2023/12/24 のログ
■ジギィ > カワイイ、と聞くと毛玉コンビがそろってぴくっと耳を持ち上げてまっくろな視線で見上げてくる。どうやら何かイイ事が起こる前兆のように思っているらしい。期待のこもった面持ち(に見える)で、じっ、と。
「あはは、そーいうの含めて楽しいよね。 意外なモノとかイキモノに、その土地独自の含みとかあったりしてさー
やったね。 そーだ、ついでにいろいろ植物も見て回ろーよ。
ン――――― …女の子に声かけてお金がもらえるとかっていうと、げせん、て仕事があるって聞いたことがあるよ? カゲトキさんの特技はあんまり生きないかもしれないけど」
エルフはしばし真摯に彼の『趣味兼仕事』になりえるものを考えこんで、それから聞きかじった職業を真面目な顔でお薦めする。だって、せっかくなら楽しく仕事をしてほしいじゃない?と素直に考えた結果、のはず。
彼が道を究めた殺伐とした風景に佇むのも想像できないわけではないけれど、エルフとしては、2択あるのならこっち、という方を趣味兼仕事としておすすめしている。ある意味しんけんに。
『いやー大丈夫ですよ!お告げのことは言いふらしてあるので、村のみんなもぼくのせいだとは思わないでしょうし。
ではよろしくお願いします。軽いのは取り柄ですが、そのぶん持った感じもあまりしないんです。道中持っていることを忘れないでくださいね』
にこにこと口元をほころばせて笑う少年は、鼻をこすっていた手で彼の手を取って、その手に像を託そうとする。そうやってもぞもぞ動くものだから、埋まっていた下半身は白い砂時からそろそろうっすら姿を現してきそうな気配だ。
その動作と、コガモがかぷっ!と瓶にかみついた(?)のと、ほぼ同時だったかもしれない。満足そうにごくん、とするその傍ら、瓶の噛み跡はまるでくりぬかれたように見えるだろう。
取り立てた音もたてず行われたそのつまみ食いのあと、ぷりっ!という音とともに砂の上に透明で丸いものが転がっていく。
「時間の制限とかはないの?何日までとか。
今までの島だと、大体干潮時に隣の島との間に浅瀬が浮かび上がってそれを辿っていけたけど…向こうまでは少し深そうにみえるなー…」
身体を捻るようにして噴煙をみているエルフはそんな犯行(?)に気づいた様子はなく、更に目を眇めて緑に覆われた島を見やる。その合間にある海で、魚が鱗をきらめかせて跳ねる。
わー、なんてエルフが声を漏らしているその手元で、コガモはもう一口をぱくつこうと―――
『あ、そうでした。
えーとですね、明日の夕暮れ前までです』
などと答える少年の瞳は、問いかけをしたエルフではなく彼をじっと見つめている。
■影時 > 「………………ほれ。」
己のつぶやきに何を期待してか、それとも感じてか。
耳ざとくその獣耳をぴくぴくさせて見上げてくる眼差しから、何を感じるのか。そりゃあもうキラキラな期待の眼差しである。
羽織の袂を漁ろうとして、漁るべき先の羽織を仕舞ったことを思い出し、腰に手を遣る。
メインである腰裏の雑嚢とは別に、小振りなポーチの類を付けている。その中から取り出す小袋から二粒、二匹に落とすものがある。
まるまるとした見た目のヒマワリの種だ。運動したからには小腹も空いただろう、とも考えつつ。
「ン、だな。足を止めてこう、じっくりと見ていくとな。面白い気づきもあるというもんだ。
植生の類は歩くついでに色々見れそうだが、良いだろう。そうするか。
ジギィ、そりゃ“げせん”じゃなくて女衒な? 声かけられたオンナが天職という手合いなら言葉も無ぇが、生業にすンのはちょっとなー……」
必要に迫られれば金策の手段は選べないとはいえ、ただちょっとばかり躊躇うものも一つや二つはあるもの。
声をかけた少女を攫ってどうこうという点について、男が体得したスキルとは誰よりも抜きん出ているとしても、余りに世間体が悪すぎる。
真剣におすすめしてます!と云わんばかりの様相にツッコミつつ、顔の前でないない、とばかりに手を振ってみせる。
その点、冒険者のままの方がずっと気分が良い。たとえ、その日の仕事が下水掃除であったとしても、受け取る日銭は何よりもきっと尊い筈。
「その分だと、誰それに託したとか流布されンのも割と時間の問題だな。
