2023/09/24 のログ
■マツリカ > 「これは新しいのを用立てたほうが良さそうですね。繕った所でその荷物量ですとまた裂けちゃいますし。
どちらにせよ、タン君が作った商品をそのままにしていく訳にもいきませんし、二人でやった方が早いでしょうし。
――うぅん、結構色々なお薬が作れるんですねぇ……肉体、変化? 触れたらやぶ蛇な気もするんで見なかったことにしましょ」
使ったハンカチは捨ててしまった方がいいかしら、等と内心で呟きながらの片付け作業。
時々何やら不思議な薬品も見つかるが、中身を聞いたら色々大変な気がするから早々に仕舞って。
予備の鞄がなければ、相応の対処ということで背嚢を抱え込む形で抑えながらの運搬になった。
この格好だとなんだかお腹に物を仕舞い込んだ可愛らしい生き物にも思えてくる。
「入り切らないのは一緒に持ってあげますから、とりあえずこの先に行きましょうか。
空き地に行けばとりあえず物を広げて整理もできるでしょうし。近くに雑貨屋さんでもあれば良いのですけど」
ここに来るまでには見なかったよなぁ、と道のりを思い返しながら、ともに空き地の方まですたこら。
少し歩けば建物の切れ目――雑木林の切れ目に作った公園の跡地と思しき開けた場所が見えてくる。
ここまで来たら彼の手元が落ち着くまではお付き合いするかな、と今日の方針を決めつつ進む。
「ぁー、確かに、そういうお薬も需要がありますよねぇ……うわぁ、これもそうなんですね。
嗅ぐだけで……こう、お薬の色とか見ても、なんだか効き目が強そうですよねぇ、これ」
淫猥な薬、という言葉に頬を染めたり慌てたりすることはなく、寧ろげんなりとした表情を見せる。
その様子から、少女にとってそういった物が日常的に存在している、それも嫌と思う程、ということは伝わるだろう。
或いは、彼が学院にも薬を納品しているとしたら、彼が作った薬を知らない内に使われている可能性だってあり得る。
なにせ、彼に明らかにしては居ないが、少女は単なる女生徒ではなく学院の備品――性処理用具にして実験体なのだ。
学院との繋がりがあるなら、少女の容姿や名前、腹部の刻印といったヒントから、そんな素性や噂話に辿り着くこともあるかもしれない。
ともあれ、仮に彼が少女の立場に気づいたとしても、それは少女にとって知ることの出来ない話。人の頭の中は読めない。
ただ、瓶を割ったり封が開いたりしない様に気をつけようと意識を向けながら、そろりと静かな足取りで通りを歩む。
■タン・フィール > 「ぅん、とりあえず空き地についたら、テントの方を先に組んじゃって……
その中に色々お薬屋さんのものをひろげてから、あとでカバンのお買い物、かなぁ。
マツリカおねえちゃんにも何かお礼、したいし。」
まさに頬やお腹にどんぐりの類いを詰め込む小動物を思わせる格好と仕草でよたよた歩きながら、
入り切らない分を一緒に持って行ってくれる、と聞けば嬉しそうにうん!と頷いて。
二人並んで―――正確にはよたよた歩く少年が時折置いて行かれそうになっては、
したたっと早歩きになって歩調をなんとか合わせようとしながら―――
静かな通りを歩み進み、数分ほど歩いた地点に現れた建物の切れ目、
手入れもまばらな雑木林に切り開かれた公園跡地にたどり着き。
「……ふぅっ……ぅん、立入禁止の札も無いし……ここなら、何か言われるまでだったら一休みしてもいいかな。
そうだね、ここからだと…平民地区の方の市場とかに行ったほうが、お手頃なかばん、手に入るかな。」
と、少年も少年でここに来るまでに雑貨屋どころか店の類いも見かけなかった故に、
背嚢の新調までにはそこまで足を伸ばさねばと、ふうっと息を吐いて気合を入れなおす。
手にした薬に関する反応は、少年が想定していたような初々しいものや困惑したものではなく、
何やら日常の一部としているかのような様子。
「うん、うちの商品の中じゃ、結構売れるし評判も…いいかな。
効き目はつよいよーっ、薄めて使わないと、普通のヒトじゃ興奮しすぎておかしくなっちゃうやつだし、それ……。」
幼子の薬師としての腕前は確かで、薬の卸先にはかの学園も名を連ねており、
そこでは授業や保健用のキズ薬や、簡単な素材、触媒などを取引していた。
…中には、「実験用」と称していかがわしい薬の取引もあったのだが、そのような形で数点、手練の者が「いかがわしい実験」用に調合した場合もあったことだろう。
そうしているうちに思い当たるのは、薬の取引の際に耳にした、学院で噂されていた「玩具」の噂。
名前までは把握していなかったが、薄い褐色の肌にキメ細かい真珠の髪色、下腹部の文様。
行き当たった噂の少女の素性に、ごくり、とつばを飲み込んで言葉がそこで途切れ、
空き地に荷物を下ろし、シーツを拡げ、そこに物品を並べていくしばしの沈黙の後。
「―――じゃあ、お礼におねえちゃんには、元気のでるお茶、淹れてあげるね!」
てきぱきと空き地にワンタッチで骨組みができる魔法じかけのテントを組み、焚き火おこし鍋を火にかけ、即席のキャンプを組み上げていく。
鍋に煎じるためにぱっぱと投入したのは、滋養強壮の効果がある香り高いハーブティ。
空き地には、場違いな清々しい芳香が立ち込め始めて。
■マツリカ > 「テントなんかも持ってるんですね。ということは、野宿も手慣れている感じでしょうか?
