2024/01/18 のログ
シロナ > 「そうそう、そう言うモノ。」

 感情とかは、理性で抑える事が出来ても、それを止める事が出来ないものだ。
 爆発してしまったら、それこそ、止める事が出来ずに、あふれ出てしまうモノ。
 そう言う意味では、水のような物だよね、なんて、同意しながら考えるシロナだった。

「まずは、知らないなら、知るところから始めないとね?
 此処は、序の口、最初の入り口部分、だよ。」

 恋人も関係が深くなれば色々とある。
 爛れた関係になる人たちもいれば、清いままで交際していく物もいる。
 まずが、恋人とは、付き合うとは、どういう物かと言うのを、知ってもらうためだ。
 恋人と言うモノ、定義などを本にしている人もいるだろうが。
 わざわざ図書館まで行って、そう言う本を見るのはどうなのかな、と思うのがシロナだった。
 習うより慣れろ、が、シロナの基本。
 それでも、判らないことあったら聞いてね、と言う程度は、理解していると思う。

「小麦を細長くした麺に、様々なソースを絡めて食べる、ね。
 アタシは、ミートソース。」

 トマトと、ひき肉を混ぜて作ったソースをたっぷりかけたパスタが好きだ、と。
 粉チーズを掛けてしまえば、それはもう絶品だよ、と。

 肉食ドラゴンなので、肉は大好きだ。
 因みに、小麦を使ってるから、パスタは野菜、トマトソースを使ったミートソースは、野菜。
 偏っていると言ってはいけない。

「ほら、あれ。」

 何か悩んでいる様子のシャーニィ、指さして見れば、大皿で、同じものを注文して。
 あーん、と食べさせ合っている恋人たちもいる。
 別々のを頼んで、食べさせ合う恋人たちもいる。
 もくもくと、自分で好きなものを頼んで食べて居る物もいる。

「楽しく食べれれば、良いんじゃない?」

 にっこり、と笑いながら言って見せる。
 別に。シロナは読心術とか使えるわけでは無いです。 

シャーニィ >  
「それは、道理だな。
 入り口……どころか、踏み入れたのかすら分からぬのがなんとも言えぬところだな。
 だが、そう。いずれにしても、知らねば前にも進めぬか」

さっぱりまだわからないせいで、入り口にたどり着けたのかすらわからない。
そもそも正しく解釈できているのかもわからない。
が、まあ……幸い観察対象は多数あるようであるし。
サンプルが大いに越したことはないだろう。

「ふむ、肉か……」

好みといっていいのかはわからないが、最初期に口にしたものが陸の動物の生肉であったがゆえに、傾向としては肉類を口にすることが多い。
そして、指摘されたようによく見れば同じものを食べているものもそれなりにいた。

そうなれば、と

「では、吾も肉にしよう。
 ……大皿に、すべきか?」

ちらり、と大皿で頼んで食べている恋人たちを見て問う。

「あと、あれは儀式かなにか、なのか?」

どうにもあちこちで行われているようにみえる、食べさせ合いを控えめに示しつつ重ねて聞いてみた。

シロナ > 「ま、その辺りは……、もっと情報を集めないと判らないんじゃないかな?
 だって、知らなすぎるし、ね。
 知って行けば、判る事だから、慌てずに色々見て、覚えるしかないよ。」

 入り口が何処なのか、それは、シロナも判らない、何処を入り口に設定するべきなのか、と言う物かもしれない。
 自分的には、入り口に居る積りでも、彼女の中では、其処が入り口では無いのだろうし。
 恋愛と言うのは、とても簡単で、とても難しいものなんだなぁ、と、話ながらシロナは感じる。

「そ。肉。
 むしゃむしゃがつがつ、喰っているような気分になる肉。
 肉に始まり、肉に終わる、肉。
 ざ・みーと。」

 これでも、竜の末裔なので、肉食系女子。
 甘いものは好きだけど、がっつり食べるなら肉を食べたい系女子なのだ、肉こそミート。
 肉こそ、食べ物の王様、と言い切る。
 牛とか豚とか鳥とかスキキライせず食べれます。

