2023/11/13 のログ
ご案内:「夢現の領域」にシルヴァさんが現れました。
ご案内:「夢現の領域」からシルヴァさんが去りました。
タマモ > 右を見て、左を見て、また右を見る。
うん、なかなかに、誰かが訪れる気配はない。

「となると、そうか…」

軽く腕を組み、ふむ、と軽く頷く。
世の中、そうそう都合良く、とはならないものだ。
そう思えば、ぱちん、と指を鳴らす。

次の瞬間、その領域は、少女と共に、音も無く消えていった。

ご案内:「夢現の領域」からタマモさんが去りました。
ご案内:「通学路」にリセさんが現れました。
リセ >  ――すっかり遅くなってしまった、ととっぶり暮れた薄暗い帰り道を辿る脚を速めた。
 最近日暮れが大分早くなってのんびりしていたらあっという間に暗くなってしまう。
 学院での授業が終了した放課後。少し残って調べ物をしていただけなのに気づけば黄昏空は深い藍色に沈んでいて明りが灯され始めていた。
 貴族の娘ならば執事が馬車で送迎するものだが。
 平民と変わらない生活水準の没落家ではそんなものは端から望めない。
 普段通りに人気のない帰路を辿るが、

「…………?」

 背後から、何者かの気配。公道なのだから誰か歩いているのは当然なのだけれど。
 
(……ついて、来てる、ような……?)

 歩調を緩めてみると、一定の距離を取って後ろにいる。通り過ぎる訳でもなく。
 逆に早めてみると、やはり背後で早くなった足音が聴かれる。

(気のせい……ではない、よう、な……)

 不穏な気配にどくどくどく、と心臓が早鐘を打ち始める。
 振り返って確認した方がいいだろうか。しかし気づいていると判られた方が危ないのだろうか。
 怖くて振り返れない。
 
 どうしよう、どうしよう、と渦巻く不安に早くも双眸を潤ませ。
 きょろきょろと周囲に状況を打開してくれる要素がないか見回し。

ご案内:「通学路」にチーリンさんが現れました。
チーリン >  
すっかり日が暮れた中、歩き慣れない街中で彷徨う事数刻。
目的の宿もどこにあるのか、ここがどの地区にあたるのか。
現在値が分からないため、地図すら当てにできない窮状にいつの間にか陥っていた。

「……さて、困りましたね」

ぼんやりと、紫色になりつつある夕空を眺めながら、綺麗だなあと思っていたら。
視界に不意に、別の美しい色が入り、正面を向いた。

「――おや、綺麗な色ですね。
 髪も瞳も、とてもいい色をしています」

そう言うと丁寧に頭を下げ、顔を上げればほんのりと瞳を細める。

「どうされましたか、お嬢さん。
 僕はチーリンと申します。
 なにか、お困りでしょうか」

少女の様子に首を傾げ、珍しい服装の少年が訪ねるだろう。
 

リセ > 「ぇ…? あ、あ、え、っと……?」

 後からついてくる見知らぬ人物が怖くてきょろきょろと辺りを窺っていると。
 巡らせた双眸に映る小柄な人影。
 そちらから声を掛けられて、一瞬きょとんとしたように目を丸めて。
 賛辞をいただいたようだと気づけば頬を赤くして、慌てた所作でぺこぺこと頭を下げながら。

「そ、んな…きょ、恐縮、です……あ、ありがとぅ、ござい、ます……」

 まさか通りすがりに髪や眸の色彩を誉められるとは思っていなかったため驚きは勝ったものの。
 ともかく、もしかするとこの場はどうにかなるかもしれないという判断を頭に過ぎらせ。

「ぁ、その……、リセ、と申し、ます……
 えと、……」

 背後を尾けている人物を気にしてひそひそと小声になりながら。

「う、後ろに……誰か尾いて、きてる……気がして……」

 勘付かれたら面倒かも知れないし何かの間違いでも失礼だ。
 後で距離をとって伺っている気配を感じる人影へ目線を向けないように注意しながら耳打ちし。

チーリン >  
「なるほど、奥ゆかしく、穏やかな気をお持ちですね。
 とても好ましく思いますよ」

驚きながら頭を下げる少女に、うっすらと微笑みかける。
幸先の良い出会いだと感じるほどには、好感を抱ける少女だ。

「そうでしたか……。
 それはお困りでしょう。
 僕でよろしければ、お宅までお送りしましょうか?
 ああ、初対面の女性に言うには不躾でしょうか」

如何でしょう、と右手を差し出す。
 

リセ > 「ぃ、いえ、そ、そんな……ただ、気が弱い、だけ、で……畏れ多い、ですが……
 その、光栄、です……」

 普段他者から誉められたり認められたりということも少ない。
 気?と小首を傾げながらも好ましいといただけば恐縮しながらもまた頭を下げて。
 不思議な服装の不思議な雰囲気の……少年か少女かも判然としない人物に神秘性を感じて思わずじ、と視座を奪われ。