ってこら、動くな。押し付けンな! せめて俺が梱包するまでは……!!」
考えるにもし仮に仕事に失敗し、想定される限りの最悪が生じた場合――どういう悲喜劇が生じるのであろうか。
少年の仕草、言動その他もろもろを考えだすと胃が痛くなりそうな気分になる。
押し付けられる件の像は少年が云うように軽い。男の膂力に任せれば、ないのも同然な感慨さえ過ってしまうほど。
重みならざる重みを押し付けた後、もぞもぞ動き出す姿に間髪入れずツッコミしつつ、雑嚢の中にまたしても片手を突っ込む。
そうしながら遅れて見える、気づいてしまうのはコガモのつまみ食いの情景だ。
ぽろんと転がってしまったガラス瓶の一部の成れの果ては、出方さえ気にしなければあからさまな汚物ではない。
故に、仕方がねぇから全部喰っちまえ――、と囁く。出たものは行きつけのお針子の店に持ち込もうか、とも思いながら。
「あー。……――こりゃうかうかとしてる暇はなさそうだ」
納品、または奉納する上で要点となる事項をエルフがチェックしてくれる。此れはとても重要なことだ。
星辰の位置がどうこう的な魔法の儀式でなくとも、荷物を運ぶということは日時の指定をしっかり確認しなければならない。
雑嚢から取り出した緑の唐草模様が入った紫色の風呂敷を砂浜に広げ、押し付けられた像をそっと置く。
もう一口し始めるコガモを視界の中に置きつつ、慎重に荷造りを始める中で感じるのは少年の目線だ。
そして、告げられた期限にがくりと項垂れながら梱包を済ませよう。少なくともこれは、じっとしてはいられない。
■ジギィ > 親分が『そこ』をごそごそするときはなにかもらえるとき、が多い―――そうもう覚えてしまったのか、まだ冬毛のままの尻尾を両者ふりふりしていると、降ってきたのはまるまるとしたひまわりである。
わーい!という書割でも見えそうな様相で毛玉コンビは飛びついて、早速カリカリもぐもぐとしだした。ココナツにもかぶりついた後だが、これはこれ、別腹である、らしい。
「島をぐるっと回るとさ、こう、日当たりとか水はけで植生が分かれているのが解りやすくて、楽しいんだよー
…ぜげん? げせん、じゃなかったっけ? でも興味はあるんだ?」
とんでもない侮辱の言葉とれっきとした職業を混同しながら、エルフはふーんやっぱりねという笑みを浮かべる。
彼の(少なくとも今の)質からすると人さらいのような手段はとらないだろうし、女性の見極めも意外としっかりしていそうだ。 やっぱり趣味兼仕事に向いてるじゃん!という重いと、素直じゃないなあ、という思いが笑みに混ざっている。
今度、どこかで求人を見かけたらさりげなーく紹介してみようかしらん。
『ええ、 ぼくがしっかりとお告げ通り託したことはご報告させていただきます。パンツが無事に打ち上げられれば。
大丈夫ですよ、あなたが思っているよりは丈夫だと思います。 …ただ材質が材質なので、欠けた一部が落ちた場合本当に欠けたのかそもそも無かったのかも判別しづらいんですよねえ…
あ、渡るときは泳ぐしかないと思います。干潮だとそんなに深くないですよ』
ご面倒をおかけします、という雰囲気だけを醸し出しながら少年は嘆息する。神聖なものを包んでいた幾何学模様の布は、少なくとも暫くは彼個人の神聖な場所を包むものになる運命となりそうだ。
現在のたべもののベストアンサーをぱくつくコガモは、ぱくもぐぷりをリズミカルにこなしてそろそろガラス玉の山が一山出来そうである。
「あー…っと、 女性が触れちゃダメって、私が直接触れなきゃ大丈夫?」
一種呆然と景色をみていたエルフが、少年が『泳ぐしかない』というのにちょっと考え込むような表情をして それから像を包む彼を振り返る。
視線だけ少年に向けると、少年は彼をみつめたままであるが首を縦に振る。 おそらく『大丈夫』ということだろう。
「カゲトキさん、ちょっと、包むの待って…」
そういってエルフは荷造り仕掛けの像へ手を伸ばす。一瞬、囁き声のような口笛のような音がそのエルフの口元から零れ落ちた後 するり、と像を覆っていく薄青い水が現れる。
不思議と周囲に染み渡ってしまわないようで、まるでスライムのように像を包み込んでしまうとその場にぷるんと留まった。
「…Ευχαριστώ.
