2023/12/23 のログ
ご案内:「南方の島」にジギィさんが現れました。
ご案内:「南方の島」に影時さんが現れました。
■ジギィ > 自分が持っているもの、持っていないものは直ぐに判断が付く。いやたまにバッグの奥底にハーブの轢死体があったりするけれども。
持たぬ暮らしは持っている暮らしよりも厳しいのは確か。でも持つ暮らしになりたいか、と言われると『一度はやってみてもいいかも』くらいの気持ち。
大体寿命が長いのだ。貯め始めたら大変なことになる気がする…し、大変なことになっているのを見たこともある気がする。
ちゃぷちゃぷピーピーちぃちぃと戯れていた小動物(少なくとも形は)たちは、一休みとばかりに皿から這い出してきて近くの人間の日陰に入る。
ぶるる、と毛皮を震わせた拍子の飛沫は、冷たいだろうけどきっとすぐ乾く。
「ん、ありがと。
はあ――――――――― コイバナなしか―――――
近親相関とか、エルフだと割とあるけどさ。 その分禁忌の感じはニンゲンより強いかも。まあお話としては、好みだっていうひともいるよねー
やーだぁ、仕事なんて趣味のついでにやるもんでしょ。でも今回はここに来れただけでも収穫だし、きっちりこなしはするよ」
エルフは彼から渡された瓶を一口飲むと、その冷たさに一瞬背筋が伸びる。いよいよしっかり目覚めたとばかりにまた目を瞬きながら、一瞬高まった期待が裏切られたことに対してはあからさまにぶーたれる。
それはエルフが彼に対して甘えが出てきている証拠でもあるが、同時に彼の『しっかり依頼こなし能力』だけが、今回の依頼達成可否にかかっている事の表れにも思えてしまうだろう。
エルフが吐息と共にまた一口冷たい水を喉に流し込むのと、少年が彼の態度にがっかりと肩を落とす風景はまるで彼がヒドイことをしたような雰囲気を南国のビーチに展開する。
青い空にさんさんと輝く太陽があって、白い砂浜に悲嘆にくれるエルフと少年。波音の合間にピィーと甲高い鳥の声が丘の方が聞こえてくるのは、トンビの類かもしれない。
『ぐすっ…
ハイ、確実にぼくの里はほろぶと思います。あともう、追加のズボンとパンツをもらえないかもしれません…
ずびっ…… 運んでいただきたいのは、こちらです…』
うつむいた少年からぽたり、零れ落ちるもの。そのうち一滴は確実に鼻から零れ落ちたものと思われるそれが、白い砂に跡を残す。
そうやってうつむいたまま少年は、降ろした荷物をあらためて前に引っ張ってくる。
大きさは赤子ほどもある、何かを象った像のようだが黒灰色で凹凸がつかみづらい。よくよく見ると精巧に目鼻まである、ゆるい衣をまとった女性の像のようだ。
驚くであろうのはその材質だ。光を全く弾かないそれはいわゆる『軽石』とよばれるもので、細かく空洞の入った性質のせいで精巧なものをつくるにはひどく脆いのは彼も承知の事だろう。
肩を落としていたエルフも同様のようで、いったん像をちらりと見た後、目を瞬いてから乗り出す様にして見つめている。
『とても軽いのは助かるのですが、すごく脆くて…
欠けたものをお届けすると、必ず何か悪いことが起こるのです…確か』
目がまだウルウルしている、鼻の頭がちょびっと赤くなったように見える少年が、片手で鼻をごしごしこすり、片手で像をひょいと持ち上げながら言った。
掴んだのは丁度、女性像の首のあたり。
■影時 > 根付かない生活が長かった。長すぎた。若しかしたらそれの反動なのだろうか。
何でもかんでも入るというのは言い過ぎでも、どかん、と目にわかる規模の置き場を貸与されるとそう思わずにはいられない。
仮にもし自分が、例えば殺した相手の武器を一々蒐集するような趣味を持っていたとしたら、まさに十分すぎる程の規模なのだから。
だが、意外と事足りている。それに今は十二分すぎる位に余剰もある。
鞄の先の魔法の倉庫を埋め尽くすとしたら、それはきっと完全に骨をこの地に埋める時であろう。きっと、恐らく。
「……濡れても困らんよーにはしたが、顔拭くなよ? 拭いたかー……。
事が済んだら、ここらの御伽噺やら何やら集めるのに付き合ってやるから、そう気を落とすな。
狭い狭い何やらであるなら、その手のコトもあるんだろうよ。血が淀むと聞くが……ここらの話はここまでにしとくか。恐らくキリが無ェ。
ついででやれると、趣味とシゴトの境目が偶にわからなくなりそうで困るな」
ちゃぷちゃぷじゃばじゃばと戯れていた二匹と一羽が、深皿から出てきて身震いする。
日差しの下で微かに虹すら放っていた――かもしれない水しぶきは、遠慮なしに親分たる男の装束に降り掛かる。さらに遠慮なく毛玉たちが顔を裾で拭く。
その一連の情景を止める間もなく、嘆息と共に深々と肩を上下させて、思いっきりぶーたれるエルフの顔を見遣ろう。
お互いに気兼ねないのは気心知れているからだろう。旅のついでという見知らぬ地をしゃぶりつくすような提案も此方から遣る程に。
とはいえ、何だろうかこの情景は。見回せば見えるのは水を飲むエルフと少年と。二人が違う理由で悲嘆に耽るのは、俺が悪いのか。悪いのか?!
