2023/11/19 のログ
ご案内:「トゥルネソル家」にリーナさんが現れました。
ご案内:「トゥルネソル家」に影時さんが現れました。
影時 > ――さて、唐突だが自分だけの部屋を与えられた際、どんなこと思うだろうか?

色々思うだろう。そこを自由にしてもいいと言われたら、ある種の驚きすら抱くだろう。
だが、その後にこうも思うのだ。この空間を如何様に埋めて自分の色に染めれば良いのだろう?とも。
そこが住環境ではなく資材置き場、荷物置き場であっても、思うところは色々ある。
利便性然り、そこに置くもの、退避させるものによっては幾つかの品を予め置く方が良いだろうと。

「……よーし、最低限だが此れだけ予め仕込んで置きゃァ一先ずは事足りるだろうよ」

王都マグメールの富裕地区の一角、そこにまるで砦とも云える威容の屋敷がある。
港湾都市ダイラスに本拠を置く商会の邸宅だ。その生業故に建物は堅固であり、庭もまた広い。
その庭の一角の森めいた場所に立てられた倉庫の中から、その声はした。否、声が生じたうえでその中に居た主が出てくる。
ただ、出てくるだけではない。特定の条件を満たしたうえでしか開かぬようにされた扉が、がちゃり、と開く。
そこから出てくる姿は、一人ではない。正しくは二匹とそして――五人。

「“まじっくあいてむ”を置いてても問題は無ぇハズだが……」
  「「「魔骸鋼石で作ったあれこれは気休めでも考えを凝らさねえと怖ぇんだよなぁ……」」」

最初に出てくる姿は、小さい。とても小さい。
大人の掌にちょこんと乗りそうな二匹の毛玉がちょこちょこと出て、浴びる陽光に背伸びするように毛並みを逆立てる。
おそろいの白い小さな法被を着こんだ、茶黒の毛並みのシマリスとモモンガだ。
二匹して何か不気味がるように、或いは呆れるようにくりくりとした黒い眼を見合わせ、邸宅の庭先に出てくる。
彼らの様相の原因はすぐに、ぞろぞろと合わせて出てくる。
毛玉めいた小動物の親分がその原因だ。まるで四つ子、否、五つ子としか言いようがない揃った姿と背格好の男が異口同音に零し、庭先に並ぶ。
全くそろった動きで肩を回し、ごきんと首を鳴らし、着込んだ羽織の裾を叩いて埃を落とす。

タネを知っているものであれば、ああ、と得心は出来ただろう。知らないものが見れば、それはちょっとしたホラーか。

リーナ > トゥルネソル家、そこは、富裕地区の一角にある、大きな家だ。ドラゴンたちが住まうための家でもあるからこその頑強さ。
 ドラゴンが乗っても壊れない煉瓦造りで三階建て、ドラゴンが本来の姿で寝そべる事の出来る広さの庭。
 下手な砦よりも広いその家には、沢山のドラゴンが人の姿になって、住んでいる。
 その中の内、ゼナ娘であるリーナは、お嬢様、と言う立場にある。
 ただ、リーナ自身は、お嬢様であることを良しとせず、普段は治療師見習いとして、施療院で勤めている。
 施療院が休みの時は、冒険者の治療をしたり、家で勉強をしたりもしている。
 そんな折に、何時も家に出入りしていて、叔母であるラファル、姉であるフィリに勉強を教えている家庭教師の男性が、庭の隅で何かをしているのが見えた。
 何をしているのだろう、と言う興味がむくり、と湧いて、少女はとことこと、家を出る。

「ごきげんよう、笠木のおじ様。
 何をされていらっしゃるのでしょうか?」

 今回は、お仕事でもないので楽なワンピース姿で、いっぱいいる家庭教師の方に近づいて行く。
 ワンピースは、ふわっふわの胸でゆっさゆっさと揺れて居たりする。
 金色でロングな三つ編みの髪の毛も、今日もふらりふらりと揺れていた。
 金色の瞳は、興味津々に、男性の――その奥のぼやけている所に視線を向ける。
 其処は結界が這ってあって、主の許可がないと、トゥルネソルの者でも詳しく良く見えないのだろう。
 あと―――何故だろうか、五人になっている家庭教師の男性も、不思議、不思議、と首を傾いで。

