2025/04/13 のログ
ご案内:「王都平民地区 ギルド酒場」にティータさんが現れました。
ティータ > 平民地区の、冒険者ギルドの仲介所のような役割を兼ねつつ、酒場も運営しているような店構えの中。
隅のテーブル席に何冊かの古びた本を積み上げて、ほんのりと困り顔を浮かべながら一冊手にとっては暫くパラパラとめくっては横に置き、また次のをパラパラとめくっては、とやっていて。

「こういうのってあんまり見た目から価値が解らないのよねぇ……」

ふと見渡せば、本を積み上げているのはちょっと珍しいかもしれないけれど、冒険者よろしく戦利品をテーブルに広げてあれこれやっている席もちらほらあるから、やっている事自体は他とあまり変わらない。
と言うより、こうして何か広げて仕分けとかしていても、そうして他に紛れるのを知っているからここを選んだ、のだけどね。

本日の戦利品。と、言えるかどうかは解らない、とある邸宅からこっそり頂いてきた荷物の中から、既にめぼしい内容のモノは売り払った後の残り物なのだけど。
古いし面白いけどこれは買い取るってほどじゃぁないねぇって返された何冊かを、どうするか眺めている所なのです。自分で読んでみると面白いかもよ?なんてニヤニヤされたのが意味深でなんだかやだなぁ、と思って、ちょっと警戒しながらそっとめくっていく。

ティータ > 「あ〜もう! 頭使うのは嫌ぁぁ……」

勉強とか、全くできないってわけじゃないんだけどね。シーフ稼業って、図面引いたりもできなきゃだし、ちょっとしたカラクリとかも理解できなきゃだし、今なんて学生もしてるから精霊魔法の授業なんて文字通り勉強だし。
でもこう、積み上がった本、ってちょっとうんざりすると思わない?……なんて、降参するみたいに両手をだらんと真上に伸ばしながら、ぐた〜っと椅子の背もたれに寄りかかる。

「宝石とか、そういうのは何となく見たら良し悪しわかるんだけどなぁ。いかにも魔導書です!みたいなのとかもまだマシ……でもただの本、って感じのはわかんないよぉ」

売れなかったものだし、そのまま捨ててもいいんだけど。一応、それなりに確認はしてみないと勿体ない気がしちゃう。
後ろへ伸びた所から、今度はぺしょっとテーブルに伏して。横向きに顔を持ち上げて、やる気なさげに突っ伏したまま指先で横の本の表紙をまためくってみる。

「んん……たぶん、歴史書。しかもこの辺りの。本屋さんとかに普通にあるよね〜。 はぁ、誰かに手伝わせたい感じ」

見覚えのある書き出しで始まってる、そのへんに普通に転がってそうな内容のものを、いらない、と除けて。次のはさっきのとは全然関係ない空想物語だったりとか、ジャンルがはちゃめちゃでめまいがする。
こういう時に単独活動派はちょっと苦労しちゃうのよね、そのぶん気楽な所もあるけど、と小さくため息。

ティータ > 小難しい本ほど固いしっかりした表装になってたりするのだけど。次に手に取ったのは、端を持ち上げると少し曲がるから、もの自体はそんなに高くないやつなんだろうな、と思う。よく見る感じの普及品の紙の質感だし。
ぱらぱらめくると全編文字だらけだから、絵とかで判断ができないパターン。こういうのって読んでみないと何かわからなくて厄介だと思うのね。

読んでみると、たぶん空想物語のようなもので、学院内のお話。モデルはラジエル学院のような気もするけど名前は変えてある。女生徒と男性教員が二人きり、講堂であれこれ会話してるシーンが始まって。ああ、よくある恋愛物語的な、とか思って読み進めていたら。

「後ろから先生の指先が―― ……離脱っ!」

突っ伏しながらぼそぼそと呟くように読み上げていた所から、突然がばっと身体を起こして、ばしん、と本を閉じて。
先生の指が離脱したわけではないの。離脱っ、は思わず漏れた私の悲鳴のようなもので。ただの王道恋愛物語かと思ってたら、突然ちょっとアレな感じのシーンが始まったから、慌てただけで。
自分の部屋でとかならともかく、賑わってる酒場の中でこれはちょっと。宝箱の罠とかの方がまだ驚かないで済むかなぁって。ちょっと顔が赤くなってるような気もして、ぱたぱたと手のひらで扇いで暑そうにしてるフリ。

「あ! ……これかぁ、返された時に、やな感じにニヤニヤされたやつ。まったくもう!」

沢山あった中にたまたまあっただけで、わざわざ選んで持ってきたわけじゃないんだからね!って頬を膨らませて。

ティータ > こんな本は――ちょっと、保留しておこうかなって。ささっと隠すように、取っておく方の山へと差し込んでおくことにして。

「だいぶ分け終わったし、まだ少し残ってるけどここまでにしとこうかな」

いるやつ、いらないやつ、まだ見てないやつ、って袋に詰め込んで。手早く片付け終わったら、そそくさと去ることにする。
急いで帰って続きを読みたいとか、そういうんじゃないのよ?……たぶん。
それだと、あのニヤニヤしてた人にしてやられたみたいで悔しいものね。平然と何事もなかったように帰ろうと思う。ほんのちょっとだけ早足になったかもしれないけど。

ご案内:「王都平民地区 ギルド酒場」からティータさんが去りました。