2023/11/24 のログ
影時 > 「一体一体屠っていく範囲なら、だがな?」

そこは気を付けなきゃならン、と。念押ししよう。
ゴブリンの個体のみを丁寧に仕留めるにあたり、竜の代名詞たるドラゴンブレスは過剰過ぎる。
迷宮に満ちる魔力や瘴気に呑まれ、様々な価値観を失して魔物同然と化した野盗の類相手もまた然り。
群れなければ屠り、仕留めるのだけは難しくはない。
逸出した個体と同等かそれ以上に厄介なのは、群れなのだ。人もゴブリンも。

「……次生まれる変わるときは、とか考えだすとちぃと侘しいなぁ我ながら」

故郷にして住処であった森に居た時は、どうだろうか。エルフたちからも同じ扱いであったのか?
流石にそれを尋ねたところで、応えてくれるか。否、そもそも人語を喋れない時点で意味がない。
ここにあるのは、そう。可愛いは正義――という価値観が種族を超えて共通という実例が。
そんな風に愛でられて暮らす生活は、幸せなのだろうか? ついつい真面目に考えだして、やめる。
意味がない。彼らにとっては此れが仕事ではない。
愛でさせる相手、懐く相手は選んでるのだ、と。そう言わんばかりに二匹が振り返り、ぱちーんとウィンクするさまに肩を上下させる。

「なぁるほど。その辺りを纏めだすと、きっと識者が喜びそうだぞ?
 とはいえ、そこまで纏めて誰かに売りつける気もつもりはないが。……そのお陰で飯を食えてるから、猶更にな」
 
竜の生態、スタンス、在り方はそう。喉から手が出る程に欲する人間はきっと多い。
トゥルネソル家の竜のように人間に近しい、親しい竜であっても、尚も謎めいているのが竜という存在だ。
そんな存在に魅入られている者の実例は、きっと枚挙に暇ない程で。
こうして実際に見聞きしたものを売りつけるとどうなるか、その是非と代償は想像するまでもあるまい。
契約を重んじる身としても、そうすることにどれだけのリスクを導くか。
仕様もない想像であったと嘆息し、菓子折りの中身のおすすめに心得た、と頷こう。おはぎの類は喜ばれると良いが。

「腰の鞄とあそこに置いてる鍵を受け取る前に出入りしたのは誰か?と考えると、……挨拶が居るな、こりゃぁ。
 戦うってよりは、身を守る魔法を揃えたって感じだな。
 ん、お前ら。ちゃんと身に着けて持っていけるか? 石は使ったら都度、貯めなきゃならねェだろうが」
 
覚えがないものがすでにあったか、そっと仕込まれたかと考えると、出元は自ずと定まるだろう。
この倉庫の目的と開設の理由に、小動物コンビは関わっている。この場所は彼らの緊急避難所としての役割もあるのだ。
解説される記述内容を聞けば、ほっとする。ちいさな冒険者であっても、己とは違って殺しあいをさせたいワケではない。
隠形と治癒、共通の術は盾。いずれも使いどころを間違えなければ意義が大きい。
内容を聞いた二匹が、それぞれの巣箱の陰に回って、置かれていたものを確かめる。
拾い上げた石を弄んでいれば、羽織の下の毛並みにもぞもぞと埋めてゆく。その姿で走り、飛び跳ねるが不思議と落ちない――らしい。
小さな小さな本もまたきっと、毛並みの下に埋めて運ぶなら、此れも不思議と脱落することが無さそうな。そんなアイテムだ。

リーナ > 「数はぁ、暴力ぅ、ですからぁ……ね。」

 そうなのだ、ドラゴンが群れるという事は珍しい事なのだけども。
 数と言う暴力も侮れないのである、一つの時間に、複数の行動を行うという事。
 魔法で言うならば、足し算じゃなくて乗算になるという事だ。
 その有用性が判るから、軍と言う物が、ある。

「はうっ♡」

 ばちこーんと、可愛い二匹のウインク。
 思わずキュン、としてしまう、なんてファンサなのだろう、貴い。
 何か、色々、今あるべきではない感覚が浮き上がり、さらりと流れていく気がした。

