2023/08/26 のログ
ご案内:「国境線沿い とある鍛治屋」から赫徹さんが去りました。
ご案内:「裏路地」にタン・フィールさんが現れました。
■タン・フィール > 「ううーっ… ここの道、ちょっとひとけが無くって、こわいんだよね…っ」
王都の一角…様々な露店や飲食店、雑貨屋が並ぶ通りの裏路地。
そこを、買い物帰りの薬師の少年が少しおっかなびっくりの足取りで歩んでいく。
普段、自前のテントで薬師として活躍している少年の手に下げたバスケットには、
粉末の香草やスパイス、きのこ、精油など薬の材料となる素材や食材がいくつか詰め込まれている。
それらは、ある種の香水と同じように、
8割の良い匂い
1割の悪臭
1割の淫靡な香り…という割合の異様な芳香を漂わせ、
路地を歩んだ少年の軌跡となっている。
ご案内:「裏路地」にフィリさんが現れました。
■フィリ > 本来、無目的な外出という物は。未だしたくない少女である。それこそ通学だとか訓練だとか親戚付き合いだとか。そういった身近の理由さえ無ければ。
…だからそんな少女が偶々外に出ているのは。本来家の中で有った用事が、思ったよりも早く済んだ事や。
普段出歩く事のないこの時間なら、露天で見た事のない活字媒体に出会すかもしれないと思っただとか。
明らかに日常のルーティーンと異なった行動であり、その結果―― 当たり前のように。 迷っていた。
「―― …っぅ。ぅー……… …?」
先程まで古物、古書、等が並んだ露店界隈に居た筈なのだが。其処から少し外れただけで、一気に辺りが暗くなる。
未だ店はあれこれ存在しているようなのだが…何だか。怪しげな雰囲気を漂わせる物が。増えてきたのは気のせいか。
こういう形での未知は望んでいない。ばくばくと暴れ回る胸の痛みを抑え辺りを見回し――ふと気付いたのは。
此処等に相応しいのかどうか、ただ、魔術を囓る少女にとっても覚えの有るような。触媒となる薬品類の匂い+α。
そんな少しでも覚えのある物に惹かれるようにして。ふらふら、少女の足取りは匂いの元へ――。
■タン・フィール > 「……? だれっ?」
ふと、己の歩む足どりを辿って―――正確には残り香を辿って背後から近づいてくる気配に気づく。
一瞬、路地に響く足音の反響かとも思ったが、歩みを止めてもまだ聞こえる足音に思わず声をあげた。
匂いの元へとふらふら寄ってきた最中の少女からすれば、
まだ姿も見えぬ路地の先から突然、少女めいた高い声が響くこととなり驚かせてしまうかもしれないが、
ただでさえこの路地に薄く恐怖心を覚えていた幼子は知る由も無く、
くるっと振り返って、まもなく遭遇する相手に意を決して向き直る。
だぼだぼのシャツの袖に仕込んだ極細の薬瓶…護身用にしびれ薬などが仕込まれたそれを構えつつ、
いざ相手が路地の影から顔をのぞかせるならば……
疑心暗鬼の生んだ何者かとはかけ離れた姿に、わずかに緊張を解き
「ぁ……ええっと……だ、だれ…?…もしかして、あと、つけてきてた……?」
と、おそるおそる問いかける。
■フィリ > 「 ―――― ………!!」
ひ、と。警戒を吹くんだ問い掛けに対し、少年の耳へ返ってくるであろうそれは小さな…だが間違い無く。息を飲む悲鳴未満の声だった。
細さや高さも聴き取る事が出来たなら。似たような…きっと。正真正銘の、少女然とした声であったという事も。
…おずおず。きっと問い掛けからたっぷり五秒程の間を置いて。曲がり角から覗く顔は。
少なくとも襲撃だの掠奪だの強姦だの――そういった危険を孕みそうな、強そうな者達の体格として予想出来る物よりも。ずっと低い位置に出て来る。
背の低い少年と差程代わらないのは。年格好の近さもさる事ながら、おっかなびっくりであろう少女の体勢が。
俯き加減とへっぴり腰、全高の低くなる姿勢をダブルで取っているからだ。
「 っ、ぃ、ぃぃぃぇ、っ…! ごめ ご めんなさ、っ、……
そ――の、 たぃへ…ん恥ず っ、恥ずかしぃ…ぉ話 …なのですが ま …迷って 、その 私――」
ぼそぼそ。今にも消え入りそうな声は。驚きと、不安と、更に情けなさがプラスされ。ますます小さくなっていく。
■タン・フィール > 「ぇあ………?…」
長く感じる数秒の間をおいて曲がり角から出てきた顔、背丈、その容姿に、間の抜けた声が漏れる。
悪い方に想定していたものとはかけ離れた情けのない姿勢に、おもわずいつでも取り出せるようにしていた護身用極細試験管を落としそうになるも、
慌てて掴み直してそれの仕込み口に戻す。
直感的に、これは必要なさそうだとでも判断したかのように。
「……ぁ、ああ、いや、こっちこそごめんなさい。
ボクは、ここをまっすぐ行った先のおうちに帰るところだったんだけど…
うしろからひたひた、ついてくる音、きこえたから怖くなっちゃって。」
と、やや年上ともとれる相手を心配するような目つきと声色で気遣い、
一歩、二歩と、あまり警戒心を与えたり怯えさせぬよう近づいていく。
「まいご?……王都のどこにいきたいの? 途中までなら案内、できるかも。」
と、自分の行く道の途中ならばちょうどよいし、そうでなくてもこのような路地に置き去りには出来そうもない相手に、
にっこり朗らかに微笑んで訪ねて。
