2024/03/01 のログ
■オウル > 素直に受け取ることはともかく、今ここで食べようとしない事に内心ホッとしたモノがあるのだが、同時に微妙に残念な気もしないが、それはそれ、これはこれ、これも心の奥底にしまっておく。
「美味しかったーとか、もうちょっと濃くーとか、食べた後はーとか、適当な感じでいいよー?」とあくまでも適当で構わないと念を押しながら、何とも気合十分?的な彼女の様子に少しだけまた笑うと、閉じたばかりで片手に持っていた本を自分の膝に下して、読書よりもだんだんと会話に惹かれていく、――同じ学院生と話すのもまた楽しい。
「尊敬されるレベルまで達してないよ。
草花は尊敬してもらってもいいけど、鉱石はねぇ。
鑑定は特に難しいし、うん、勉強に関しては、まあ、うん。」
机にかじりついて勉強することは得意である。
貧民地区から脱する方法の中で近道であるからだ。
ついでに言えば動くのも得意であるが、魔法はダメ。
呪力が宿る左目が邪魔をする、発動も集中も上手くいかない。
なので手取り足取り教えて欲しいわけなのだ。
それの対価として知識や技術をさしだすことに躊躇いはなく、こうストレートに尊敬をされると悪くない気持ちになってくるのもある、そんな性格はしてない筈なのにだ。
「え?飛びついてきたら役得じゃない?
宜しくクロエ先生!俺が師匠ならクロエは先生でしょ。」
結構真顔で問い返すクロエと名乗った少女に対して、悪戯めいた笑みで役得と言い切り迎え撃つ、それ加えて相手が妙なあだ名をつけて師匠と呼ぶなら、こちらは更に名前に先生をつけて呼び返してやろう。
師匠と呼ばれるのもくすぐったいが、同年代に近しい相手を先生と呼ぶのもくすぐったい、で、その先生がにぱっと笑うなら、自分もにこーっと笑い返すのだ。
「魔法を教えてもらう対価ね。
染料の知識、鑑定を教えるのは難しいかもしれないから、クロエと買い物に行ってその場で鑑定くらいはするよ。
あと染料に加工は……まっクロエ先生次第かな。」
草花も鉱石も染料にする際には時に複雑で時に面倒な調合が多々あるので、それは彼女がどれで何をしたいか次第だと、濁さずちゃんと言葉にする。
昼食を奢ったり、魔法を教えてもらう時間を長くするとか、それに加えて実費をもらう程度で納めるつもりであるが、少しだけ意味深に伝えて、いじわる~い笑みをにこーっと浮かべた笑顔を消して上書きをして、彼女に向ける。
■クロエ > 「んー?そおー?」
あくまで適当で構わない、と言われるとそんなものか、とは思う。
だが、それはそれとしてお礼としてそれでいいのか?なんて不真面目そうな彼女は真面目に考えたりする。
「鉱石はー……たしかに難しそう。あたしとしてはアクセに使えそーな石とかが分かれば十分、だけどね。
ゆくゆくは、爪っぽいの作ってその上に色々飾り付けったりできたらなーって感じ。
そしたら、つけ外し楽だしさ。」
今の構想をぼんやりと伝える。いわゆるつけ爪の作成。その上に、そこに飾り付けができれば気軽に付け替え出来る……はずである。
理論上は、であるが。そもそも実現できるような鉱石があるかもまだ未知数だ。
「そっかそっかあ。オッくんししょーも男の子かー。んじゃあ、えい」
飛びついた。流石に勢いつけてとかやると図書館にもメイワクだし自重。
なので、軽くムギュッとやる程度であるがまあ、実行する。
「……てか、え?あたし先生?あー……うん、確かにオッくんししょーに教えるなら先生、かあ……
うーん、意外と照れるぅー。」
飛びついた姿勢のまま、ちょっとボヤく。
先生。先生、か。そこまで上等なことを出来る気もしないけど、そういわれるのなら頑張らないと、だろうか。
「うんうん、流石に染料とかマジで教わったら時間いくらあっても足んなさそーだしね。
買い物とかに付き合ってもらえるのが一番だろうねー。
あとはー……うーん、あたし次第かー。」
相手の提案は納得いく、というよりごく合理的な提案であった。
今から知識を蓄えるのもありはありだが、時間がかかりすぎる。
まあそれも悪くはないけれど、やるにしても並行作業にしたい。
そんなことを割りと真面目に考えたりして……意味深に悪い笑顔で言われたことは、割と真面目に考え始める。
表情を理解しているのか、していないのか。
■オウル > ――飛びつかれた。
だから捕まえる、細い両腕を飛びついてくるクロエの背中に回すように伸ばして、ぎゅ、と、本当なら背中ではなくもう少し下の方がと思うけども、それよりもクロエの提示した構想が面白くて、抱きしめる方への意識が疎かに。
「そりゃね?これでも男ですから?
抱き着いたり、抱きしめたり、触ったり触られたりー?
とかとか、大好きですが?
も良いんだけど、クロエ先生のアイデア面白くない?