「もう~。影時おじ様はぁ、いじわるぅですぅ。」

 竜の生態のまとめなんて、確かに誰でも欲しがるだろう。
 その意味で言うならば、竜の素材だって、取り放題集め放題だ。
 然るべき研究機関ならば、垂涎の的なのだろう、トゥルネソルは。
 それを示唆する彼に、丸裸は嫌ですぅ、と桜色の唇をツンと突きだし、頬をぷくり、と膨らませる。
 ダメですからぁ、と。
 それを判断するのは、リスとか、祖父や祖母か。

 少なくとも、リーナでは、無い。

「私にはぁ、判りませんがぁ……完璧主義と言うのであればぁ。
 はいぃ、緊急に身を護るのにぃ、逃走経路だけでは、不安、かとぉ。
 逃げるための技術もぉと、いうことなのでしょうねぇ。」

 緊急避難所があるとして。
 其処に逃げ込めなければなるまい、その為の手助け、逃げるための守り。
 そこまでやって、漸くと考えたのかもしれない。
 その辺りは、叔母の考え次第、と言うところ、なのだと思われる。
 魔法のアイテム、紐づけしてしまえば、別の場所に有って、呼んで、手元に来ると言う物もある。
 だから、手で触れてなくても落とさなくなる、と言う効果も有るのだろう。
 書物と魔晶石を手にして、クルクルしている二匹を、微笑ましく見つめるリーナ。
 一杯見て居られそうだ

影時 > 「群れに群れた奴らは……色々物入りになって面倒だ」

特定の一体を相手取るだけなら、備えは少なくても良い。
群れが多ければ、そして雑多になればなるほど、事前に用意すべきものが多くなる。
手裏剣は云うに及ばず、火薬玉や鉤縄、事前の対策が必要なら落とし穴などの備えすら必要だろう。
その点も含めて、厄介と云う。一対多数に慣れていても実に面倒この上ない。

「……――おまへらやるなぁ。ドラゴン殺しぢゃねえかよ」

絵に描いたような凶暴な竜の類ではなくとも、此れはまさに悩殺のそれ、ではないだろうか。
キュン死したようなお嬢様の様子に思わず大丈夫か?と尋ねつつ、肩上の二匹をしげしげと見つめる。
飼い主にして親分の感嘆とも呆れともつかない言葉に、えっへんと二匹が胸を張る。

「意地悪、なつもりはねぇんだがね。
 ともあれ、さっすがに許可も得てねぇことは遣らねェよ。
 こういうのは……契約書に書いていないから問題ない、ではあるまい?
 
 ……あれだ。恩をいただいている以上、弁えなきゃならねェことが分からねぇと、諸々商売あがったりだ」
 
想定される範囲で言ったつもりだが、其れを実行に移すつもりはかけらもない。
特に弟子の生活、野生さも含めて書き出した場合、売り込みに足るかどうかというのは、言わぬが花であろう。
契約書に書いていないからと言って、何か吹聴しても良いという道理は古今何処にもあるまい。
云われるまでもなく、やるものかね、と。頬を膨らませる姿に右手を擡げ、人差し指を差し向けよう。
膨れた頬を突き、溜まった息を抜くついでになだめてみよう、と。

「あいつら、逃げるにあたっては俺以上に遣る臭いが……こうも揃えて貰うと、万全だな」

致せりつくせり、と云わんばかりだよなぁ、と。備えが思わぬ形で増えたことにほっとする。
極寒やら灼熱の地やらでは、最初から避難所に二匹を突っ込むだろう。
それ以外の場所で、避難までに護身と万一の治癒を自分たちで為せる――と云う意味はつくづく大きい。
自己治癒力を高める術は会得していても、他人の重傷を完治できるかといわれると、無理だ。
石に加えて本を持ち、何処の毛並みに仕舞うのがいいのかどうか、二匹で試し始めてじゃれ合う様を見やる姿を見て、目尻が下がる。
当初の目的は終え、思わぬ贈り物が見つかったことによるメリットは本当に大きい。

