2024/08/17 のログ
影時 > 「――ははは、まぁ、確かに、か。“らうんじ”で眺めるだけでも、派閥云々もあるみてぇだからなあ。
 何だったら、甘酒でもこさえてみてもいいか……商会で頼めば麹も多分何とかなる、か?
 
 フィリ、薬と毒は紙一重だ。酒自体もそうだと言われるとそれまでだが、薬として飲む奴は気を付けるにこしたこたぁない」

甘さを抑えたり、薬効重視というのも善し悪しだ。往々にして健康を重んじれば美味から遠ざかるのは何の因果か。
しかし、甘い、甘いか。その句で夏に良さげなものの心当たりはなくもない。
素材が整い、道具が揃えば大体どうにかなる自信があるものを口に出しつつ、ふぅむと考える。
作り方と材料にもよるが、酔いの成分を含まずに醸せるうえに、滋養にも優れているのが甘酒というものだ。
こういうものが手に入った~、試してみないか~、という話の持っていき方、お膳立てという手もある、かもしれない。
間違いなく薬酒よりは、子供にも呑みやすい、薦め易いであろうと。材料がどうにかなるのならいけそうだ。

「この辺りはギルドによっては違い、差異はあるみてぇだが、俺が属してる処はそういう仕来りだな。
 怒られるかどうか、というのも行き先にもよるか。
 今回の此処とは違い、地底に広がる大迷宮に挑むなら――日数の経過を飲み水と食料の消費でしか測り辛い。
 ま、今回はあれだ。初めての冒険をしたから、ちゃんと無事な姿を見せる、なつもりで考えりゃいい。
 
 ギルドに報告して、トゥルネソルの屋敷と商会に寄って……酒場がいいだろうな。
 ああ、そうとも。武器は使いこなせてなんぼだ。
 幸か不幸か、その槌は使い手を認め、歩み寄ってくる類のようだ。なら、機会を重ねるなら理解も一層深まるだろうよ」
 
属しているギルドや土地に違い、考え方、スタンスの誤差はあるだろう。
だが、細かい事前設定や取り決めを明瞭とするのは、トラブルが起きた際の対処を速やかにできるメリットがある。
冒険者は信用が第一だ。程度こそあれ、ギルドに委託された様々な仕事を達成できないのは、信用にかかわる。
行先、内容次第で許容範囲のマージンの幅を増減させるのもあるが、今回は素直に真っ直ぐに帰ることが一番間違いない。
帰りの報告を終えたら、荷下ろしだ。旅塵をひと風呂浴びて濯ぐのも、特に気持ちを整える意味でも大事だろう。
そのためにトゥルネソル家の屋敷に寄っておきたい。自分の鞄が繋がっている先の倉庫も、その屋敷の庭先にある。
即座に換金はせずとも、目録化して売却の目途を立てておく必要がある。当座の飲み代については、十分持ち合わせはある――はずだ。
 
「ああ、熊の類は……在り得ないわけではねぇかねえ。まぁ、今の時点じゃ気を回し過ぎだなぞ?フィリ。
 誰も彼もがこなす気にならねぇ奴だと、最終的に誰かにお鉢が回ってくる。俺に回ったなら、そン時は寧ろ気楽に事を為してやるともさ。
 それ以外の奴らがこなすなら、それを狙って商会で物を商う位なら――在りだろうがね、きっと。

