2023/10/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/高級ホテル」にヴァンさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/高級ホテル」にマーシュさんが現れました。
ヴァン > その日、男は出会った時から少し普段と違っていた。
周囲に視線を配ったり、席を外す時間が少しばかり長かったり。

先日観劇の後に立ち寄った高級ホテルへと向かったのも、違和感を覚えたかもしれない。
大抵は早い夕食を酒場でとって、その後男の自室でまったりして、城まで彼女を送るのがルーティンだ。

男は二重の扉を閉めると軽く息をついて、不自然な行動の説明をする。

「……啓蒙局の張り付きが多い」

異端審問庁啓蒙局。異端や異教徒など主教に害なす者を取り締まる部門。
焚書対象の書物を多く抱える神殿図書館とは犬猿の仲で、実際何度も衝突している。
男の普段の行いから彼等にマークされるのは当然のことではあったが、度を越している、ということだろう。

マーシュ > 普段であれば、己と言葉を交わすときにはいささか気を抜きすぎなくらいに抜いているきらいのある相手。
今日は時折不自然にならない程度ではあるが周囲へと目線を配ったり、席を立つ時間の長さ。
そういった普段と違う、が重なって違和感を覚え始めたところで。

訪れたのは見覚えのあるホテル。
とはいえ、目的が無くこの場所を選ぶこともないだろう。
いぶかしんでいる己の様子に、部屋にたどり着いて扉が閉まってからようやく答えが届けられる。

「……───」

相手の行動や、目的。断片的にではあるが耳にしているし、職掌上衝突が多いとも聞いていた。
『多い』と表現される異常、普段からそれなりに警戒はされていたということなのだろうが。

「心当たりは、あるのですか?」

ここしばらくは、それなりに平穏だったように思う。
己と過ごしている以外で相手が何をしているかは知らないが、少なくともそんな緊張状態に陥りそうな状態ではなかったような、と思考。

ヴァン > 「心当たりか。騎士団のNo2が修道女と交際を始めたから情報収集――って訳でないのだけは確かだと思う」

途中まで真面目な声で話した後、自分で言ってておかしくなったのか少し声を震わせながら続けた。
冗談はさておき、と顎に手をあてて考える素振り。立ったままでいる必要もないのでベッドに腰掛ける。

「でっかい藁人形を焼くのは去年、図書館の前で見たよな。あれの調査を時々続けているんだ。
約200年前、主教主流派の王族を殺そうとした、異端派の者達がいた。暗殺は失敗し実行犯は火刑。
今でも記念日として藁人形を燃やしている……ってやつ」

約1年前に同じことを目の前の彼女に話したが、さすがに覚えてはいないだろう。
男の故郷、ラインメタルで行われている祭りだ。主教絡みではあるものの、心当たりとして出てくるのは唐突感がある。
やや考える素振りは、どこからどこまで伝えればいいものか考えているのだろう。

「故郷の祭りについて連中も調べ始めたのかもしれない。
異端を潰した記念だから、表向きは何の問題もないんだが……」

そう言った後、男は靴を脱ぎベッドの上で胡坐をかく。視線が閉じた窓や空調の空気口に向かう。
その後、手招きをした。

マーシュ > 「─────………真面目なお話だったのでは?」

耳を傾けていると、途中声を震わせてくれるのに軽く眉を上げた。若干のジト目を向け。
そんな己を素知らぬ風情で寝台に腰かけるのを見送った。ただ、続いた言葉に対しては素直に頷く。
すべてを覚えていたわけではないが、去年焼かれる藁人形の前で耳にした話。

ある種異様ともいえる光景は、楽しい祭りというよりは忘れないための祭祀のよう。
それを残したのは、教訓にするためか、支配を強めるためかはわからない。
彼の出身地の祭祀として残っているのを再現したのだと図書館で聞いたから。

「───表向き……?」

それとは別に何か意味があるのだろうか、と言葉の意味を問うように返す。
目線の配られた排気口に視線を追いかけたが──己には差し当たって何もないように見える。
て招かれるならそのまま歩みを寄せて。寝台の上に胡坐をかいてるのを見下ろす距離感へ。

ヴァン > 「……すまない。ま、弱みを握るためにマーシュに張り付くってのはありえなくはないが。
それはもう既に終わっているだろう」

所属する修道院やその長は知られていても、彼女自身は聖都から出向で王都に来た修道女に過ぎない。
男にはもったいないぐらい真っ当な生き方をしている。
表向き、という言葉は軽率だったか。
正面に来たならば、ゆっくりと抱き寄せる。膝がベッドにつき、尻が男の胡坐の上に乗るように。
戯れるように唇を首筋に軽くあて、耳元で囁く。