カゲトキさん、そのまま包んで持ってみて。重いようだったら、還ってもらうから」
エルフはそういうと、よしっという声とともに立ち上がってお尻の砂を払う。
太陽は中点をさしかかろうというところ。毛玉たちにあやかってちょっと食事でもとりたいが、それは向こうの島に渡る算段をつけてからでもいいかもしれない。
「干潮って、いつごろだろ? 待っているとまた時間もかかるよねえ」
エルフは手庇をして、海の向こうの目的地を透かし見るように少しつま先立ちをする。その足元にまん丸なガラス玉が転がっていく。
問われた少年の方は、一度首をかしげるとエルフにつられるように立ち上がった。
ざあーっと音を立てて白い砂が零れ落ちる中から黒い肌の下半身が現れる様は、もし観察していたら……ひとによっては壮観だったかもしれない。
『そうですねえ…夕刻前には一度はあると思います』
幾何学模様の布を巻きつけつつ、少年は言う。詳細に『何時』とまでは解らないらしい。
この少年がそれを気にしないという事は、彼は満潮時でもこの島と向こうの島を行き来できる術を持っているという事だろう。潮の流れが相当緩いのか、何か他に秘密があるのか。
海という場所に疎いエルフは、そっか、とだけ言うと彼を振り返った。
「カゲトキさん、いける?」
そういってウィンクとともにびっ!と親指で島を指す。
1人だけ先行させるつもりか。
■影時 > ヒマワリ含め、種類は与えすぎるとよくないらしいが――いや、それはどんな食べ物だって同じか。
舌直しという程ではないとは思うが、こういう時に一粒与える位は差し支えないだろう。
与えられるヒマワリの種に飛びついてキャッチ、器用にカリカリ齧って殻を除き、もぐもぐとしだすのは誰もが見惚れる一幕だろう。きっと。
学院の校舎で自由行動やらラウンジで餌を与えれていれば、色々と注目される情景がここにもある。
「あー、分かる分かる。地面から見るのも良いが、高い処から俯瞰してみると面白ぇンだよなあその辺り。
違うぞ。ああ、違う。なので“げせん”は止めてくンねぇかなぁ。
……お嬢様からそう宣われると、我が身の賤しさがなんつぅかこう、否応なく身に沁みる」
野伏せり、あるいはレンジャーの技能と云うべきものを持ち合わせているからか。植生云々となると一々頷けるものがある。
それを知っていれば活用できる幅は勿論多いが、何故このようになったのか?という考察とは考えるだけで時間が過ぎる。
植物学的、本草学的というには幾らか偏っているが、知識があるというのは真っ当な人材を装うにはとても都合が良い。
良いのだが、どうにも否定しづらい嗜好と職業を勧めてくれるのは、どうしたものだろう。
そんなに吾身は賤しかったかどうか。少なくとも厚意の一環であろう、と思い出すと何かと身に沁みるものがある。
「打ち上ろうがなンだろうが、しろ。寧ろやれ。
俺が思うより丈夫であっても、壊れ物として扱う方が面倒は少なそうだがな……。
この荷物を運ぶにあたって、泳ぐのは神事として必須事項かね?」
それは下着、アンダーウェアが打ち上らなければ、しない、といわないだろうか?