「うん、気に成らないなら、そうしよっか。」

 大皿は気にしなくてもいいだろう。
 だって、小皿を頼んで分けるという手段も有るのだし。
 そう言いながら、ウエイトレスを呼んで、註文をする、三人前を大皿一つで。

「儀式と云えば儀式かな?
 自分の手で、相手に食べさせるの。」

 恋人同士で、よくあるムーブ。
 自分の手で食べて貰って、美味しいと言ってもらいたいの。
 世話を焼きたいというアピールかもね?と、やってみたい?と問いかけてみる。

シャーニィ >  
「それも道理だな。
 ……うん。もどかしくもあるが、分からぬことを知るのは嫌いではない」

かつての自分とかけ離れた生活。
そのせいで分からないことは山とある。
かつての自分はもう分からないが、それでも少なくとも今は楽しい、といえる。
だから、そんな感想を漏らす

「吾も、肉は嫌いではない。」

こちらは肉食系、というかワイルド系というべきなのか。
手っ取り早く食べるのに野生で狩って食べていたのが肉だった、という肉食。
食べ慣れたものは正義である。

「うん? 気になるような理由など、なかろう?
 ……いや、そこが気になるものもいるのか。」

他人が手を付けたものに手を伸ばせない、などという繊細な感覚は持ち合わせない。
そもそもそこに忌避感を持つ、という考えすらない。
ではあるが、そういう考えがある、ということだろうか、と類推くらいはできる。

「で、あれば。あの者たちは、それが気にならないと見える。
 ふむ……親密さ、というものも要素か……? では、吾もそうであるのか……?」

自分の食器で相手に食べさせる行為をしている恋人たちをみやりながら、考える。
となると、なるほどシロナの指摘するようにアピール、というのも正解なのだろう。

「む……ふむ。
 考えてみたところで分からぬものは分からぬし、やってみる意味はあるか。
 シロナが嫌でなければ、ではあるが」

やってみたい?という提案に至極真面目に考えて答えた。
とはいえ、そう。相手あってのことでもある。 

シロナ > 「それなら、判るようになると思うよ。
 シャーニィは、頭が良いし、ね。」

 彼女の地頭は他の人と比べ物にならないくらいに良い。
 恐らく、邪神として生きて来た時の知恵が残って居るのだろう、それが、今の器(シャーニィ)に作用しているのではないかと思う。
 だから、直ぐに覚えて行ってくれる、そんな風に思うのは、シロナの期待でしかないのだろうか。
 そうだとしても、シロナとしては、教えていく、それしかできないな、と。

「肉は、食べ物の王様、だからね。」

 うんうん、と頷くシロナ。
 お肉が嫌いだという存在は、珍しいを通り越して、絶滅危惧種ではないだろうかと思う。
 肉食もワイルドも、ノーマルも、肉は大好きだ、魂のごちそうが肉なのだ。
 ビバ☆ミート。
 肉に間違いはナシ、と、うんうん、と全力で同意。

「そそ、人によって、色々あるから。」

 自称でも他称でも、潔癖症とかいう人は、他の人と食べ物を同じにしたくないというだろうし。
 そういう人もいるので、と。
 彼女がそうでないなら、シロナは問題はない。
 なので、シロナは既に大皿で頼んでいるのだった。

「そうだね、恋人同士は、寧ろ同じ皿とかで食べたがるようなもの、だし。
 家族になるから、お皿を同じにする訓練、と言う考え方も出来るかな?」

 恋人から、夫婦になる事を考えれば、その時の訓練と考えると、シロナ的にはしっくりくる。
 ああ、そういう事なのかも、と首を傾いでみる。
 それからの彼女の提案に、白く彩った唇が、にっとつり上がる。

 じゃあ、やってみよう、と頷いて、註文したミートソーススパゲティが届く。
 粉チーズをふってかけて。

「はい、あーん♡」

 たっぷり情欲を込めて、フォークにくるくると、一束絡めて丸めて食べやすくして。
 彼女の顔に近づける、あーん、と大きく口を開けて見せて、開けて、とジェスチャーしつつ。

シャーニィ >  
「……時折、それを恨めしく思うこともある。
 これがなければ悩まずに済むことも多くあるだろうに、とな。
 良し悪し、だ。まあ、結果的には良し、のほうが多いようではあるが」