「主流派と異端派は勢力が拮抗していたそうだ。そして、その異端派は主神の名が違っていたという。イオン……だったか。
だが、今主な文献を辿ってもその名はどこにも、似たような名前すら出てこない」

故郷で200年前に異端派が幅をきかせていた、それだけで男を罰することなどできはしない。
耳朶をちろりと舐め、唇だけで軽く抑える。少し離れていれば囁いているのは睦言に聞こえるだろう。
セキュリティは万全ということでこのホテルを信用しているが、念には念を入れるということだろうか。

「主神の名が違うのに、異教ではなく異端――更に言うと、その時期に大きな人口減はなかった。
異教なら徹底した弾圧が行われて、人が減ってる筈だ」

マーシュ > 「弱み、といっても。大したことはないと思いますけど───?」

だって彼が己を理由に目的をあきらめたりするような人ではないというのは分かることだ。
長年対峙しているならなおさらそうだろう。
己の立場も、影響力などないに等しい立場だ。
会派全体で、というならわからないが。そちらにしたって己に訴求力はない。

引っ張られる動きに応じるように身を委ねる。
靴については相手に倣う形だが、いい年をして相手の膝の上、というのはいささか居心地の悪さを感じつつ。

「────、く、くすぐった」

唇が首筋に触れるのにゆるく身をすくませる。
いつも通りに横髪を編んで軽く抑えただけの髪が仕草に柔らかく揺れ。

仕草は甘いけれど、語られる言葉は割合真面目なものだ。
ふ、と吐息しつつ、相手から教えてもらって己も認識している。200年前、というある種の線引きが成されている年代。
それより以前の資料は、己の手の届く範囲で目にすることはなかった。

もしかしたら、相手の所属する図書館の地下書庫になら文献が残っているのかもしれない。

主教自体は多神教。それゆえの解釈は数多くあったろう。
今でこそノーシス主教は主神としてヤルダバオート神を推戴しているが。
地域によって、その信仰に偏りが見られるのはよくある話。

「……────、ええ、そうですね。主教は……だからこそ主教として根付いてるのですし。」

人口の増減がない、というのは当然大きな争いは生じなかったということ。政治的な動きはあっただろう、というのは推理ができる。
耳朶にあてがわれる唇の熱に、少しだけ身じろいで。

「……その土地の全員が一度に改宗を受け入れる何かがあったか、ということになりますが」

ヴァン > 「うーん……説明が難しいな」

目の前の彼女は「弱みを握って脅迫する」という風に捉えているかもしれない。
もしそうなら、彼女の予想通り男は止まらないどころかより大きな傷跡を残すことになるだろう。
どちらかというと、弱みというのは社会的なものだ。
交友関係に後ろ暗いものがある場合、そこを攻める。――一介の修道女に裏も何もない。

擽ったい、と訴える声に目を細める。

「俺の仮説は――主神が2柱いる時期があった。王族が支持するヤルダバオートと、一部の貴族が支持していたイオン。
他の地域はわからないが、王都・聖都から離れたラインメタルでは。なぜ2柱いたのかを今調べてて――監視の目が増えてる」

危険な発言だ。過去の歴史でも不用意に指摘すれば事実であっても不当な扱いを受ける。それこそ異端扱いされかねない。
啓蒙局はまだ何も掴んでいないのだろう。今の男の言葉1つで拘束に動くことはできる。
あるいは、実力行使をするには力不足であることを彼等自身が理解しているか。

頬擦りをする姿はスキンシップを楽しんでいるだけに見える。一度顔を離し、唇を重ね、反対の頬を押し当てる。

「あとは……『主神だけが違った』。教義は同じ、儀式の内容も同じ……ただ信仰する神の名だけが違った。
我ながら馬鹿らしい話だとは思う。同じ神が違う場所で、異なる名前で信仰されるというのは時折あると聞くが」

同じ場所で複数の神がその座を争う。全て同じで、人の身には呼ぶ神の名が違うだけとしか思われない。

マーシュ > 「────?」
少なくとも女の周囲は平穏だった。
権謀術数や誰かを陥れるための手管として、その交友範囲のあらを探す、などといった行為はなかった。
…というよりはそういった場から意図的に遠ざけられていた部分もあるから
そういった手段がある、ということに理解が及ぶのが鈍い。