脳裏に一瞬巡る思考の不毛さを振り払うように首を振る。仰げば、嗚呼。鳥の鳴き声が聞こえてくる。
「お前さん、どっちかと云うと後者の方が一番重要そうに聞こえるようなのは気のせいかね。
あとでバナナの葉でも積んでやるから、それでシモを隠しとけ。
……ん、待て。そういうコトならいったんまずは下ろせ。慎重にな。背負子にぶち込むより、こりゃぁ風呂敷かな……」
落涙してる――ように見えて滴っている物とその位置がなんかおかしい、怪しいのを男の目は見逃さない。
改めて空を仰ぎたくなるのを堪えつつ、毛玉たちが戯れていた深皿を取り上げる。腰の雑嚢を外し、蓋を開けばその中に遠慮なく突っ込んで仕舞う。
仕舞った先には何度も使っている籠付きの背負子もあるが、示される今回の運ぶ対象をじぃとみると心許なさが湧いてくる。
黒灰色の軽石と思われる材質で出来た像は、どうしてもそのディテールが大理石等の石造と比べて淡く見える。
それが素朴という評論を生み、またはそこはかとない怪しさも生じる。だが、よく見れば全体に手をかけた女性像らしくも見えてくる。
軽く持ち上げられる様とその言葉を聞けば、すぐさま注意を促す。こういう時は概して、破損を生む何かが起こりかねない。俗にいうフラグ、またはお約束のように。
■ジギィ > 毛玉たちはあらかたの水滴を身震いして弾いた後、丁度良くあった布で顔に残っていた様子の水滴を拭ってた。ヒトのそばの生活がだんだんと馴染んだらしい。
その動作がカッコよく見えたのか、水滴を跳ね飛ばしようもない鉱石のコガモも彼らを真似して裾に顔をこすりつけている。彼からすると、ちょっとくすぐったいかもしれない。
「えーホント? 約束ね?
こーいうところって素朴でカワイイ伝承とかいろいろありそうだよねー…あ、いちおうキミのはいいや。えっと、戻ってきたときのお楽しみにしておくよ」
しょんぼりエルフが小瓶を片手に万歳をすると、少年が何か言いたげにエルフを見上げているのに気が付いた。すかさず開きかけたその少年の可憐な唇を押しとどめるジェスチャーをしたのは、何か精霊の囁きでもあったかのような素早さだった。一応フォローを入れてはいたが、本当にあとで少年に聞くかは記憶力次第だ。
「ついででやれた方が色々とお得だよー カゲトキさんはないの?そーいうの。 …あ、若い女の子に声かけることだっけ?
んーごちそうさま、ありがと」
エルフが飲み終わった小瓶を彼近くの砂地におく。こういう時は手渡しの方が落としやすい。
さておき少年が持ち上げた、というよりぶら下げたに近い像を身を乗り出して、目を凝らしてみる。
女性の像、と思えたのは纏った衣が緩やかで胸元が膨らんでいるように見えるからで、精巧なその顔立ち自体は、よくよく見ると性別があいまいだ。豊かな髪が背中まであるのは若いようにも思えるが、中年のようにも見える。さらに食い入るように見れば親戚でそんな顔がいたような、いなかったような…そんな顔立ちだ。
『あ、シモは像をくるんできたこの布でいったん隠しておけますので大丈夫です! …優しいんですね。
ただ像を持って行って、奉納してくるというカンタンなお仕事です! …受けてくださるという事でよいんですよね?