ちらり、と相手を見る。

存在として幼い割に知恵はまわる。
知恵がまわるからこそ、様々に考える。
考えるからこそ、疑念を持つ。
疑念を持つからこそ……悩みを持つ。

悩みの末、ただの邪神として生きられなくなった果てに今がある。
その良し悪しは今のところ分からないが、今のところ悪くはなさそう、である。

「そ、そこまで、か?」

食の貴賤はあまりわからない。
わからないが、王様、というのならそうなのだろうか。
うん、でも旨いのは確かだし、正しいのだろう。

「家族……家族、か。
 個ではなく、集団として。親、子……揃いで集まるそれ、か。
 行き方を強固にするためのヒトの営み……
 共に生きるのであれば、そうか。皿くらい共にできねば、生活も成り立たぬか。
 ヒトの有り様とは、実に興味深い」

本来の記憶の自分は、周りに配下はいても家族、などという存在はいなかった。
それで、十分であった。それゆえ、考えもしなかったがこうしてみると、実に合理的なのかもしれない。

「あ、あーん?」

どうにも呪文めいた言葉とともに差し出される一巻きのパスタ。
儀式、というからには呪文もつきものか、とも思うし実際周りもそうしている。
ならば、と少々戸惑いつつも呪文を口にしつつ、口を開けて見せる。

紅さの覗く口内は、しかしヒトと大して変わらず。
強いて言うなら、やや鋭い犬歯が牙と見紛うかもしれない、といったくらいだろうか。

シロナ > 「恨めしく思う事はないと思うよ?
 だって、悩むことは生きている事だし、考えていることは、存在している証だし。
 イイコトでしかないよ?」

 考えず、悩まず生きるという事は、呼吸をしているだけであり、生きているとは言えない。
 そんなものは、人形(ヒトガタ)でしかないんだし、考えて悩んで困るのは、生きているというのだと、シロナは言い切る。
 疑念も、思考も、生きているからこそだ、ともう一度、念を押して伝えよう。

「そこまで、だよ?
 美味しいお肉は、心も体もすべて幸せになるよ?」

 お肉から離れられなくなるでしょう?
 なんか、危ない薬のような良い方をするけれど、お肉を食べてお肉を離れるのは、出来るかどうかで言えば。
 可也、難しいと、シロナは思う。
 食べ物は、麻薬だと、其処迄の物なのだ、と伝えよう。

「そ、人間が此処迄繁殖した、システム。
 一つの家に、親が、子が集まり、育て、育つシステム。
 動物たちよりも、妖魔たちよりも、確りくみ上げた物だね。

 人間だけだよね、弱い存在なのに、ドラゴンを、神を、魔王を、下す存在が発生するの。」

 弱い個体は、幾つもある、が。
 上位種を下すのは人間だけであり、人間だけが、家族と言う物を作り、生活している。
 つまるところ、人間の強さはここにあるのではないか、と思うのだ。
 竜としての見解だ、それは、間違いではないと、思う。

 それは兎も角、今は、デートだ、デート。

「あーん♡」

 彼女に、もう一度、あーんと伝えながら、その口に、パスタを入れる。
 するり、と上手くパスタだけを彼女の口の中に残して、フォークを取り出す。
 もう一度、パスタをフォークに絡めて。

「もう一度、あーん♡」

 もう一口、どうぞ、と。

シャーニィ >  
「で、あれば。
 かつての吾はどれほど生きていたのだろうな」

邪神として、只々破壊の限りを尽くしていた自分は、はたして生きていた、といえるのだろうか。
ふとそんなことを思った。

「そうか、幸せ、か。ははは、幸せ、か。
 随分と吾も変わったものだ。うん、悪くはない」

正の感情を侮蔑し、嫌悪し、踏みにじってきた自分が、幸せを噛みしめることになる。
なんとも皮肉な話だが、存外悪くないとも思う。
……滑稽な話、であろうか。

「吾もそれにやられた口だからな。
 よくわかる。本当に、大したものだ。
 ……ふむ。とすれば、ヒトの恋愛、というものは個をつなぐための必然、になるのか?」

ついつい真面目に考察を始めてしまう邪神。

「……シロナは。
 シロナも、恋を。愛を抱くもの……で、よいな?
 ……ん、む……いや、シロナにとってソレはどういうものなのだろう、とな」

ヒトというよりは、人外、魔の領域の方に近い彼女。
その彼女の恋や愛は、ヒトとは異なるものなのだろうか。
いや、そもそもの恋や愛の感覚を把握できていない自分としては、その感覚を知ってみたくなった。

