2024/08/16 のログ
ご案内:「山窟寺院跡」に影時さんが現れました。
ご案内:「山窟寺院跡」にフィリさんが現れました。
■フィリ > 「ぃ、一応その――余所様の会話。その取っ掛かりと言ぃますか。練習のそのまた練習と言ぃますか、なので――はぃ。
最低限、ぉ相伴に預かるまでには。済ませてぉくべきかと。思われます。
大凡薬酒の場合。日に一、二杯が限度だそぅで――ウワバミなぉ歴々には。どぅしても物足りなさそぅなのです…が。
とはぃぇ百薬の長とも言ぅそぅですし…一杯有れば充分とぃぅ事――なのでしょぅか?」
勿論商人だって。年末年始は寧ろかき入れ時である。本宅では一応年始に親族が集まったりなどしたが。
それ以外は年明け二日目から早速商売に勤しみ、特別セールだって開催していた筈だ。
今時暦通りに生活するというのは――なかなかに難しいのである。
スケジュールに従わないのなら、ルールだってまた然り、と。そういう訳ではないのだろうが。特例めいて飲酒を嗜む同年代は。確かに存在する訳で。
普段はどうしても縁の無い…それこそ、会話の切っ掛けを見出す事の出来無いクラスメート達にも。これで話しかける事が出来るかどうか。
別に、相手が飲めないなら飲めないで――それも。大人については分からない、等という。学生同士ならではの話題に繋がる公算も有るのだし。
さて。件の甘い奴以外で思い付きそうな例外というと。それこそ彼の言う通り、生薬由来な薬酒の類だろうか。
それだけ熱量を秘めているというのなら。風邪っぴきが卵と合わせて飲まされるのも。何だか納得出来そう…な気もしてしまう。
病人が回復に繋がる程、なのである。健常者にとっては些か過剰な成分である――というのも。むべなるかな。
「但しその場合。はぃ。早晩ぉ店の類に誘われてしまぅ等――楽しくなりつつも、同時に、遅くなるのではと。思われまして。
…のんびりと山を下りていく。それには賛成なのですが…其処から更に寄り道するとぃぅのは。流石に、怒られる気も。してしまぅのです。
――……正直を言ぇば。それこそなるたけ魔術的に用ぃたぃと…思ってぃます。
即時に力を行使出来るだけの、保険と言ぅか……蓄積してぉける魔力源、となりますし。
また敢ぇて属性を選び蓄積してぉけば。それが得られなぃ状況下で、役立つ事も有るのでは――と。
――唯。使ぅ使わなぃの意思は別として。 ……使わざるを得なぃ場合とぃぅのは。多分………この先も」
無い、とはいえない。望もうと望むまいと、危険という物は何時でも何処でも起こり得るし。
それから身を守る為の手段が存在する――と。少女は再認識してしまったのだ。
叩き、潰す。その感触はもうぼんやりと。だが事実は事実として今後もずっと付き纏う。
…命を奪うという行為を経た、自身の手は。果たして穢れたというべきなのかどうなのか。
少なくとも――少女よりも遙かに、生死を切り分けてきたであろう彼の手は。ちゃんと温かな代物だ。今はそれだけ覚えておくとしよう。
さて。実際その気になれば何時でも現れそうな叔母である。
もし未だ距離が離れていなかったのなら。山を吹き抜けていった風の残滓に気が付いてもいそうだし。
実際二人から三人の道行きとなれば。確かに楽しいのだろうが――果たして。それだけで済むのかどうか。
今の今まで、「それどころではない」、という事で忘れていた、深刻な案件を思い出し。風に乱れたスカートの裾を引っ張り直しなどしつつ。
「実際。天然自然で発生する、通常レベルの危険な生物等でしたら――それはもぅ。
一部の特化戦力で、ちまちまと潰すなどよりも。入って来なぃような柵でも設置する方が、遙かにぉ安く訳でして、はぃ。
