2025/02/13 のログ
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ご案内:「自然地帯 森林」にナランさんが現れました。
ナラン > 真円にちかい月が、黒い夜空に穿たれた穴のように光を零す夜。
自然地帯の奥深く、獣路だけが繋がっている少し開けた場所にうっすらと灯りがある。
灯りの正体は埋めた火。上には鉄鍋のようなものが載っていて、ごく細く煙が立っている。煙は特有の香りを纏っているが、辺りには強く広がっていはいない。
その傍らに毛皮の上着を被ってぼんやりと火に照らされる姿。時折火の加減を伺いながら座っているのは一人の女だ。

「…… もう少し、でしょうか…」

女はずらして置かれた鉄鍋の蓋の隙間から中を伺ってから、火加減をすこし弱めるように土を埋火に掛けてまた座り直す。

念のため、辺りを見回す。
作業に入る前に誰か近づけばわかるように仕掛けはしておいたが…

(…集中すると、聞き逃しちゃいそうなんですよね)

ひとまず異常はないとみて取って、改めて膝の上のほうの仕事に視線を落とす。
やり掛けの刺繍。随分時間がかかってしまっている。もう、かれこれ半年にも近くなってしまうかもしれない。

ナラン > ランタンなどの灯りは無いが、幸い今月明りを邪魔するものはなく、それと夜目―――といって良いのか―――が随分ときくようになったので手元には困らない。
それに、どちらかと言うとこういうのは身体が覚えている事の方が重要なようで、たまに全体を見渡すために広げる以外は細かく確かめる必要もなかった。

風もない森の夜は、遠くで小動物が樹を揺らす音と時折鳴き交わす夜鳥の囀りと、あとは静けさで満たされている。
暫く無心に針を動かしていると、パチン、と爆ぜる音がして女ははっと目を上げた。

「…… よし」

布を傍らに置いて、ふたたび鍋の様子をみる。中の様子に満足した様に頷くと、女は一埋火を消しに掛かった。

鍋から粗方熱が取れたら中のものを回収して…鍋は、今日の所は置いて行ってもしまっても大丈夫かもしれない。とにかく早くねぐらに帰って、刺繍の続き終えてしてしまわなくては。

埋火のほの紅い光が消えてしまえば、その場は静けさと暗闇に閉ざされる。
ヒトがいた痕跡と言えば、うっすらと香る樹の香りだけだったろう―――

ご案内:「自然地帯 森林」からナランさんが去りました。