「ん、む……んぐ、ん。
 うん、なかなか……んぐ、ま、またか。
 あ、あーん」

一口目を味わい、堪能し、飲み込んだところでおかわりの第二波がやってきた。
まだ戸惑いはあるが、さきほどよりはスムーズに口が開けれただろうか。

シロナ > 「さあ?シャーニィの前は知らないからね。
 アタシに聞くんじゃなくて、自分で決めると良いよ。」

 彼女の前が邪神だとして、それがどれだけ生きていたのか、超常の存在の生き死にに答えられる言葉はない。
 一寸塩な返答かもしれないが、そう言うしかなかった、知らないのに言う程、シロナは厚顔無恥なつもりもなかった。

「そだよ、肉に限らず、食事は幸せを運んでくれるよ。
 それに、幸せになって、良いんだ、誰だって、ね。
 何が幸せなのかは、人によって違うけどさ。」

 邪神の頃は、人を亡ぼすのが幸せだっただろう、踏みにじる事が幸せだったのだろう。そう言う存在であるのだから。
 否定はしない、幸せは本人が決める事であり、邪神と言うシステムはそれが幸せなのだから。
 理解して、共感は出来ないというだけで、終わる話しだ。
 肉を食べて幸せを感じるなら、それは理解できるし共感できる、共有できるね、と笑いかけるだけだ。

「だよね。人間が、一番化け物、だとアタシは思う。
 家のゼナかーちゃんも、人間なのに、アタシ敵わないし、物理的に、筋力で。

 あっと、子を繋げるというだけで言う訳では、無いけれど……そうだね。
 繋がりを求める人間的には、家族を求める必要と言う所になるんだ。」

 自分と姉を生んだ母親、先祖に淫魔が居たとして、血も薄まり切っていた人間。
 それでも、彼女の腕力は、未だに人竜の自分で敵わないのだ、本当に大したものだよなぁ、と、同じく頷く。
 子供を産んだり産ませたりには、恋愛は必ずしも必須ではない、強姦や、政略とか、避妊不足の事故もある。
 ただ、家族を作り、一つのまとまりになるには、必要だね、と。

「そだね。
 愛や、恋をアタシも抱くよ。
 アタシにとって、愛や恋は……そうだね。
 淫魔ではないアタシを残すもの、人間や、ドラゴンとしてのアタシの、絆。
 セックスとか、と違う……かな。
 肉体を介さない、絆と言うもの、だね。」

 淫魔だからこそ、望めば、セックスはし放題だ。
 だから、普通の人よりも、心と心の繫がりは、拠り所、縁となる。
 シロナ的には、そんな所になるのだろう。
 上手く言語化できないのは、シロナの中でも、愛や恋が、確立しきってないという証左でもあろう。

「ふふふ、シャーニィを餌付けしてるような♡」

 おいしい?と首を傾いで問いかけてみつつ。
 二口目を食べる様を、うきうきしながら見やる。

シャーニィ >  
「うん、そうだな。そのとおりだ。
 今のは吾の誤りだった。そも、かつての吾がどうあろうと、今の吾とはまた別の話であるし、な」

塩かもしれない、といった本人が考えた言説は、当の言われた本人には至極当然に聞こえた。
失言を謝罪しつつ、穏やかに口にする。
まったく、この相手は色々と気づきを与えてくれるものだ。

「そう、か。誰だって幸せになって良い、か。
 何が幸せ、かも違う……それも、道理だな。
 ……吾には、まだ幸せ、というものはよくはわかってはいないが……
 そう、だな。今は、多分幸せ、なのだろうな。」

なんとも説明の付かない、今の感覚。
それはどこか心地よく、間違いなく良きもの、であった。
少しだけ、何かを理解できた気がしてきた。

「……シロナが、か?
 それはまた……大した御仁だ。流石はシロナの母上、といったところか。
 ははは、機会があれば会ってみたいものだな。」

思わず一瞬目を丸くしてから、笑う。
シロナが勝てない人物、というのもそうだが、シロナという人物に触れるにつけ彼女を醸成した環境、というのは興味深くもあった。
きっと、それはシャーニィにとってシロナと同じく良きものではないか、とも思えた。