人員も費用もちゃんとした団体様でしたら。我々よりもずっと長期的に。取りはからって下さぃます、かと。
………後は本当に。余程の事でも置きなぃ限り、になりそぅですので――今の内に。
ぇぇ、立入許可など申請せず済む今日の内に。 …何かを持ち帰りたぃ所です」
ひよっこ魔術士、兼、ひよっこ商売人である。
長期的に調査環境を維持する場合の費用対効果。人件費の嵩み具合、も考えると。
最初の梅雨払いにだけ、値段の張る冒険者を投入し。其処でなるたけトラブルの芽を潰しておくというのが。この手の調査では定石なのだろう。
後の事は業者に丸投げとなるのだが。そうすればそうしたで、自分達も早晩部外者に格下げされてしまう。
…後の事を任せる前に。そして、この場所が眠りに就く前に。貰える物は貰ってしまえ、そんな現金思考が再燃してきた様子。
「ぁりがとぅ御座ぃます。一先ず―― ……ぇぇっと一先ず、此方の本につきましては。帰り道、私が保持ぃたします…ので。
それ以外の見付けた物につぃては、倉庫を通じて送るとぃぅ形に――笠木様に。ぉ任せ出来ますと、大変に助かるので――す。
どぅやらこう……一つ一つ、なかなかに。価値もですが…物理的にも、重くなりそぅ、ですし」
魔導書を少女が鞄に収納したのは…ちゃんと意味が有る。
同時に格納された魔鎚は、所謂、何か有れば即起動出来る待機状態を維持したままだ。
よしんば収納空間の中で、勝手に書が起動したとしても。その際は直ぐ様鎚が魔力を奪う――そんな体勢が、整っているのだった。
但し。書物はあくまで書物であり。鎚は契約者にとっては重みを感じずに扱えるのだが…それ以外は如何ともし難い。
古銭や生活用品ならいざ知らず、機織りか何かのような大型の道具や、木と石による重い農具等は。まず持ち上げるのも大変そうである。
まして。本来は鍛え抜かれた屈強な戦士等が用いていた、そうとしか思えない剣や槍等ともなれば。
これは速攻で商会へ届けてしまった方が遙かに効率が良いだろう。何なら戻る頃には鑑定まで済ませてくれているかもしれない。
先程と同年代の古銭についても。総額纏めると結構な重さとなりそうなので。此方もかさばる物と一緒に送ってくれれば万々歳だ。
とは、いえ――送る事は確定としてもその前に。一度確認する程度はしておきたい。
「ご神体を直接ぉ守りする立場だったか、…この地でも、最後まで戦い抜くだけの方々だったのか…いずれにしても。
この山で、特に武勇で知られる方々が。最後まで此処に残られていたとぃぅ事……かもしれず?」
二種の剣は、歴史を感じさせぬ確かな輝きを維持している…特に立派な戦士が居たかもしれないと。想像させるには充分だろう。
短剣と槍については、適度に年代を経ている様ではあるが。それでも適切に補修したのなら、大変に立派な物となりそうである。
…最後の杖は…この位なら少女にも持てるであろうそれは、どうやら。
今し方仕舞い込んだばかりの竜珠と、同種の力を感じる事が出来た。きっと前衛の者と共に戦った術士か何か。
もしかすれば――屍人となっていた神官と近い立場のような者達が。用いていたのかもしれない。
但しその宝珠が竜由来の物であるとすれば、更に更に古くから伝わっていた物なのだろう――先程の竜とはまた違う力が秘められているようで。
此方も、要検討となりそうだ。気軽に振って、うっかり大規模な破壊の術でも発動してしまったら。この洞穴の中では大惨事である。
■影時 > 「友達との会話に練習も取っ掛かりもなかろうよ、とは言え、か。急ぎじゃなくていいからな?