「……思わぬ贈り物にはびっくりしたが、ひとまず確かめたいことはお蔭さんで終わったよ。
 お礼、というのもなんだが、良けりゃ茶をご馳走したい。いかがかね?」
 
さて、倉庫に居っぱなしというのも華がない。庭などに戻って、茶を点てるのも良いだろう。茶菓子に丁度いい砂糖菓子もあった筈だ。

リーナ > 「ものぉ……いり……ですかぁ?」

 忍びの戦いを知るわけでは無い。知って居るのはドラゴンとしての戦い方や、戦士としての戦い方。
 だから基本的に武器や、素手で、若しくは爪や牙、消耗品を気にする戦い方では無いのだ。
 だからこそ、影時の苦悩というか、面倒と言う思考に、首をこてんと傾げて、問いかける。

「あぁ……はぃぃ。大丈夫ですぅ~♡」

 ほわーんほわーん、幸せオーラが駄々洩れて。
 可愛らしい二匹に、はぅぅ、とキュンキュンしている。
 屹度だめかもしれない、ダメなのだろう、ぽわぽわが止まらない。

「むぅ~。
 詳しいことは、判りませんがぁ……。」

 頬に当たる人差し指、なんでみんな指をさすのだろう。
 もちもちっとした白い頬は、ぷにり、と言う感触を指に与えつつ。
 ぷしゅぅ、と息は噴出される。
 ただ、滅多な事をしないというなら、それ以上を言う事もなく。
 でも、め、ですよ!と釘は差す。

「ただぁ、怪我をした場合はぁ、ちゃんとぉ。見せてくださいねぇ?」

 リーナは、ヒーラーである、施療院では、お金を取って治療するし、無許可の治療は禁止されている。
 ただ、緊急事態や、許可のある治療。
 後は、家で、家族に対する治療行為は、できるのだ。
 大丈夫だとは思っても、ヒーラーとしての想いから、心配から、そう言葉を紡ぐ。

「お茶、ですかぁ……?」

 確かに、色々喋ったりして喉も乾いてきた。
 先程のお礼と言うならば、とおもって。

「はいぃ。ご相伴に与りますぅ。」

 この良い方でよかっただろうか?
 東方の言葉は難しいですぅ、と言いながら、お茶とお菓子を頂くのだった―――

影時 > 「あれだ。用意や備えが多くなると思ってくれ」

忍びとは一つの道具を幅広く扱う。
故に目的や用途を限るなら、予め持参する道具やその場で敷設する罠が定まる。
竜のような戦い方はできない。どちらかとすれば地味、または陰湿すらある仕込みの方が多い。
その手の下準備は慣れていても、常にやりたい類でじゃない。面倒だからだ。

「……事が済んだら、お前らリーナお嬢様の肩や頭に乗ってやれよ?」

これほど幸せムード、オーラが出るなら、御礼ついでにスキンシップもアリだろう。
そういったコトについては、むさ苦しいオトコではだめだ。への役にも立たない。
かわゆさの権化、かわゆさの体現、かわゆさの象徴とも云える小動物ならでは、だ。
止まり木代わりの男の肩ばかりではなく、直で向こうに飛び移るのもお礼代わりにになるにきっと違いない。

「教える身としても、むつかしいコトばっかりは避けたいがね。
 分かった分かった。俺はまだともかく、あいつらが怪我したときの方がもっと重大だ」

教える身として小難しいことをそのままで教える遣り口は、何度経験しても避けたいことだ。
嘘も方便と云うなら、嚙み砕いて教えるためにも比喩やら優しいウソやら、気配りしなければいけないことは多い。
熟練した忍びは余分な手傷を追う以前に、先んじて諸々と闇討ち、奇襲を計画するものだ。
自分たちの集団、パーティーもそのための候補に上がるが、面倒は何処までも避けたい。
向こうが建てた予定、構想の編成の代償、大体となり得るや否や。

「紅茶というよりは、粉の抹茶を溶いた方……と言えば伝わるかねェ。ああ、いいとも。そうとなればまずは外に出るか」

今の次点なら乾物、乾きもののお菓子が多そうだが、向こうの言葉遣い含め、問題はない。
目配せすれば魔導書と石を身に着けた二匹が飼い主の肩、そして頭上に停まって思い思いの休憩に入る素振りを見せる。
屋敷に入れば茶道具を取り出し、抹茶を点てたり買い置きの茶菓子に舌鼓を打って――。

ご案内:「トゥルネソル家」からリーナさんが去りました。
ご案内:「トゥルネソル家」から影時さんが去りました。