2024/09/29 のログ
ご案内:「霊園」に枢樹雨さんが現れました。
枢樹雨 > 王都近郊。小高い丘を登った先にある、開けた緑地。其処に並ぶ、数多の墓石。
何かしらの名称があるはずだが、妖怪はそれを知らぬままに霊園へと足を踏み入れる。

夏の日差しに青々と育った芝生。
あまり頻繁に手入れされていないのか、小路に芝が手を伸ばしている状況。
妖怪は気に留める事もなく其処を歩き、並ぶ墓石をゆうるりと眺めている。

その足がふと止まる。

並ぶ墓石が途切れた向こう側。
じき新月を迎える心許ない月灯りの下、空を見上げる赤い花。
緑地を染める一面の赤に、長い前髪の下で双眸をゆっくりと見開く。
そうして引き寄せられるかのように、一歩、踏み出して。

「彼岸花か…」

其処に在ったのは、秋を感じて目を覚ます花。
まだ咲き切っていないものも見られるが、この景色をアテに一杯や二杯は飲めるであろう美しさで。

枢樹雨 > 足を踏み入れるには気が引けるほど、群れとなって咲き誇る赤い花。
人の手によって種を撒かれたものなのか、墓石の回りには一切見られなかった彼岸花。
もう少し秋の気配が色濃くなれば、更に赤で埋め尽くされるのだろう。

並ぶ墓石が途切れ、赤の絨毯へと切り替わる境界線。
其処へ両膝を付けば、白い手を伸ばし、指先でつつくように触れて。

「見慣れたものと思っていたけれど…、なんだか違って見える…」

静寂の霊園に落ちる呟き。
違うのは、肉体を得たからか、それともまた別の理由か。
つついた手元の彼岸花が小さく揺れる様を眺めた後、改めて遠くまで咲き誇る赤に視線を向ける。
しゃがんだままでは途切れる先が見えないほど。
そっと息を吸い、そしてゆっくりと吐き出せば、そのままぽすんと尻を芝生の上へと降ろし、体育座りで座り込み。

「――――引っ張られそう、」

いったい何に対してそう思うのか。
なんとなく察しながら、瞼を閉じる。

広がる彼岸花の花畑の前、白絹に鬼角を隠しながら座り込む妖怪。
常はしゃんと伸びた背を猫の様に丸め、両膝を抱え込む様はどこか幼子の様にも見えるか。
時折吹く湿気交じりの風は、昼間の暑さを忘れさせる涼やかさ。
スンと鼻を鳴らして湿気を感じ取れば、雨が降るだろうかとチラリ空を見上げよう。

見上げたところで、細い細い月が照らす空は限りなく闇色で。

枢樹雨 > 背後に並ぶ墓石の魂が、天に昇らず花となって咲いたかのような光景。
そうならば、数多の魂が彼岸花に囚われているということか。
想像するだけで、鳩尾の辺りが熱くなるような、後頭部の辺りが擽られるような、表現し難い感覚に襲われる。
それは何かの記憶が顔を出す前兆。
"個"が消えて、"数多のひとつ"に塗り替えられる瞬間。

ぎゅっと、今度は強く瞼を閉じる。
そして右の頬を膝に押し付け、うりうりと肉を潰す。
自ずと変な形に潰れる唇。タコのように突き出した其処からプス…と息を抜けば、しばらく後に立ち上がろう。

風で揺れる頭上の白絹。
彼岸花に背を向けるように踵を返せば、翻る着物の袖。
気が付けば妖怪の姿はその場から掻き消え、霊園には静寂が戻ってくる――…。

ご案内:「霊園」から枢樹雨さんが去りました。
ご案内:「薬草素材の採取先」にタン・フィールさんが現れました。
タン・フィール > 昨夜、薬の素材となる薬草や動植物の素材を採取するために、
寝袋と旅道具を手に夜の冒険に出た薬師の子。

目当ての場所でそこそこの成果の素材の収集を終えて、寝袋に焚き火に調理器具と、旅道具を展開し、
ホットミルクを飲んですやすやと寝入ってしまった。

「―――んぅ、ぅ、あ……? ふぁあ……っ。」

寝袋の中で大あくびをかまして、今にも目覚めんと覚醒に向かう幼子の意識。
もし目を覚まして半身を起こし、少女のような貌の目元を擦りながら寝袋からもそもそ抜け出してくれば、
繰り返された寝返りで裸身に羽織った桃色シャツの懐ははだけて乱れ、薄い胸板の先端から桃色の突起が覗く。

次いで、きょろきょろ不思議そうにあたりを伺うだろう。
ここはどこだっけ、どこで眠ってしまったんだっけと。

王都のどこかの地区の空き地かもしれないし、 郊外の平野や森林かも知れない。
あるいは、洞窟や無名遺跡のどこかかもしれない。

ご案内:「薬草素材の採取先」からタン・フィールさんが去りました。