「そこが面白いところ、ではあるな。
 高みに行き過ぎてしまえば、個で十分に成立するし繋がりなど不要になる。
 それが下がっていけば、広く、深く様々に繋がりを作ろうとする。
 それも、強さか……うん。」

ふむ、と少し考える。
だいぶ、色々見えてきた気はする。
繋がり。かつて持ち得なかったものが、キーになるようだ。

「なるほど、絆か。性交とはまた別の線にある、と。
 ……いや、妙な問をしてしまって悪かった。」

精神的な作用、というのはよくわかってはいたが、改めて認識をする。
……絆、か。

「そ、そんなにたのしいか?
 ん、む。まあ旨い、のは確かだが……」

餌付けされる動物のごとく、もむもむとパスタを食べて素直に応える。
いや、たしかに旨いのは旨い。

「ええい、こうだ。」

しかし、されっぱなしというのもなんだか具合が悪い。
こちらも慣れない食器を使って見様見真似でパスタを巻き付け、シロナの眼前に差し出す。

「吾からも、だ。あーん」

おかえし、であった。

シロナ > 「そう言ってもらえると、気が楽になるよ。ありがと。」

 塩対応だと思って少し反省した所に対する彼女の言葉は、怒りではなく、同意の言葉。
 謝罪の言葉があれば、ほ、と安堵の吐息を吐いてから、彼女にお礼の言葉を返して笑う。
 良かった、と本心からの笑みを浮かべた。

「そりゃ、生きるんだから、ね。
 生きる意味が、幸せになるってアタシは思うんだ。
 よくわからないなら、判るまで、探せばいいから、焦らないで良いよ。
 多分じゃなくて、胸を張って、幸せって言えるように、ね。」

 幸せは、何処までも追及できるんだから、と。
 今の幸せを、どんどん膨らませて行っちゃおうZE☆と、ウインクを一つ。

「冒険者としては、一流だよ、ほんと、ソロでドラゴン退治も出来るだろうね。
 忙しい人だし、逢えるかどうかは、判んないよ。
 年に10日、帰ってくるかどうか、のようだし。」

 高名な、高ランクな冒険者になるほど忙しくなるようで。
 家に帰ってくるときはほとんど見ない、だから、シロナもあまり記憶にない位に会えない。
 だから、逢えたらラッキー程度に考えてね、と。

「高みでの、個の力と。
 底辺での、群の力と。」

 結局、そのパワーバランスが偏った方が勝つ、と言う事なんだね、と。
 繋がりが増えれば増えるほど強さが増える、個が強くならなければ、限界があれば、無限に増える方がと。
 彼女が納得しているので、そういう事でいいのだろう、と思う。

「淫魔だから、ね、性交は愛を交わすだけじゃなくて。
 食事とかもあるから、孕ませない、安全なセックスと言うのも、出来ちゃうわけで。
 それは、個を作る行為としては、邪道だしさ。
 アタシ的に、性交は、一段下がっちゃうんだ。
 だから、精神的なつながりが、絆が、欲しくなるんだ。」

 そして、その精神的なつながりを欲しているからこその、淫魔特性の鎮静なのだろう。
 考え込むシャーニィを見ながら、変な質問でもないよ、と。

「あ。」

 お返しとばかりに、フォークに、パスタを巻き始めるシャーニィ。

「あーん♡」

 口を大きく開けて、ぱくり、と。
 もぐもぐもぐもぐ。

「おいしー。」

 やっぱり、此処のパスタはおいしいねと、にっこり。

シロナ > [中断します]
ご案内:「平民地区商店街」からシロナさんが去りました。
ご案内:「平民地区商店街」からシャーニィさんが去りました。
ご案内:「平民地区商店街」にシロナさんが現れました。
シロナ > [お約束待ち]
ご案内:「平民地区商店街」にシャーニィさんが現れました。
シャーニィ >  
「礼を言われるようなことでもない。シロナは吾に気づきをくれる分で、十分以上に釣りが来る。
 ……幸せの話もそうだが、実に助かる。」