その言の葉に胡乱げに少年の顔を凝視し、視線を下にずら――さない。極力見ないように努めつつ荷物を見る。
もし仮にどんなに扱っても壊れないと言われても、荷物を丁寧に扱うのは配達の依頼では必須事項と云ってもいい。
問題はこの奉納を行う際の注意点だ。卓越したニンジャ、忍びたる男は水面を疾走ることが出来る。
島を泳ぎ渡ることもまた、奉納、神事としての一環であると言われた場合、遵守事項として計上しなければならない。
「ン? おう、と。悪ぃな。助かる。……満杯の水瓶を担ぐワケじゃねぇし、この位ならイケるだろうよ」
さて、荷造りを一瞬制止する声に風呂敷包みの工程を止める。
口笛めいた響きが生じれば、件の像を包むように水が生じる。ある種の粘体のように包むのはクッション材そのものだろう。
一通り包み終えるように生じたなら、その水ごとまとめて風呂敷包みを完成させる。
よっこらせ、と背負うように担ぎつつ、膝を伸ばして立ち上がろう。数度ジャンプしながら重みとバランスを確かめ、問題はないと頷き。
「日が傾きかける位かね、恐らく。どの道、悠長にはしてられねェだろうが。
ぴー助、食べ終えたか? ヒテンにスクナもそろそろ移動するから、準備しとけよ?」
この辺りの暦と記録を突き合わせたいが、恐らくという予測を考えると、あまり時間もないかもしれない。
振り仰ぐ太陽の傾きを見つめるのは、立ち上がる少年の砂の下から出てくるだろうものから目を反らすわけではない。きっと。
いざとなれば走る、または泳ぐにしても、何にしてもまずは道中を確かめなければ何とも言い難い。善は急げだ。
「是が非も無ぇことだ。――嫌でも行かなきゃなンねぇだろ?」
さて、受ける仕事に内容の好悪、軽重の区別ない。ただ遂行するのみ。
三匹と出したものは拾っといてくれよ?と。
先行させる気満々の仕草に大きく息を吐き、身を屈める。ピッと号令でもあれば、走り出しそうな構え。
■ジギィ > 【次回継続】
ご案内:「南方の島」からジギィさんが去りました。
ご案内:「南方の島」から影時さんが去りました。
ご案内:「辺境の貴族領」にメレクさんが現れました。
■メレク > 王都から離れた辺境の地。
魔族領と隣接するその土地を治める領主の館で夜会が催されていた。
控えめに照明を落とした薄暗いホールには管弦楽団による艶やかな音楽が鳴り響き、
華やかなドレスで着飾った男女が肌が触れ合う程に身体を近付け、会話や舞踏に興じている。
そして、灯りの届かぬ会場の隅からは男女の熱い吐息や嬌声が、音楽の途切れる合間に漏れ聞こえてくる。
彼等は皆、一様に仮面を付けており、己の素性が何者であるのかを分からなくしていた。
表向きにはやんごとなき者達の社交の場である不埒な夜会。
だが、その実、この屋敷で行なわれているのはただの乱痴気パーティではなかった。
王国貴族と魔王、二つの顔を持ち合わせ、人界と魔界の各々にて隣り合わせる領土を有する大領主。
そんな彼が莫大な富と権威をちらつかせて集めた客達には人間、魔族、双方が存在した。
しかも、認識阻害の魔法の影響で来客の殆どは仮面の内側の正体が何れであるのかを知らずに接している。
結果、羽目を外した教会の司教が淫魔の女王とまぐわい、精を搾り尽くされて、
魔軍を率いる勇猛な将軍が、擬似陰茎を身に着けた人族の姫君に尻穴を掘られて嗚咽を漏らす。
普段であれば敵対する人間と魔族が、仲良く揃って快楽に翻弄されて堕落する様を、
会場中央の壁際にて二人掛けのソファに腰掛けた夜会の主は愉快そうに眺めて嗤うのであった。
ご案内:「辺境の貴族領」からメレクさんが去りました。