2023/12/29 のログ
ご案内:「山賊街道 バフート~ダイラス間」にエレン・ローズマリーさんが現れました。
エレン・ローズマリー >  
 暖冬は実に気紛れだ
 暖かくもあり寒くもある。
 その日の気分でコートを選べやしない。
 最も、ダンピールの身では装飾性以外の性能など防御面くらいなものか。


 その日 当人は馬車でバフートに出向いていた帰りだった。
 ダイラスで商売をし、王都の父を手助けする。
 それを本業に置いている中 経営で奴隷を仕入れることも儘ある。
 それにバフートはいつだって新鮮だ 経営的な刺激を受けることもあるし
 中にはエレン自体 勉強にさせてもらっている相手ももちろんいた。

 そんなエレン
 小柄な少女が綺麗な衣を纏い、奴隷を選別し買い付ける。
 檻の中 首輪に繋がれた 様々な奴隷らが貴族の匂いがする少女
 奴隷は 期待と諦め 恐れと悲壮 を向ける。

 懐が温かく見える少女と従僕達 奴隷という荷を詰めた馬車が向かう中
 それは訪れた。


   「―――?」


 パキンッとチョコレートスティックを鬼歯で嚙みながら、エレンは頬杖を付いていた姿勢
 馬車内にて何かに反応していた。
 ダイラスで感じるように 欲望や殺意 それらなじみ深いもの。
 襲撃 と思った瞬間、馬が悲鳴を上げ止められている音と車輪が土の上を滑り、内部で軽く揺れ動く者ら。
 

  

エレン・ローズマリー >  
 荷馬車 自身の馬車
 危険度は以前より低くないとは言えど、王姫を売り飛ばせるほど上手なグループなのだろうか。
 見てわかるように貴族の馬車であるくらい 塗りでわかるというもの。
 護衛らが応戦する中で、ポリポリと手の中のチョコレートを口の中で溶かしていく。

 エレン自身 実を言えばダイラスで領土を広げること以外手を出すことは少ない。
 出す機会すらなく、精々が観戦程度。
 久しぶりの闘争の匂いが、馬車扉の向こうから鼻につく中 人質が手っ取り速いだろう
 ガバリと扉を開けて乗り込もうとしてきた“搔い潜り上手”の腹に、 “   ”ッッ! と一撃
 立ち上がっていたエレンの持ち上げる脚 その踵から噴き出した暴力が遅い、吹き飛ばし
 そして地面の上で横腹で三度廻って止まれば、辺りには赤い螺旋が出来上がる。

 扉の向こう 踵の背に備わる重厚な造りの口元から、煙が一筋。
 石火矢ともフリントロックとも異なる しかし似た性質の音と煙。
 ゆっくり足を下ろし、馬車の段差にコツリと脚を下ろして両腕を組んだエレン。
 赤い瞳が周囲をキロリと眺め。


   「―――。」


 獰猛な笑みを浮かべた。
 

エレン・ローズマリー >  
 「あら、野盗? 騎士崩れもいるようだけれど。
  襲われるなんて久しぶりね お父様が激怒しそう。」


 クスクスと笑い、小さな手のひら グローブで包まれた両手で口元を隠し笑みを浮かべる。
 獰猛な口元が隠れたなら、小柄な背丈と白い身なり モーツァルトブルーのミディアムヘアは愛いに映るだろうか。
 しかしエレンは楽しんでいるように手を叩いて続きを急かす。
 何せ 全員 が人質足り得ないのだから 全員止まる理由がない。


   「ほらほら、続きをしましょう?」


 野盗らの殺し合いを眺めながら、計算外を映すような野盗らの表情
 それはエレンの背中 そのシルエットを広げる逞しい双角の黒翼へ注がれる。
 対するエレンは ニコッ と笑みを浮かべるや両手は空 トン、と軽やかに段差から飛び上がるや、空中の刹那的な停止
 その直後 まるでバネで弾き飛ばされたように、野盗の首を穿つ三角蹴りが飛び込んだ。

 ゴキリと砕ける喉笛と首骨 圧迫から眼球がまるで魚目のように半分以上露出したまま
 ゴポリと赤を口から零しエレンの着地と共に、地面へと磔にされてしまっただろう。
 野盗の獲物と思える片手剣を一本拾い上げ、ヒュンヒュンと振り回してみては、周囲を眺める。


   「何人かは生け捕りね。 楽しいわよ ダイラスは。」


 切っ先を周囲に向け、手短な者との戦闘が始まった。