 ……というわけで、だ。
 フィリお嬢様がご心配されている通り、お前ら、俺が倉庫を整理し終えるまでは鞄の中には入れねぇからな?よろし?」

洞窟などを寝床にしそうな生き物で、なおかつ、危険なものと云えばやはりどこもかしこも熊が上がる。
他、猪に加え、ワイバーンの類も少なくともゴブリンが屯していた区画を寝床にする可能性は、皆無ではない。
ただ、最終的には報告書を認める際に具申はしても、ギルドの判断次第としか言いようがない。それを踏まえての商機は有るや否や?
ふぅむと考え込む。この辺りは判断が難しい。ひとまずは具申をしておくが、一応は品を見繕う位が限度か。
そう思いつつ、毛玉たちに釘を指せば、ちぇー、とばかりに尻尾を振り、わしゃわしゃと毛並みを整える二匹が見える。
消化の力は思ったより強いが、もし価値の在る原種などが種に混じっていた場合、一粒でも損失するのは惜しい。
直ぐに売りに出せずとも、鍵をかけられる箱に種類は纏めて突っ込んでおこう。
倉庫整理の際、真っ先に行うことを決めつつ、粗方の民具やら農具やらを雑嚢に突っ込み終える姿を見遣る。

「短剣もそうだが、粗方の武器は使えるように訓練してるのが腕利きの忍びの要件でな?
 こっちの武具は見て覚えたし、訓練場で学び直したのもある。ただ、やっぱり使い慣れた刀や苦無やらの方が何より気楽だね。
 
 ふむ、剣と曲刀……か。こっちは商会に売りに出すか。
 短剣と槍はラファルが興味を持つならやってもいいし、そうでないなら俺が使うか、然るべき奴に託してみるかね。
 
 杖は……んー。フィリ、鑑定が済んだらお前さんに預けるか。
 なんだったら、魔導書の鑑定ついでに、竜胆お嬢様に贈ってみてもいいんじゃねぇかな?」
 
杖以外の品々はいずれも自分の手持ちに置いていても、問題ないとは言えなくもない。以前は兎も角、今は置き場がある。
ただ、最終的に使うかどうかが分からないのが悩みと云える。騎士に偽装、扮装するなら剣は役立ちそうではあるが。
良品は相応の代価を出してでも、我が物にしたいという需要は冒険者を含めて絶えない。
それ以上の良品、業物と云える短剣と槍は――下手に売り捌くより、一先ず手元に残しておく方が良いだろう。
杖については、刃よりもひとまず託せそうな当てがある。
少なくとも市販品や下手な手製以上の質、価値があり、恐らくは少女が手にした竜珠と同質の結晶を用いたのは祭具のような扱いでもあったのか。
お互いの取り分のように提案を述べつつ、残る箱を見分する。衣装箱であったのだろうが、魔法の守りなどは無かったのだろう。
昔日の名残を端切れ、布片の色で伺うほかない。ただ、残るものはひとつ。細かな細工が施された白金の指輪と台座に――。

「……水晶、否、金剛石、か?こりゃあ。何か魔力が籠っていそうだが、特定の何かってより、魔除けか……」

無色の結晶が嵌まっている。八面体様のカットは素朴だが、水晶とは違い、加工の手が及ばない硬質さが見える。
金剛石だろうと。そう見立てる。特に精神汚染などの邪悪な魔法から身を守ってくれる、邪気祓いのような印象がある。
これがあれば、あの神官もまた邪心を抱かずに済んだのだろうか? 
まさかなぁ、と思いつつ、首を傾げて少女を見る。もっておくかい?と。
その答えを待ちつつ、残る武具類を片付ける分身を見る。
指輪以外はすべて雑嚢に収まったのを見れば術を解く。作業に従事していた分身たちはぱっと爆ぜるように消えて。

フィリ > 「何と言ぃますか。…スポーツ寄りとか、美貌寄りとか、頭脳寄りとか――は。学園モノのぉ約束、なのです、が。
物語でなく現実で、その手の区分を見るのは――…趣味人寄りの属性としては。割と胃に来る物も有り…まして。

本当ちゃんとぉ付き合ぃを長期的に考ぇるなら。手土産の一つでも持参すべき、なのでしょぅか。
……順序を変ぇて、甘酒――とぃぅの、頂けましたら。例えばこぅぃった物が…的な話題の振り方が。出来るのかも、と。思われます?

