2024/06/14 のログ
ご案内:「山窟寺院跡」に影時さんが現れました。
ご案内:「山窟寺院跡」にフィリさんが現れました。
■フィリ > 「――はぃ。やはり、その……ぁまり。宜しくなぃと思われます……ので。
勿論私もなの――で、ぉ互ぃ、気分的にも。
基本的に。ヒトの料理の類は、動物にとっては…濃すぎると。聞ぃてぉります。はぃ。
それでは適度に甘ぃ物で、ぉ願ぃ出来ましたらとー……辛ぃ、ぉ菓子とぃぅのも。
日常食べるのでしたら、有りと言えば有りなのです、が。ご進物とぃぅイメージは御座ぃません…し」
人間同士でも、そういった概念が成立するのかというと……残念ながら答えは是、となってしまうのだろう。
寧ろ特徴や性質の遺伝を目論んで掛け合わされるだけの、家畜等と異なり、人間の方は。
血統や家系という付加価値目当てで婚姻が交わされる――そういう意味での結びつきも。謂わば概念的な掛け合わせだ。
そのような概念が身近に有る分…つい。彼についても、きっと。そういう所から覚えが有るのだろう、と。想像し首を振った。
…其処で話を止めなければ。或いは自身の勘違いを。肉体的、生物的な”掛け合わせ”をも彼が言っているのだと。知ったのかもしれないが。
恐らくは幸いな事に――此処までで。この話題は置いておく。
寧ろ少女にとっては。手土産たり得るお菓子の方が、喫緊の問題である。
毛玉先輩達の食性について頷きつつ、ちゃっかり、其方についてもリクエストの念押しをしておこう。
甘いお菓子に苦い飲み物が合うように。辛いお菓子と甘い飲み物も、また。組み合わせとしては大いに在り得る…が。
なまじ相手が彼の知り合いである、という前提条件が有るからか。必然、彼のお国の茶が似合いそうなイメージが有るし。
そうすれば自然、選択は前者となるのであった。
「そぅしますと。…何かしらの理由で、辿り着ぃたは良ぃものの。
奥には入れず、かとぃって下りるのも、難しく。…下手をすると、取り残されてぃた――かも、な訳で。
小鬼にとってはなかなかの災難だったのかも――なのでしょぅか。
…彼等が仕掛けた、訳ではなぃのでしょぅし。それなら、はぃ――きちんと。嘗ての住人…人間による物と。思ぃたぃのです。
ぇぇと、まぁ、勿論。人間の中にだって、そぅぃぅ奇特な趣味の方は居られるとぃぅか――寧ろ、人の欲望は千差万別、とも。思われますが。
それでも場所柄似合わなぃ――とは、思ぃたぃ訳、でしてー…」
直せばどうにかなるだとか。其処までも考えていなかったらしい小鬼達である。
当然この魔術的な物についても、彼等は無関係だろうし…それ以外の罠に関しても。仕掛けたとは思えない。
なので、まぁ、あまり宜しくない――それこそ、宗教施設のお膝元に相応しくない類の仕掛け。
演出家が性的な某を目論むような仕掛けという物は。この先にも存在していない…と、思う。否思いたい。
彼が言う価値観の相違、のように。人が作った宗教、遍くその中には。性を良しとし悦を尊ぶ代物も有るには有るし…
何だったら宗教を隠れ蓑にして、良からぬ行為その物を目的とした、宜しくない団体というのも。ちょくちょく論われているが。
少なくともこの地に嘗て栄えていた文明の――この遺跡と同年代の、寺院に伝わる教義において。そういった傾向は無かった筈だ。
改めて主神教が席捲した後の、王国文化が花開いた後の。開き過ぎてうっかり爛熟してしまった現状を。思わずには居られない――のだが。
実際王国で産まれ、それこそ王国なりの環境や人心に適応した個体である少女に。苦言を呈する資格が有るのか否か。
現に今も半ば片足突っ込んでいた墓穴――から。どうにか足を引っこ抜くような、話題転換。
丁度宝物らしい発見が有ったのは。少女にとっては正しく幸いというべきか。
「その手の物につきましては…やはり。彼方の、寺院でしょぅか。其方の中に期待するのですが…此処は。
ぉ店か何かだったとぃぅのなら、行き来は相当に有った…のかと。それだけ珍しい物も有れば良ぃ、なぁと…?」
巡礼者を客とする、宿屋でも土産物屋でも。或いは彼等のお布施代として、持ち込まれた物を買い取っていたにしろ。
異国からもたらされた物や…勿論。そうした者達へと売り付ける、此処ならではの品でも。見つかるなら有難い。
他の施設だった可能性も有る筈なのだが、少女の中では、何かしらの営業を行っていたに違い無い、そう決め込んでいるらしく。
――さて。そうして箱の中から出て来た品の内。盃はともあれ、竜を模したそれについては――なかなか。
それこそ、この寺院のお膝元に於いては。相応しくない代物だと考えてしまいそうだったのだが。
「――可能性は。無き西も、非ず――なのでしょぅか…?
