2025/04/24 のログ
ご案内:「静かな酒屋」にリスさんが現れました。
リス > 時に、酒を嗜みたくなる時がある。
 普段は仕事もあるし、家にいるから飲むという事はとても少ない。
 それでも、偶には、という事で仕事の帰りに、一軒の酒場に入る。
 そこは、平民地区の中では少しばかり風変わりな店という評価にあるだろう。
 冒険者の酒場のような大衆がお酒を楽しむ場所というには狭く、良くて10席程度。
 カウンターも小さく、テーブル席も二つ三つ。
 店主が趣味で作ったと言って良いような……そんなお店だ。
 初老のマスターが静かにグラスを磨く音がしている、そのマスターの後ろにはたくさんのお酒。
 エール(ビール)に、焼き酒(ブランデー)ドワーフ殺し(スピリタス)ミード(蜂蜜酒)葡萄酒(ワイン)竜殺し(日本酒)
 ありとあらゆる酒が置いてあるので、それを注文し、飲むのだけれども、酒にあかせて大声を出すものは居ない。
 静かに、雰囲気とともに、酒を楽しむための場所、という雰囲気の酒場だ。

 リスは、その酒場に足を踏み入れて、様々な瓶を眺める。
 マスターに頼めば、カクテルも作ってはくれるけれど―――。

「マスター、焼き酒(ブランデー)を。」

 にっこりと、マスターに慣れた様子で注文をするのだけども、これでも人竜だ、お酒には少しばかり強い。
 それに、お酒を飲めないと商人達の会合でつぶされたりすることもある、そしてつぶれると、良い取引にありつけないことも。
 なので、お酒にはそれなりの訓練をしているけれど。

 今日は、そういったのもなく。
 ただただ、酒を楽しみ、堪能したいのだ。
 なので、注文とともに、おつまみも、いくつか。

リス > コトリ。

 静かにカウンターに座っているリスの前に、焼き酒(ブランデー)の注がれたグラスが置かれる。
 芳醇な酒精の匂いがする、上等な物だと、素人のリスでさえわかるものだ。
 そして、この店自体は、隠れている場所ではない。
 場所だって、大通りにあり、見ればすぐに酒場とわかる、入り口に看板もあるから。
 ただし、マスターは他の店のように呼び込みをしたりしていないのと。
 他の酒場のように明るさを前面に出しているわけでもなく、騒ぐ人も居ないから。
 あまり目立っていないからこそ、人の入りが少ない。
 それでも、ここには最高の酒に最高の食事があるから、知った人は再度来たくなる。
 知る人ぞ知る名店という雰囲気の酒場である。
 そして、こういう所での出会いこそ、東方の言葉で縁だと、店のマスターが言う。
 東洋人ではないはずだが、なぜそんな言葉を知っているのか、と聞きたくもなるが。
 恐らくそういう、お客も多いのだろう、東洋の酒も扱っていることも、あるから。

「いただきます。」

 マスターに一言いって、グラスに口を付ける。
 喉に滑る焼き酒の強い酒精が、喉を焼きながらも、芳醇な香りを鼻腔に、濃厚な酒精に風味を舌に。
 美味しい酒が喉を、体内をそっと温めてくれる。
 はふぅ、と、酒精が混じり、そのせいでほんのり暖かくなり白いほほに朱が混じる。
 唇も、普段よりも少し、赤らんでしまうだろう。
 良い酒に、軽い酩酊。
 目を細めて、おいしい酒を全身で堪能するリス。
 こういう時間もまた、良いものね、と考える。

リス > キュ、キュと、グラスを磨く音がする。
 リスを始めとした客は、静かにグラスを傾けている。この店には、ジョッキなどはなく、グラスしかないのだ。
 だからこそ、静かにみんな飲むしかない……と言う訳でもない、普通にしゃべったりすること自体は問題はない。
 他の店のように、下品に騒がなければいいのだ。
 もし、大きな声で叫びたくなるようなら、お店の外でどうぞ、という所。
 逆に、何か内密な話をしたいときは、マスターに言えば奥の部屋を借りることもできる。

「そういう意味であれば、デートにも、良いのよね。」

 デートと言うよりも、密会というべきかしらね、なんて、奥の扉を見て軽く笑って。
 ね?と、首を傾いでみる。
 マスターは、ちらりとリスの方を見るけれど、グラスをきれいに磨いているだけで。
 リスは、つまみとして注文したソーセージを一つ、パクリ、と齧る。
 ぷつりと嚙み切れば、ジューシーさを示す脂が口の中広がって。
 それを、焼き酒(ブランデー)で洗い流すと、壮快だ。
 ふふ、と小さく笑ってみせて。

「今日は、良い月夜ね。
 とはいえ、油断すると、ろくでもないことになるのがこの国、よね。」

 か弱い女性が一人で歩けば、かなりの確率で襲われて犯される。
 そんな国なのだ、守ってくれませんか?なんて、問いかけてもスルーされる。
 その対応には頬を膨らませる。
 リス自身人竜で、人外であろうとも――けんかなどは全くできないのだ。
 襲われたら、何もできない、もう、失礼しちゃうわ、とマスターに。

リス > 静かな酒場の中には、客も上品な人が多い。
 というのも、ここに来る常連というのは、この酒場がどういう所かを知っている人が多い。
 まあ、仮にふらりと初めて来たとしても、店の中の雰囲気を見れば、どういう場所か、理性ある人ならわかるだろう。
 そのうえで、静かに軟派する。良い方は不思議かもしれないが、関係を求めて求愛するという程度ならマスターは何も言わない。
 そういう場所なのだ。
 というか、マスターもそれでいいと考えている節があるとおもうと、この国の人間なんだなあ、と思う。
 まあ、それはそれとして。
 リスは、ゆっくりと酒を楽しむ。
 急いで飲むと酔いが回るから、つまみをつまんで、酒を飲んで。
 控えめな音楽と、周囲の談笑を肴に。

 とはいえ、マスターとだけ会話をしているのも、やや寂しいか。
 他のお客と、軽く雑談でも、と、空色の瞳は、店の中を見回してみる。