2023/11/08 のログ
サウロ > 「……、どうぞ」

(注文したものが届くまでに煌々と外灯で照らされる窓の外を眺めていたが、不意に聞こえた足音と近づく気配に視線を向ける。
 フードを深くかぶったまま、その下から覗くのは碧い瞳と金の毛先。
 サウロに声を掛けたのが、まだ幼さを残すやや上背のある女性────だろう。
 短い銀髪に金の瞳をした彼女と視線を交わらせれば、どうぞ、と目の前の席を促す。
 そのうち己が注文した品もやってくるだろう。
 給仕から受け取り、食前の祈りを小さく口ずさむ。
 別の給仕が木樽のコップに並々と注いだ酒を持ってきて彼女の前に置くだろう。)

「……こんな時間にお一人で、危険ではありませんか?」

(周囲の視線は彼女へと向けられている様子。
 奴隷市場都市、そこには明確な身分など些事でしかない。
 貴族でも王族でも魔族でも、市場に並んでいることも珍しくはないのだ。
 己の性格というか性根というか、そう訊ねずにはいられなかった。
 とは言え、一人でこんな場で酒を頼める豪胆さがあるなら、余計な世話かもしれない。
 パンを千切ってチーズを乗せながら口に運び、生姜茶を飲む。
 酒を飲みに来たと言うよりは、食事をしにきたという様子に映るだろうか。)

イェフィム > 「どうもありがとう。」

フードを目深にかぶった…、声から悟るに青年。
自分と同じくらいの背丈の青年の隣に遠慮なく腰を下ろすと、へらり、と緩く笑みを浮かべて見せた。
短い銀髪に金の瞳が、青年のその後の行動を見止めれば。

「貴方も教会の出、なんですかね。」

と思わずつぶやきを零す。
貴方も、と言葉に出したが…とてもじゃないが自分と同じ、禄でもない教会とは全く違うだろうなと思わせる動きだったから。
くつりと笑いながらその姿を見てしまったが、それ自体が不躾だっただろうかと、小さく「失礼。」と謝罪しておく。
そんな言葉に重なる様に、目の前に木樽のコップが置かれ、女性の給仕がチラチラとこちらに目線をやりながら離れていく。

「…危険かなんて、そんなの気にしてたら酒なんて飲めないデショ。」

くつくつ、と笑いながら片手で木樽のコップを手に取り、コクン、とその中身を口にする。

「それに、俺がどうこうなろうと気にする奴なんて居ないんで。」

大丈夫よ、と、答えになっていない答えを返す。
どうにもこの場、というよりもこの街に似つかわしくない精神を持っているらしい青年。
なんというか、難儀だな、と思いながらへらりとした笑みが浮かぶ。
ぐいぐい、と度数の高い酒を水のように飲んでいけば、次第にその目元が薄く赤く染まりだしていく。

サウロ > (食前の祈りを見て教会、と出した彼女の呟きに軽く視線を上げる。
 「育った場所が教会の孤児院でしたから」と己の出自に対して負い目などない様子で返した。
 腐敗の進むこの国において、清廉潔白とした場所だ。
 そう気づいたのは腐敗を幾度も目にしてきた大人になってからだったが。
 こちらを見る視線に咎めるつもりも不必要に不愛想な態度をとるつもりもなく、謝罪には軽く首を振って。)

「……お酒にはお強いんですか?」

(危険なんて気にしていたら飲めないというが、この都市では気を付けた方がいいことに変わりはない。
 無法地帯だ、というのがサウロの印象だった。荒れているわけではないが、秩序もない。
 道端で犯されて捨て置かれた女が翌日奴隷の競りにかけられている光景もここでは日常茶飯事。
 投げやり、というか、自身の安全や身の価値などどうでも良さそうな言い分には、僅かに眉を顰めて。
 スープを飲み干し、パンとチーズも食べ終わって、茶を飲む。
 あとは水を頼んで、その一つをうっすらと赤ら顔になっている彼女の方へと差し出した。)

「僕は貴女の事を存じませんので、懺悔室の真似事など出来ませんが……飲みすぎにはくれぐれもご注意ください。
 明日、貴方が競り場で鎖に繋がれている姿を見るのは、億劫です」