……ったく、この辺りは細かく云いだすと、説教臭くなりそうなのがいけねぇや。青春がまぶしく見えてちまう。
薬酒も多種多様だが、少なくとも用法適量を守って呑むことの大事さは弁えてるぞ?俺としては、だが。
正月に呑む奴は薬効云々より、邪気を祓うという意味合いの方が強い。酒盛りをやるなら、他にしっかりと用意するぞ」
この国に拠点を構えるようになって、気づけば長い。年末年始に用事が無ければ、雇い主の宴席に挨拶がてら混じる。
それは気づけば増えている雇い主の家族の顔の確認もあり、世話になっている身として時間を割くのが重要と思うからだ。
勿論、ただ酒に在りつきたいというのもない――とは言わない。
しかし、会話に練習、予行演習を考えるというのは、引きこもりがちな性格と思えば無理もない。
学院でよく見かける女生徒の動き、動向を見守っていれば、気兼ねすることも、と口を開きかけて、苦笑交じりに口元を歪める。
青春を語るには、自分の幼い頃は凄惨すぎた。花もない。血と鉄の味ばかりが強い。
平和に幼い時代を全うできるのを見るのは、本当に最近のこととも云える。
口の中に思い出したように生じる苦み、のような過去の残滓から目を反らすように、酒を思う。
本草学を始めとして、薬学の類に心得もあれば、薬酒はそもそも嗜好品ではないと直ぐに認識することが出来る。
ただ、杯を重ねたいのなら、わざわざ手間暇もかかる仕込み等する必要は薄い。
例えば甘い酒を造りたいのであれば、果汁を混ぜる等飲み方もあることも、この国で良く学んだ故に。
「思いもよらねえことがない限り、帰り道は真っ直ぐ――に限る。
というのも、何時何時までに戻る、といった帰途の目途をあらかじめ定めて依頼を請ける場合がある。
何故か、分かるか? 理由は色々あるが、一例としてギルドは行方不明者の探索含め、色々と対処をしなけりゃならんからだ。
ま、腹ごしらえして気力を整えてから山を下りる位、十分に許容範囲だろう。報告を終えた後、酒場に行くか。
……使い方はそれも問題ない、とは言っても、フィリ。その槌はもうお前さんのもんだ。
多分、どんな使い方、想定をしても、思うがままに応え従うだろうよ。それだけの器の大きさ、深さがあると俺は見る。
平和を欲するなら、戦いに備えよ――とかいう警句もあったか。なら、備えは幾ら研鑽しても困るもんじゃあない」
遠足のよう、とはいえ、今この場に立っているのも仕事だ。冒険者ギルドを通じて請けた任務である。
認めた書類の控えを思い出す限り、依頼受諾後の何日後に戻る、といった具合の取り決め、事前設定にしていた筈だ。
それに余力はある心持ちはあるにしても、欲を出してしまうと変なことになりかねないこともある。
なら、帰り道は真っ直ぐであるに限る。建前、立て付けはどうあれ、少女の考え方を肯定する。
その途中、または帰途に就く前の腹ごしらえや思ったことを纏めるのは、時間配分のマージンに含まれるだろう。
魔術的に――と言われると、忍びのものは詳しくはない。体得している技は魔術、魔法の類に似て、異なる点を大いに含む。
ただ、魔術にかかわる道具、宝物の観点で考えるなら、少女のものとなった件の槌は非常に底知れない。
魔王と呼ばれるものが使っていてもおかしくない、といっても言い過ぎではない。
属性に染まらず、偏らない無垢の力として魔力を蓄えるだけではなく、属性別に魔力を蓄え、区分することも不可能ではないだろう。
武器は敵を叩き潰すのみに非ず。大いなるものなら、あるだけで敵意を挫く威となる。
いたずらに振った場合に何がどうなるかは、云わずとも感じただろう。敵を叩き潰すという感覚、生命を奪う感覚をこの地で覚えたなら。
「……それで済むなら苦労はあンまりないんだが、種とモノ次第なんだよなあ。
冒険者に駆除の依頼が出るのは、猟師の手が負えない位に柵を超えてきたり、突き破ってくるような手合いだ。
繁殖期が分かってンなら、前もって一掃するために頭数を揃えて依頼する、ということもあるな。
取り敢えずここの保全の意味を考えるなら、鉄扉までとはいかなくともがっちり策をしてほしいもんだ。
持ち帰るものについては、あー。モノも手立ても不自由しなさそうなのがいいな。