■フィリ > ちょっぴり泣きそうだ。第一種接近遭遇、その段階で既に。
未知に対する興味を。流石に怪しげな裏路地界隈に対する不安が、上回っている為に。
そんな中で僅かでも。五感が既知の何かを感じ取る事が出来たのは。それはもう、灯りを見付けた羽虫のような物である。
少年が万が一の際には…等という備えをしていた事など露知らず、その癖単純に初対面であるという理由から。未だ曲がり角から先へは出ずに。
「―― ぅ。 …ぁぅ。 それは…た、確かに……たぃへん失礼…を……
ふっぁ。っぇ、ぁ、ぁ――の、 ぁ ぇと……?」
向こうから距離が近付いてくれば。女の子?男の子?どちらとも取れるような、華奢で細面な歳下の誰かである。
其処までしっかり視認した所で、やっと。深く深く息を吐き、安堵し――きれずにもう一度吸って吐いて、また吸って吐いて。
複数回の深呼吸を終えた所でようやっと。相変わらず、丁度高さが合ってしまう目線を向け直し。
「―― ……富裕地区。 …そ、のぃ…入口まで、 ぃ…けましたら。
………ぉ…手数、ぉかけ ――ぃたします はぃ ……」
とつとつ。たったこれだけ言うのも一苦労だ。相手の善意に頭を下げてみせつつ…すん、と。鼻を鳴らす。
魔術に用いられる品の匂い。自分の知っている匂い。ついそれを求めてしまうのだが…
距離が詰まった事で。その他の匂いが混じっている事にようやく気が付いたのだろう。軽く首を傾げてみせては。またすんすんと。
■タン・フィール > ぇと……?という言葉で途切れた言葉に、ああ、と勝手に、自分の素性や呼び名を知りたいのかと早合点して
「ボクはタン、 タン・フィールっていうの。
街の外の空き地で、テントでお薬屋さんをしているの。」
と、自己紹介。
それで不安そうな相手の恐怖心をいくら軽減できるかは定かではないが、複数回の深呼吸を見守り、ちょうど揃っている視線を受け止めれば、再びにっぱりと笑みをこぼして
「富裕地区のほう、だね? じゃあ、こっちのほう。
とちゅうまで一緒だから、つれてったげる!」
おどおどとしている少女に対して、少年はといえば一人で寂しく苦手な怖い路地をおっかなびっくり進む、ということが、
街角での出逢いという素敵イベントに早変わりしたのか、元気いっぱいに踊るようにそのばでくるり、一回りして。
その度に手に下げたバスケットから香るのは、少年が薬を作る材料にする香料や素材の匂いが振りまかれて、
すんすんと鼻を鳴らしている相手に気づけば、
「ぁ、これ、いいにおい?ヘンなにおい?
お薬を作るときにつかうんだー。」
と無邪気に、かつ少し悪戯っぽく、彼女が気にして鼻を鳴らしている原因はこれか、と、ずずいっと突き出す魔性の子。
「じゃあ、ついてきて」
と、路地の先…枝分かれしている道のうち、富裕地区へと続くはずの道を指差してゆっくりあるき出す。
■フィリ > 「 ぅぇ。 ぇ、っぁ。 ぁ――っ、 …! も 申し遅れ まして――
ふぃ っりり――そ の。 …フィリと。ぉ呼びぃ ただけますと。幸いなの――で、す――」
実際は唯言葉に詰まっていただけなのだが。寧ろ先方が勘違いしてくれた事が、話題に繋がったと言うべきか。
そういえば名も知らないのだと今更気が付き。くしゃりと今にも90°、へし折れそうな勢いで頭を下げた。
其処から今度は頭を真っ直ぐ上げ直す事が出来ず、少し彼の表情を上目で窺うようにしつつ。
それでもどうやら。この初対面の少年が、それはもうびくつくへっぽこ少女にも優しく、この界隈から連れ出してくれるという事らしく。
それを聞くとまた二度、三度、頭を下げる繰り返しとなる為に。なかなか歩み出す事も出来なさそうなのだが。
「ぁぁぁ、っ、ぁ、 ぁり、 ぁり――がたぃ ぉ話です。
このご恩はと、とても、忘れ ――る訳には ……んっ ぅ、 ぅ…?」
水飲み鳥も斯くやの上下運動を繰り返す少女の眼前に。匂いの発生源詰め合わせが差し出された。
一瞬目を白黒しつつも、瞬き、それから頷いてみせ。
「――は――ぃ。此方と、こ …此方と? それと、こ…これも。
ちょくちょく、ぉ――師に頂戴ぃたし まして。魔法薬を作る 、のに――」
どうやら。共通の話題となりそうで何よりだ。でないと口下手と人見知りを併発しっぱなしの少女は…この後唯々黙って、彼の後を着いて歩く事となり。
再び、足音だけが何処までも追い掛けてくるかのような、少年の不安を煽り立てていたかもしれないので。
指差し指差し、幾つかの薬草を、使った事が有ると指摘してみせつつ…そうしていると。
知っている物も知らない物も、ますます。その匂いに触れ続ける事となるようで――さて。
もしかすれば、何らかの効き目が出て来てしまうのか。
■タン・フィール > 「フィリ、 フィリおねえちゃん、だね? はぁい、よろしくっ!」
90°の角度での丁寧な……というより畏まり過ぎた礼に対して、少年は少年でぺこり、と頭を下げて、改めましての挨拶。
何度も頭を垂れて歩みだすタイミングがなかなか合わない彼女の様子に、
しかし苛立ちの類よりも興味深さとおもしろおかしさが心に広がり、
差し出したバスケットの中身に、全く興味もないだとか、匂いそのものを忌避する様子が無さそうなのに気を良くして
「ふんふん! お師匠様、いるんだ?