こうか?とばかりにややぎこちないウインクを返す。
覚えること、学ぶこと、探すことはまだまだ多そうであるが……その先が楽しみに思えてくる。

楽しみ?そう、楽しみだ。
負の世界ではない、楽しみを、たしかに実感していた。

「なるほど、シロナでもかなわんわけだな。
 吾とても危うそうだ。ますます面白い……が。多忙であればやむをえまいな。
 別に急ぐものでもない」

鷹揚に構える。
ヒトに近い形を得たと言っても、元々は人外の存在。
この先、はおそらくはヒトよりはだいぶ長かろう。

「ふむ、それを邪道ととる……か。シロナらしいといえば、らしい発想だ。
 己の芯がそこにある。実に良い。
 吾の時の淫魔などは……いや、それはどうでもよいか。
 してみると。シロナが”彼女”というものに求めるのも、そういった絆、なのだろうか」

ある意味、淫魔らしからぬ考えに真面目に考察を加える。
絆……絆、とはなんだろう。
単純には人と人との繋がり。では、繋がりとは?
心を通わせること?それを得るためには?
共に仲を深めること?それを得ることで得られるものは?
精神的な充足?――


「……いや、無粋か。すまないな、シロナ。
 まだろくに食べてないだろう?もっと食べよ。あーん」

考えを打ち切った。そもそも今はでぇと、なる時だ。
そう思い直して、シロナの口から差し戻したフォークに改めてパスタを巻く。
今度は先程よりはうまくいったような気がする。
そしてそれを、また差し出してみて……
なるほど、これはなんだか、面白い……気がする。

「しかし、たしかにうまいな。良い店だ」

周りに軽く目をやれば、恋人たちが満足そうにしている。
どうも、あーん、以外の高等テクニックもありそうだが……

シロナ > 「そう言ってくれんなら、アタシとしても気が楽になるよ。
 アタシで良ければ、沢山お話させてもらうよ?
 何時も言う通りに、口説きも混じるけど、ね。」

 そうそう、と彼女のぎこちの無いウインクに、じょうずよ、と。
 今度はシロナからは、人差し指と中指を己の唇に付けて、ちゅ、とリップノイズからの、投げキッス。

「身体能力も化け物みたいだし、そもそも、戦闘経験がね。
 後、武器も全部竜鱗使った上に、有名なドワーフ作成の、珠玉の一品だしね。

 ま、多分見つけて声をかけるには、うんとタイミングが必要だよ。」

 母親は、毎日のように家に居る訳ではない、彼方此方冒険しているし。
 街に戻っても、家に戻らずに依頼を…と言う事も良くある話だ、と言うか、たまたま仕事の都合上この町に戻った、と言う感じだ。
 見つけたら、ラッキーだよ、と再度伝え置く。

「セックスは、愛し合う行為と共に、孕み孕ませてこそ、でしょ。
 だって、孕まないセックスはオナニーと何が違うの?
 其処は、アタシは妥協しないから。
 それもあるから、アタシはセックスの相手は選ぶし。
 孕ませた方が、アタシ的に気持ちが良いし……ね?

 淫魔として言うなら、シャーニィの部下が正しいんじゃないかな、犯して、精を啜る。
 アタシだって、それは出来るし、それを食事として生き延びる事も出来るし。

 そうだね、絆。
 アタシとしては、生物的に、その人となら、子供を作りたいと思える、そんな相手と。
 心も体も、確り繋がるのが良いかな。」

 こう、理想論かもしれないけど、と。
 この町の性の乱れは、淫魔もかくやだしね、と笑って、こう、奥の部屋に連れ立って歩いて行くカップルを見る。
 この町は、こういう場所が其処此処に有るのだ、珍しい光景ではないという所。

