2024/09/03 のログ
ご案内:「トゥルネソル邸」に影時さんが現れました。
ご案内:「トゥルネソル邸」にリザさんが現れました。
■影時 > ――ここに住まう者は多様だが、ある意味異様と云えるものはそうそうあるまい。
そんな感想の一つを抱ける場所が、王都マグメールの富裕地区の一角に存在する。
さながら、砦とも見紛うような異様の屋敷は武人肌の家系のものに見えて違う。商人の邸宅である。
ただの商人ではない。竜が出入りし、出入りする竜がものを運び。主人とその血族もまた、竜ないし竜の血を引くもの。
そんな者たちが集い住まう場所となれば成る程、自ずと砦の如く堅固になるのも無理もない。
建物のありように比例して、高い塀に囲われた庭もまた広い。
その庭から、日によっては時折風が吹き荒び、金属音が何度もぶつかり合う音等がする。
だが、今日は静かである。にもかかわらず、この庭先にメイドや家令以外の気配があるのはなぜだろうか。
「……――ふー、あとは、……やるかねェ整理」
至極単純。今日は武術指南役という役柄=家庭教師がこの屋敷を訪れ、場を借りていたからに他ならない。
僅かに緩みかけたとはいえ、夏の陽気がまだよく残る庭先に立ち、こきこきと首を鳴らすものが一人。在る。
この王都では珍しい、または数は少ないであろう異邦の装いを着込んだ男の姿だ。
口の悪い者が化け物屋敷とも囁く場所で、それも人間が平然とした様相で在るのは、幾度もなくで出入りしているから。
あらかじめ日程を定めておいた弟子たちへの稽古以外でこの場を訪れる理由が、ひとつ。
その用事に掛かる前、先に目についた雑草を毟って庭の隅に寄せておく。
終われば、端に移動させておいた大きなテーブルとチェアを戻し、水場で手を洗った後に庭先の一角を見遣る。
木々の多さゆえに森のように見えるが、それだけではない。魔力を見通す竜眼を持つものでもぼやけて見えるそこに、倉庫がある。
結界で秘匿されているのだ。それを知り、認識しているのは、その秘匿された倉庫を預かっているからに他ならない。
テーブルの上に畳まれ置かれた白い羽織の盛り上がりをちょんと突けば、もそもそもそ!と羽織の中でもぞつくものがある。
顔を出して、大あくびをキメるのは白いミニ法被を着た、茶黒の毛並みのシマリスとモモンガだ。
飼い主が草毟りをしている間、暇だったのだろう。だが、いくつもエンチャントを施された羽織の中は、涼しく快適だったらしい。
暑気の中でもすやすやと寝こけていた二匹が這い出し、顔を擦る仕草を見せてくる。
その様子を一瞥すれば、倉庫の扉の前に至れば、手を伸ばす。鍵を差し込む仕草も何も無い。
だが、それだけで事足りる。結界で秘匿、並びに防護されている倉庫の扉に手をかける。それだけでガチャリと錠が開く。
扉を開ければ、男が幾度も出入りして、テーブルの上に諸々の品を置き、広げに掛かってゆく。
刀や剣、不可思議な箱書きがされた小箱、スクロールに水薬を入れた瓶が詰った緩衝材入りの箱、等々。
それだけではない。毛玉めいた小動物たちの住まいと思しい、木製の巣箱まで出てくる始末。
言葉通りの倉庫整理に勤しむ風景がここにある。腰裏につけた魔法仕掛けの雑嚢の中身がまさに此処に在り、繋がっているのだから。
見た目だけこそ、蚤の市でもこの場で開きそうな風情さえある。気づいたドラゴンメイドたちが窓から覗き込む程に。
■リザ > この家に先日新しく加わった新しい子は、両親それぞれから色々な人から色々な指南を受けるようになっていた。
王都の商会をまとめている母からは、商業関連、目利き関連、多様な人との交流、もちろん、商会付きの指南役とも目通りをしている。
もう一人の母からは、武芸に長けた騎士を紹介されたり、戦術戦略関連の師をつけられたり、母自身から錬金術や魔術を教わったりも。
まだまだ年若い存在ながら、竜の血の影響か一般常識的には大人と同じくらいの状態。
器は出来上がったが中身がまだまだ足りていない状態で、それを本人が一番理解しているために、あらゆることを知りたい、覚えたいと。
それらの手伝いは功を奏しているのか、めきめきと色々な実力を相当な速度で身につけつつあるのだが、
口を開けばまだまだ未熟と、各師については、細かい所まで相談し、時間の許す限り相手をしてもらっていて。
