2024/01/06 のログ
■キーラ > 赤らんで体温が上がっていくその青年の姿を見ながら、獣人はカウンター越しに対峙する。
温かい空気の中に混ざる賑やかな声。外は寒く、店じまいをしているところもいるだろうに。
ここはまだまだ眠らない店のようだ。―――コト、とサウロと名乗った青年の前にコップが置かれる。
「じゃあとりあえずこれであったまって置いて。これメニューね」
と、10ページぐらいのメニュー表をサウロの前に”隣に立っていた”キーラが置く。
そして”カウンター越しの”キーラが両肘をついてお勧めを答えていく。
その間に、隣にいたキーラは離れて別の客のところへと歩いて行った。
「姉妹じゃないわ。アレも私……ふふ、びっくりした?
ここ、料理も聞き取りも呼び込みも全部私がやってるのよ。一人じゃないけどね」
悪戯が成功したような笑みをしてにんまりとなる。
肉食獣の牙がその笑みの口元から覗き、頬杖を突きながらメニュー表を開いて。
「とりあえず鶏肉がメインに、冒険者層に向けて肉系が基本。
魚は塩漬けのものが基本。あんまり新鮮な魚は置いてないけど、保存はちゃんとしてるつもりよ。
シチューからカレーまであるけど、温かいものがいいならとりあえずこの二つが鉄板かしら?
ブロッコリーと鶏むね肉のガーリック炒めとかスタミナ着けたい時はいいかもね。
で、あんたは騎士のサウロね。じゃあ騎士ってことは体が資本だし……。
とりあえずシチューにトッピングでチーズと鶏肉とブロッコリー多めがほどほどの値段で抑えつつガッツリ食べたいならちょうどいいかな?
飲み物はジュースもあるけど、さっぱりここは酒場が基本だから高めなのは許してね?」
ぺらぺらとめくっていき、慣れたようにサウロに勧めていき。
「あ、大盛りにしたいなら無料よ。でもやりたいなら最初に言ってね。
んで……今日はどんな仕事をしてきたんだい?自由騎士さん」
■サウロ > 「ああ、ありがと……、……??」
(白湯の湯気がたつカップを受け取り掌の指先まで温めていれば、メニュー表を置いた彼女に目を瞬かせる。
カウンター越しに立つキーラと、メニュー表を置いて別の客の所へ行く彼女を交互に見て、狐につままれたような表情をしていた。
そっくりどころか顔も声も瓜二つであった彼女は双子や姉妹というわけではなく、彼女自身らしい。
一人で回している中で編み出した秘術なのだろうか、獣の牙を見せながら笑う様子には、
どう反応したらいいかわからないというような、驚いた表情をまた浮かべていただろう。
そうしてメニューを開きながら、料理について教えてもらい目を走らせる。)
「……それじゃあ、そのおすすめの鶏肉とチーズ、ブロッコリーのシチューを。
量は、それならお言葉に甘えて大盛りを。あとは追加でパンと、葉野菜のサラダがあれば、それも。
飲み物は、果実水でお願いしていいかな?」
(折角お勧めされたのだから、その商品を頼みつつ、追加でサイドメニューもいくつか。
酒場ながら酒を頼まないことに申し訳なさそうにしつつ、果実水の値段が割高であっても問題ないというように頷く。
白湯の入ったカップを口につけ、少し息を掛けて飲めば、熱い水分が舌から喉へ、嚥下すれば体の内側から温かくなる。
ふぅ、と息を吐いて寒さで強張った体を解せば、気持ちのいい言葉で話を振る彼女に年相応の微笑を浮かべて見せて。)
「派手なことではないけれど、基本的には使いとしてあちこちに顔を出したくらいかな。
今は少し特別な立場で、各地を転々としたり、別のところへ滞在していて、王都にきたのも半月ぶりぐらいなんだ。
だから、こういう店があるのは知らなかった」
(事情を話しながらも、賑わう店内を軽く見渡して告げる。)
■キーラ > 「りょーかい。厨房係ー!オーダー!
チーズインホワイトシチューに鶏肉とブロッコリーマシマシ!大盛りで!