先に申し上げた通り、男性が持ち運んでゆけば大丈夫ですから。その代わり耳長の方は触れないようにお願いします。
…そうですねえ、ぼくとしては、運ぶとき籠にいれるよりは僕がやっていたように背負うのをおすすめします。
いやー多分代々みんなちょっと欠けたりしたと思うんですけど、噴石が降ったおかげで入江が出来たりとかして、まあ失敗してもそんなに悪い事ばっかりじゃなかったな!なんて行ってたりするんですよー なのでまあ、気負わずに』
少年は一種の重荷から解放された気持ちからだろう、またもう一回、もう片方の手で鼻をこすってずびっと鼻を鳴らしつつ、うつくしい顔上げて快活な笑みを浮かべながら、ぶらんぶらんと像を振る。
「…まー受けるにしても
持ってくの向こうの島でいいわけね? やたらと樹でもこもこしてるから、どこのどのあたりかわかりづらいけど…」
エルフが像から目を転じて背後になる島を見る。
山らしき起伏はたしかにあって、よくよく見得れば青空にたなびいているものがある。細く霞むそれは雲なのか、噴煙なのか、エルフの目ではすこし判然としなかった。
そのエルフが手をついている砂の上を、よちよちと歩いていくコガモがいる。
コガモはエルフが置いた小瓶の元まで行くと、ぱかっとくちばしを開いて―――
■影時 > だってそこに拭ける布があったものだから、そりゃあ拭きもするだろう。
親分含め、ヒトの生活を見て学ぶ機会が幾らでもあるのだから、マネしてしまうのも無理もないことである。
そしてそんな先達に鉱石から産まれたコガモも、自ずと倣ってしまう。
忍び装束の上衣の裾にこすりつけてくると、妙に腰のあたりがくすぐったくて敵わない。
「こういうトコだけは可愛いよなぁ、お前らよう。
あいよ、約束だ。……まー、色々ありそうって処については同感だ。全部聞くと何だそりゃ?みてぇなのも含めて、な」
小動物達にほだされた、というつもりはなくとも、彼らが居る生活が基本になっているのは自覚せずにはいられない。
一先ず約束と云う形で心の片隅に置いておけば、依頼やら契約に煩い男については成すべき事項となる。
口述を書き留める紙束の類は、自分の鞄の向こうにあっただろうか。
少年を見遣り、口をふさぐような仕草を行う姿を見つつ思う。記憶にないのは多分入れていない、と思うから。
「俺がひたすら溺れたいコトと、どうしてもやらなきゃならねェことはどうにも重ならんことが多くてなァ。
それに、色々とごっちゃにしたくないから俺は分けて考えるようにしてる。
って――昨今を思うと、その言葉に返すコトバがなくなってきたぞ。ん、ああ、どうしたしまして?」
その辺り難しいんだよなア、と。曖昧に口元を揺らめかせながら大袈裟に肩を竦めてみせよう。
耽溺してしまえる趣味を前面に出すと、どうなるのか。どうなってしまうのか。
冒険の先で大事にしたいこともあれば、掌中の珠よろしく大事にしたい、分けて考えておきたくもなるというもの。
旅先で殺戮の限り、というのは旅情もへったくれも欠片もない。そんな旅路にエルフだって付いてくるまい、と。
若い女の子と聞けば弟子やら、毛玉たちに良いものをくれた女学生やら、幾人も浮かぶのはいよいよ以て切り返しに窮する心持ちになる。
全くと内心で息を吐けば、己も件の像を見る。そんな風に持ち上げられる程軽いとなれば、きっと容易く海にも浮かぶだろう。
返す返すも素朴とも原始的ともつかぬ造形というのは、しげしげと見回す分には程よい。
「そうでも無ぇぞ。連れのために心配しただけだけだ。
で、だ。……そーゆー仕事に限って、簡単じゃなかったりすンだよなあああああ……。
とは言え、放っておいて諸々厄介な誹りの類を受けたく無ぇから、交換条件もある以上は請けてやる。
…………やっぱりお前簡単な仕事じゃねぇだろ、うっかり落として砕いた日には島の一つや二つ、海の底に沈んでしまいかねねぇ類じゃねえか」
然様か、と。まっぱになってると思われる下半身の始末に嘆息し、こめかみのあたりを揉み解す。
奉納と云う仕事に何らかの瑕疵、目に見える奉納物の損傷が出た場合の危険性は下手に想像力が豊か過ぎる故に目に見える心地になる。
入り江が出来る規模の噴石はどう考えてもまずいだろう、と。気楽とすら聞こえる言の葉の軽さは、いよいよ以てぞっとしない。
取り敢えず目的地と思われる方角を一瞥し、たなびく筋めいた霞に目を細めつつ足元に目を下ろす。
「あ。」
そこでコガモと目が合う。瓶は購入先に返しに行くと、代金のうちの何割かを返す、といった類の売り文句だった。
さて、ここで問題です。コガモのごはんは何でしょうか?答えはくちばしを開いた先の向こうにあります。