考ぇてみましたら。矢張り、その、我々…とぃぃますか、私のよぅな王国民の、信仰と。
此方の信仰とでは、丸きり違ったのでしょぅし――」
自分達の価値観で考えれば違和感が有るとしても。異なる者達にとっては、また別の話。良く有る事だ。
考えてみると、ついお隣である帝国の場合でも。神というのは唯一絶対の存在ではなく、複数存在するという。…彼の国でもそうだったろうか。
何なら自分達竜の存在も。彼方に於いては神の使いとされていたり、時には神の一柱に加えられたりもして――なら、此処も。
教会ではなく寺院という点からしても。寧ろ其方に近い思想形態だったのかもしれない。
…何を信じるかは自由だし、それが必ずしも一つに限られる必然もない。そういう風に考えたなら、おかしな事ではないのだろうと。
漸く納得が言った所で、矢張り持ち帰る分に含める事として。この位ならまだまだ鞄に入るだろうから仕舞い込み――
「……… 、…?」
かけた、拍子に。頭部にて光る物を見た気がして、思わず手を止めてしまった。
その侭仕舞い倦ねている内に、どうやらまた別の発見が有ったようであり――其方を見れば。
描かれているのはどうやら。想像したように、拝む対象となっているらしい竜の姿…そう思われる壁画の名残。
東の方の龍ではなく。此方に住まう、例えば先程の叔母が変ずるような姿の竜である、というのは。些か不思議ではあるものの。
そういう物だったのだろう、と思う事が出来たなら問題もない。…寧ろ。
魔物扱い嫌われ者扱いという訳ではなかったのだ、なんて。そう思う事が出来るなら、つい安堵じみた息も出ようという物だった。
■影時 > 「ん、だな。雇い主殿に喧嘩を売りてェでもなし、……ここまでにしとくか、この話題は。
俺もそう聞いてる。そうでなくとも、食ったらまずいものがある時点で、なぁ。
あー、フィリ。俺が慣れ親しんだ価値観で考えると、日常的に甘い物を食える時点で相当に贅沢な感じだぞ?
水飴は兎も角、砂糖の類は舶来でしかなかったからなあ。
……ただ、嗚呼、どうだろうな。あいつと会うにゃまだ早いというか、菓子よりも根性の方が要りそうだ」
この国だと快楽の追及の余りに近親同士の情交も、否、云うまい。敢えて述べるまでもない事項であろう。
ただ、情を交わす余りに禁忌の線上で踊るのではない。只管に実利、付加価値目当ての掛け合わせがあり得る。
忍者の里という小さな社会、コミュニティであるのだから、他所にでもある。幾らでもある。
具体的には――と思いかけて、覆面の下で嘆息を零し、思考を打ち消す。他に専心すべきことを思い出す。
甘い物と言えば、子分たちには下手な菓子よりも甘い果物を適度に与える位が丁度良い。
そんな甘い果物も、贅沢だったなあと思い返す位には故郷を離れて長く、そしてきっと、歳も取ってしまったのだろう。
この国で色々と見かける砂糖をふんだんに使った甘い菓子も、最初は見るたびに様々な驚きを得たものだった。
疲労回復以外に嗜好品のような甘い菓子類は頑固者でも受け容れるだろうが、それで知己の鍛冶師が馴染むか?というと、少し心許ない。
控えめで訥々とした少女とは、真逆。内心で大丈夫だろうか――と不安を覚えずにはいられない程に。
「如何に小賢しい生き物であったとしても、そりゃぁ寝床は住み心地の良いトコを好むわなァ。
誰かに使役されたり、認識を弄られてる可能性も勿論あるが。
……小鬼の魔法使いは見かけなかった。見かけても、あの手の術をしっかり管理出来るとは控えめに言わなくとも考え辛い。
まあまあ雨露をしのげて、居心地に妥協が出来たのがさっきの場所と考えンのが恐らくは妥当か。
で。術を仕掛けた側だが……恐らく昔の住人じゃぁ、あるまいよ。多分、居るとすればこの先、この奥にだろうな」
もし万一、ゴブリンが物の修繕、改良を出来る生き物になっていたら、人類への脅威は倍増どころではないだろう。
