2025/03/01 のログ
:: [一覧へ] :: :: ::

ご案内:「設定自由部屋」に平民地区さんが現れました。
ご案内:「設定自由部屋」から平民地区さんが去りました。
ご案内:「平民地区」にサマエルさんが現れました。
ご案内:「平民地区」にレアーナさんが現れました。
レアーナ > 夜と昼の狭間
斜陽が街を染める頃、衛兵に許可を取って平民地区の一角に小さなお立ち台を立てておく
冒険が終わった冒険者などからおひねりをもらうための吟遊詩人の舞台である

視力が弱いため、身長に低いお立ち台に上り
こほん、と一つ咳払い

「―――……、♪人魔の狭間の砦にて ♪勇猛果敢に 剣振るう勇士
♪街の愛しき人々を ♪魔に侵されぬよう、声上げる――」

歌ではなく、伝聞を多少誇張して伝える詩
今回は遠く離れたタナール砦で魔族を相手に戦う冒険者、戦士たちの詩
魔族がどれだけ恐ろしい存在か
そしてそれに立ち向かう人々の勇猛さを、涼やかで伸びやかな声に乗せて歌い続ける
声量自体はそれほど大きくは無いものの、耳に入ればふと振り向いてしまいそうな声音

幾人かが既に立ち止まり、その詩に聞き惚れている
許可を出した衛兵も、仕事を一時忘れて目を閉じて頷く

台頭しはじめたのは最近だが、それなりに歌声は認知されているはずだ
とはいっても、警戒心が強い女であるから歌い終わってしばらくするとそそくさと消えてしまうのだが…
歌っている間だけは、その警戒心も表に出さず。ただただ歌い続けている

サマエル > 斜陽の中で、一人の少年が歩いている。
閉じた瞼は一切開いているようには見えず、しかししっかりと意思のある足取りで石畳みの上を歩いており。
仕立てのいい服は、そこそこの貴族なのだろうか。その髪は金色に光っていた。
キョロキョロと、周囲を見渡していると、少年は何かに気づいて耳を澄ませる。

「……歌……いや、詩……?」

その聞こえて来た声にに気付けば、自然と足がそちらへと向いていく。
コツコツと靴の音を響かせて、聞こえてくる声に導かれるように。
息を軽く切らしながら、声が近くなるにつれて立ち止まる人の姿がそこかしこ。
すみません、と軽く声をかけながら彼らをかきわけ、さらに奥へ、もっと奥へ。
その声の、一番聞こえる場所に行きたかった。

「……わ、ぁ」

その詩が良く聞こえる、お立ち台に登っている詩人の前で。
少年は、目を閉じたまま見上げて、その歌声に身を任せてしまう。
優美で、勇気がある。それは強く、力があった。
歌い続けている彼女の声を、ひたすらに耳に入れようと、少年は薄く笑みを浮かべながら聞き続ける。
自分自身は魔族である。なのに、この詩を聞いても何の不快感を感じない。
それは、彼女の声がそうさせているのだろうか。

「……あ、あの……」

歌い終わり、その場から去ろうとするのなら、つい少年は声をかけてしまう。
彼女よりもずっと低い身長で、少しでも彼女に見えるように背伸びをしながら……。

レアーナ > この詩は、街でのウケがそこそこに良い
勇ましい男の姿と、帰りを待つ健気な家族というのがそれなりの層に刺さっているのだろう
詩の内容だけでなく、彼女の声自体も大きな要素ではある

「―――――……ありがとうございました」

涼やかな声で歌い切り
小さく一礼
同時に、軽く拍手が起こり…お立ち台に置かれた器にゴルドが放り込まれていく
彼女に羨望や色目を使う者も居るが、衛兵も近くにいるため平民はおいそれと声をかけにくいだろう

「…?」

そんな時、声がかかる
大体の人々はおひねりを放り込んで満足して去っていく頃であったからその声も届きやすい
普通なら、視線が彷徨うところだが…目の代わりに耳と鼻が良い彼女からすれば声の発生源は自然に追える
ぼやけた目は、正確に少年を捉え、そちらを見る
小さな姿であることは察して、声音は柔らかく