影時 > (忍者の)家庭教師から武術指南役にクラスアップ、契約変更に伴い、依頼した際に頼んだのはいわゆる魔法の鞄だった。
弟子たちが使ってるからもあるが、宿部屋を圧迫しかねない雑貨類の蓄積や、鍛冶屋の知人に運ぶ資材の問題があったからだ。
そして同時に、冒険に基本的についてくるつもりでいる毛玉二匹の避難場所を考えあぐねたからでもあった。
雇用主に求めた内容の回答は思わぬところであったが、概ね納得も得心もでき、なおかつ、メリットも多かった。
だが、流石に手入れやら何やらを行う場合、流石にそれは誰かに頼むわけにはいかない。自分でやる必要があった。

「――ン?」
  「「「……おお、リーナお嬢様じゃァねえか」」」
  
その必要に対する対処が、これだ。忍びの練達者(にんじゃますたぁ)として、倉庫を与えられた男は分身の術を会得している。
手が足りぬなら、手っ取り早く増やす手段を実行できる。其れに足る力量を満たしているが故に。
そんな本体と分身含め、背丈も容姿も何もかもが揃った五人の男たちが、全く同じタイミングで振り向き、声をかけてきた相手を見る。
見える姿は弟子たちではない。弟子たちと異母姉妹――となる、であろうが形質は似ていても片親たちに習い、良く育った姿だ。
幾つか張られた結界の域から進み出つつ、応えを返しながら会釈を返そう。ついついそのゆっさゆさしてる処に目が行くのは、仕方がない。

「古道具屋で買ってきた机やこいつらのための絨毯やら水場やら、魔封じの敷物を置いてたのさ。
 誰かに見せるための場所じゃぁないと云え、床に直置き――というのも、なンか引っ掛かるもんでな」
 
応えていれば、男の肩に二匹の毛玉が攀じ登ってくる。
二匹も見知った姿にぺこん、と行儀よく会釈した後、ぺちぺちと親分の頬を叩く。分身たちが気持ち悪いと言いたいのだろうか。
それを感じたのか、横並びに整列した男のうち、四人が右向け右をして、その先に立つ姿に重なるように歩き出す。
実体が薄れ、半透明になりながら、奇妙な残像を残しつつ重なり――、一人になる。最後に残る者が術による分身ではなく、本体である。
子分たちの法被とおそろいの家紋めいた紋を刺繍された羽織を秋の風に揺らしつつ、改めて令嬢に一礼をしてみせる。

リーナ > 「わぁ……。」

 ぽかーん、と桜色の唇が開いてしまった。
 知っている顔が、一人、二人、三人、四人、五人。
 沢山いる、双子……と言うか、五人となると、○○松さんとか、その辺の存在かしら、と目を瞬く。
 おんなじ顔がいっぱいあるし、ああ、それなら、ラファルちゃん様や、フィリお姉様を並行して教える事が出来るのだろう。
 そんな納得をしてしまうのだった。
 目をぱちくり、しながらも、彼の後ろにある、見える様で見えないその場所―――影時さんの部屋の方を見る。
 竜の目をもってして見えないのは、竜胆が全力で張った結界の所為だろう。
 其処に近づいてみても、ぼいん、と押し返されてしまう、お胸がむにゅん、と柔らかくひしゃげる位にしっかり壁である。

