2023/09/13 のログ
■エリビオ > 「ん……」
すっかり茹だった顔を叩きながら湯を後にした。
ご案内:「九頭龍の水浴び場」からエリビオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール平民地区・葦原会」にツネオキさんが現れました。
■ツネオキ >
葦原会本拠内。石階段を上り、鳥居と山門とを潜った向こう側は“天上の御方”の御姿を彫った御本尊が居られる本堂への道が石畳ですらりと伸びている。本堂、金堂ともいうが此処を中心に七堂や伽藍と呼ばれる建物群がぐるりと配置されて多くは一般の方の立ち入りは制限される。……宗教上の理由あるいは防犯上の理由はしかし、野良犬に野良猫に鳩に雀に兎に角彼らには関係がなかった、それはもう、あっちこっち、寛ぐわ巣を作るわ僕ここの飼い犬ですみたいな面して居座るわ、やりたい放題である。
そんな彼らが一堂に会する時間が有る。
「おうお前等ぁ! ご飯のお時間やでーーー!」
そう、ご飯のお時間だ。
わらわらと。
わらわらと。
わらわらと。
金堂から。
講堂から。
食堂から。
塔に鐘楼に僧坊から走ってきたり歩いてきたり飛んできたりし。
「整列!」
多種多様の野生動物がその種族関係無しに境内の一箇所に集い。
ずらっ!
ぴしっ!
境内に、伽藍全体にまで響く通る掛け声一つで仲良く整列した。
別に、動物に命令を聞かせられる特別な業や魔術や法力を持っているわけではない。だが、彼らは知っている、言うこと聞かなかったり喧嘩したりしたら飯は貰えないのだと。
「欠席はあらへんな!
何なら新顔がまた増えとんな!?
まあええわ、教育は済んどるみたいやし……
おっしゃ食って良えで!」
余った白米に余った豚汁ぶっ掛けたお椀がずらーーーーっと並ぶのを前にずらーーーっと整列した一同は『良し』の一言で一斉に群がる。余計な鳴き声一つ上げずに黙々と食べていく様子はちょっぴり軍隊チック。……そろそろ日も沈む頃合い、もくもくもくがつがつがつと無心で食べ続けている彼らの様子を伺いながら、灯籠を開けて中にある油皿に浸された紐にマッチ一擦りして火を点けて明かりを灯していきながら、一息。
「何でこない集まってしもうたんやろなぁ……」
言うことは聞くし。糞害もない(便所に設定した一箇所でする)。参拝客にも愛想は良いし。飯代が嵩むわけでもない(余り物を出すだけ)。故、いいのだが。集まり過ぎではなかろうか? というのも今更な話ではある。が、言わずにはいられない。
■ツネオキ >
「おう。食い終わった? はい。お粗末さん」
犬たちが、椀から離れて目前で一声鳴いたあと金堂の方へ去っていく。猫たちが、椀から離れて足に身体を擦りつけてから僧坊のほうへと去っていく。鳥たちが、椀から離れて肩や腕に止まったあとに鐘楼や塔に向かって飛び去っていく。各々、思い思いの方法で『ご馳走様』をしてから去るのを見送ったあとには椀を片付け始める。
「俺。ひょっとして。今、葦原会ん中で一番兵力あるんちゃう?」
何だか。こう……
戦え! 見敵必殺!
等と命令下そうものなら本当に命令を実行しそうな気配すらある野生生物共の後ろ姿を見ながら、ぽつり溢れる疑念。
「いやいやいやいや。いやまぁ練兵も用兵もまあ兄さん方から習とるけどもぉ……いやいやいや……」
王国には布教に来たのであって一将として名を挙げにきたわけではない。大体、犬に猫に鳩に雀使う武将て色物どころの騒ぎじゃない、野生動物の身体能力はそれはそれは役に立つだろうし武名は上がるかもしれないが変な名まで一緒に上がってしまう。何だか危険な誘惑を振り切るように頭を幾度か振って。空の器を両手に沢山抱えて洗い物しに水場へと歩き始めた。
ご案内:「王都マグメール平民地区・葦原会」からツネオキさんが去りました。