そうならないように須らく鏖殺を奨励されうる類であるし、なまじ増え易いが故に魔族も尖兵としてよく使う。
それは長いものに巻かれるというのは言い過ぎでも、支配する側にとっては支配し易い面もおおいにあるのだろうと思われる。
先程解呪した魔法的トラップ、仕掛けの中に、云わば魔物除けの結界の類が混じっていなかったとは言い難い。
一体一体に魔法をかけて侵入を抑止させる、棲み分けをさせる、としても難しく考えなくとも大変な作業だ。
考えを浮かべ、並べてゆくと、今は居ない過去の住人の仕業――とは考え難い。言い難い。
魔物除けの結界が張られていたかもしれないとしても、先刻の一打で諸々解呪された魔法的トラップの存在は如何なる所以のものか。
過去の住人の仕業として思うと、自分たちの暮らし、生活に邪魔になり得るものはそもそも仕掛けない。
危険となりうるものを設置し、または許容するのは、例えばここが死地となったか。または戦場と相成ったか。
異教、はたまた邪教の巣窟であったとしても、後者のような胡乱すぎる雰囲気がこの遺構ではどうにも感じ難い。
「今の段階じゃぁ、しっかりと確かめ辛いな。店かはたまた集会所だったのか。
俺の目に見え、読み取れそうな事柄を云うのなら――……この地に於いてのカミサマ、それに近いものは、竜だったンだろう。
自分たちを守り、共存し、ありありと実在を体感できて、畏れ敬えるもの。
……そして、ここはそんな竜と間近にいられる場所だった、と」
宗教とは様々である。祈り願いを託す偶像であったり、シンボル、或いはお守りとして、何がしの品を持つ等。
最終的にかの国の主教となったものは、皆まで言うまでもあるまい。
主教となるまで、排斥、排他、異端視された諸々もあったのかもしれない。この地の名残はそうした異端視されたものか。
筆記やら彫刻されている碑文まであればもっと分かるかもしれないが、流石にそこまでのものは見当たらない。
ただ、お守りのような小さな小さな竜の彫像、そして壁画に思いを馳せるのみだ。
竜に捧げものをしている、供物を捧げているような図柄も、邪教にありがちな人身御供ではない。山羊の類を捧げているように見える。
人を害する邪竜の類、悪竜の類ではなく、その在り方は少女の血統、雇い主たちのような側にも近い。
嫌われ者めいた風情ではないことに安堵するような顔に目を細めつつ、撮影しないのかね?と問おう。
一先ず、目にしたものを記録するだけの時間は十分にあるだろう。
例えば、何故ここがこうなった等の解は、きっと奥にあるに違いない。竜の血を感じ、或いは共鳴したように小さな像の目が光る。光り続けている。
■フィリ > こく、こくと頷き。前半の話題については、口チャック。
…何と言うか。良からぬ風に考えてしまう、という意味でも触れたくないし――序でに。
彼が言うまいと、折角黙ってくれた部分についても。少女はうっかりもう片方の足を踏み込んで自滅しかねないので。
一先ず――過去には有った、という事であり。だが、それだからといって現在まで従うつもりはない――それで良いだろう。
「――と、はぃ。…基本的には。本来の主食で、考ぇさせてぃただくべき――なの、でしょぅか。
唯その、ちょっと。……節足動物の類は……あまり。提供したく、なぃと。思われ――ます。…ぅぅ。
ぇ、っとそのー……それは確かに。…この国の中でも、奥地になると、難しぃのでしょぅし――ぁ、その方は。
此方に来られてから長ぃのでしょぅか。何処まで、馴染んでぉられるのか――……て、 …ぇぇ…ぃ、一体どの、よぅなー…」
山に入れば海の物、舶来の物が。届かなくなるのは必然だ…その逆もまた然り。
作れはしても遠地へ輸出する術が無い、それも世の中ザラである――だから商会も目を付けた訳で。
彼の国等も険峻な山々が、各地方の間に横たわっていたらしいから。そういう意味でも好きな時に好きな物が届かない…のも、多々有ったに違いない。