まぁ――薬それ自体、過ぎれば毒となり得るのですし…其処は。納得せざるを得なぃ、でしょぅか」

大人の世界では、会話の切っ掛けそれ自体として。酒を飲み交わす事も有るという。
自分達にそれは出来ないが、例えば――流行りの甘味所にクラス一団で繰り出してみる、だとかが。それに当て嵌まるのだろう。
流石にそれが出来る程の付き合いは無い少女だが、決して、憧れが無い訳ではない為に。…以前話していた茶席に和菓子。其処に甘酒という選択肢も加わったなら。
言い方自体は悪くなってしまうのだが、釣れる生徒も多いのではなかろうか。

…勿論その場合。作ってくれるのは講師でもある彼という事になる。
味についても、成分についても、これだけ気にしてくれる人物なのだから。さぞ良品となる事だろう。
何かと貰いっぱなしのネタがまた増えそうで。せめて調査依頼だけは完遂せねばならないと。硬く心に誓うのだった。

「少なくとも私は――怒られそぅだと思われます。ギルドではなく、ぉ母様方に。
…ぃぇ、笠木様の事を信頼してぉられますので、大丈夫なのかもしれませんが…それはそれとして。余計な気遣ぃは、してぃただくのも難ですし。
唯まぁ――今回のよぅな場所ですと。既に概要は伝わってぃそぅですし、ぃざとなったら転移も出来る、それが把握されてぉりますし…

って、ぁれ。……ぁれ? それで帰宅しなかった場合。調査も討伐も済んだ上で、戻らなかった場合。…それはそれで、良からぬ勘ぐりを受けてぃまぅのでは――?
――ぅ。ぅぉ……ぅ。これは矢張り。然るべき報告が、必須と思われるの――です。

   こほん。 は、ぃ、もしかすれば――意思の一つ位有っても。ぉかしくなぃとも思われます…し。
仮にそぅなら酒場の方も。三人でとぃぅより。三たす三の総勢六名――とでも。考ぇるのも、アリでしょぅか?」

矢張り、仕事なのである。それが契約であり、履行によって金銭その他の報酬が発生するのなら。きちんと果たすのが義務という物の筈。
それこそ、義務を果たさないような冒険者には。依頼だって斡旋して貰えなくなるのだろう。
…と、いうのは彼に関する話であって。少女は添え物、ついでにひっついてきている身分だが。それはそれとして、未成年の義務…保護者への申告も重大事項。
先程言ったように、ある程度…以上に割と、自由放免めいた家庭環境なのは。両親や他の姉妹を見ていれば分かるし、それがこの国ならではの内容なのだ――というのも然りだが。
いや、まて。其処まで考えた所で、気が付いてしまった。仮に家へと知らせず朝帰りにでもなってしまったら。間違い無く、勘違いされる。
お酒に初挑戦していました、と言うのが真相でも。それ以上に色々と想像を膨らまされるに違いない。
よしんばきっちり叔母が同席していても…話題の空転が面白いとなったら、きっと余計に話をややこしくしてしまうのだろうし。
これはこれで大きな問題だ、と頭を抱え。改めて身近な所から。報告義務の重要さを思い知る。

――さて。そんな訳で、帰るまでが遠足ではなく。然るべき義務全てを無事こなせたら終了というべきなのだろう。
其処まで行ってからようやく自由…一足先に送った品々についても。何か分かった事でもないか聞いてみたいし、身支度等はきちんと直すべきだろう。
事前に屋敷でこなすべき諸々を想像しつつ……何やら。結局仕舞われてしまった種に、がくりと肩を落とす二匹にも気が付いて。
当然彼等のお相伴に与る一員であり――…彼の相棒が二匹であるなら。自身にとってのそれが、鎚に当たるのかどうか。
勿論何かを語るような筈もないのだが。持ち手の意を汲む、歩み寄りが存在する、のなら。知性の一つ位いつか生じるのではないか――魔導書のように。
但し仮にそうなったとしても。酒の席にどかんと鎚が置かれている情景は。どうにもシュールでしかなさそうだが。