爪っぽいの作って、細かな鉱石を張り付けて、取り外し。
あー…絶対面白いやつ、面白いアイデアだそれ……。」
おっと少しだけ…訂正、だいぶ饒舌になってしまう。
当然面白くも好奇心を誘われるアイデアの前に欲が出る。
爪と同じ形の土台、そこにちりばめる鉱石、付け外し。
自分には浮かばないアイデア、そうなると鉱石は……。
と、危うく自分だけの世界に落ちそうになったが、両腕と身体に感じるぬくもりに、現実に引き戻される。
「染料と同時にそのアイデアが活きるような方向性でやろうか、クロエ先生とは長い付き合いも楽しそうだし、うん、知識の交換も悪くない、まあ、その辺も併せてクロエ先生次第だねー?」
もうすっかりと先生呼び、時々忘れて名前を呼ぶ。
クロエ先生が長い付き合いでいいのなら、ゆっくりと知識を交換するのも全然良いし、魔法を教えてもらうだけのたぶん短い期間であるならそれも良し、だからクロエ先生の距離縮まった緑色の瞳を包帯で隠れた左目と裸眼の右目で見つめて、笑って見せる――自分としてはクロエと長い付き合いは嫌じゃないと、そんな笑顔で素の顔で。
■クロエ > 「お?そりゃまあそっか。オトコノコだもんねー。
あ、マジで?わかってくれる?
いやー、これさー。ほら、あたし見ての通り爪色々塗ってるじゃん?
一々落として、塗ってって大変でさ。いやいや勿論、可愛いのために多少の苦労はしょうがないけどさ。
でも、爪が取り外せたらなーってトコから考えたんだけどね?
いやー、男の子でわかってくれる人いるとは思わなかったな、オっくん師匠、センスグッドだね!」
腕を回されて、まあそっかーなんて思いながらそのままにしていたが。
アイデアの方二相手の興味が向くと、ついつい嬉しくなってしまう。
このアイデア自体は、今のところ目処が立たなかったせいであまり人に話してなかったのだ。
それが、いい感じに受けているのはやっぱりテンションが上がる。
なんなら、それが協力者になるであろう少年なら尚更爆上がりである。
「今はあたし用、しか考えてないけど……正直、うまく形になれば売ってもいいかな―なんて思ってたりするんだよね。
そうすれば、みんなもオシャレできてハッピーハッピーって感じだし。
っても一人じゃ絶対無理めーって思ってたけど、オッくんししょーと一緒にできればそっちもいけるかも?
いひひ、そこまでいけるかはわかんないけどさ。夢はあるよね!」
そもそもまだ実際には形になっていないものだ。ひょっとすれば企画倒れに終わる可能性だってある。
でもそれもやってみなければわからないし、時間だってどれだけかかるかもわからない。
長い長い付き合いになるかもしれない。それはそれで楽しいだろう、と少女は無垢に笑う。
「でもー、それならオっくんししょーがガッコでしくじっちゃうと困るのでー。
そっちもマジ頑張んないと、だね?」
そんなことになったら研究どころではなくなってしまう。
当面はそっちを片付けないと駄目かな?と……ある意味、こちらも意味深な笑いを浮かべる。
■オウル > センスを褒められて嫌な気分になる人などいない。
少なくとも自分は褒められて嬉しくなるタイプのようだ。
確かに確かにクロエ先生のアイデアは合理的で、塗ったり塗らなかったりとか大変なのは『ギルド』の仕事で娼婦や奴隷の身なりを整える仕事をしたことがあるのでわかる。
それが簡易的になれば負担も減るし、何なら形になったそれをいくらか独占的に販売したり、クロエ先生にしか出来ない飾りつけなど出来れば、お財布だって潤い、危うい仕事をしないでも済むようになるかもしれない。
「オトコノコとして師匠として悪戯は何処まで許されます?」とまた冗談交じりで言葉を紡ぎだし、クロエの背中に回している両腕を改めてするんと下げて、腰と臀部の境界線まで下ろしてから、それ以上先へと進めずにパっと手を放して、抱きしめるのを止めて、そっとクロエより身体を放してからソファーより立ち上がて、少しだけ慌てた素振りで膝にのせていた本を落ちる前に拾い上げる。
「そうだねぇーまっどっちも頑張るということで。
爪のお話は今度お茶でも飲みながら話そうか?
それ以外の話も今度ゆっくりとね?」
本当ならもう少し話をしたいが、いい時間のようで睡魔にそっと抱き寄せられては大あくびをこぼす。
意味深な笑いのクロエ先生にだいぶ申し訳なさそうに笑ったのちに、近くの書架に読み途中の本を片付けて、帰宅することにする。
――…だから。
「ごめんねクロエ先生。
俺は帰るとするよ、ひとまず学院にある私書箱の番号とか教えておくから、何かあったら気軽に送ってね?寧ろ待ち合わせとか……。」
ああ、また話し続けてしまいそうだと途中で自分の言葉を途切れさせると、クロエに大きく頭をさげて、図書館を後にするのだった。
面白い出会いに、面白くなりそうなこの先に胸を躍らせながらである。
ご案内:「王都マグメール 平民地区:図書館」からオウルさんが去りました。
■クロエ > 「あらら、悪戯だなーオッくんししょーってば」
手をおろして行ってからさっと離した少年に不快そうな素振りもなく笑う。
「って、あれ。もう良い時間だったね。うん。
そだね、今日はバイバイ!また会おうね、オっくん師匠!」
慌てて立ち去っていく少年に向かってブンブン手を振ってお見送りをする。
いつも出会いは突然で、いつも楽しいものだが……今日は、特に楽しかったかもしれない。
「んー……でも、これなんだろーね?
師匠と先生のコンビって謎ー。フレンドともちょっと違うし、コンビ、とも違うよね。
マジ笑う」
けらけらと少女は笑って、すっかり勉強する気を失ったので自分も帰ることにした。
ご案内:「王都マグメール 平民地区:図書館」からクロエさんが去りました。