2023/09/29 のログ
ご案内:「坂道」にタン・フィールさんが現れました。
■タン・フィール > 「―――――ぅ……あ、っくっ… ぅう、んっ……」
坂道を下った先で大の字に倒れ、呻く小さな薬師の姿がひとり。
災難であった。
薬の素材を買いに行った帰りの途中、バスケット籠を引っ提げて坂道を下っていた最中、
何処かで盗みを働いた盗人が逃走中に駆け足で後から坂道を駆け下りてきた所、
ドォンッ
蹴り倒されるように衝突したあと、ごろごろと数メートルほどを転がり落ちたのだ。
盗人は振り返りもせず何処かへ走り去り、倒れ込んで残された幼子は数十秒ピクリとも動かなかったが、
ようやく大きな目を薄っすら開けば、その一連の出来事と、それによってもたらされた痛みを自覚して
「ぃっつ…痛たっ……ッ………ッ」
綺麗な色合いの桃色シャツは砂埃に塗れ、露出した膝は激しく擦りむいて出血し、頬にも赤い擦過傷。
強くはないが頭も打っていたらしく、ふらついて立ち上がることは出来ない。
朦朧とした意識の中で、「材料、ひろわなくっちゃ」と、
地を這いつくばりながら散乱した薬の材料の花やらキノコやら薬瓶やら、
手に届く範囲のものを拾い集めて手にしていたバスケット籠に戻していく。
「痛ッ……も、ぉ、 ひどいなぁ………。」
いくつかバスケット籠に素材を入れた所で、半身を起こせないかチャレンジ。
なんとか壁を背に座り込むような姿勢をとることができて、しばし身体を小刻みに動かし、痛みの程と、自分の体の状態を探る。
■タン・フィール > 何度か身体を揺さぶってみたところ、骨折の類いの重症はない様子だが、激しく転倒したことによる擦過傷や打ち身が痛々しく、実際痛い。
幼子はバスケット籠の中の乾燥させたある樹木の根の粉を、傷口にふりかける。
さらに干した薄紫の花びらを数枚、手にとって絆創膏のように膝や頬の傷口に貼り付けていく。
どちらも即効性の消毒・治癒効果のある素材で、原料そのままだったらそこそこの価格で取引される代物。
背に腹は代えられない状況でひとまずの応急処置を施す幼子は、ある程度痛みが引くまで待ちながら、
桃色シャツの袖に仕込んだ爪楊枝のように細い薬瓶を確認する。
幸い、衝突や転倒で割れていなかったようで、中身の無事を確認するとほっと一息。
その内から一本、
冒険者の客用に製作した即効性の「鎮痛・回復力上昇・体力精力増強」に効果のある薬を選び出して、瓶の蓋をポンと開け放ち、一息に飲み込む。
そうしてじわじわと血流がめぐり、体温が高まり、代謝が高まって治癒力が増していくのを瞳を閉じて感じていく。