本については、分かった。槌の入れものなら適任だろうよ。
残る奴は……どうにかなりそうだな。おっと、お前ら。種は食えそうに見えるが、だいぶ年月経ってるからな? 食うなよ?」
最終的にこの場の調査、保全を行うかどうかは、冒険者ギルドの管轄でありその判断次第だろう。
二次調査を経て最終的に魔物の駆除、掃討が図られたと判断すれば、門やら高い柵を設置して、侵入口を封鎖するだろう。
そうなれば、この遺構が空を飛ぶ魔物や風雨以外で浸食され、損傷を被るということはなくなる。
取り敢えず自分たちが報告以外でこの後専心すべきは、何をどう持ち帰り、金銭に変えるか死蔵するか、か。
魔導書の取り敢えずの始末、突っ込む先は少女の鞄の中で間違いない。
最悪、自分が持つ槌と同じ素材、下位互換的な特性を持つ鎧通しの短刀を添えるかでも考えたが、そこまでは問題ないだろう。
残る品々を突っ込む先は――自分の鞄が一番適任に相違ない。
無限に突っ込めるわけではないが、有限たる上限はそれこそ巨大な竜が寝ころべそうなほどの容積がある。
頭数の人力が必要と思えば、一旦腰裏の雑嚢を外し、足元に置きながら印を結ぶ。氣を走らせる。
瞬間、男の姿が何重にもぶれて、10人程の姿形揃った分身を形成する。
識別の基準は肩上や頭上に毛玉が居るか居ないか。そんな分身たちに名を下し、玄室の収蔵物を雑嚢に放り込ませに掛かる。
民俗学的な資料のような道具類が片っ端から、収まる筈もない鞄がにゅぅと吸い込んでいくのは異様の一言。
散らばる種を見れば、おいしそうと耳をぴこぴこさせる二匹に、呆れつつも突っ込んで。
「……そんな気がするよなあ。剣も、こっちは、あー。砂漠の民が使ってた奴に似てるな……。
槍と短剣は風を切り裂けそうな具合もして悪くない。杖は……んー。フィリ、魔法使い志望なら持ってみるかね?」
さて、何よりも目玉と云える武具類に足を向ける。どれもこれも保存状態は良好。なおかつ、ナマクラの類ではない。
武器としての純粋な出来栄え、切れ味の面で言えば、短剣と槍が白眉だろう。
己が氣を篭めに篭めても負けないと思える稀有さが、風も斬れそうな刃の風情に見える。
それ以上に輪をかけて異様にも見えるのが、杖か。先程見た竜の宝珠と同質、またはそのものの輝石を用いてるのか。
古色蒼然とした杖本体も古木だろうが、各所に嵌め込まれた金属部品と調和し、年月を超えても存在を保つ魔力を放つ。
そんな感覚を得つつ、残る箱を開ける。
【判定1d6:偶数→服/奇数→指輪】 [1d6→3=3]
■影時 > 箱を開く。大きな箱をかぽっと開いた後の中身は何か布だったのだろう。
そう思わせる端切れの堆積に混じり、小さな金属色を見つける。
取り上げてみると、白金の指輪が出てくる。嵌め込まれた宝石の色を光にかざし、確かめようと目を凝らす。
■フィリ > 「まぁその――ぉ恥ずかしながら。寧ろ、今後友達となってぃただく為に…取っ掛かりにも、なりますかと。
流石に途中からの編入ですと…つぃ。春からずっと居られる、グループとぃぅ物には。なかなか後入り出来ない…よぅでして。
これが私以外の、姉妹などでしたら――気にせず、直ぐに仲良くなってぃるよぅなのですけれど――はぃ。
用法はぃざ知らず、その容量――だとか。許容量だとか?其処は個人個人違ぅと思われますので。なかなか参考には……ぬぬ、ぬ。
…ともぁれ、愉しみとして飲まれるのでしたら。矢張りその為にこそ作られたぉ酒の方が良ぃのだと。其処につぃては納得…なのです。ぇぇ」
実際、健康志向云々で。カカオ成分をやたらマシマシにされたチョコレートなど。苦くて苦くてなかなか食べられない。
若しくは喉に良い飴等の。絶妙に混じってくる違和感めいた物を想像すれば良いのだろうか。
それ等と同じで、本来どれだけ美味しく感じる物であろうとも。違う要因を含ませると、その味は別物となってしまいがちなのだ。
結局少女自身に何処まで窘めそうなのか。その辺はまるで見出せそうにないものの。
実際に機会がやって来るその時には――なるたけ。糖分然り果汁然り。甘味以外の添加物は、求めない方が良いと。それだけは事前に学習しておくか。
