2025/03/30 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 露天商区画」にミィヤさんが現れました。
■ミィヤ > 日が落ちるにはまだ少しありそうな夕刻前。街中の通りに面して雑多な露店が並んでいる一角で、屋根のない急ごしらえであろう小さな露店の前、真正面は迷惑だろうと思ったのかちょっと斜めにずれた所に、膝を抱えるようにしてしゃがみ込み、じっと店の主の手先を見ている少女がひとり。
その露店は、荒い撚り糸の敷布の上に、金属糸を器用に折り曲げて作られた動物や荷馬車、花瓶のような形のもの、手のひらにいくつか乗りそうなほどの小さな造形物が沢山並んでいた。
店主の傍らには無造作に巻かれただけの金属糸が積まれていたが、そこから引き出されて自在に曲げられて、今度は子犬の形になって並べられる、と言う様子をじっと興味深く見ている。
半目になり、口を上向きの三角形に小さく開いたまま、じとっ、と見ているものだから、店主のまだそこそこ若いであろう男も最初は妙な緊張感を持っていたのだが、やがて面白がって見ているようなのだ、と言うのがわかると安心したのか、あえて見やすいように時折手を止めたりしながら作って見せてくれていた。
■ミィヤ > これが大人がじっと見ているのであれば、何か買ってくださいと言われる所なのだろうけれど。妙に落ち着いた、と言うより殆ど動かない、子供にしてはやたらと静かなものの見た目は一応どちらかと言えば子供のようにも見えるから、無理に買うようにお勧めもされない。
たまたま通りすがりの少女が気になってじっと見ているのだろう、ぐらいに思われていた。
「……それ、欲しい気が、する」
少女がほぼ無動作のまま突然ぼそりと言うものだから、店の男は一瞬びくっとしたけれど。今しがた次の作品として出来上がっていた、枝に止まった小鳥の形に作られた金属糸の置物を少女の瞳が追っているのに気がつくと、それならこの辺と同じ値段かなぁ、と大きさ的にも手間的にも同じぐらいのものが並んでいる辺りの値札を指さしている。
膝を抱えて座っていたまま、少女が右手をドレスの裾の中へと脚を掻くようにもぞもぞと差し入れると、どこにそれを仕舞っていたのか値札ぴったりに硬貨を掴み出し、にゅ、と男の方へ差し出した。
それと引き換えに小鳥の置物を受け取ると、じわじわと斜めに首をかしげながら、眼の前で金属糸の線の向きなどを細かく見ていた。
「鳥だけ作ると、置いた時に、なんかへん。 ……止まってる枝ごと、なのがいい」
鳥の部分を支柱のように支える役目を持ちながら、枝の形に似せることで鳥が地面に鎮座しなくて済む、と言う発想だとか、それが1本の金属糸から繋がってできている、のが少女にとって興味深かったようなのだ。
■ミィヤ > 暫くの間、またあれこれと細工物が出来上がっていくのを眺めていた後。だいぶ辺りが暗くなってきたから、そろそろ店じまいらしいのを期に、しゅ、とまっすぐ立ち上がり。
まだ眼の前で色々と向きを変えながら、細工の小鳥をじっと見ながら歩き出し。前をちゃんと見ていないものだから、人や物にぶつかりそうになるのを、どう判断しているのか当たる直前になる度にぬるっと横へ避けながら。
他の大人たちの視線よりも少し低い位置から、目立つ前にはもうするすると器用に間を抜けて、そう言えば買ってみたはいいけど何処に飾ろうか、とりあえず仕舞う、後で考える、などと思考を巡らせながら人混みの隙間へ消えていって。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 露天商区画」からミィヤさんが去りました。