「えぇと、ごきげんよう。挨拶がぁ出来るのですねぇ。
 成程ぉ、部屋を作っている、と言う事ぉ、なのですわねぇ?」

 挨拶をする二匹の小動物に、スカートの端を摘まんでのお辞儀(カーテシー)をしてみせる。
 にっこりと微笑みを零して、頭を下げる少女は、ヒテンマルやスクナマルも同じ存在と、挨拶すべき人だと思っている。
 ペコリとお辞儀する彼らにお辞儀を返せば、それでもたゆん、と揺れてしまう。
 プルンプルンでたゆんたゆんな柔らかなふくらみ、本人は無自覚で、興味は二匹の小動物に。
 叔母のように食欲、と言うわけでは無いのでご安心を。

 お辞儀をする影時さんに、ご丁寧に、ともう一度頭を下げて見せて。

「お手伝い、致しますかぁー?」

 勉強をしていると言っても、暇つぶしのような物だ。
 何か人の手伝いとなるのであれば、其方の方が優先と、にっこり微笑みを零して、首を傾いで問いかけた。

影時 > 「「「……まぁ、見慣れねェよなあ。極力使わないようにしてる術だしな」」」

この術が使えるから達人、というわけでもない。だが、術を維持するためのリソースも難易度も決して低くはない。
分身の術含め、力量を求められる術の数々に習熟し、効果的かつ適切に運用できてこその達人だ。
労働力、手数を求めたとはいえ、今使う分身の扱いがまさにその例だ。術者と同一の姿を紡いでこそ、惑わしの意味がある。
もっと出して運用することも容易い反面、使いどころを間違えると何かと面倒臭い類の術でもある。
全力で張ってくれた結界は恐らく、今でこそ家令長に預けている刀や魔力を吸い上げる武具を収容するためでもある、だろうか?
恐らく、そんな根性が入った結界に近づいたたのであろう。見えざる何かに柔らかくひしゃげる箇所をじー、と注視して。

「……これで良し、と。こいつら、妙に賢いみたいでな。
 まぁ、概ねその通りだ。どちらかと云や、俺よりもこの二匹の隠れ家という方が正しいか」

術を解けば、残る人影は一人だ。最初から小動物が肩に乗ってきた方が本体だった。
故にその場を動かずとも、会釈を再度返して見せる飼い主の双肩に乗った二匹の立ち位置は変わらない。
同種より頭も力もある――らしいシマリスとモモンガは、親分の言葉がわかるのか、えへん、とばかりに胸を張ってみせる。
とはいえ、そんな彼らでもより大きい、大きすぎる敵と戦うことは出来ない。
危険地帯についてきた、連れてきた際の緊急避難先を求めたのも、契約変更に伴って求めた背景にある。
トゥルネソル家のご令嬢で食欲全面、野生全開というスタンスではないコトが分かっているのか、二匹の小動物は警戒する素振りもなく。

「あー、魔力の流れに詳しいなら頼みてェな。
 流石に盗まれるような面倒はないと思うが、安心してあそこに放り込めるかどうかは確かめたくてね」
 
あそこ、としゃくるのは例の倉庫の扉だ。声を放つ男の白い羽織の下、腰裏には鍵の役割を果たす雑嚢が装着されている。
魔法仕掛けの倉庫は予め設定されたこの鞄の持ち主、または別途存在する鍵でなければ、扉が開くことは無い。
故にその条件を満たしていれば、結界は素通りできることだろう。
ちょいちょいと手招きして、近づいてくればその手を取り、倉庫の扉の前まで導きつつ歩くか。

リーナ > 「はぃ~。ラファルちゃん様のぉ様な感じになってますねぇ~。」

 リーナの叔母であり、影時の弟子であるラファルは、竜の魔力、気力の膨大さを盾に年がら年中分身している。
 そして、それをあちらこちらへと派遣しては情報収集しているのである。
 右にいたと思えば左にいる、と言うのは、大体がラファルの分身で、彼女が何かを調べている証拠。
 達人のように節約ではなく、米帝もかくやと言う感じの、ごり押し、なのであった。

