2023/10/21 のログ
ご案内:「設定自由部屋2 無名の寒村」にバーンハルド・ストルムさんが現れました。
バーンハルド・ストルム > 王国内は、魔族との諍いこそ絶えないものの、統治のシステムそのものはなかなか上手く機能している。
しかし、上から押さえつける立場の者があらば、下から反発する者とて当然存在する。
身の安全、明日の糧は保証されないが、日々の稼ぎから税だけは奪われる──それが我慢ならぬのだと声を上げる者。
それがたまたま多かったのが、このちっぽけな村だ。
村の男達は武器を取り、王国討つべしと声を上げた。
……その直後、この騎士は送り込まれた。

「退屈だ! ……謀反を企てるならせめて、つわものと兵器を容易せんか!」

陽光を照り返す白銀の鎧兜。風車のように振り回される、身の丈ほどもあろう大剣。
いずれも腕利きの鍛冶刀匠が鍛え上げたのであろう装備を纏い、ひとりの騎士が、村の守りを突き破っていた。
ただ、ひとりである。供の兵士も連れず単身、防護柵を正面から突き破り、村の大通を真っ直ぐ、首謀者である村長の家へと向かっているのだ。

「ふんっ。これでは戦どころか、寝起きの運動にすらならんわ」

欠伸を噛み殺す騎士──その背へ駆け寄る村人の手には、農具であろう鎌。
騎士の男はこともなげに振り返ると、大剣の腹で村人の横っ腹をひっぱたいた。
刃でなくとも金属の塊。村人は脇腹を抱え悶絶する。

バーンハルド・ストルム > もとより農具の、切れ味の足りぬ斬撃など通さぬ防具ではある。
加えて男の立ち回り。毛ほどの傷すら受けていない鎧兜は、いっそ眩い程に輝いている。
対照的に、ボロ布の如き衣服を纏った痩せこけた農民──端から戦いになる筈も無い。

「貧相な村だ。かような地、さほどの税収もあるまい。
 ならば取り潰した所で、俺達が何を困ることがある?」

打ち倒した農民の頭を踏みつけ、見下ろしながら、男は言う。

「……諦めろ。王国はもはや、貴様らに何も求めぬ。
 白旗を掲げたとて目にも映らんだろう。潔く、この地を去るが良い」

足の下、農民が気を失ったのを見届け──いよいよ男は最後の牙城、村長の家へと向かう。
なるほど扉も壁も、材木で補強されてはいるが、到底、砦とは成り得まい。

バーンハルド・ストルム > やがて──申し訳程度の木材の防護壁が、ただの一撃で打ち破られると。
農民達の最後のよりどころとなった家からは、怒声と悲鳴とが溢れ出す。
ほどなく地図からは一つの寒村が消えて、その内、また別の住民達が移住させられて来るのだろう。
土地と家。反乱者が住みたくないと言うのなら、幾らでも欲しがる者はいる。
例えそこから産まれる財の半ばまで、王国に吸い上げられることになろうとも。

「……ふんっ」

此度の遠征では、愉しい敵に出会うことはなかった。
男は不服そうに鼻を鳴らし、帰路に就く──。

ご案内:「設定自由部屋2 無名の寒村」からバーンハルド・ストルムさんが去りました。