2023/10/05 のログ
ご案内:「王都付近 街道脇の空き地」にアルティリスさんが現れました。
■アルティリス > ひゅんっ!ひゅんっ!
刃が風を切る音を響かせながら一人の女が舞い踊る。
褐色の肌には汗の珠が浮き三つ編みにまとめた銀髪が揺れる。
爪先が軽快なステップを踏んだかと思うと、まるで体重がないかのように跳躍してくるくると独楽のように回転する。
左手と右手に保持した曲剣を自らの身体の一部のように操りながら女は舞い続ける。
女は踊り子だった。
元は神に奉納する剣舞を舞う巫女だったが、今は神殿を追われ遠く離れてしまっている。
踊り子として剣舞をすることはないが、いつでも舞えるようにこうして鍛錬を欠かさない。
街中で鍛錬をしていると、剣を振り回して暴れていると勘違いされ衛兵が飛んでくることがあるので、剣舞の鍛錬は街の外でせざるを得ない。
「………っはぁ……っはぁ……」
激しい舞を長時間続けるとさすがに息が上がる。
女は舞を収めると二振りの曲剣を鞘に納めて一休みすることにした。
革袋に入れた水を一口飲むと街路脇の樹の下に小さなシートを敷いて座り込んだ。
■アルティリス > 時々街道を通行人がジロジロ見ながら通り過ぎていく。
この地方では褐色肌は珍しいのだろうか?
鞘に入れた曲剣はなるべく目立たないように身体の陰に置いておいた。
手を振ってくる小さな子供には手を振り返しつつ呼吸を整える。
「もう一舞するかどうか悩むところね」
夜空の星を見上げて小さくため息をつく。
もう大分暗くなってしまった。
ランタンの灯りを維持するのもタダではない。
ステップの後で手首を返すところが今ひとつキマらなかったことに不満が残る。
踊り子でなければ気づかない程度の些細な違いなのだがどうにも納得がいかなかった。
「それとも街に戻ってお酒でも引っ掛けようかしら?」
ぼんやりと呟くと座ったままで両腕を上に上げて伸びをした。
■アルティリス > 「ん……っと」
するりと流れるような所作で立ち上がって大きく身体を曲げた。
柔軟な肢体は顔が脚に直接つくまで曲がり両腕でふくらはぎを抱きしめるポーズになる。
張りのある胸の膨らみが脚に当たってふにゃりとたわんだ。
「お酒飲んじゃうと……資金の残りが心配ね。
どこかに良いパトロンでもいないかしら?」
そのまま上半身を元に戻して今度は後ろに身体を反らせる。
柔軟な肢体はまっすぐに立ったままで後ろに手がついて、そのまま勢いをつけて倒立。
……したかと思うとすぐに身体を折り曲げて脚から着地した。
「このあたりの神殿とは神が違うから……
巫女に戻ることもできないし、追放の身って難儀よね。
せめてお祈りくらいはしておきましょう」
口に出しては言えないが、この国の神殿はどうにも胡散臭い気がする。
外の国の人間だからそう感じるだけかもしれないが……。
砂漠の国の方に身体を向けると跪いて祈りを捧げた。
■アルティリス > 「……さて、今日のところは戻っておこうかしらね」
二振りの曲剣の入った鞘を掴むとゆっくりと王都への道を戻っていく。
今夜はお酒は飲まずに早く眠ることにしよう。
明日は踊り子の方の仕事が入るかもしれない。
それとも……?
ご案内:「王都付近 街道脇の空き地」からアルティリスさんが去りました。