そんな末娘が特に理由はないのだが、何となく庭へと出てきてみれば、静かな中に気配を感じる。
とて、見知らぬ気配ではないので特に警戒をすることもなくそちらに近づいていけば、異相の男を認めるのもさほど難しくないか。
「ごきげんよう」
いつもの調子で挨拶を向けて、近づいていく様は、まるで蚤の市にやってきた来客的な風情。
勿論、実際の所は違うのだが、傍から見ればそう見えるような状況か。
■影時 > 仕事柄、というほどではないが、トゥルネソル家との付き合いは――長い。気づけば長い。
これもまた故に、というほどでもないが。雇い主の趣向も弁えていれば、気づけば増えているその家族もまた知悉している。
トゥルネソル家の者たちが新年に集う時、その隅にも参列している。人も竜も知らずして、気質、動向を考えることは敵わない。
知り得る家族、その娘たちも色々ある。色々居る。
人見知りな気質もあれば配慮する。配慮も何も無しに近づけるのは、それこそ子分たる小動物二匹位のものだ。
請われれば教えもする。他に教えている師が居れば、他流試合よろしく稽古を付けることだって良いものだ。
「……奇麗に食べろ、とは言わねえがなぁ……」
さて、倉庫整理だ。この倉庫は男の腰の裏、帯で括りつけた雑嚢が直接繋がっている先である。
雑嚢の中身が、巨大な竜が寝床よろしく転がれそうな体育館程の容積に拡大された倉庫に、魔法的に直結している。
故に一人ではそうそう使い潰せない収容空間を用立てて貰ったのは良いのだが、贅沢のような悩みが幾つかある。
小動物が飼い主の行先次第で、避難場所と出来るようにされているのは良い。その代わり、こうして直で入って掃除をしなければならない。
そして、うっかり胡乱げに物を出し入れすると、だ。時折、広大な収容空間の中にばらけるように物を置いてしまいかねない。
それは特に、箱詰めの資材を大量に放り込んだ際に起こり得る。広い空間に乱雑に木箱が散らばるのは、どうにも気に掛かる。
今見たところ、それは生じていないらしい。
寧ろ、二匹が食べ散らかした餌や種のカラが散乱しているのが気に掛かる。
餌場、巣箱の置き場と定めた辺りの惨状を一瞥すれば、倉庫の出入り口に立つ飼い主が諸々の品を並べたテーブルの上の二匹をじぃ、と見る。
咎め立てするような風情に、二匹がふいっと目を反らした次の瞬間、目に入ってくるのは。
「おぉ、リザお嬢様じゃぁないか。騒がせてしまったかね?」
この屋敷、この家の新顔のご令嬢だ。その姿を見れば、茶黒の二匹の毛玉がテーブルを飛び降り、近づいてくる姿の足元にじゃれついてくる。
親分に何か言ってくだせぇ、というつもりか、それとも新しい誰かにいっそうお近づきになりたい魂胆か。
どちらもかも、しれない。全くと息を吐きつつ、倉庫に出る。袴の裾を叩きつつ、深々とお辞儀を一つ見せて。
■リザ > 「いえ、大して騒がしくもされていらっしゃらなかったでしょうに。」
彼の言葉に小さく笑いをこぼせばそんな言葉を返しつつ、足元にじゃれついてくる二匹の小動物を見やれば、しゃがみ込んで両手を差し出してみる。
こちらから触れることはないが、伸ばした手に一匹が乗り、もう一匹はちょうどよいとばかりに手から腕を伝って肩、肩から更に頭の上へと昇る。
が、特に気にした風もなく、手の上の子を両手で支えるようにしながら、頭の上の子も落とさないように気をつけながら立ち上がり。
「とても人懐っこい子たちなのですね。」
そんな感想を口にしつつ、お辞儀を向けてくる彼に、こちらも返礼の必要性を感じたものの、小動物がいる状態故に、膝を折る礼を。
いわゆる、貴族階級の令嬢などが行う所作だが、不思議と様になっているだろう。
「騒がしくはないのですが、上から皆さんが興味深そうに見ておられたのが、ここまでたくさんの品物が並んでいる様だったのですね。
何をなさっていたのですか?」
いつもであれば、小さく首をかしげての問いかけなのだが、頭の上の子に配慮して、言葉だけでの問いかけに。
同時に興味深そうに視線で並ぶ品々を見やっていくか。
■影時 > 「まァ、今回は庭先に荷物を積んでおいて貰うようなことは無かったからなぁ」