己の訴えに目を細めるのに、視線をわずかに逸らして。

そうやって甘い戯れの中、睦言代わりの推論を耳にする。

「────…主神が二柱、ですか。…………」

若干口が重たくなるのはそのその可能性を論じることへの忌避感が根付いているからかもしれない。
主教に身を置くものとして、それは根幹を揺らす事実、ではあるのだが。
確かに不用意に論じてはいけない言葉ですね、とささやき声で応じるにとどめた。
耳目を気にしなければならない理由もそれで理解する。

その言葉一つでは意味はないかもしれないが、他に理由を添えれば彼を捉える理由を作ることはできる。
啓蒙局が、彼を監視下に置きたい理由は、さまざまにあるのだろうし。

頬を寄せ合って、近い距離で。さざめくような会話がそんな艶のない話だとはだれも思わないだろう。
それを埋めるように柔らかな仕草で、当然のように唇をさらわれるのにゆるく瞬いた。
反応するより前にはなれて、反対の頬を寄せ合う形。じわ、と熱が上がったのを自覚しつつ。

「……………なくは、ないです。……同じ神の、異なる面を、違う名で呼んでいた場合ですとか。あるいは………古い信仰と習合した黎明期などは融和のためにそうした文献の書き換えは行われていたと……思います」

同一の神の言葉として浸透するのであれば忌避感なく、そのまま信仰は緩やかに移り変わる。
多いとは言えないが、ないとも言えない。それを己が口にするのはやはりためらうものの。
古い資料を目にする機会も多い以上、そういった齟齬を学ぶ必要もある。

ヴァン > 主神が二柱。
他国では男女一対の主神二柱を崇める国があると聞く。
マグメールでは考えにくいが、馬鹿らしいの一言で可能性を切り捨てるほどではない。
男にとって主教はそこまで重いものではない。居場所ではあるが、とても信心深いとは言えない。

「俺と一緒にいると、時々視線を感じることがあるかもしれない。
しばらくは外でいちゃいちゃできなくなるな……?」

冗談めかした言葉。男は周囲に人がいようと気にしない、むしろ見せつけてやるくらいの考えだが、相手の合意は必要だ。
緩く腰にあてられていた掌が背筋を上り、うなじに軽く触れる。もう片方は腰に添えられたまま。

「つまり、呼び方一つで争いが起こった可能性もある、と。
ラインメタルは主教化が遅い地域だったが、それでも800年前には聖人が訪れたという伝説がある。
融和の可能性も捨てずに追ってみるか……」

耳元で紡がれる言葉に対し、納得するように頷く。
故郷では精霊信仰のようなものも僅かに残っている。
主教に組み込まれる形ではあるが、見る者が見れば異質な存在であることは明白だ。

「……さて。折角ここに入ったんだ。どうする?
この部屋までアフタヌーンティーを注文するか、それともこうやっているか」

表情が悪戯っぽいものに変わる。真面目な秘密の話は伝えきった、ということか。

マーシュ > 相手の主教に対する態度には、ハラハラはさせられるもののそれを否定するほどではない。
実際異国の宗教との相似、相違。
そういったものを表立って論じるわけではないが、どのように接するべきかを論じてる者たちはいるだろう。

「………それは、……王城でも割と感じますし……
────……………ヴァンが我慢してくださればいいんです、それは。」

良くも悪くも目立つ相手の言動。時折王城でともに過ごすことがある場合には、好意的、否定的にしろ時折感じる。
だから今更、だけれど。付け加えられた言葉に対しては、若干憮然と応じた。
憮然としつつも、同意を強請られるなら受け入れてしまう己の意志の弱さを恨むべきか。

そうしてる間も、戯れに背をなぞる指が項を擽るのに一瞬呼気を詰めて。

「……全くの異邦の地ではなく。交流もあったのなら少なくとも、強硬な策だけではないのではないかな、と
いつの時代も、一枚岩だったわけではないとはおもいます。」

困ったように眉尻を下げるのは、現状の主教のそういったあり方を俯瞰した際にも思うことだ。
今主要な聖人として祀られている存在や精霊が、200年より以前がどうだったか、などというのも現状知りようがないのだから。

「───どうする、ですか……」

悪戯っぽい表情でこちらに問うてくるのに、わずかに押し黙る。
このまま、というのも悪くはないのではあるが。このまま悪戯されっぱなし、というのが少しだけ引っかかる。
そこまで負けず嫌いというわけでもないけれど。
近い距離を利用して、女からも距離を詰める。唇をする、と首筋に寄せて。