 結界の理由に関しては―――作成者の性格も有るのだろう。
 プライドが無駄に高い分、完成度の高い物を作りたがる、そして、完璧を求める。
 その結果、物凄いレベルの結界となって、危険物なども、放り込むことができると言う所、凝り性とも言える。
 見えない壁に阻まれるのが楽しいのか、あはぁ、と寄り掛かったり、頬ずりして見たり、ぷるるん、としている。

「お話しできるのはぁ、良い事だとぉ、思いますわぁ。」

 二匹の小さな動物、胸を張る姿が可愛らしくて、触れて良いですかぁ?とモフモフを堪能したくてうずうず。
 胸を張っているお腹をこしょこしょしたいとも思ってしまうのであった。

「うぅん……。
 魔法に関してはぁ、竜胆叔母様の方が得意ですの~。
 私はぁ、まだまだお勉強中ですが~」

 それでも、出来ないというわけでは無いし、手を取られてしまえば、ぽぽぽ、と頬を染めてしまう。
 余り人と、特に男性と触れ合う気概が少なくて。
 知っている男性と云えば最近よくお茶をしたりするアティルさま位だ。
 彼だって、紳士的で余り触れたりはしてこない。
 ただ、倉庫に興味があるので、素直について行くのだった。

影時 > 「……あンの弟子は、ったく。俺が本家本元よ。
 とは言え、四六時中使ったりやら何やらについては、もしかすると弟子の方が勝るかねェ」
 
もう一人の弟子、面倒見ているトゥルネソル家の子女も確か、一番弟子をそう呼んでたか。
家系図的に叔母となる関係上、のことだろうか? 見た目と実年齢が逆転する生態は、竜特有のものか。
とはいえ、竜でありながらストライダー、盗賊、果ては忍者への適性を多く持っていたため、伝授できるものは多かった。
結果出来上がるのは、竜としてのリソースを背景にした、よく食べてよく走る神出鬼没の何か、である。
弟子に出来て師に出来ないコトはないとは云えども、同じ術の使い方は術者の個性が大きく出る。

「こいつらがコトバを使うワケじゃぁないが、なーんとなく分かるンだよなぁ……。
 と、触ってみたいそうだぞ?ヒテン、スクナ。どうする?」

結界の精度、性質はプライド高い凝り性のお陰で色々と有難い。
収容可能な容積は恐らくは使い切れない位に広くとも、事前の打ち合わせの上で外部からの扉を開閉できる意味は大きい。
弟子の姉にして雇い主たるトゥルネソル商会三姉妹の長女・リスとは、念話を行うためのパスを繋いでいる。
遠く離れた出先で、急ぎの補給やら物品の受け渡しが生じた場合、倉庫の鍵を予め渡しておけば容易く対処が出来るのだから。
忍びとは現実主義、合理主義になりがちな生き物と自認しているが、その認識を踏まえてもメリットはあまりに大きい。

さて、閑話休題。可愛い生き物はその在り方だけで、誰かを惹きつけるらしい。
それぞれ着込んだおそろいの法被の下、お腹の白い毛並みはもっふもふふかふかの冬毛である。
飼い主の両肩に立つ二匹の小動物がお互いに顔を見合わせ、あっしらで良ければ、とばかりに、改めて胸を張ってみせる。

「専門な知見までは流石に望まねェさ。奇妙な流れが出てるかどうかのみ、で十分だ」

しかし、男女のあれこれにはまだまだ疎いのか、経験がないのか。
手を取ればすぐに頬を染める姿に、気を付けなきゃならねェかなあと思いつつ、件の倉庫の扉の前へと引き連れよう。
手を繋いだまま、逆の手で倉庫の扉のノブに触れれば、それだけでかちゃり、と。勝手に錠が外れる。
開けば見えてくる空間は、外の時刻と同じように明るく、容易く視界が通る。
縦横の容積も床面積も何もかも、建物の外とは合致しない。合致するどころか、魔法的に拡張された空間は体育館のそれにも匹敵する。
そんな収容空間の手前に、置かれたものがいくつかある。
一つは絨毯敷きのスペース、もう一つは古びたテーブルとその上に敷かれたテーブルクロスだ。
前者のうち、絨毯の上に置かれた2つの木箱は丸い穴が開いている処から、二匹の小動物の巣箱であろう。