倉庫に物を出し入れする際、騒がしくなることは偶にある、と云えばある。
何処其処に大量の荷物を運ぶ際、予めその荷物を仮置きする時、この庭先が騒がしくなることはあるだろう。
その逆もありうる。過日のことだが、旅先で色々と持ち帰ることが多かった際、荷出しのために人手ならぬドラゴン手を借りることもあった。
今日は一応、それほどでもない。この規模なら、まだ一人で済む――だろう。
遣ってくる姿に走りより、しゃがみ込んで手を出してもらえたら、二匹はわーい!とばかりに飛び乗ってゆく。
飼い主とは違う視点の高さと匂いの持ち主に、シマリスの方が手乗りで遊び、相方のモモンガは慣れた様子で頭上に登る。
ここは我が領地、と言うか言わずか。べたーんとプラチナブロンドの上に四肢と尻尾を広げて居座ろうとする始末。
「他の手合いまではよくは知らんが、こいつら人馴れしまくってる二匹は居ねェだろうな。
あとで、餌でもやってみるかね?」
齧歯類を飼っているものは自分だけではないとは思うが、人馴れ含め、色々変わってる個体はきっとそう多くあるまい。
懐かない相手には懐かないが、大丈夫と思うものは何となくだが、匂いでわかる……らしい。
見える返礼の仕草は実に様になっている。この家の生まれの娘の特異さ、特殊さの一端は知っているが、片親はそれなりの地位でもあるのか。
そこまでの細部までは、敢えて知らないようにした。ただ、当たり前のように接する。
「……あー。こうも色々出る、ってのも、中々無ぇ、か。
倉庫の整理と掃除、だよ。
俺の魔法の鞄の中身を倉庫に入るという形で見れるのは有り難いが、時折手ぇ入れないと把握が出来ん」
雑多に出る倉庫も、そうそうあるまい。整理ついでに一先ず外に出したものを見遣ろう。
テーブルの上に並ぶ色違いの鞘の刀に、大振りの長槍、古びた剣、茶器が入っていると思しい小さな木箱。
一先ず地面に置いた水薬と思しい瓶が詰った箱、背負子と思しい使い込んだ籠。
敷いた絨毯の上には、二匹の毛玉たちの名前を刻んだ木製の巣箱もちょんと並ぶ。
売り物にもなるし、売り物にし難いものもある。色々ある。
■リザ > 「あらあら、そこはそんなに居心地がいいですか?……まぁ、よろしいのですか?それは是非に。」
手の上も、頭の上も、どちらに乗られたことも気を悪くした様子もなく、寧ろ興味深げで楽しげに。
特に頭の上のモモンガにはそんな声をかけてみるものまで見て取れて。
そして、エサの話を向けられれば、目を少しキラキラさせながら喜んでやってみたいと興味を伝える。
その後、なにをしていたのかの説明を受ければ、なるほど、とモモンガに影響がない程度に小さく頷いて
「倉庫の整理。ここまでたくさんのものが入っているとなると、棚卸は必要でしょうからね。
どこに何があるのかが把握できていないといざという時困りますし、
何よりも、確認と記録、記憶の更新を行っておかないと、無くなっているものをあると思ってしまったり、
あるものを消費してしまったと勘違いしたりしかねませんものね」
整理整頓は大切。ちょっとしたノートや本でも片付けておかないとどこかに行ってしまうことなどよくある話だ。
そして、整理と掃除と聞けば、先ほどのやり取りも意味が通る。故に、手の中のシマリスは指先で撫でて、
頭の上のモモンガは、手で優しく撫でてから
「あなたがたも、お片づけは覚えて法が良いですよ。自分が暮らすところが綺麗になると、心も穏やかに、楽しくなりますもの。
他の誰かにやってもらう前に自分で出来るようにあると素晴らしいですね。」
そんな言葉を二匹に向けた。
通じているのかどうかはともかくとして、大切なことは大切と伝えていくという意図か。
そして、数多のアイテムを己も見やれば
「ここまでいろいろなものが並んでいるのも、店舗で見た時くらいですね。
これらは、先生が集めてこられたものばかりなのですか?」
■影時 > 「ヒテンの奴は、なンだろうな。……存外そういう趣味かもしれねぇやな。
俺の頭の上でもそんな風にな。ぺたーとしてるし。」
向こうの手の上に乗ったシマリスは、シマリス基準としては高所の風を楽しむように前足を広げる。
左右の小さな前足を広げ、後ろ足で立ちつつ尻尾でバランスを取れば、お腹の毛がふんわりと風に触れて気持ちいい。らしい。