コレとこれで魔法薬もつくったりして~……汎用性がある素材だから、キズぐすりから魔力補填剤まで色々作れて便利だよね。
ボクのお店じゃ、ちょっと違う使い方もするんだけど~~……って…
フィリおねえちゃんは、ふだん、なにしてるひと?」
と、嬉しそうに共通の話題にがっつきながら、少女の素性も気になって無邪気に尋ねる。
その様々な効能と種類の香りがごった煮となってるバスケット故に、
常人よりも優れた嗅覚のものには一部の薬効が発露するかもしれない
というところまで思いが至らなかったのは、幼子の単純なミス。
その「ちょっと違った使い方」
……有り体に言えば媚薬や催淫の類に使う乾燥キノコの香りは、
常人であれば煎じて飲むだとか、粉末を直接吸うだとかで抜群の効果を発揮し、
よほどのことでなければ匂いを嗅ぐだけで効能を示すことは無いはずなのだが、
幼子も知る由もない、人ならざる少女への効き目は果たして。
■フィリ > 「 です、 です――ぇぇ。 色々と勉強 させて ぃただきまして――ぁ っはぃ。
そぅぃ ぅ事なので 勉強中の身―― 世間一般的に 、は。学生だと。思われ、ます――」
要するに見た目年齢に相応の身分。立場として名乗るならそれだろう。
此方がそう告げるのと共に。少年の方にも聞かされると。年下であろう彼が既に、テントだとしても店を構え一端に商売に励んでいるという事に。
はぁ――、と。ついつい感歎めいた吐息が漏れてしまったか。
「 ―― …ぇぇと、…申し訳なぃの ですが、 タン様――と、ぉ 呼びさせて ぃただくとして…
そぅですね。 …私の 所でも …主に。魔力のみ、源や回復に。 …滋養強壮 効果も御座ぃます、し―― ぁぁ、ぁ、後は。
最近その、此方など。怪我をした方の、 き 気付けにも なると。判りまして――」
ちょっとだけ。どもりまくっていた少女の発言量が増えた。趣味嗜好に関する話題だとそうなる辺りが、典型的なギーグ脳。
さて置きそんな、魔法の某という話題に。ついつい意識が偏ってしまった為に…少女は。注意を怠っていた。
「気付けにもなる」、少女自身がそう語り、触れた茸は。別の使い道として――良からぬ魔術。淫らな儀式の道具や、その手の触媒として知られてきた物だ。
例え別の使い道とはいえ、それを此処数日だか数週間だか、身近に置いていた少女は。
「 、っ。 …………?」
くらり。最初は目眩だった。
普通に嗅いだだけなら。人間以上の高スペックなど殆ど無い少女だ、さして問題は無かっただろう。
だが今に限って。それだけなら害の小さな匂い成分を日々少しずつ、少しずつ…少女の身体は蓄積していたのだろう。
それ等が分解されるよりも前に、加工前の現物その物、ナマの匂いに触れてしまった事で。
「 ぁれ。 っ、ぇ ――っ、 っ ………?」
へたん。その場に座り込んでしまった。文字通り足に力が入らなくなったのだ。
少女自身何が起きたのか、まるで把握しきれていない。…いない、が…その様子を少年が見れば。直ぐに察する事が出来るだろう。
苦しげとも切なげとも取れる、胸元で握り込まれた手。細かった呼吸の音が強くなり、次第熱を持ちつつある。
体温の上昇に合わせ頬がうっすらと色を帯び、前髪に隠れがちな瞳が潤みを増し、何より。
座り込んだままの両脚が。不随意に震えては、裾の下で擦れ合わされる。
――典型的な。茸を材料とした薬の効き目と、同じような様相だった筈。