リーナ > 「影時おじ様が~、本家本元なのですねぇ。
 ラファルちゃん様はぁ、何時も無尽蔵、ですからぁ。」

 飛んだり跳ねたり、止まっている所を見る方が珍しい何か、それがラファル、トゥルネソル。
 一応、トゥルネソルの娘の中では三番目に年長者のはずだけど、その精神性は、幼女、見た目通りの年齢と言うだけでもある。
 外見的には、妹にも見えるので、ちゃんづけをするように本人に言われるのだけど、様が抜けないのが、フィリと、リーナ。
 その結果、ラファルちゃん様と言う不思議な物体が生まれるのである。
 因みに、見た目と年齢に関しては、竜は精神年齢の外見になるので、そういう事が良くあるのだ、と。
 あと、走って、喰っての上に、空も飛んでる。物理的に地に足が付いてないとも言う。

「わぁ、有難う~ございますぅ~。」

 もふもふふっかふっか。その二匹が、再度胸を逸らしてくれるのであれば、そっと手を伸ばして、掌の上に。
 ほんのりと暖かな、小動物の暖かさにほわぁ、と嬉しそうに甘く笑って、すりすり、と頬ずり。
 滑らかな肌触りに、法被にくすぐったさに、擽ったぁい、と楽しげに笑って。
 スクナマルとヒテンマルのモフモフを堪能して。
 くすくす、と楽しく笑うのだった。

「その程度、でしたらぁ。
 (わたくし)にもできそう、ですねぇ。」


 竜の娘たちは基本的に魔力を物理的に見る目を、竜眼を持っている。
 なので、見るという程度の事であれば出来る、と頷く、そして、淀んでいたりするならそこを指摘することも出来よう。
 竜胆の結界が緻密過ぎて、それを見るのは大変かもしれないけれど、それ以外なら、と。
 其のまま、手を引かれて入っていくと、何かを潜る気配。
 彼と共に、入ると、先程までは入れなかった場所にするりと入れて、視得なかった場所がしっかりと見える。

「わぁ。
 広いですねぇ~。」

 広い。
 物の少なさとかも有るのだけども、とてつもなく広い。
 その中にポツンとある、ヒテンマルとスクナマルの巣箱。
 此処に、小さな小屋を建てれば立派な隠れ家なのですわねぇ、とそんな、とりとめのない事を考えながら。
 キョロり、キョロり、と周囲を見回して。

「特に~。魔力が固まってたりぃ~淀んでいる所はぁ~なさそう、ですわぁ。」

 広すぎるので、今、見えるはんい、といういみではありますが。
 何を気にされているのですかぁ?と、隣の偉丈夫を見上げる。

影時 > 「そうともさ。
 若しかしたらいずれ開眼してたかもしれねェが、……ドラゴンはどちらかといえば、小賢しい何やらは好まン生き物のように思えてな」

術式の出元、本家本元という観点を言えば、教え込ませたのは他でもない。この自分だ。
だが、実例含め、最終的な術の使い方が同じではないのは、明らかに個性だろう。
この己の完全コピー、デッドコピーの類を作りたいワケではないのだから、それで良い。口やかましく注意する理由が無い。
教師として、伝授したものとしての責を負うとすれば、これでもと云わんばかりの過ちを犯さぬかを監督する位だろう。
とはいえ、ちゃん様とは――なんだろう。竜の人間態が精神年齢に左右されるのを含め、不思議な気持ちになる。
だが、弟子にはできても師には出来ないコトも皆無ではない。人間は飛べるようにはもともとできていない。