「───ん」

ラフな装束の首筋にちくりと残すのはうっすらとした痕。
見えるか見えないかの位置につけたのは───。

「これくらいしておいたら怪しまれないでしょう?」

悪戯の仕返しを兼ねて、淡く笑む。
もう少しはこうしていたいとも嘯いたけれど。

「お茶も気になりますから、もう少し後でお願いしてもいいですか…?」

きっとたくさん喋って喉が乾いてるはずだから。

ヴァン > 狂犬、獅子身中の虫……
主教内で男を表現する言葉にろくなものはない。
それでも男が組織内にいられるのは、微妙なパワーバランスが成り立っているからだ。

「……あー。王城での視線は主教関係者だけじゃなくて、王侯貴族からのものも多いだろうな。
実家の名代をすることになったから、情報収集ってところじゃないかな」

王城での視線は盲点だった。男が普段王城に出入りしない分、彼女に向いているのかもしれない。
我慢するように、との言葉には視線を上に逸らした。
言葉を耳にしながら、どのように調査を進めていくべきかを頭の中に組み立てていく。
調べたその先に何があるのかはわからないが、ろくなものではないだろう。それでも調べずにはいられない。

女の唇が触れ、一瞬強く吸われたようだ。この前は背中側だったが、今回は鏡で確認できそうだ。
男は黙ったまま、頬を親指と人差し指でふに、と摘まんだ。ふにふにふにふに。摘まんでは離しを繰り返す。

「なるほど、確かに怪しまれないかも。もっと怪しまれないようにするか……? そうだな、後にしよう。
何回か話したけど、ここのアフタヌーンティーは絶品なんだ。ゆったりとした時間を楽しめる」

片足を挙げてもらい、するりと抜け出した。扉の方に向かい、居室と廊下の間で何やら書き記すと戻ってくる。
従業員と顧客が対面せずに注文や配膳が行われる仕組みは、以前伝えただろうか。
アフタヌーンティーを楽しんだ後、男は「もっと怪しまれないためにすること」を指摘されるまで忘れていた。

マーシュ > 「………私が何を知ってるわけもないのですけど……」

人気者ですね、と王城での視線の主への言及に対しては困惑気味だ。
彼がそのめったに来ない王城で起こしている騒動を知らないというのもあるが。
言葉の後半についての反応に、しばし無言の攻防を交えつつ。

………仕返しへの報復には頬を抓まれている。

「………。」
何故、と口にしたけれど、実際にはにゃぜ、とか間の抜けた声音になった。
さんざんつまんだ後で、姿勢を崩すのをうながされ、そうすると寝台から降りた相手が一つ目の扉の向こうへと姿を消すのを見送る形。

二重の扉のある構造と、その使用用途については以前耳にしていたのでそれについて問うことはなかったが。
届けられたお茶とお茶うけで午後のお茶を楽しんだ後。『もっと怪しまれないためにすること』とやらについてを問い詰めたのかどうかはまた別の話になるのだろう。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/高級ホテル」からヴァンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/高級ホテル」からマーシュさんが去りました。
ご案内:「九頭竜の水浴び場 マッサージ室」にエレイさんが現れました。
エレイ > ──温泉旅籠内の、主に宿泊客向けに用意されたサービスの一つが、このマッサージ室である。

その施術室はいくつかの個室に分かれており、客は専用のカウンターで受付を済ませた後、各個室で待機しているスタッフと
一対一でマッサージを受けることになる。

なお、客にどのような施術を行うかは、スタッフの判断にすべて委ねる、というあたりはこの旅籠らしいといった所。
ついでに、各個室内には客に安心感を与え、施術への抵抗感を知らず知らずのうちに薄れさせてゆく効果を持った、
ほのかな香りのアロマが炊かれていたりもする。効果がどれほど出るかはその客次第なのだが。

「──さーて、今日もブブイーンと張り切ってやりますか、ねぇッ……と」

その中の一室に腕をグリングリンと回しながらやってきたのは作務衣姿の金髪の男。
知り合いからの依頼という形で臨時のマッサージ師としてやってきている冒険者、という立場は今も変わらないのだが、
もうすっかりここの一員として馴染んでしまっていた。
そんな自分に時折疑問を持たないでもないが、男自身としてもなんやかんやこの仕事は
気に入っているのでまあいいか、とあまり深く考えないことにしたのだった。

「今日はどんなお客が来るかねぇ……」

ともかく、男は施術台の傍のスツールに腰掛け、腕組みしながら客待ちを始める。
出入り口のカーテンが開かれ客が現れるか、あるいは魔導機械の通信機を通して客室への
出張依頼が来るか。
いずれかの訪れが、今日の男の仕事の開始の合図となるのだろう。
もしかしたら、受付を経ずに紛れ込んで来てしまうような珍客が現れる、なんてこともあるかもしれないが。