…そう。どれだけ良い筈の物であれ。それこそ良薬口に苦し、の憂き目を見る事もある。
これから友達になる為、というと聞こえは良いが。それと同時に少女自身の、人慣れする修行の為でもあるのだ――と。
そんな思惑を兼ね備えての練習は。果たしてシンプルに仲良くしたがる少年少女達の耳目から、如何に捉えられる事か。
付き合いが。会話が。仲良しこよしだけで済まされず、裏に多くの事情を秘めがち抱えがちになるという事位は…数多過去を抱えた彼のような。大人は理解しているのだろうが。
何かにつけ考え込み過ぎてしまう少女が、大人ではなく、同世代めいた子供達と。それでも上手くやっていけるのかは――まだ。やってみなければ分かりそうにない。
「……ん。其処は確かに――ぉ出掛けでしたら。行き先と、ぃつ帰るか…その位はちゃんとしてぉかないと。大変に心配されてしまぅのです。
それこそ、門限になっても帰ってこなぃなどとなりましたら――……ぅぅ。怒られるのではと想像しますと。実に気が重くなりまして――
多少のズレは、保護者同伴とぃぅ事で、ぉ目零しぃただけるのかもですが。これは矢張り、きちんと帰らせてぃただく必要が…有ると思われます、はぃ。
とぃぅ事で報告、ギルドの方が済みましたら。私も、商会の方に顔を出させてぃただけましたらと――
色々と品物を確認してぃただぃた後の方が。懐具合的にも、助かるのではなぃでしょぅか。
序でにそぅして戻れましたら。個人的にも、色々と。仕舞ってぉぃてから出掛けたぃので。
――置ぃてぃった方が良ぃのか。…此方の鎚に関しては、そぅ考ぇる事も多かったのですが――
きちんと手にして。きちんと扱ぇる。きっとその方が良ぃのでしょぅ。少なくとも、私にとっても、今回は――どれだけ大事か。理解ぃたしましたから」
何故か、と問われると。身近な所の例え話を持ち出して。其処は理解出来ていると。
ただ、家の方は割と皆自由、というかフリーダムなので。門限らしい門限というのは正直聞いた事がない。
どちらかと言えば学院の方から、「良い子はあまり遅くまで出歩かないように」等と。言い聞かされている公算が高そうである。
ともあれこれが個人の自由な裁量によるものではなく。依頼であり仕事であるというのなら――〆切りが有るのも、報連相が推奨されるのも、当然という物だ。
腹拵え等で一晩余計に潰れる位なら、まだ〆切りを破るまではいかないのかもしれないが…ダブルの蟒蛇がどれだけの酒代を嵩ませるのか。
それを考えると、矢張り事前に報告を済ませ。然るべき報酬を貰ってからの方が良さそうである。
ギルドから依頼主への報告は勿論だが。…大丈夫だろうと考えても尚、出来るだけ長くは持っていたくない魔導書等も。
叔母に預けてきちんと対応して貰いたいと思う。序でに彼が検分し始めた武具の類も納品すれば。懐具合も大変温かい事になるだろうから。
…危うい代物であるという、鎚への認識自体は変わらない。何せ懸案の魔導書と同じ。魔族による制作物であると、はっきりしているのだから。
とはいえ。書のような、未知である故の怖れは。次第に減ってきている筈だ――少女が成長し、契約が進めば、それだけ。理解も深まっていく為に。
魔術に関わる者達にとっての、あらゆる生命線を簒奪されかねないという危険性に。今回――もっとシンプルに、鈍器としての強さという物も。身を以て体感した。
当然いたずらに振るうつもりは、今も昔も変わらないのだが。実体験、実感、が有るか無いか。それは大きな違いとなる筈だ。
「それこそはぃ。通常なら――でぁる事は。前提の上、でして。
…ぃぇ。普通の野生動物等でも…年によっては、暖冬で穴持たずとなる熊など。本来よりも危険、とぃぅ例は。起こり得るのですが。
唯、そぅしたアクシデントは別としましても。本来取り得る対策とぃぅのは、寧ろ先方で用立ててぃただきませんと。
流石に小事一つ一つ、その度に呼び出されるのは――ぉ仕事になるのだとはしても。回数ばかり嵩んで、冒険者側も足が出る…誰もが損をして終わりに、なりかねませんし。
一先ず獣避けはしっかりと企図してぃただぃた上で。 …それ以上の、魔物対策に必要な品々はー…家での購入。或ぃは契約。ぉ勧め出来ませんでしょぅか。