「いいよ?だって、理解してくれれば、アタシの求愛も、理解してくれる、と言う事でしょ?」

 くす、と小さく笑って、どんどんやっちゃって、と言いながらも、差し出されるフォークをパクリ。
 パスタをちゅるるる、と啜って見せて。

「何か飲む?」

 食べ物だけでは喉も乾こう。
 それなら、と、ジュースのメニューを差し出して。

シャーニィ >  
「ははは、本当にありがたい。それに、前もいったと思うが自らの手の内を晒しての口説きならいっそ清々しい。
 好きにしてもらって良い。」

呵々大笑、とばかりに笑おうとして……

「ん、むむ……また新たな技が出たな?
 一体、いくつあるんだ……?こう、か?」

投げキッスも真似てみる。真似てはみたが、見様見真似で思い切りというか勢いが足りないので、いまいちキスは飛ばなかった。
多分、机の上とかに落ちている。

「ああ……そうか、なるほど。認識の差異がそこにあったか。
 ふむ……子を成すにも、そこには愛がある……増えればよし、とするものではないのだな。
 愛……愛、か。つまり、愛は絆であり繋がりであり……ということか……?」

そもそものデートの発端であった部分に思考が向く。
相手の求めているものが分からねば、問いに応えようもない。
そういうところからだったはずだ。そこで、ふと気づく

「ん……? シロナが孕ませる方なのか?
 ああいや、そうか……淫魔ならば可能か……
 なるほど、そこまで込みとはしっかりした考えだな。」

産めよ増やせよ、ではなく相手に対しての強い思いとともに紡ぐ生。
そんな考えを抱いたこともなかった邪神には実に新鮮であった。

「それは、そうだな。だいぶ理解が深まったとは思う。
 しかし、よりにもよって吾に、か。今更ながらシロナは物好きだな?」

くるくるとまたパスタを巻き付けつつ、感想をこぼす。
どちらかといえば欠陥だらけで、どちらかといえば厄介だらけ。
そんなモノと繋がりたい、愛したい、というのは物好きではないだろうか?
意外と一般的な価値観なのだろうか?

「飲み物、か……しかし、飲み物など吾はくわしくは……うん?二人用?
 飲み物だろう?手間でも省こうというのか……?」

謎のメニュー表記に首を傾げたのだった。

シロナ > 「ふふ、シャーニィ、大好き、よ♡」

 好きにしていいというから、それなら好きにしますーと言わんばかりに、ストレートに愛の言の葉を吐き出す。
 こう言うのは、シロナの存在意義、と言って良いぐらいに。

「あ、投げキッス?
 っふ、幾つもあるわよぅ?」

 こうやって、ともう一度指に見せるようにチュッと、キスをして見せてから、ひゅっと投げる様に。
 ハートが見えるかもしれない。

「そだね、唯、増えると言う物じゃないのさ。
 愛を持って、相手と交わって、相手との契りの代わりに、お互いの血を混ぜて……ね。
 複雑になると思うけど、そうだね。
 相手を求め、相手に求められて、一つになりたくなって。
 相手との子を求めて、孕んで、産む。
 そして、一つの集まり……家族になっていくって感じだね。」

 恋があり、思いがあり、心があり、絆があり
 それらが全て交わって愛となり、其の上で子供を孕み、産んで。
 二人で、一つの家族になって、子供を迎え入れるのだ、と。

 唯々、劣情だけで、無責任に孕み孕ませもあるもけれど、家族になるというのは、そう言うモノではないと思う。

「あ。
 アタシ、両方あるの、淫魔としての覚醒の前から、生まれつき、ね。
 だから、孕むのも孕ませるのもできるよ。
 どっちかと云えば、孕ませたい方だけど、ね。」

 それに、動物的にも、優秀な相手と子供を求め、作り、さらに強い個体を産みたいというのは、本能だ。
 愛もあるが、その辺りも、理由としてはゼロではない。

「そりゃね?
 そもそも、一番最初、女の子どうして口説く時点で物好きに足を踏み入れてるような物よ。
 普通じゃないから、気持ちが良いっていう変態よ。」

 彼女のような欠陥と言うのは、彼女の思い過ぎだろう。
 庇護欲を掻き立てるし、護ってあげたい思いも沸く。
 つまるところ、彼女のような子を求めるのは、それなり以上に居るという事だ。
 可愛いし。

