながら、気づけば、王都の南側の城壁に突き当たっている。
そこで道案内の野良猫を見失い、階段を上って城壁の上に出た。
こんなに暗くても、海と空の境は分かる。
月は丁度半分に割れて、星を遮る雲は少ない。
潮風が冷たすぎて頬が痛いくらいだ。
ローブのポケットに手を入れたまま突っ立って、赤い星が瞬くのを見上げる。
「――――……月見酒でも買ってくれば良かったなあ」
■アルマース > 街の明かりはすべて背後。
星を見るのにこれ以上良い場所もなさそうだ。
視界いっぱいに、とりとめなく広がる景色。
嫌って出てきた故郷を恋うことなど一生無いと思っていたけれど、砂丘と星空だけの景色を思い出す。
消えた野良猫はどこで眠るのか。
育った家には野良猫たちが暖を取りに我が物顔で闊歩していた。
王都の猫も、きっとどこかに潜り込んでいるのだろう。
「見習わなくちゃね」
城壁の上を歩く人影は、誰にも見咎められることのないまま。
暖かい寝床を求めて。
ご案内:「王都マグメール 臨海の城壁」からアルマースさんが去りました。