って、あ、ぁ゛っ。それは大変に宜しくぁりませんかと――っ。
種としても無事でしたら、それはそれ、ぉ二方の中で久方ぶりに水分を得て。急速に発芽する――可能性も。無きにしも非ずなので、す…っ」
遺跡調査は専門の機関が行うとして。その為に周辺を整え守るのにも専門知識――それこそ、冒険者ギルド等が出張る筈。
もしかすればもう一回位ギルドからの人員も投入され。それで判断を下した所で、遺跡の保全等も始まろうというものだ。
ちゃんとした規模での設置が完了すれば…それこそ、普通と言えないような事でも起きない限りは。獣害なども避けられるだろう。
其処までやっても対処しきれない魔物の害など出て来てしまうなら――これは非常事態という奴で、天災のような物。流石に調査団のせいには出来ないだろう。
…通常レベルの対応では、まだまだ心配だ、というのなら。其処が商会の仕事に繋がらないかな…などと、ふと。
ギルド等より値が張る代わりに、魔導その他にも効果を持った防護柵だの。非常事態を直ぐ様、然るべき部署へ知らせる感知術だの。
何なら一括購入ではなく、本格的な調査期間に区切ったリースというのも。商売としては可能性が有りそうだ。
そんな事を考えていたのなら。目の前、古の種に齧り付こうとして。あわやの所で制止される二匹の姿が有った。
種という奴は長い年月耐える物だが。それでも限度は有るだろうし――逆に、生きていれば生きていたで。少女が言うような事態も在り得るのだ。
例えば野生の環境下にて、本来の生き方をする栗鼠達が。仕舞い込んだ事を忘れて冬を越え、春に芽吹く団栗などとは。比べ物にならないのである。
等と少女がわたついている内に。分身の術を発動した彼によって、あれよあれよと多くの品々が運び出されていく。
勿論危険な山岳回廊へではなく、雑嚢を介して直接、倉庫へと送り出されていくのだ。
大きな物も長い物も皆等しく。雑嚢の口から消えていく様子は、面白いと言えば面白いのだが…ずっと見ている訳にもいかない。
どうやら、もう少しばかり――発見出来る物が有りそうだ。
「笠木様は…小刀ではない、此方の短剣等も。心得は有られるのでしょぅか。貴方様か、もしくはラファルちゃん様等が、予備として備ぇられる…にも、良さそぅかと。
それ以外の大きな武器となると。異国の物でもぁりますし、然るべき技術等を修めた買ぃ手など。見つかりそうなら有難く。
……無ぃなら無ぃで。この保存状態ですと。博物館行きとぃぅのも、選択肢ではぁりそうな気もぃたしますが。
それから、杖――ですか。確かに私にとっても。備ぇとして持たせてぃただけるのは、吝かではござぃませんが――…我々の力を補助してくれるよぅな代物でしたら。
同じよぅな物をぉ持ちの母様や…叔母様等にも。向ぃてぃるのかもしれません」
使い勝手という意味も含めると。やはり注目すべきは短剣となりそうだ。
勿論槍や剣といったそれ以外の武具についても。どうやら想定していた以上の良い物が見つかった。そう言って良さそうである。
杖についてもまた然り、なのだが――人間が持つより。少女のように、少しでも竜の血が入った存在と。相性が良さそうな事を。無意識で理解した。
買い手が現れるなら仕方ないが、そうでないなら…直ぐ下に居る妹や、その他前衛職ではない身内や。強い術士であるというなら、叔母等に託すのも。一考の価値が有るだろうと。
――さて。最後にこじ開けられた箱、その中身は大半が。嘗ては衣か何かであったのだろう布片でしかなかったが……其処から掘り出されたのは小さな――指輪、であった。
ぱっと見だけで判る上質な白金に、大きくはないがしっかりと輝く宝石の足なわれたそれもまた。逸品と呼ぶべき代物と見受けられる。
……と、いうか、だ。
「箱――は、これ、衣装箪笥だったのでしょぅか。 …箪笥と、綺麗な服と、指輪。何だか嫁入り道具のよぅでして――?」
昔々。鎮座ましまし崇められていた竜に。信仰以外の形で身を寄せた誰かが居た…のか、どうか。ついそんな物語を夢想などしてしまいつつ…隣に並び。
二人で、光に透かす宝石を眺めるのだった。