「気のせい、かも知れないん、です、けど……でも……ずっと、後ろに……
 ぃ、いいん、ですか……? あの、あの……ご迷惑、でなければ、お願い、でき、れば……」

 差し出された手をとって髪を揺らすように大きく肯き。
 様子を見ていた暗がりにいる影のようにしか見えない人物はそれ以上の尾行を続行しかねるようにその場で佇んで。

チーリン >  
「あまり、謙遜なされないほうがよいでしょう。
 あなたはとても、善い気をお持ちだ。
 いずれ、たおやかな華と咲かれることでしょう」

そう予言めいた事を口にしつつ、少女の手をとる。
その手もまた、男女と差を見られないような白く細い、柔な手だ。

「かまいませんよ。
 それとも、僕が確認してまいりましょうか?」

そう手をとったまま、首を傾げる。
そしてまた、あなたと繋いだ手をみて再び首を傾げた。
 

リセ > 「け、謙遜…と云うか……そんな風に、思えなくて……
 気…? ですか…? あの、チーリンさんは、シェンヤンの方、でしょうか?
 ぁの、その……そ、そぅ、だったら、嬉しい、です……」

 華だなんて畏れ多いとやはり思ったものの。頬を薄っすらと染めて気恥ずかしそうに少し俯き。
 手に触れるとやはり己よりさらに小柄なくらいのその人の手は中性的で。
 おずおずと遠慮がちに握って。

「ぁ、いえ……っ、いえ……あ、危ない、かも知れませんし……間違いだと気を悪くされるかも、知れませんし……
 尾いて、来られなければ……それでいい、ですから……」

 背後を通り過ぎていくこともなく、さらに進路を変えるでもなく未だに様子を窺っているのだからほぼ確証を得たようなものだが。
 それでももしも何かの間違いだとしたら申し訳ないし、自意識過剰だと尾行している人影にも気を遣って。
 ふる、ふる、と確認してくると申し出てくれる言葉に首を振った。

チーリン >  
「ええ、いずれそうなるでしょう。
 ああはい、シェンヤンの産まれです。
 こちらの街に来たのは、今日が初めてのようなものですね」

強くも弱くもなく、ただ当然のように少女が花咲くだろう事を断言しつつ。
また同じように穏やかな、ゆったりとした口調で簡単に来歴を話した。

「ふむ、そういうお考えですか。
 でしたら、そのようにしましょう。
 あなたの意志が尊重されるのが何よりですから」

そう言いながら、あなたの隣に立ち。

「では、ご案内くださいますか?
 どうも、僕が一人で歩くと道に迷ってしまうようなので」

困りましたねえ、と、それほど困っていなさそうに呟く。
極度の方向音痴なのかもしれない。
 

リセ > 「チーリンさんは、とても不思議なことを、仰います、ね……
 今日、初めて、ですか……?
 あの、そ、それでは、マグメールへ、ようこそ」

 街の代表でも外交に関わる者でもなんでもないが。都民として歓迎の意を表し。
 来訪した初日にこれでは悪印象を抱かれたりしないだろうかと懸念をいだき、出来るだけそれを払拭しよう、と生真面目に配慮して。

「はぃ、あの、間違いであった場合も、なのですが……
 本当になにか危険な、事があったら、大変、ですので……」

 下手に関わりたくない、というのは日和見かも知れないが。
 確証的なことはあっても。居直られたりとぼけられたりしてもそれぞれ不愉快な思いをするかも知れない。
 何事もなく終わればそれが一番だという姿勢で。

「はい、あの……王都には不慣れとのことです、し……真っ直ぐ帰るのも少し心配、なので。
 少し王都をご案内、しましょうか……?」

 このまま直帰しては万一家までこっそり尾行された場合。住所が知られてしまうのも困る。
 しばらく様子見てついて来ないようだったら帰路に就こうかと考えて。

チーリン >  
「不思議でしょうか。
 ……ああこれは、とても素敵な歓迎ですね。
 どうぞ、よろしくお願いいたします」

そう言って静かに頭を下げると、色の薄い瞳でぼんやりと少女の目を見つめるだろう。

「その懸念も理解できます。
 僕の身は何とでもなりますが、巻き込んでしまっては元も子もありませんからね」

ちらりと後方に目を向けるが、それはさっと流し見る程度のもの。
当人である少女が望まないのなら、望むようすべきだろうと手をそっと握り直し。

「そういうことでしたら、お言葉に甘えさせていただきましょう。
 こちらの地図の、この場所へ向かいたいのですが」

そうチーリンが見せた地図には、わかりやすく目印が書いてあり、その場所は平民地区では有名な宿屋だった。
あまりにもわかりやすく、王都の門からのルートすら赤く線が引かれているのだが、どうやらそれでも迷ってしまったという事らしい。
 

リセ > 「初めて……賜るような言葉、ばかり、で……わたしには、難しいところも、あります……。
 いえ、あの、差し出がましいかも知れませんが……
 どうぞお気をつけて愉しんで行かれますように」

 どの程度の滞在なのかも分からないが、暗黒面も存在する街ではあるから、できるだけ平穏に過ごせることを祈りつつ、緩やかに会釈を返し。

「そんな、巻き、込んだのは……わたしの、方、ですので……
 ご迷惑を、お掛けしてしまって……」

 その上何か事が起こってはどう詫びていいのかも分からない。
 事なかれ的に背後の人物が早めに立ち去ってくれることを祈り。

「はい、わたしで良ければご案内、致します。
 ――こちら、ですね。あら……」

 明瞭簡潔にて簡単な道順と地図にこれは逆にどうやって迷ったのか、と云いかけそうになって言葉を飲み込み。
 ただ、覗き込んだ地図に肯いて見せ。
 不慣れなのだからそんなものかと自分を納得させ。

「大丈夫です、参りましょう、か。
 こちらに逗留なさるのですね」

 了承して、引き返す方向だが後ろに人影が見えるので迂回することにして、少し先の左へ折れる道へと手を引くようにして進んで行こうか。