「どうしたの…?」

お立ち台からゆっくり降りて、少しかがんで返事
これが大人からの声掛けなら軽く会釈などして去っていってしまっただろう
けれど、子供から声をかけられると少し弱い
何か言いたいことでもあるのだろうかと、耳を傾けよう

「あ。お金は要らないよ。無理にとっているわけじゃないから…」

もしかして、子供なりに大人たちの真似をしたいのだろうかと思い至り
けれど子供から巻き上げる趣味もないため、優しく言ってみよう
的外れかもしれないが、相手の声音から緊張しているようだし何でもいいからこちらから話した方が良いだろうという考えだ

サマエル > 一礼をする彼女の姿を見て、おひねりを投げる大人たちを見ながら自分も真似して一枚。
彼女の声は聴きとりやすく、また話の内容も非常にわかりやすく。
だからこそ、少年もまた聞き惚れて、足を止めてしまったのか。
そのよくとおる声は、ついには周囲一帯を飲み込んでいくほどにまでなっていて。

「……あ、えっと……」

そんな詩が終わって、彼女が器を持って立ち去ろうとするのを見てつい止めてしまった。
どうしても、彼女をそのまま立ち去るのを見送ることを自分は出来なかった。
彼女がそのぼやけた視界で少年を見るのなら、しどろもどろになる少年の声が聞こえるか。

「あの……ま、まだ、どこかで歌う予定はありますか……?」

恐る恐る、という風に少年はかがんでなお自分より高い目線の彼女を見ながら言う。
彼女の感じている通り、少年はひどく緊張していて、それでもなんとか声を出そうとしている状態であった。
はくはくと口を動かした後、意を決して顔を上げて。

「もしよかったら……僕の家で歌ってくれませんか……?
どうしても……あなたの歌が、もっと聞きたいんです……」

と、緊張し過ぎて絞り出すような声で懇願する。

レアーナ > 緊張はあまり解れなかったようだが、話してくれるだけ良いだろう
何も話してくれなかったら、逆にどうしたらいいかわからない
声を出すまで、じっくり待っていよう

「ええ、と…、今日はもう終わりの予定だけど…君の、家?」

喉は強い方だが、寒い季節は乾燥する
だから、外で詩うのは大体1度のことが多い
ただ、どうしてもと言われると…うーん、と考えてしまう

視線を巡らせるが、ぼんやりした視界の中に少年の親らしき姿はない

「…ううん…詩を褒めてくれて…お誘いはとっても嬉しいんだけど…
ちゃんとお父さんお母さんに言わないと迷惑になっちゃうだろうし…
あ、嫌ってわけじゃないんだよ…?」


できるだけ願いは叶えてあげたいが、いきなり訪問して喜ばれるかは微妙な知名度である
この相手の家がどういった家かはわからないがここでほいほいとついていくわけにもいかない
諭すように優しく返答しよう

その様子に、言葉と同様嫌がっている様子はない
声音から本気で言ってくれていることがわかるだけに、女もまた真剣に考えて、相手のことを思って返答していることがわかるだろう
眼は見えていないものの、目線を合わせるように少し屈みこんだ状態だ

サマエル > 遠慮がちに、彼女のほうからこちらへと声を出してくれる。
ふぅ、ふぅ。と別に全力疾走をしたわけでもないのに、動悸のように少年の息は上がっていた。
想像以上に、彼女に声をかけるために勇気を使ってしまったらしい。

「う、うん!あ、じゃなくて、はい!」

こくこくと頷き、考えるように顔を動かす彼女を見上げる。
両手を八の字に、彼女をじっと見つめて返事を待ち……。

「あ……えっと。お母さんとお父さんはいません……あ、いや、いちおういるにはいますけど……。
ずっと家には来てないですし、家では僕と使用人が何人か程度なので。
みんな僕が言えば何も言いませんから、そこは大丈夫、ですっ!」