「それはね、二人で、一つのジュースを飲むためのよ。
 ほら、同じストローだと唾液とか、お互いのが混じるでしょう?」

 大皿と似たようなものだし、それを一歩踏み込んだもの。
 恋人同士用のジュースだよ、と、解説して。

シャーニィ >  
「早速言ってくる辺り、本当に清々しいな。
 しかも……あー、吾も驚く真っ直ぐさだ。」

そのうち変化球も来るのだろうか。
いや、彼女には直球の言葉があっているだろうか。

「やれやれ、仕草が多いな本当に。
 覚えることは多そうだ。」

投げキッスを再び真似てみる。今度は少しとんだだろうか。

「血を混ぜる、か。
 まさにわかりやすく、繋がり、だな。
 交合を求めるのも理、か。

 ということは、シロナは家族を作りたい――というか、家族のような繋がりが作りたい、といったところか。
 家族に邪神を混ぜてよいのか、と思わぬでもないが……」

自分で言うのも何だが、だいぶスケールダウンしたとはいえ世界を滅ぼそうとした存在である。
おそらく、そこは理由にはなっていないだろうが、それにしてもわかってて取り込もうと思えるのはなかなか剛毅ではないか?
これも母、とやらの存在強度故だろうか?

「半陰陽であったか。嗜好はその影響もあるやもしれぬな。
 まあ、どちらでもよい。シロナがシロナであることに変わりはない。」

思わぬところでしれたことであるが、それがどうあろうと結局本質は中身である。
そこが変わらなければ、別にシャーニィにとってはどうでもいいことではあった。

「ああ、そうか。女同士も普通ではないのか。生物的には、たしかにそうだな。
 しかし自分で変態というか……そういう妙な正直さはやはりシロナらしいが……」

女同士、ということへの忌避感や違和感を全く抱いていなかったので逆に驚いてしまう。
そうか、そういうものだったか。

「唾液を、か……さっきの交合の話にも通じるところがあるな。
 しかしヒトは色々考えるものだな?」

ジュースの説明に成るほど、と変な気づきを得た。

「まあ相変わらず吾には分からぬものばかりだ。
 シロナに任せても良いか? 代わりにこれをやる。あーん」

なんだかんだとパスタを巻いていたフォークを差し出していた。

シロナ > 「ちゃんとわかるように、伝わるように言ってこその、言葉、でしょう?」

 伝わり切ってから、変化球は投げますよ、とにまり、と唇を吊り上げて笑いを零して見せて。
 その辺りはちゃんと考えてますからご安心と、安心できない一言も追加する。

「接触的な仕草や動作は、まだまだあるからねー。
 ゆっくり順番に教えていくからねー。」

 いっぱいあるよー。沢山アルヨー。
 先程よりも様になった投げキッスを受け止めて、もぐもぐしつつ。
 何処か怪しい、シェンヤン風に言って見せる。

「そう言う事。

 シャーニィ?アタシは、シャーニィと愛し合って結ばれたいの。
 貴女が邪神と言うのは、余計な情報でしかないよ。

 貴女だから、いいの。」

 彼女が邪神の器であろうがなかろうが、それは自分が求愛する相手に違いはない。
 彼女の心、体、が大事なものだ、そして、もし、それが邪神の力がと言うなら、それも合わせて抱きしめるから、と。
 この辺りは、もう一人の母親を知れば、そっくりだと思われるやもしれない。

「そうかも、だけど。
 うちの家系は、元々、そんな感じ、だしね。
 半陰陽、ふたなりが多くて、皆女の子と愛し合うの。」

 嬉しそうに、にっこり笑って見せる。
 ふたなりを気持ち悪いと思う人が多いし、同性愛を忌避する人も多い。
 それをすんなり受け止めてくれる彼女の言葉が、素直にうれしいから、だ。

「生物的には、ね、偶にあるの。実際に行為にしけこむと、同性を受け入れられなくて…と言う人。
 そう言うのを無理やりするのも、そそるんだけどね。」

 驚きを隠すことなく言ってくれる彼女に、少しどころでなく、危険な感覚を。
 屈服させたり、支配することに喜びを感じる事も、あるという事。

「ヒトは変態よ?
 性的な事に意味を作って、其の上で、色々と変態的な事を作っていくんだから。」

 人の発想力は異次元よねと、彼女の言葉に同意。
 今度はどんな物を作るんだろうね、と、他人事。

「あーん♡
 じゃあ、折角だし。
 マンゴージュース、ラブラブカップルヴァージョンでー」

 パスタを口に運んでもらってから注文を。
 そして今度は此方からも、はいアーん、と、お返しを。