熟々この国は恵まれている方なのだ、としみじみ納得してしまいつつ…気になるのは。
そんな、この国と彼の国とのギャップを。件の御仁が何処まで埋められているのか、なのだが。
先ずそれ以前に、根性が無くてはいけないような人物なのだと言われると。これまた酷く気になってしまい。ひ、と息を飲むようにして。
「…取り敢えず。先程の洞窟内には、本当に、魔力の欠片も感じられませんでした――し。
彼等も同じです。操られてぃるよぅな感じ、呪われてぃるよぅな感じ等も、御座ぃませんでしたかと……実際。
幾度か私も攻撃、しましたが…その際に。収奪出来るよぅな力はぁりませんでした、の…で。
ですから、彼等の場合は何とぃぃますか、そのー…本当に。ぅっかり入り込んでしまった、のかもとしか。
――逆を言ぃますと、確かに…彼等とは全く別系統の。何方かか、何かか…が。彼方に居られるとぃぅのは。同意です、はぃ」
良くも悪くも――とは言わないが。少なくとも先程のゴブリン達は。何処まで行ってもゴブリンの域を出るような存在ではなかった。
その上で、彼等に掛けられている術や、その残滓も存在しなかった、とは告げておこう。
少女自身が気付けるか否かに関係なく。先程の大地のように、殴っても魔力の類は吸えなかった――その事実が、証拠である。
ただ、魔術や召喚術などではなく。例えば物理的に。腕っぷしに物を言わせて従えていたりすれば判らないが。
そんな筋力を誇りつつ、同時に、先程のような隠密精度の高い術式も組める。そんな器用極まる存在が居る…とは。思えないというか、思いたくないというか。
ともあれこれも。解呪したそれがトラップだったとすれば、の話ではある。
純粋にゴブリン達が嫌う魔物避けだった可能性も有るし、それなら、必ずしも自分達と敵対するとも限らないだろう。
――あくまで、希望的観測でしかない。そう腹を括っておくに越した事は無いのだが。
…さて。往時の住人達にとって、魔物の侵入という脅威は有ったのかどうか。
大勢の人間が集い活気に満ちていたのなら、小鬼の類などは忍び込もうとしなかっただろうし…
もしかすれば。敬虔な信仰心、それ自体を力に変える職の者達が。この地を守っていたのかもしれない。
――何れにせよ、結果として滅んだか、立ち去ったか。今やこの地は忘れ去られてしまっているのだが。
「当時の文明にて、メインで竜信仰が有った…とは、伝わってぉりませんが。
それでも…此処特有だったか、後世に伝わらなかっていないだけ、だとしても。そぅぃった方々が、居て下さった…とぃぅのは。身に滲みます。
まぁその、私などは…大半が人と変わらなぃので。もし拝まれなどしましたら、大変に申し訳なく感じるのです――が。
っ、ぇ、ふぇぁ――!? っぁ、っ、そぅ…そぅです確かに―― っ!
っちょ…っと、ぉ待ち下さぃませ、ぇぇと――私、此方に立ちまして。一緒にこの像を持ったら、其方を向けて――」
信仰と逆。主神の教えの下だと、ドラゴンというのは時に、魔の一種。やれ吸血鬼と繋がっているだとか、やれ地獄の王の化身だとか。
流石に現代になると、其処まで忌み嫌われる事は無く。受け容れられている事も多いのだろうが――
彼の知る竜の種族達、その多くが。人の国で暮らす際には、人の姿を取っている筈。それだけで察する物も有るだろう。
だから尚更、ストレートに信仰対象として受け容れられていたらしい、ひょっとすればご先祖様かもしれない絵姿に安堵しつつ…
あまり顔には出していなかったが。ひょっとすると少女なりに、テンションが上がっているのかもしれない。
撮影しないのかと言われれば、はた、と気が付いたかの如く。撮影水晶をその場に浮かせ…いそいそ。
資料の為というよりは、どう見ても記念写真的なノリで。壁画の傍らに立ち、腕の中に件の像を抱え。
画像写りの良い角度を探すかのよう、上から覗き込んで像の顔の向きを考えていれば――
「………ぁ。…の。 ……笠木様からも、見ぇます…?