声を上ずらせる。緊張のしすぎてつい声が裏返ってしまった。
さてしかし。目線を合わせる彼女に、しっかりと向き合いながら少年は言葉を続ける。
優しく言われてこそいるが、だからこそこちらも真剣に返さなければ彼女には失礼だろうと思って。

「嫌じゃないなら、お願いします。僕も、冗談で言っていません。
ごはんもお金も、なんならお風呂だって用意します。服だって買います。
お、お金は多少はありますから……えっと、えっと……」

言葉が続かず、というより。相手が何が欲しいのかがわからず。
好きになってくれそうなものをひたすら並べ立てて。

「あ、ぼ、僕はサマエルです……どうか、考えていただけませんか……?」

レアーナ > 勇気を振り絞って伝えて来てくれているから、茶化したりはしない
だからこそ、相手の事も思って軽々には引き受けなかったのだが

「…………ー……」

しばらく、言われた言葉を飲み込む
もしかして貴族なのだろうか
僕一人、ではなく使用人が居るということから…平民というのは考えにくい
しかも、続く言葉は貴族らしいとも言えるものだ

となると、断ってしまえば…想像以上に大変なことになる可能性がある
例えば、もっと強引な手段で家に連れていかれるとか
使用人に言うことを聞かせられるということと…わずかな声音の違いから、少年とわかるから…後継ぎである可能性も高い

――この子が良い子に見えても、親がそうとは限らない
この街の貴族であるからそういった強引な手段が後々振るわれる警戒はしておいた方が良い
目の前の相手も相当な演技派である可能性もあるが…子供は基本、信じたい


それに、お金に困窮しているというわけではないがお風呂というのに少し惹かれる部分も否定できず

「…サマエル…くん?
わかった。君の家に着いていくよ。
けど、今から家に行って、詩うと夜になっちゃうから…
一晩だけ、君のお家をお風呂付の宿代わりにさせてくれると嬉しいな。それ以外は要らないよ
もちろん、怒られそうだったら…私のことは気にせず、追い出してくれていいからね」

できるだけわかりやすい言葉で提案を受け入れよう
搾取するつもりはないが、タダと言っても逆に不審がられそうだし宿代を節約できるなら自分にとっても得である
純粋そうな子供には弱いなあ、なんて思いながら体を起こして

「遅くなっちゃうし…案内してくれるかな
あ、どんな詩が好きかも…聞かせてね」

優しく微笑んで、手を差し出そう
はぐれないように、手を繋いでいこうという提案だ

サマエル > 思案する彼女の姿。どきどきと言葉を待ち続ける。
彼女の心のうちなど、初対面である自分には一切読めない。
出来るのはこうして自分の思いを直接ぶつけて頼み込むことだけ。
断られたら仕方ない、その時はその時だ。
彼女の意志を無理やり捻じ曲げてまで、なんて真似はこの少年には出来なかった。

「ひゃ、はい!」

名前を呼ばれて、不安そうにしながらじっと見つめる。
きゅっ、と体を気をつけの姿勢で、続く言葉を待ち。

「ほ、本当……ですか!?よかった……ありがとうございます!
そうですね……確かに、今はもう夕方の時間ですっけ」

少し違和感があるかもしれない、夕方の時間、という言い方は。
彼はキョロキョロと周囲を見るが、空を見れば夕方なのは一目瞭然だろう。
まして、もう暗くなり始めて、場所によっては酒場が開き始めてる時間だというのに。