(親身に話しを聞く……ということも、この都市外であればしたかもしれないが。
 彼女が"仕掛人"側である可能性も否定は出来ないが故の警戒と、助言。
 それをどう受け取るかはわからないが、彼女の見立て通り、この街には似つかわしくない精神が滲み出る対応かもしれない。)

イェフィム > 「そっか、いい場所だったみたいで良かった。」

ゆるゆると笑みを浮かべながら酒をかっ喰らう自分と、
胸を張って自分の生まれを語れる青年と、
そんな二人に視線を注いでくる周囲。
自分にとってはこの街のほうが身体になじんだ視線があった。

「ん?ん-…普通じゃない?
自分を酒豪と思うにはまだちょっと生きてきた人生短すぎるかなー。」

カラカラと愉快そうに笑いながら肩をすくめた。
身にまとっている騎士服は上等なものだ。
それだけを目当てに襲われる可能性もあるだろう。
この街ではそれがまかり通る、そしてまともに取り締まる人間はいない。
自分のような奴がどうなろうと誰も何も思わない。
ぐびり、と酒を飲みながら、水を差しだしてくる青年を見やる。

「…ふふふ、大丈夫だよ、二日酔いになったことは無いから。
でも、そうだね、万が一そんなことになったら、俺は運命を信じてみようかな。」

そう言って、ふわりふわりと、この場には似つかわしくない柔らかい笑みを浮かべて見せた。
どこかつかみどころのない言葉を述べながら、ふわふわと。
そしてその幼さの残る、ふわふわとした笑みとは裏腹に、
指先はどこか艶めかしさをもってグラスを差し出す青年の指先をなぞるだろう。

サウロ > (いい場所と告げる言葉に、そう断言できる理由はなんだろうかと考えて。
 浮かんでくるのは、真逆の環境。彼女が育ったのは"いい場所"とは言い難いところだったのかもしれないと。
 だからこその投げやりめいた飲み方なのかと思うが、あくまで憶測程度に過ぎず、実際のところはわからない。
 上等な騎士服は、王国由来というよりも教会由来。
 聖騎士職かなにかだろうかも思うが、このあたりに教会などあっただろうかとまた疑問。
 ヤルダバオートの"地下"からここへ送られてくる修道女などもいることから、教会関係者の護衛か何かか。
 色々と浮かびはするが、どれも推測の域を出ない。

 それよりはアルコールの匂いにあてられてか、眉間に皺を寄せた。
 ふわふわと柔らかい笑みを浮かべる彼女の言葉に対して、どういう反応を取るべきか分からないと言った様子だ。
 困惑と警戒。そんな表情を滲ませながら、お代をテーブルの上に乗せると立ち上がり、
 周囲の視線から遮るように彼女の顔をローブと体で隠しながら顔を寄せて、彼女だけに聞こえるように囁く。)

「……あまりそういう可愛らしい顔で隙を見せないほうがいい。十分に気を付けて」

(彼女の浮かべる表情がどういう意図かはわからないが、その顔を見て悪いことを企む者も出てくるかもしれない。
 顔を離し、彼女が見上げるならフードの下で、真面目そうな顔が向けられている。
 奴隷の給仕に「ご馳走様」と伝えて、特に止める声も無ければそのまま店を後にするだけだろう。)

イェフィム > いい場所、何て自分で言っておいて、そんな場所あるかなぁと思う気持ちも抱く。
いい場所なんて決めるのは所詮は人の気持ち一つ、あの禄でもない場所でもそう思う奴もいるだろうし。
ん-、と小さく声を漏らしつつ、自分で言っておいた言葉に自答を返すのである。

「……ふふふ、今日来たのは教会関係じゃないよ。」

それを信じるかどうかは青年次第だが。
今日この場所に来たのは、禄でもない義両親に連れられてやってきただけ。
その際に騎士服を着せるのは義両親の、こいつに視線をやっていろ、
と周りからの視線を少しでも自分たちから逸らすためのもので。
言ってしまえば自分が痛い目に遭うというのが一つ役目を果たすことになるだろう。
そうわかっていたからこそ、どうでも良かった。

青年が眉間に皺を寄せるのを見れば、アルコールはお嫌いかな?と、尋ねた。
わざわざ食事のために酒場を選んだのなら多少は大丈夫だろうと思っていたのだけれど。
そして見上げた先の青年の顔、困惑と警戒が入り混じるそれを見れば、またふわりと。
周囲の視線から遮られる顔、そして耳に届いた言葉には…。

