2024/05/25 のログ
■フィリ > 「――……撮られるか、とぃぃますか。映るかどぅか、ともぃぃますか――ラファルちゃん様ですと、確かに。
ぁの学院は、それはもぅ、昔々からこの国にぁりますので。そぅぃった気風も、仕方ないのかも、です?
ただまぁ、その、ぇぇ……と。…合意とぃぃますか。自由に恋する権利――は。教師も生徒も平等だと。思われ ます。はぃ。
数打ちは難しぃ…と。なります、でしょぅか。 …それ程の逸品ですと。飾って肥やしにするのも、嫌われそぅ――です、し。
もし、そのぉ方に会ってぃただけるとすると―― ……ぅぅ。それもそれで。私にとっては、大冒険になるのでは、と。
――御褒美、は。最後に取ってぉくものですかと。大丈夫――です、その位は、心得てぉります ので」
母の妹。つまり伯母だが、歳の都合上姉のような相手――本来彼の弟子である人物を思い出す。
正直。止まっている所を見た事がない。何ならゆっくり動いている所すら、なかなか思いつけない程だ。
魔導機械の性能を凌駕して、記録してみても残像ばかりになるのではないか、だの。すわ霊の類が映っていると勘違いされそうだの。ついつい勘繰ってしまおうか。
…身内の少女からすると、他に思いつくのが、直ぐ上の双子姉妹のような…淫魔の気質の持ち主達。
これが意外に多いというか、何なら最近だってちょくちょく増えている。母の周り恐るべしであるが。
王国なら恋の多さもその結果も、往々にして受け容れられている訳で。だから、学院の中のあれこれも。彼が其処まで気にする事はないのでは…などと。
実際、彼に靡く女生徒というのは。探せば出て来そうではないか。――甘い奴に釣られる、という者の可能性も有るし。
――そんな母は、きっぱり商人として。武力も腕力も持たないが、知力と経済力とは正しく、立派な力と呼ぶべき代物だろう。
おまけに荒事以外については胆力も相当な物であり。それこそパトロンとして、彼のような冒険者や。頑固な職人達にも物怖じしない。
…其処の所は、到底真似出来そうにないなぁ、と。つい比較してしまいつつ。
まだ見ぬ刀匠の為人について、想像するだけで不安になってくる…という人見知りの少女であった。
とはいえこの少女、自己評価しているよりも少しばかり。気合いは持っている…のかもしれない。
それこそ甘い物、という冒険の後に待っている物に、釣られる部分が有るとしても。
早速血腥い事になったこの探索を。やめる、とは言い出さないのだから。
「――将来、どう在るとしても。…私は、ぃぇ誰だって。決して独りでは在れません、から。
その気がなぃのに誰かを、傷付けてしまぅ、巻き込んでしまぅ……それは。避けなければぃけなぃの――です。私。
ですので、魔鎚然り、竜詩然り、こぅして。…笠木様や、竜胆様に、面倒を見てぃただけて。大変に有難く。
本当に。はぃ、何も入ってぃなぃようでしたら…困り物でした。箱自体の価値はともぁれ。
…少なくとも、この道程その物にも。今後誰かのぉ手を患わせるよぅな、魔物を減らせたとか…そぅぃった。意味は、見出せるのでしょぅし。
欠片の成果も存在しなぃ事柄とぃぅのは。世の中、滅多に無ぃのかと――」
そして。苦手であれ何であれ。何れは人の前に出る、その必要性を。充分に理解はしていた。
商売というのは何時だって。売り手であれ買い手であれ、相手在ってこそ。決して一方向、個人では成り立たないのだ。
女主人として母は日々、強突張りの商売仇やら、足元を覗き見んとする持ち込み業者やら、手段ではなく目的として苦情を入れてくる迷惑客やら…
そういった怖い者達とも向き合い、商売を成り立たせている。
故に自分もそういう所を、見習わなくてはならないのだと……こういった冒険が。制御不全の力を自分の物にする事が。
少女に自信という物を育んでくれるなら。それはきっと、形はなくとも立派な成果。見付けられる物が在った、と言える筈。
そう――既に。こうして遅々としてはいても、歩み続けている以上。器には何かしらが入れられていくのだろうから。
「そ、それはそぅなのですが、っ。…見ぇなぃ物は殴りよぅも有りませんし――っ。
…はぃ。万が一……本当の本当に、万が一。笠木様に気取らせず、近付ぃて来られるよぅな…何かが、居るよぅでしたら。
気付く事はきっと。先輩方に、頼らざるを得なぃ訳でして。
…お二方が、目、になって下さるよぅでしたら。…わ……わたし、がどぅにか。………ぇぇ。どぅにか、出来…出来ます、よぅに……」
動物的な感。曖昧だが、これがまた侮れない。
彼がトラップに集中している瞬間、という状況下から。二匹のソレに頼るしかないと思えてしまう。
勿論先輩方はあくまで、リスとモモンガなのだから。これまた腕力云々は当然の如く頼れないだろう。
…腕っぷし。其処の所を任せられてしまうのは。なかなかに責任重大過ぎる。
だからもう、無事、箱の蓋が開いた時には。強張る程の緊張から解放されて、肺の中身を根刮ぎ吐き出した事だろう。
「買ぃ取らせてぃただくなら、勿論、仕立て直しは基本…で。当然行ぃます、はぃ。
それを笠木様にぉ渡しするも…商品として、売りに出すも。其処はぉ母様と相談してぃただけましたら、です…確か。
取得物の扱いは、発掘担当者の方々からは、一任してぃただぃて……ました。よね?