「宿の代わり、ですか。大丈夫ですよ!宿もお風呂も、お食事もこちらで無料で提供します!
代わりに、歌を何曲か、聞かせてくれたらいいな。って」

立ち上がって、手を差し伸べたら、少し少年としては硬めに感じる手だと思うだろうか。
運動をしているのであろう。意外と握れば力強く、痛みは走らないように少年は握り。

「わかりました。じゃあ、飛びますね」

そう告げると……ぶわっ、と空に。彼女と共に飛び上がろう。

レアーナ > 慌てて返事をする少年にくす、と笑ってから

「ううん。いいよ、私も嬉しいし…あ、私はレアーナ。よろしくね
…? それって…」

ぼんやりした目でも、周りの雰囲気はわかる
辺りが暗くなってきた程度はわかるから、今が夜に近い時間であることもわかる
ただ、少年はそれすらもわかっていない
ということは…と考えたところで手を取ったので、一旦思考は置いて

「…わかった。今日は喉の調子も良いし…
出来る限り、詩ってあげる……、わ、っ…!?」

意外に硬い手を握り返せば、どこかに引っ張っていってくれるのかと思ったが
次に感じたのは浮遊感
思わず、身体を少しばたつかせる

自分が魔法を使えないものだから、宙を飛ぶなんてすぐに順応できるものではない
冒険者に着いて行った時にパーティが飛んでいるのを見たこともあるが、体験するとなるとまた違う

「あ、あの…サマエルくん…っ、ふ、ふつうに歩いて行かない…?」

状況から、少年が飛行させているのだとわかれば
ついつい相手の体を引き寄せるように手を手繰り寄せてしまいつつ焦った声を出す

サマエル > 「レアーナさんですね、こちらこそ、よろしくお願いします!」

彼女のぼやけた目で、少年がニッコニコの笑顔になるのは見えるのだろうか。
まぁ、見えずとも、その声質から安堵と楽しい様子なのは間違いなくわかるだろう。
ふわりと浮いた彼女は、彼女自身まで浮いているようで、重力に引っ張られて落ちることはなかった。

「こっちのほうが早いですし、国外に行くからこっちのほうが安全なんです。
どうせ暗いのならだれにも見えないから大丈夫ですよ。せいぜい鳥が飛んでると思われるぐらいですから!」

そう自信満々に言って、彼女と共に空中遊泳を共に楽しもう。
落ちないとわかれば、風や普段は感じないような香りが彼女を楽しませてくれるかもしれない。

「後、歩いたら山とか越えなきゃならないので……自分、こうするのを前提で動いてますから……」

と、手繰り寄せられて、彼女の体を思わず抱きしめるようなしせいになってしまうか。
ちょっとばかり羞恥心に苛まれつつ、その手の感触とかを無視しながら会話に集中して。

「好きな歌は、勇ましい曲が好きです。でも、あまり物騒な曲は好きじゃないですね。
思い出とか、そういうのを語る歌が好き、かな?」

レアーナ > 表情まで見るのは難しいが、声音で十分喜んでいることは伝わってくる
ただ、唐突に浮き上がるとどうしても動揺が先に立つのは仕方のないことだろう

「え、ちょっと、国外って…サマエル君ってどこの…
それは、その、確かに鳥に見えるかもしれないけど…」

飛ぶ感覚に慣れる前に、確認していなかった事実
まさか、この子の家が国外にあるとは思わなかった
てっきり、富裕地区へ行く程度だと思っていたから慌ててしまい…抱きしめてくる少年を逆に抱く力が強まる

今更取り消して、空中でどうにかなってしまったら大変であるから
暴れはしないものの、胸元にぎゅう、と強く少年を抱いて耐える

「い、いい、勇ましい曲ね。わかったじゃ、じゃあかっこいいのをいくつか知ってるからそれを…
だから、その、落とさないでね…?」

今がどういう状況か、すっかり混乱してしまう
とても景色を確かめる余裕などなく、できるだけ早く着いて欲しいと願うばかり

目が良く見えないからこそ、ぼやけた空中というのも、慣れない強い風音などにも恐怖が勝ってしまっている

サマエル > 混乱する彼女に、申し訳なさが勝るが。
それでも、今は彼女の願う通り、少しでも早くつくことに専念しよう。

「はい!しっかり捕まってください!」

強く抱き締められれば、さらに顔を赤く染めるが。
それをなんとか堪えれば、マグメールよりも少しばかり気温が低い場所。
自然はそこそこ。大きな屋敷が彼女の視界に映りだすか。
とはいえ、その視界にどこまで見えるかは少々難しいところ。
ただ、それが屋敷だとはわかる……だろう。