何かしら反射物のよぅな物――は。埋まってぃなかったと思われるのです…が……」
其処で初めて。像の放つ光に気が付いた。しげしげと見つめつつ、眼前へと持ってきても。まだ光は放たれており…
言葉通り。単に光を反射した、等ではないようだ。
彼にも確認を求めつつ。少女は一旦目を伏すようにして――少しでも。感じられる力のような物はないか、と。
■影時 > 「んー、お前らどう思うね? ……普段通りで良さそうだぞ、多分。
虫の類も喰うが、お嬢様にはちと酷か。手堅くやるなら、旬の果物あたりが良さそうだな。一緒に同じもの食えるし。
……あいつ、そう云やそうだな。いつ位から居るンだあいつ。そこまでは細かく気にしてなかったな。
金を稼ぐために作ったものを売りに行く、納めるために街に行く程度にゃ世を捨ててもなく、馴染んでる筈だ。
――あー。一言で云うなら、あれだ。口が悪い。すげェ悪い」
さて、考えるときりもなく、アブない話題はここまでにして。襟巻の中、肩上を定位置とするシマリスとモモンガに問うてみる。
ここがもう少し安全な場所であれば、弁当や取り出した大粒のナッツ等を思い思いに齧っている頃だろう。
空気を読めてイケる毛玉は変なちょっかいを出さない。だが、流石に水分補給は適宜挟みたい気分になるか。
腰に吊るした水袋を外し、窪ませた左掌に少し溜まる程度に水を注ぐ。その様子に肩と腕を伝い、一匹ずつ水を嘗めに来る。
そんな二匹が、少し考える仕草はしても、ふるんと尻尾を揺らすだけなのは、深く考えないだけかもしれない。
例えば林檎や梨を切って、一切れを細かくカットして与えるだけでも、十二分に喜んでくれるだろう。
乾燥させた小さな蟲類も意外と食いつきが良いが、育ちのいいお嬢様にはちょっと抵抗があるかもしれない。
蟲はちょっと苦手だろう?と少女に問うてみつつ、真逆の知り合いたる鍛冶師の口調を思い出す。
いつからここに居た、という会話をした記憶があるか無いかな程に怪しいのは、そもそも重要視していない事項だったからだ。
それ位の馴染みがあるとはいえ、口さがないのが難点だろう。慣れないものには非常に難点。
己をジジイ呼ばわりする鍛冶師が、慣れもない文学少女を素直に受け入れられるかどうかも気に掛かる。大丈夫かね、と溜息も漏れる程に。
「俺も同感だ。フィリの見立てで間違い無ェな。
あれらは如何にも胡乱な有様でもなかったし、よくも悪くの素のまま、敢えて言うなら自然体だった。
……もう少し何か知ろうとするなら、やっぱ奥の方に行かなきゃならンか」
隠していた宝の慎ましさ、動き等々、野良、野生のゴブリンというカテゴライズの域を出ない。
迷宮の中で跋扈するゴブリンの類はある意味餌食が望めやすいのか、飽食気味であったり、邪悪さが増しているように思う。
術をかけられているとすれば、その可能性は魔力だけではなく、挙動にこそ大きく見て取ることが出来る。
水を飲み終え、こしこしくしくしと毛繕いする毛玉達が、再び肩上に戻って襟巻の中に潜り込んでゆく。
それを見届けつつ、ぱたぱたと濡れた手を振り、水袋を腰に下げ直す。考えるだけでは埒が明かない。知るためには動かなければならない。
竜含め、この地の守護者の類は居たと推察するのはとても用意。だが、その痕跡も失せる位にこの地は忘れ去られた。
「敢えて残さなかったのか、残す価値もないと平らげちまったのか、はたまたか。
……だがまぁ、人間、場所が違えども思うことは似通るのだろうなぁ。
寄らば大樹のなンとやらと云うが、話してみれば言葉が通じて、どうこうしてるうちに崇めるようになったのか、どうなのだか。
ははは、忘れてたなあ。記録しておけるなら記録しておくに――……、と」
竜という存在、形に対し、思うコト、思われるコトの多さは――自分よりも彼女の方がずっと詳しいことだろう。
魔の眷属のひとつとされつつ、人間社会にも浸透しているのは、人の懐の深さか、それとも寄り添う努力を竜が絶やしていないからか。
主教が排斥したものであったとしても、この地にとっては竜とは崇めるまでに至ったもの。
彼女たちの祖先の系譜かどうかまでは知らなくとも、ひとまず記録して持ち帰るなどしなければ、後で調べようもあるまい。
資料確保というより、記念撮影的なノリに小さく笑って肩を揺らしつつ、肩上の二匹とともに眺めてみれば見える光に頷く。
「……どう見ても光ってンな。俺が最初見た時は光っていなかった筈だが。何か、感じるか?」
像の目に当たる箇所が、光っている。如何にも怪しくではなく穏やかな瞬きのように。まるで祈るべき血を見つけたかのよう。
真逆な、と胸の前で腕組みすれば、毛玉たちが一緒に同じような仕草をする。
努めて何も見なかったようにスルーしながら、尋ねてみよう。
もし、像に僅かにでも魔力が感じるなら、糸のように流れる、繋がるものが表の通りのこの先、進行方向に向いてることに気づけるかもしれない。
■フィリ > 【継続いたします。】
ご案内:「山窟寺院跡」からフィリさんが去りました。
ご案内:「山窟寺院跡」から影時さんが去りました。