「こいつらがイイってなら、大丈夫なんだろうよ。
 御礼ついでにあとで餌をやってあげると、きっともっと喜ぶンじゃねえかなあ」
 
この時期、時分となれば、毛並みは其れこそふっかふかやで!と云わんばかりのものだ。
親分と云う名の飼い主についてきたとはいえ、季節に応じて毛が生え変わるのは、何も不思議なことではない。
そして、そんなコトに何やら惑わされる人間がいるということも、飼い主と共に過ごして学んだ――らしい。
暇なときに学院を闊歩する中、すりすりされることで偶に餌をくれる生徒が居るとか、居ないとか。
そんな刺さるものには刺さる毛並みを堪能するさまに、お腹どころか額も擦り付けて、懐く二匹の姿がここに生じる。

「助かる。どうもお前さん家の竜はだいたい、そういう眼を持ってくれてるみたいでな?」

此れもある種の血統故のもの、だろうか?
竜のコミュニティや事情は知らないが、遺伝する技能ならば持っていないという可能性は恐らく低い。
地脈を辿る、感じるような程度はやれても、魔法の式に関するような異常、異様という観点には流石に男も疎い。
男女の機微も同様に疎いかはさておき、結界と扉を抜けて問題の倉庫の中に踏み入る。

「正直全部を使いつくす――かどうかは分からンにしても、此れだけありゃ諸々事足りるのは疑いねえな。
 ……んじゃぁ、あの辺りはどうだ? 便利と言えば便利だが、魔法使い殺しな奴が手持ちに在ってね」
 
しかし、何度見てもこの倉庫の中は広い。途轍もなく、とは言い過ぎでも、異常な所有欲がない限り使い潰せなんのではないか?
そう思う空間の片隅から、床面積を占有する者が生じている。
奥のほうには未開封の木箱の山があるが、問題なのは入口に近い手前側。
栗鼠とモモンガの専用スペースとばかりに敷かれた絨毯の上には、巣箱とエサ皿に加え、おのずと水をたたえる魔法の皿が安置されている。
巣箱に近い位置に敷かれた布敷きの平たい木箱は、恐らくトイレ代わりであろうか。男が見る先は其処にある。
その先に古いテーブルが安置され、奇妙な文様が描かれたテーブルクロスが敷かれた上に、小さな匣と一本の短刀が安置されている。
扉の鍵を収めた匣ではなく、短刀の方が問題だ。竜眼で見れば、その素性と性質は一目瞭然であろう。
魔除けの文様でさらに小規模の結界を構築している中にとはいえ、柄を握れば自ずと氣や魔力を吸い、糧とする妖刀もどきがあるのだから。

リーナ > [中断致します]
影時 > 【次回継続にて】
ご案内:「トゥルネソル家」から影時さんが去りました。
ご案内:「トゥルネソル家」からリーナさんが去りました。
ご案内:「魔族の国・欲望の街「ナグアル」【八区画・歓楽街】」にジェイミ・アイニーさんが現れました。
豚魔族 > >
昼どころか夜も煩い第八区画の一角
欲望溢れるナグアルの中でもより混沌としている場所
そこで少しだけいざこざが起こっていた
住人同士ならよくあることだが、相手をしているのは双子の悪魔…この区画の長だ
その相手は雄々しく横と縦に広い体を持った豚魔族である
いかにも下卑た笑みと暴力的な雰囲気で双子を見つめている

賭け事などで住人も挑戦することはあれど、本気で害そうとする者はそうはいない
しかもこの魔族は住人ではなく…単純に序列持ちの中で弱そうな、子供の外見をした双子を自己満足のために叩きのめそうと入国してきただけである
序列などに興味はなく、ノした後は住人の前で慰み者にしてやろう…という程度の考え