…此方の方も。……けれど資料としての価値も、有りそうでしたら。流石に、研究者様方に引き渡すべき…でしょぅか。
古銭とぃぃますのも、収集家や好事家が多ぃので、結構な値がつくのですが」
それこそ雑多な小鬼達ではなく、商会絡みの職人達の手に掛かったなら。新品同様綺麗にするも、仕立て直すも、任せろというものだ。
サイズさえ修正出来れば、確かに少女でも身に着けられるものの。瞬間的な力ではなく、重い物を常に身に付け続ける力の消費は。少女の体質にはなかなかの負担となりそうな。
何れにせよ、彼が道具と一緒に、件の倉庫へ向けて突っ込んでくれるなら。持ち帰る分には問題無い、筈だ。
硬貨や金粒についても、そうやって。持ち運びの邪魔になる、という事は有るまい。
ただ寺院が健在の頃の物であるのなら。発掘調査の一貫として、彼等の為保存状況毎現場を保全しておくのも、手の一つ。
そう思えばこそ、手に取るのは一枚だけに留めておき。鎧以外、昔々から有ったのだろう箱の中身は。なるたけそうっとしておこう。
さて。そうして観察する古銭は。文字もそれが示す言葉も古く。やはり、遺跡が遺跡でなかった頃の物で間違いなさそうだ。
勿論周辺の同様の遺跡からも、多数出土していそうなので。目新しい発見とは言えないが――やはり。保存状態が比較的良い、というのが重要だ。
あの小鬼達が、鎧と違い箱については再利用を決め込んでさえ居なければなぁ、と。思わず、溜息。
■影時 > 「撮れるかもそうだが、どうすりゃ映らなくなるかもラファルなら気づいてそうなンだよなー……。
校風やら気風も言っちゃあ、アレだ。この国らしいと言えばらしいンだろうなあ。
情交の権利は等しく、誰にも平等でも、雇われ者の分際はそれ以前の契約として弁えとかなきゃな。
だから、学校でヤるなら、ちゃんとバレねぇように気を配るから安心――、って、おまへら……。
……精々、良くて打ち溜まってた奴があれば、それを売り捌けるかどうかって位か。
必要なら紹介はしてやるぞ? だが、その気にさせられるかついては、まさにお手並み拝見になるだろうなあ。
まぁ、この前良い大豆が手に入ったんだ。帰ったら粉に挽いて手頃なのでもこさえるとするかね」
動き回っているか、それとも猫のように思い思いの場所で、うとうとと微睡んでいるか。
弟子の生態はそう大別できるかもしれない。風にノっている時となれば、最早影も網膜に残るかどうかの域だろう。
それが恐ろしいのは、忍んでくることだ。隠れ、忍んで、密やかに近づいてくる恐怖。
気配を隠す技をどれほどまで極めれば、魔法の目も掻い潜れるか。
弟子には敢えて教えず、気づくに任せている事柄も幾つかある。見ぬうちに若しかしたら自ずと開眼している可能性もある。
または、竜種にしか使えない何か、という未知の要素すら在り得てもおかしくはない。
考えれば在り得そうだ。そう思いながら、言葉と共に浮かべる顔つき、表情は少々下世話が過ぎたか。
何処から出してきたのか。ナッツの殻を尻尾で弾いて飛ばしてくる子分の突っ込みに、お前ら何処で覚えたそんなもん、と嘯き、額を押さえる。
額を押さえる仕草と共に思い出すのは、かの刀匠の工房の情景だ。
最良は相手を直で見ての注文打ち。売りに出せそうなストックがあるにしても、習作として打ち貯めたもの位だろうか。
数打ちの量産の依頼はまず無理と見てよい。注文先としての契約を結べるかどうかは、いざ、勝負、という具合となるだろう。
契約が取れる、取れないは抜きにして、仮に交渉をやるならば勉強になるには違いない。