そんな相方に負けじ、とではないが。
すんすんと鼻先を埋める先の匂いを楽しむようなモモンガが、興味深げな問いに答える。
平べったい尻尾でぺたんぺたんと貼り付く先を叩く仕草は、さいこー、と言っているかのよう。
偶には違う匂いも視点も愉しみたいのだろう、きっと。興味を示す姿に腰裏の雑嚢を漁り、倉庫の中から小さな袋を摘まみ出す。
大粒の剥き胡桃が入った小袋だ。それを毛玉たちが乗ったご令嬢に差しだそう。受け取ろうとすれば、肩上にシマリスは移動してみせる。
「そういうこったな。何でもかンでも突っ込んでるつもりはなかったが、その実気づけば、というのも多くてなぁ……。
似たような魔法の道具を使ってる者たちも、ちゃんと把握してるかどうか気になるところだが。
そんな他人様の心配をする以前に、自分の持っているものはしっかりと。手段として把握し、確かめ直さなきゃならん」
今の自分の生活とその基盤を思うと、仕方がない。邸宅暮らしの雇い主とは違い、より小さな宿部屋暮らしだ。
二匹を連れての旅先での緊急時に備え、という面もあるが、何かと物入りとなる生活に備えて、ということも大いに在る。
だから、一見不便に見えるこの形態も自分にとっては色々と益がある。
大体魔法の鞄、袋というのは、中身を外から見れない印象があるが、自分の場合は外からアクセスできる。
直に中に入って、配置換えや整理、掃除が出来るというのは、中身の把握の意味でも益は大きい。雇い主と製作者の慧眼さがよく知れる。
「……――せめて、倉庫の中で食う場所位は一か所に決めてくれると楽なんだがよう。無理か?」
さて、そんなご令嬢の言葉を聞く二匹は。撫でて貰って気持ちよさそうに尻尾をしんなりさせつつ、ちらと視線を逸らす。
気儘に気になったところで、頬袋に入れたお弁当を食べるのは、退屈な倉庫の中でのちょっとした楽しみなのだろう。
せめて、善処してくれると片づける側としては楽だ。排泄はちゃんと決めた場所でしてくれるだけ、まだマシではあるが。
「然り然り。集めたもあれば、良さげな奴に託してくれ、と預かった奴もある。気になるかね?」
商会の軒先には負けるが、と謙遜らしく云いつつ、手に取っても良いとも言い添えよう。
陽光を浴びる中で、特に武器の類には強く輝くものがあることにも気づけるかもしれない。
中でも二つ。真新しい風情だが、何処か凄味を放つ黒鞘の刀と。手入れされた後らしく、非常に鋭い刃色を見せる長槍と。
前者は知り合いより預かったもの。後者はつい先日、弟子の一人を連れての旅先で手に入れたものだ。
■リザ > 「ぺたーん、ってされると、柔らかいおなかが頭に当たって結構気持ちいいですよね。」
モモンガが頭の上でぺたーんとしているのは、どこか気持ちよかった。
柔らかいものを頭の上にのせているというこの感覚が。
シマリスの直立も可愛いし、そんな話をしている中で、じゃれつくような動きのモモンガも、とってもかわいい。
そんなことをしていれば、差し出される剥きクルミ。ありがとうございます、と受け取ってから、
まずは肩に移動したシマリスに一個差し出して、逆の手でモモンガにも1個差し出してみる。
シマリスに差し出した方の手の中にしっかりとつかみこむことで、まずは一個ずつしか取れないように工夫しつつ。
「整理の機会がない時は、どうしても袋の中に押し込んでしまうものですしね。
もしかすると、人によってはとりあえず入れておく、と言う人もいるかもしれません。
何より持ち運べるという事実だけでも満足は出来ますもの。」
人によって価値観は違うため、そんな人もいるのでは?という問題提起程度の意図を。
そして、飼い主たる師が二匹に向けた言葉と反応に、くすっと小さく笑いがこぼれて
「どうしても、好きに食べたいのかもしれませんね。私達も食べている時に散らかしてしまうことなんてありますし。」
そんな風なのかもしれないと。勿論、自分たちはその後に片づけをするのだが、そのあたりは人間とげっ歯類の間の埋められない溝なのかもしれず。
そして、品物が気になるのか、と問われれば、こくん、と頷いて
「はい、気になります。多分、これと、これが他と比べて良いものではないですか?」
そう返事を返しつつ、逸品の武器を指でさし示す。