「まぁ、僕の家の場所はともかく。明日になったらまた飛ぶので。
……あぁそっか、事前に言わなかったのは本当にごめんなさい!
明日もマグメールに戻るときは飛ぶので、よろしくお願いします」

事後承諾になってしまうのは非常に申し訳ないが、ここまで来た以上は戻るのも難しい。
ので、明日また飛ぶことを今のうちに話して、彼女と共にふわりと、ようやく地面に足を付ける。
……いや、抱かれているせいで彼女のほうが身長差的に、先に脚が着くだろうか。
そこから遅れて、重力に従って少年もまた地面に足を付ける。

「えっと……とりあえず、家まで案内しますね、大丈夫ですか?」

などと、心配そうに彼女の顔を見上げて、手を改めて握ろう

レアーナ > しばらく耐えていると…ぼんやりした視界に何か大きいものが映り込んでくる
あれがサマエルくんの家だろうかとわかれば、少しだけ体の力が抜ける

「そそそ、そうだよ…ぉ…結構寒いし…ここ、どこ………?」

空を飛んでおり、しかもまだ寒さがたまに襲ってくる季節だ
何かしらの防御策が無い限り、少年にゆたんぽになってもらうしかない
そうして、ようやく地面に降り立てば、地面の感触を確かめるように何度か足で地面を踏む仕草をするも

「―――だ、だいじょ、ぶ…。……でも、ちょっと、手は握ったままにしてね…」

安心したはしたが、国外まで飛んできた衝撃が抜けない
少しまだバランスが取れていないのか、少年の方に少しよりかかる
少々経てば、地面の感覚が戻ってきて、足取りも軽やかになっていく

「…家、おっきいね…。…その、私結構普段着だけど、大丈夫…?」

清潔にはもちろんしているが、それほど高級な素材というわけでもない
地面に降り立ったことで、ぼやけた視界に映る大きな屋敷に恐縮しつつ着いて行こう
まさかここまでの規模とは思っていなかったため、逆に緊張している様子
少年の案内に従うまま、向かっていくしかないのだが

サマエル > 少年の手は暖かい。風で体温が冷えてもおかしくはないのだが。
少年、というか。子供特有の高い体温が、手から伝わるだろうか。

「ここは僕の家……であり、いちおう領も僕のもの、なのかな。小さいですけどね」

疑問形になりながらそう答えて。具体的にどこの土地なのかは言わない。
ここが魔族の国なんて、言えるわけがない。自分の正体まで露見したらマズい。
だから、誤魔化すように言いながらはははと笑って彼女が地に足を付けているか確認している姿を見守り。

「はい、大丈夫ですよ。むしろ無茶させたのは僕ですから、頼ってくださいね」

そう朗らかに言いながら、寄りかかってくる彼女を支えながら歩きだして。
中に入れば、そこそこ埃っぽいがそれでも十分掃除が行き届いており、空気は悪くない。
中には火がともっており、廊下は十分照らされるだろう。