――この辺りならそもそも人気がないですし、盗人が忍び込んでくることもあまり無さそうですし。
鞄は丈夫なのを買いましょう。後、テントに置いておけるものは置いておくとか、工夫が必要そうですね。
お礼は別に気にしなくてもいいのですけれど、タン君の気が済むなら何かちょっとした物でいいですよ?」
たまたま通りがかって少し手助けしただけで、お礼をたんまりせしめよう等とそんな邪な考えは持ち合わせていない。
彼のどこか頼りない足取りに合わせるように進めば、ほんの少しの道のりでも五割増し位の時間はかかるもので。
そうして辿り着いた公園跡地にまずは荷物を寛げると、これでようやく一段落。肩の荷が少しばかり降りたというもの。
「そうですねぇ。まぁ、人通りもないですから、気にされることも無さそうですし……。
えぇ、買い物するならお店が沢山ある方が良いでしょうし、市場通りなどに出た方が良いでしょう」
出会いから可愛らしく毒気の無さそうな彼に、少女は警戒心など微塵も持たずにクスクスと笑みすら浮かべている。
薬に対してげんなりした表情を浮かべたのもほんの一瞬。彼の薬が悪い訳でもないので、すぐに穏やかな顔に戻った。
実態としては、彼の薬を投与されて、データを取られて、それが彼の手元にまで齎されている可能性もあるというのに。
どうやら彼は少女の素性に当たりがついた様子だが、少女はそんな可能性を一切考えていないが故に、思いつくこともない。
彼の言葉が途切れたのも、片付けを慎重に行う必要がある薬でもあったのだろうと勝手に思い込んで佇むばかり。
彼がテントを組み立て終えて背嚢を安置し終えたならば、少しずつ出来上がっていく即席のキャンプを興味津々で眺めていた。
「――ん?あぁ、それじゃ、お願いしましょうか……ぁ、そうだ、さっき言ってたお礼の件だけど、これ見てもらっても良い?」
落ち着いた所で何かを思い出したらしく、少女はポケットを弄ると一枚の紙片を取り出す。学院の紋章が入った注文書の類だ。
少年が目を通すならば、その中身は正しく先程話題に上がっていたいかがわしい薬についての注文が暗号めいて書かれている。
見る人が見れば理解できるらしいそれは、しかし少女からすれば何が書かれているのかも不明なただの紙切れに過ぎない。
「学校の先生に頼まれたお使いなんだけど、お店を出していた薬師さんが教わった場所で見つからなかったんですよね。
私だとこれに何が書かれているのかよく分からなくて……タン君も薬師なら、なにかヒントとか分からないかなぁ、なんて」
そうして差し出す紙片が誰宛なのかは分からない。もしかしたら、店を移動する前の少年宛だった可能性もある。
しかし、学院との繋がりなんてないだろうという先入観を抱いている少女は、仮に彼が注文の受け手であっても気づくことはない。
暗号を読み解いていくならば、そこにはどれもこれも真っ当な使い方など無さそうな様々な薬の名前が連なっていることだろう。
そして末尾には「代金は所定の通りに支払うと共に、この注文を届けた当学院の『備品』を用いての治験・実験を許可する」との一文があった。
まさか自分が薬の代金の一部として体よく使われている、等と少女は当然知らない。全ては学院の教師陣達の意地悪な画策だ。
少女を使わせることで、この注文を受けた薬師が何か便宜を図ってくれはしないか。そんな魂胆が透けて見えるかもしれない。
こうして、自身の売約書とも言える書類を差し出しながら、少女は呑気にハーブティの到着を待っていた。
ご案内:「人気の無い通り」からマツリカさんが去りました。
■タン・フィール > 【後日継続】
ご案内:「人気の無い通り」からタン・フィールさんが去りました。