2025/03/17 のログ
エリビオ > 「肝っ玉は太くないよ。もう二度とこんなことはやりたくない。
 ほら、手だって震えてる」

こちらを無力化して安堵する彼女にわざとらしく手を震わせて戯ける。
傷つけられた盗賊は睨みつけるがそれも意に介さず、後手縛られたままに女首領のそばに佇み。

「生き恥どころか自分の身を呈して守った英雄になるかも?
 って、わかったよ馬車に乗るって」

軽口叩きながら促されるままに馬車に乗る。同じく乗り込んだ村人や冒険者に「もう大丈夫」と優しく声をかけて励まして。
盗賊と同席する馬車は緊張と不安に揺れながら近隣の村まで。

「村人さん。お願いがあるんだけれど。そこの冒険者を村に運んで手当してくれないかな。
 助けられないけれどみんなのために戦ってくれたんだ。お願い。」

少年のお願いに村人たちは冒険者を担いで村にまでゆくだろう。

ザリアナ >  
盗賊団の馬車は追撃を受けても十分に逃げ切れると踏んだエリアまで進み、人質となった少年を解放する。
その最に縛られていた両手も解放され、魔物に襲われても少年の腕前であれば問題ないだろうと踏んだザリアナの判断である。

盗賊団討伐という仕事を請負い先遣として向かった少年の冒険者としての評価がどう変じるかまでは判らないが、
少なくとも盗賊団と一人で真っ向から渡り合い、死地にあった仲間達の命を救った少年は、彼らからはまさに身を挺して自分達を守った英雄のように扱われることになるのだった──

「変わった坊やだったわね。カオも悪くなかった」

アジトに向かう馬車の中でザリアナはそんなことを零す。
捕虜にして連れて帰って楽しませてやっても良かったんじゃ?なんて冗談めかして笑う屈強な盗賊の男達に大して、女はひらひらとその手を振る。

「お前らはいいかもしれないけど、それじゃ坊やに斬られた連中が黙ってないでしょう?
 せっかくの可愛いツラをボコボコにするために連れ帰るなんてことしないわよ」

そりゃあ違いない、と賑やかに笑い声のあがる馬車で、
ザリアナは思った以上に少なかった戦果と思わぬ邪魔者の登場にやや眉根を顰めていた───。

そして──盗賊団の拿捕には至らぬまでも人的な被害を最小限に留めたとして、少年とそのパーティーメンバーには村人達から一定額の報酬が支払われることとなったのだった。

ご案内:「襲われた集落」からザリアナさんが去りました。
ご案内:「襲われた集落」からエリビオさんが去りました。