「普段着でも大丈夫ですよ。みんな気にはしませんから」

そう笑いながら言って手を振ると、ギィ、と音が開いて。
中には個室。しかも丁寧に暖炉がついており、毛布やベッドもそこそこ大きい。

「とりあえず、今夜のお部屋はここでお願いします。
服とかの替えは……使用人に探させますので、ちょっと時間をくださいね」

レアーナ > 何とか、伝わってくる体温を頼りに空を飛んでたどり着いた場所
よくわからない場所だが帰る手段も無いし駄々をこねても仕方ない

「―――……これはぁ…想像以上だったなあ…」

ある程度のお屋敷くらいは想像できたが、自分の想像よりも規模が大きい
恐縮しながらも、少年の朗らかな声で緊張は薄れていく

温かな屋敷の中に入れば…ほとんど音がしない
燃える音、使用人らしき微かな足音…それくらいか
教育が行き届いており、突然のお客さまにも対応できるということだろう

そのまま少年について行けば、案内されたのは個室
一応、広さ程度は把握してから、わかりやすいベッドに腰掛ける

「あ、うん。…でも、最低限で大丈夫だよ。一晩だけだし…」

こくりと頷くも、やはりどちらにしても平民育ちの自分としては慣れない環境だ
そわそわとしつつ、部屋で待ちながら…この後歌うのだからしっかり心持ちを整えておこう

サマエル > 「想像以上、ですか?」

きょとんとしながら首をかしげるが、ぼやく彼女の姿になにがそうなのかわかっていない様子。
緊張が薄れていくのを見れば、クスリと少年は笑って共にいて。
使用人の姿は彼女の目からは見えない。音で誰かがいるのはわかるのだが、気配としては少年以外本当にいるのかと疑うほどだ。

「最低限でも、できる限りのおもてなしです!レアーナさんは僕にとってはお客様ですからね。
 できれば、また来てほしい……なーんて思ってるんで、是非ともくつろいで行って欲しいんです。
 招待した側がそんなんじゃ、いちおう名ばかりとはいえ貴族の恥ですから」

ベッドは腰かければ、そこそこ深く沈み込むぐらいにはふかふかとしている。
シーツは取り換えたばかりなのだろう。ベッド周りだけは埃の香りは感じない。

「少ししたら使用人がお食事をお持ちしますんで、少し待っててください。
 僕も着替えてくるので」

と言って、部屋から少年は出ていく。
……気が付けば、暖炉には火がついていた。入ったときには火がついてなかったような気もするが。
まぁ少し肌寒い今は素直に温まった方がいいだろう。
しばらくすればカタカタと音を立てて、食器が運ばれてくる音が彼女の耳に届くだろうか。

レアーナ > 笑い声と、少年以外は気配しか感じない家
どうやらすごく高位な貴族に招待されてしまったようだと意識を改める

「……わ、わかった。…私が何言っても仕方ないし……
うん。できるだけくつろぐね」

もう招待されてしまったのだから、じたばたしても何も変わらない
酷いことをされるわけでもないだろうし、ゆったりさせてもらおう
そう思い、ベッドに体重を完全に預けていると、また少し不思議なことが起きる

暖炉にいつの間にか火が灯っており、部屋が暖かくなっていく
火打石などの音はしなかったが…

(…サマエル君が付けたのかな…?それとも…
…どちらにしても、多分魔法かなあ…)

富裕層が多く通うというコクマー・ラジエル学園では魔法も教えているらしい
だから、そういったところで習ったのかな、なんて思いつつ
空を飛んできたから大抵のことは逆に驚かなくなっていた


食器が運ばれて来る音がすれば…ベッドから立ち上がり、ドアが開く前に自分から扉を開いて招き入れよう
お客様気分というのが中々慣れないための行動である

サマエル > 扉を開くと……そこには身なりを整えたサマエルの姿。
そして食器を運ぶ台車がその隣にあり、プレートが置かれている。

「あ、お食事お持ちしました」

そう笑いながら、サマエルが食器プレートを部屋に運んでいく。
少年以外に姿は見えず、台車を少年自身が運んだようにしか見えないが……。
それにしては、彼女の鋭い聴覚なら足音の数が少年より一人分多かったとわかるだろう。
彼女が扉を開く直前に、どこかに行ってしまったのだろうか。