「―――ッ、そういう心にもないことは言わないに越したことないよ。」

真面目な顔に冗談とは思えないながらも、口先からこぼれるのは今までとは違うツンとした言葉。
止める言葉ではないが、ぽつりと。

「お兄さんならイイと思ったンだけどな…。」

ぐい、と、木樽のコップを傾け、水のグラスはそっと給仕へと突き返した。
青年が立ち去っていくのならば入れ替わりに店内で飲んでいた男が一人、
振られたのかい?とにやけ面を晒しながら近づいてくるだけで。

サウロ > 「嫌いではなかったんですけど、ね。いつかまた、気持ち良く酔えるようになりたいですね」

(アルコールによって精神が壊される体験をしたことがあるだろうか。
 アルコール自体が原因ではないが、それに近しい体験の記憶を共有した時から、酒が一切飲めなくなってしまっている。
 苦笑を浮かべながらも、そんな事情など、彼女の知る由ではないだろう。

 彼女の名も、素性も、目的も、サウロが知ることはない。
 これが言動の軽さに定評のある相棒であるならば、彼女の望みを叶えられたかもしれないが。
 この都市の空気が合わずに体調や調子を崩しているサウロは、誘われたとも誘い待ちだったともわからなかったという……。

 ツンとした返答には苦笑を零し、小さな呟きは聞こえなかった。
 サウロからすれば自身の正義感がこの都市では相応しくないものであると自覚しているし、付け入る者がいるとも知っている。
 相席しただけの相手と縁を持つこと自体珍しくはないしまた出会える時も来るかもしれない。
 それはこういう危険な都市ではないことを祈りたいもので。
 寒空の下、フードを深くかぶって夜の街へと消えていった──。)

ご案内:「奴隷市場都市 酒場」からサウロさんが去りました。
イェフィム > 「そう、それならその日が来たら、一緒に飲んでくれる?」

苦笑を浮かべる青年に対して、どこかを見ながら。ぽつりと。
まぁ、そんな日が来たらそれこそ運命とやらを信じてしまいそうだ。
というか、再び見える日が来るのかすら、それすら怪しいだろうに。

名前も素性も目的も、お互いに知りようがない。
悲しいかな、此方のお誘いに気付かれることがあったとしても、
そこには相手にも選ぶ権利というものがあるわけで…。

「そ、残念ながら振られちゃってね。」

がし、と無遠慮に肩を掴んでこられて、痛みに眉をひそめたが。
まぁいいや…、とそのままカウンターに肘をついて酒を煽り続ける。
我が物顔で隣に腰かけてきた荒くれ者には、のらりくらりと言葉を交わしつつ、
相手をしてやろうかどうかを伺っている。

イェフィム > まともに抵抗する気がない少女の様子を見て、
ニヤニヤと下卑た表情を浮かべた男たちが近づいてくる。
中には堂々と尻や胸に手を伸ばす姿すら見られて。

「ん…。」

その中でも黙々と酒を飲み続ける。
男たちの中には、此方をいない様に扱われて苛立った様子を見せる者も出始め…。

イェフィム > 「…はぁ。」

下卑た表情に囲われて、いい気分かどうかなんてわかりきったこと。
ため息一つを零し、胸に、尻に延ばされる手をゆるゆると振り払い、
それでも懲りずに手を伸ばす男たちを見てやれやれといった様子で。

「あれだけの上玉の後じゃ…って感じだな。」

ぐびり、と酒を飲み干すと、肩に延ばされた手を振り払う。
そしてくるりと一回り、自分を囲っている男たちを見渡し。

「そーだな、じゃ、アンタ。」

そう言ってその中でもだいぶ気弱そうな、絡まれて飲んでいたであろう男を指さす。
周りの男たちがあからさまに不機嫌そうになって、「おい!!」と声を荒げる男すらいる。
けれども少女はそんなこと気にした風ではなく、いつの間にか抜いていた剣を男に突きつけ。

「うるさい、俺は今、機嫌悪いの。」

つ、と首を横に一閃なぞるようなしぐさをした後、先ほど指さした男の腕をつかんで二階へと上がって行く。
それから先のことはその男と少女の二人だけが知ることだろう。

ご案内:「奴隷市場都市 酒場」からイェフィムさんが去りました。