2024/10/13 のログ
ご案内:「平民地区 路地裏2」にラヴィニアさんが現れました。
ラヴィニア > 王都マグメール平民地区。
夜の帳が下りても賑わいの絶えない人通りの多い大通り。
そこから一本だけ脇道にそれた大通りとは正反対に静寂に包まれた路地裏に人影がポツリと一つ。

バリ、バリ、バリバリ、バキンッ

静寂を打ち砕くような硬質な物をかみ砕く音。
それと共にふわっと広がる林檎の甘い果汁の香り。
今夜の食事は林檎、夕暮れ時に路地裏を歩いていた時に見知らぬ人間に渡された善意の林檎、静寂を打ち砕いたのはその芯までかみ砕いて咀嚼する音だ。

フードを深くかぶり傍目から顔を隠し、指先のでないブカブカとサイズの大きなローブで隙間なく身体を包み込む、小柄な体躯でそんな服装をすれば魔物とバレなくても幽霊か何かだと思われるような装いであるが、幸いと偶然すれ違った人間たちは他者に興味がなかったようで、己に興味を示す人間がいなかったおかげで、林檎をくれた人以外に『ぼうけんしゃぎるど』の場所を尋ねることができず、こうして路地裏の木箱の陰から賑々しい大通りを眺める事しかできずにいた。

魔物である。
それもダンジョンのコアになるレベルの矮小とは言い難い魔物である。

そんな魔物が王都に用事をもって入り込んだのだが、入り込む際に人間達に身バレしないように、警戒されて門を閉ざされないように、レベルを下げて擬態化した結果が現状となっており、レベルを下げた際に知性まで下がった挙句に目的地の場所まで失念し、途方に暮れている。

誰かに声をかければいいのだが、バレて退治されたら元も子もないし、今の身体は正直一般人に負けるレベルまで落ちている、それだけはハッキリと頭にあるので、物陰から覗く、それしかできないのだ。

ラヴィニア > 住処であり、ある意味では本体である『海魔の巣窟』にいる時にはこんな弱い身体に擬態したことはなく、常時他の海魔を圧倒する魔力を意識せずとも放っていたが、今はそれだけで敵対と思われ襲われるのは間違いないので、この状態は正直に言うと不安である。

いざとなった時にこの身体で元の力を発揮する為の手段を幾つか用意はしてあるが、その方法は思い出そうにも全く思い出せない、だから、いま出来ることはジーっと賑やかな大通りの光景をフードの奥に隠れた双眸を細めて見つめるだけ。

「……ぐ、…ぐぐぐ…………。」

唸る、喉を僅かに膨らませでうなり声を。
それは威嚇や警告の唸り声ではなくて、ただ何ともならない現状を恨む声であり、打開策も浮かばず、だからと言って人前に出る事もできず、恨めしく人の流れを見守るのみだ。

もし、路地に人間が迷い込んできた時には、倒せそうな相手だとしたら、話しかけるよりも力づくで制圧して、脅かしてでも幾つか質問をして、早く『ぼうけんしゃぎるど』を見つけて、やらなければならないことをすませて、帰ろう。

それも誰かしらと遭遇できたらの話で。
今夜はそれも難しそうとそれとなく感じれば、踵を返して貧民地区の方に消えていく。

ご案内:「平民地区 路地裏2」からラヴィニアさんが去りました。