「そういえば、嫌いなものがないか聞き忘れたので。
 ひとまず魚焼きと肉焼きと、パンと野菜のスープをお持ちしました」

部屋の中にあるテーブルに、ささっとそれらを並べていく。
平民の食事として見るならかなり豪勢であり、そこそこお高めの外食として見れば普通か少し上程度か。

「嫌いなものは避けちゃって大丈夫ですよ。念のため、一般的ににおいがつよいものは用意しませんでした。
 ささ、どうぞ」

と言いながら、彼女のために椅子を引いて、背伸びして、テーブルの上にある水を注いでいく。

「お風呂が出来上がるのは少し夜が更けてからになりそうです。
 なのでその間に食事と、歌を聞かせてくれると嬉しいです」

などと言いながら、椅子にぴょんと飛んで少年自身も座り。

レアーナ > 「……?あれ…?」

少年の足音は何となく覚えられたから、てっきり使用人と一緒に来ていたのかと思ったが
扉を開ければ少年一人。…また不思議なことが起こった

「う、うん。大丈夫。………嫌いなものはとりあえず無いよ」

一応匂いの強い野菜は苦手だから助かった
メニューを見る限り、苦手なものはない。むしろ好き寄りである
しかも、見るからに質が良さそうな食事だから気分も上がる

「ありがと…。はぁ……」

お礼を言ってから、スープを一口
優しい野菜の甘みと軽く味付けされたスープが、空を飛んできた体に染みる
次はパンを…少し行儀が悪いが、肉焼きと合わせてぱくり
ふわふわのパンと肉のうま味が合わさってとても美味しい

歌った直後に、空を飛ぶ体験をしてきたからそれなりにお腹も減っている
調子よく、食事を済ませていこう
量もちょうどいいから、ぱくぱくと食べ進めていき、少し時間をかけて完食

「……ごちそうさま。すっかり元気になったよ…。ありがとう、サマエル君
…次は私の仕事をしないとね」

丁寧に口元を拭いて…少年の前に立ち
今度は特等席で聞いてもらおう

「――…♪かつて冒険心を胸に携え ♪未踏の地を踏む旅人
♪今は老いて歩けずとも ♪その言の葉は壮大で――」

今度は魔族と戦う詩ではなく、冒険者の詩
それも引退した冒険者が話してくれた、昔の話を元にしたものだ
困難を乗り越えて宝を手にした詩が主で、勇猛でありながらも昔話であるから物騒さが少し薄れた…少年のリクエストになるべく答えた詩だ

サマエル > 「そうですか?それならよかったです」

不思議そうにする彼女をあえて無視して、問題なさそうならば嬉しそうに少年は笑う。
気分が高揚して、用意した食事が彼女の口に運ばれていくのを見れば自分の分も少年は手を付け始める。
彼女の食事のペースに合わせて、そして美味しそうにする彼女を見て、少年はまた嬉しそうに。

「美味しく食べれたのなら嬉しいです。元気になったのならよかった」

時間をかけるのなら、それに合わせて自分も時間をかけて、ほとんど同じタイミングで完食。
実際、あんな体験をした後自分が生きていると思えばお腹が空いてしまうだろう。
ましてやこの肌寒い中で外の広場で詩をその声で伸ばしていたのだ。
相応に体力も削れており、食事は量も、味も上質ともなればかなりの満足感があるか。

「……えぇ、よろしくお願いします」

そういって、立ち上がった彼女の前で椅子に座ったまま。
その詩を聞き始める。壮大で、勇猛。今はもう昔と言っていい話。
森を越え、山を越え、崖を越え。その最中にある様々な障害。
それを踏み越えた先にあるお宝を手に入れた、冒険者のお話。
胸躍らせ、少年の心がその内容に揺れる。
少年心をくすぐってくれる内容に、わくわくと少年は椅子の上で静かにずっと聞いて。

「はぁ……」

溜息を、一つ。それは悩むものではなく、その詩の内容が素晴らしいものであるからこそ。
自分一人の為にそれを唄う彼女の姿と声という事実もまた、少年の満足感を強くさせてくれていた。
じっと目の前で唄う彼女を見ながら、その詩のハッピーエンドを聞き続けよう。

ご案内:「平民地区」からレアーナさんが去りました。
ご案内:「平民地区」からサマエルさんが去りました。