「長はお前らで間違いなさそうだなぁ…、へへへ、死なねえ程度にボコボコにしてやるよ
その後は……泣きじゃくるまで使い捨ててやろうかぁ?」

豚魔族は、序列持ちや魔王などと呼ばれる存在とは比べるべくもないが、膂力と体力も外見通り太そうだ
舌なめずりをし、魔族らしく欲望を双子に向けている…

ジェイミ・アイニー > >

それらを受けて、双子は恐怖するでもなくいつも通り
小さな体で、豚魔族を見上げてにやりと笑う

「手間が省けるなあ、アイニー」
『ええ。わざわざ警邏をしなくても寄って来てくれるなんてラッキーですね』
「まったくだ。今反省するなら適当に遊んでやってもいいけどな~、そんな様子無さそうだし…んー、終わったらどうする?」

街を壊そうとはしていないものの、もし双子が見つからなければ住人に危害が及んでいたかもしれない
そういった意味では、ふらふらと歩いていた甲斐もあったというものだ

『そうですね…。根っこに好きなように…なんでしたか。『治験』に使ってもらってもいいですし、あの体です。色々使いようはあるでしょう』
「それこそ死ぬまで戦わせたりな!、お前はどういうのがいい?」


豚魔族 > >
自分の口上にも全く動じない双子を見て、挑発と取ったか

「ナメてんじゃねえぞっっ!!!」

一気に大股で一歩踏み込んだ魔族が巨大な拳を振りかぶり、双子の居る地面へ向けて叩きつける
双子から見れば隕石の如き一撃だ
双子が為す術なく叩き潰されたように見え、豚魔族はほくそ笑むが…

ジェイミ・アイニー > >

「…はぁ~、筋肉を見るのは<二>で間に合ってるんだ」
『しかも<二>と違って頭も悪そうです。欲望は嬉しいですが…』
「好みじゃないな!却下~」

双子の声が、豚魔族の左右から聞こえる
いかに強力な拳でも、当たらなければ何の意味もなさない
地面に直撃した拳を駆け上がり、魔族が気づかぬうちにその両肩に陣取った双子は…薄く、けれど研ぎ澄まされた氷の刃をそれぞれの片腕に出現させ
ひたり、と魔族の首に当てる
このまま振りぬけばその首を飛ばすことは容易であろう魔力の籠り方
ただし声の調子も変わらず…雑談のような雰囲気のままだ

「で?ヤバいことされるか、ひたすら戦うか…どっちがいい?」
『答えは聞いていませんけどね』

氷の刃に意識が向かった瞬間、直接魔族の頭に金魚鉢を逆さにしたような水の塊が被せられ、その呼吸を奪う

「あははは、踊ってる踊ってる」
『乗り物としての道もいいかもしれませんね』

少しもがいた豚魔族だが、双子は乗馬気分でそれを乗りこなし…やがてどぉん、と豚魔族が地面に倒れる
後はどうなるか。ここの住民に酒漬けにされて入りびたるか、あるいは双子の言った通り酷いことになるか…そのどちらかである
この程度はいつものことなのだが、双子は少し気になることがあった

「…何か、調子いいよなー、最近」
『ええ。魔力の質、量ともに高まっている気がします』
「…やっぱりあれか?アタシたち、淫魔の才能もあったのかー?」
『直接撃ち込まれたからでしょうね。淫魔は精からそのまま吸い上げられますし』

少し前からやたらに動きが良くなっている
体だけではなく、魔力もだ
以前は、あんな鋭利な氷の刃を作ろうと思えば少し時間がかかった覚えがある
その理由を考えつつ、とりあえず住民には騒いでもらって
自分たちはまた…