「確かに夏場の内から、冬場の気候がどぅなるかなど。到底分からなぃのです――が。はぃ。
野生、とぃぇば自然出て来る獣害の代表とぃぅ事で。ともすれば――そんじょ其処等の魔物よりも怖ぃのです、熊。
…冒険者然り猟師然り。山で退治をこなす方は多そぅですし…遺跡内ともなれば。より専門的にも、なりそぅでして。
こぅして調査に一枚噛ませてぃただぃてぉりますから。周辺ケアまで含めて、一個の部門として、成立出来れば――なんて。考ぇなぃ事もなく」

現在でも。商会では武器防具、装飾品、その他。冒険者達にとって必要な品物を、総合的に取り扱っているが。
更に手広く、事前対策や警備の保障――等といった、街の外で活動する職種全般へのフォローやサポートというのも。悪くないのではないか。
魔物が怖いのは確かで、折に触れその為に冒険者が担ぎ出されるのは自明の理だが。獣の類だけでも山では怖いし…村々にとっては、身近な分被害を受ける事も多いだろう。
今でも畑には柵が作られたり、獣罠が仕掛けられたりはしているが。冒険者仕込みのより先進的な防護策を講義する――というのも面白そうだ。
…ただ、直接冒険者の斡旋まで行くようになったりすると。ギルドの仕事範囲を侵す事となり、大いに問題となりかねない。
あくまでもフォローはフォロー。金で解決出来る事だけを解決する、何処までも商売ではあるべきなのだろう。

さて。少女が皮算用に嵌り掛けている内にも。分身達によって次々と荷は運ばれていく。
細かな物は袋や箱に詰めて送り、大きな物は魔術的に無理矢理圧し込み。
最終的には、特に価値が高いと思われる複数点の武具を、取り急ぎの鑑定を求む旨、紙に書きぺたりと貼り付けて送り出す。
これで――その場に残るのが件の箱ではあったものの。残念ながら農具等より損傷激しく。迂闊に動かす事は難しそうだ。
価値が有るなら、後日調査隊が保全の上でどうにかしてくれるだろうと見なし。 …手元に残った指輪は、どうやら――

「はぃ。もしぉ二人がご利用になるのでしたら。しっかりと補修の上で、後日ぉ渡し出来ましたらと。
此方の武具に、洞窟の方で見付けた鎧に……それ等につぃては。報酬として換金の上、でも。宜しぃでしょぅか。
……杖……杖は、ですね。確かに、一度叔母様…じゃなぃ、竜胆ぉ姉様に、効果の程を確認してぃただきます。
その上で気に入られるようでしたら。弟子から師へとぃぅ事で、ぉ送りさせてぃただければ――でしょぅか。勿論そのぉ代は、私から笠木様へ。

――ぁの。 ……はぃ。指輪、もしかすると。 …持ってぉぃて頂きたぃ方。居られまして。
此方も杖同様とさせてぃただけましたら――…一旦鑑定の上で、ではぁりますが」

今この場での諸々も、風竜の物見にて伝わっている可能性。
何か有ったら家庭内で、どんな風に考えられてしまうだろうか、という危険性。
その辺思い出したので改めて。普段厳命されている通り、叔母様をお姉様と言い直すのだった。

…と。武具の行き先については、やはり。力の有る者。使いこなせる技量の持ち主、を想定するのだが。
最後の指輪が、護りを秘めた代物であるというのなら――それは。逆に、力の無い者に持って欲しいと願う。
何れにせよ運び込まれた先にて、一挙に商会から買い上げて――現物で、金銭で。彼には還元される事となる筈だ。

――指輪を収めてしまえば、きっとこれで。長いようで短かった冒険、その全ての過程が終了となる。

フィリ > 【継続いたします】
ご案内:「山窟寺院跡」からフィリさんが去りました。
ご案内:「山窟寺院跡」から影時さんが去りました。