そんな頑固な知り合いの庭先を借りて、栽培を頼んでいた作物を思い出す。もらった大豆はまだ加工せずに保管している。
少しずつ暑くなりつつ時期なら、冷えたものを拵えるにもいいかもしれない。
脳裏で作るものを幾つかリストアップしつつ、フラグめいた言葉を再び放ってみせて。
「……そうだな。人と関わり合うことは、避けられん。
それに、力が無かろうとも時に傷つける言葉を放っちまうことも避けられん。
言葉ならまだいい。それこそ言葉は選べ、という奴でもあるだろう。そうでない力は、しっかと向き合うしか無かろうよ。
この位、お安いもんだ。こっちだって世話になってンだから尚のことだ。
蔓延ってる魔物がこの先も居るなら、片づけること自体に大いに意味がある。
本当に成果がないコトと言えば、あー。――何も為せずに死んじまうことだろうよ。これは絶対に避けなきゃならん」
引き篭もるにしても、それは他者との交流を可能な限り避ける程度の域を越えられない。
故に少女が宣う意志は評価に値する。其れで良い、と頷くに十分に足りる。避けられぬ、逃げられぬものには向かい合うしかない。
心が折れぬ限りは如何様にもなりうる。その上で想定する限りの最悪は、死ぬことだろう。
そう考える。生き物はいずれ死ぬだろうとしても、得た教訓を身に出来ずに死ぬことは最悪と位置付けるべきだ。
それは勿論、聡明な少女のことが。よくわかっている筈だろう。そう考えつつ、ひょいと手招きするように二匹の毛玉に目配せする。
「見えない癖にしてそこにあるものなら、肌に感じられると意外といけちまうもんだぞ? 皮膚感覚も馬鹿にならん。
……とはいえ、まだまだこの辺りは難しいか流石に。
こいつらが鳴く位のことがありゃ、それはもう余程のコトと考えてくれていい。」
この境地、感覚は――ある種の達人、熟練者故に研ぎ澄まされたものであるか。
例の魔槌は見えないから闇雲に、ということが通じやすい道具でもある。範囲攻撃の手段も当然ならば、ある。
その見切りを求めるなら、子分の毛玉たちが付き添う限りなら、鳴く程の自体がまさに緊急時と言ってもいい。普段から鳴く生き物ではない。
目配せすればその二匹がするすると少女から降り、または滑空して親分に飛び移り、または攀じ登ってくる。
御苦労と撫でようとすれば、ひょいとその手を躱す。あとで餌を強請るに違いない。
「心得た。まぁ、この洞窟で得たものについては俺とフィリ。双方に所有権があると言ってもいい。一先ず持ち帰ってから吟味するとするか。
古銭の扱いについては、嗚呼。お前さんに全部任せよう。
数枚だけ手元に残して、残りは競売などに出す――でも俺は問題ない」
一先ず、見つけたものは小分けにして雑嚢の向こうの倉庫に放り込むことにしよう。
一枚だけ古銭を手に取る姿を見れば腰裏の雑嚢に手を入れ、大小の布袋を取り出す。見つけた鎖帷子、古銭と品物別に布袋に入れ、雑嚢へと押し込む。
にゅるん、と云わんばかりの勢いでウェストバッグ以上の大きさ、嵩のものが収まり、吞み込まれて失せてゆく。
最後に残るのは開封済みのぱっかりと開いた宝箱。これは流石に持ち帰るわけにもいかない。そう思いつつ立ち上がり、羽織の裾を払う。
首を鳴らし、見やるのは洞窟の奥。まだまだ先に続くと云わんばかりに、明暗で奥行きを主張する。
■フィリ > 【継続いたします】
ご案内:「山窟寺院跡」からフィリさんが去りました。
ご案内:「山窟寺院跡」から影時さんが去りました。