「よし、仕事したぞ~!打ち上げだ~」
『いきますよ…』

以前も打ち上げていた、火と風、水を使った安全な爆発を空に放って住民を楽しませつつ
けらけら笑って、夜の八区画を歩き回っている

ご案内:「魔族の国・欲望の街「ナグアル」【八区画・歓楽街】」にセーレさんが現れました。
セーレ > 「うわぁ…また派手にやってんねぇ~」

豚面の魔族がもがきながら、地面に倒れる様を横目で見つつ、
小さな羽根を揺らす天使のような影が一つ、人混みに紛れて小さくぼやく。

それは十一区の長たる悪魔、セーレに相違ない。
しかして何故に、彼/彼女がここに居るかと言えば…
ちょっとした気まぐれであった。

以前の賭け事の後、自身の領内には彼女らを案内したが、
自ずから”今の”彼女らの領地に訪れたことはそう言えばなかったな、と。
そんな風な思考が、暇を持て余していた時に過ったのだ。

ジェイミ・アイニー > >
「無駄に重たいからどう運ぼうか…、おー?」
『……。あら、セーレ』

倒れた魔族の腹の上で、爆発を眺めていた双子だが
覚えのある気配を感じれば、つま先立ちをして辺りを見まわす
丁度、この区画らしく…近くの酒場の扉が吹き飛んだところだ

天使のような相手に領地に案内された後
気軽に呼ぶことにしたらしい双子は…相手を見つければぴょん、と腹の上から飛び降りて

「どしたんだー?また暇なのか?」
『あなたもあなたで、のんびりするという欲望を果たしていそうですね』

くすくす笑うジェイミとアイニーが近寄って少し気安くなった挨拶をしよう

セーレ >  
「あ、見つかっちゃったか」

ぴょこりと頭上の環を揺らして、セーレは蝶のようにふわりと浮かびながら振り返る。
まあ、こんなにも(魔族としては)分かりやすい容姿をしているのだから当然か、とも思いつつ。
振り返ったセーレはひらりひらりと手を振り返す。

「まあね、契約しようって人が居なくて暇してたもんだから」

そういうキミたちも遊んでるねぇ、なんて返しながら、セーレはふわふわと二人に近づく。
見つかってしまった以上、まぎれている意味もあるまい。

ジェイミ・アイニー > >
「見つけやすいからな~。きれーで弄りたくなる羽だし」
『ええ、とっても見つけやすいですね。輪もありますし』

こくりと頷く双子
場所柄、厳つかったり派手だったりする魔族が多い八区画
その中だと、天使のような外見は良く目立つ

「そうか~、じゃあまた遊ぶかっ」
『私たちもしっかり『仕事』をしたところですから…暇というワルモノをやっつけますか?』

絡まれたとはいえ警邏はやりきった感がある
だから、この可愛い天使とまた遊びたいなー、と目を輝かせている

セーレ >  
「ワルモノ退治はボクの役目ってわけじゃあないけど…」

ふっと羽根を休ませるように地面に降り立つ。
目線を合わせるように、地に足を降ろして。

「暇潰しをするのは大歓迎」

なにする?と問いかける。

ジェイミ・アイニー > >
ワルモノというのは冗句だが、目線を合わせてくれればにまー、と笑い返して

「ん~、じゃあ何かまた賭け事しようっ」
『負けたら…そうですね。一つ相手に命令できることにしましょう。
…私たちは…せっかく来たのですし、セーレに、みんなを楽しませるのに協力してもらいましょうか』
「もちろん、アタシたちが負けたらセーレの言うこと一つ聞くぞ~」

思考が単純な二人らしい、簡単な勝負をもちかけよう
物足りないかもしれないが、これもまた契約だろうと
相手の望むものが未だはっきりしないため、そこは相手に委ねつつ
カードを持ってきて~、と周りの魔族にお願いしておく

セーレ > 「好きだねぇ、賭け事」

そう言いつつ、断る気も断る理由もないのだが。
澄んだ笑みを携えながら、息を吐くように一瞬だけ目を閉じる。

「前とまあだいたい同じってことだね。
 んじゃ、今度は何かな…さすがにコイントスじゃないだろう?」

以前は1/2の勝負だった故か、中々に勝敗が付かなかったが、
はてさて、今度はカードで一体何をするのかと問いかける。
どんなゲーム、賭け事であるにせよ、刹那の暇は潰せるだろうと。