あと葉っぱのサラダとパン!こっちも大盛りで!」
と、大声で厨房へと声をかければ「あいよー!」という大声がさらに聞こえてくる。
忙しそうにキーラの分身がさらにほかの部屋から出てきたり出来上がったものを運んでいく。
カウンターにいる方のキーラは変わらずサウロへと同じように微笑を浮かべる。
「サラダの大盛りはサービスね。初めての来店だし、こういうところでいいところも見せないと、なーんてね。
あんたのガタイならそれぐらい食べても問題ないだろう?」
頬杖を突いている頬っぺたは見るからにモチモチと「むにゅぅ」となっている。
先ほどの服越しの肌触りも、素手で触れば相応に心地よいのは視覚的にもわかるだろう。
軽く見渡した店内は暖炉で温まる者。仕事帰りや飲んだくれ、冒険者らしき集団などがいる。
どいつもこいつもビールやエールを片手にしているが、楽しそうに飲んでいた。
「使いね。ならいろいろなものも見れてるってわけだ。
大丈夫?そんなに移動して辛くない?半月どころか年単位で帰れない時もあるんじゃないの?」
そう話を聞きながらさりげなくお通しとして半丁の豆腐をお出しする。
丁寧に薬味として生姜やネギ、醬油やポン酢などもいつの間にか用意されていた。
冷たい豆腐ではなく、こちらも湯でしっかりと温めたもののようで手を近づければ空気の熱を感じる。
■サウロ > (威勢のいい活気のある声が響く。オーダーを告げる彼女の声に他の席からも「こっちもオーダー!」とつられて声が上がっていただろうか。
お通しとして出されたのは白い豆腐。たしかシェンヤン料理にもあった豆腐だ。
温かそうな白く滑らかなそれに、薬味を付けて味をつけて、指を組んで食事の前に食前の祈りを捧げる。
敬虔な信徒のように見えるだろうが、こればかりは教会孤児育ちの習慣だ。
一口、ふぅ、と息をふきかけて口の中に運ぶ。)
「んん……ッ、……はふ、…、ああ、おいしい」
(舌の上で熱くとろけていくような柔い豆腐の味を楽しみながら、ほう、と息を吐く。
帝国料理もそうだが、王都にはいろんな国の料理が楽しめるのが素晴らしいと思う。
質素な食生活だったために、こうしたものでも非常に味わい深く感じられる。)
「ん、そうだね。色んな都市や町を経由しているけれど。
移動自体は慣れているし、旅をするのも楽しいよ。
その内、もっと王都を離れる期間が長くなっていくかもしれないけれど、冬が明けるまでは暫くは王都近郊にいるよ」
(今はまだ陸路なら馬が、海路なら船が足になるから、そこまで厳しくはない。
ただ冬の間は、そう遠出するような遠征は計画していないことも伝えながら、お通しの豆腐に舌鼓を打つ。
店内の雰囲気や空気がいいからか、楽しそうな表情を浮かべつつ、ふと疑問に思ったことを尋ね。)
「この料理もそうだけど、調味料も東方由来のものが多いね。
東国から来る旅人もいるけど……キーラは異邦人なのかな?」
(彼女のような人種、種族を見かける機会は少ないが、ミレー族に分類されない獣人族がいることも知っている。
初めて見るからだろう、興味をもってはいるようで、そんな風に尋ねつつも答えにくそうであれば言及はしない。
何かと腐敗が進んでいる国なので、せめて不愉快な思いをしていなければいいという心配が多少ありつつ、
やがて届けられるだろう大盛りの鶏肉とチーズ、ブロッコリーのシチューにも、目を輝かせて美味しく頂くだろう。
最近あった話、王都のよもやま話、何か困ったことがあれば自由騎士団の詰め所にと、平民地区にある建物も教えたり。
彼女の話を聞き、此方の話もして、時間を忘れたように温かくも美味しい食事を堪能していただろう────。)
■キーラ > 「ふぅん。じゃあサウロとしては悪くない仕事なんだね。
その分目一杯”帰った時”のお楽しみを増やさないといけないわけだ。守られる一般市民の私としては」
くすくすと笑い、談笑に花を咲かせる。
客の話を聞いてそこから話題を発展させ、お互いに楽しくなる。
それが自分の仕事であり、稼ぎであり、生き甲斐であった。
こうやって温かいものや冷たいものを美味しく食べて、そして腹も満腹。
最後に見せてくれる笑みと、楽しい話を聞くのがこの生活。
忙しい時はトコトン忙しいが、決して悪いものではない。
でなければ、こんな仕事をやる訳がないのだ。
「私かい?そうさねぇ、その質問は、次に来たら応えてあげるよ」
なんて、次に来る為の餌を僅かでも撒くのも忘れない。
サウロの話に相槌をうち、時々疑問や、こっちの話も交えながら続けば。
この賑やかな時間の一つになるだろう。
きっとそれが、彼の癒しとなって行くことを祈って…。
ご案内:「王都 酒場」からサウロさんが去りました。
ご案内:「王都 酒場」からキーラさんが去りました。