2023/08/06 のログ
ダレット > 死ぬ前にギルドの受付嬢の尻でも撫でておけば。
図書館の司書さんの乳でも揉んでおけば。
未練も心残りも山ほどあるが冒険者なら何れと覚悟はしていた。

先ほどからそんな事を思いながら歩いていれば周囲の風景が揺らぎ、思ったような場所を歩いていた気さえするが、それがどうしても定まらないのはどのような場所か理解の範疇を遥かに超えているから。

肌で感じるのは違和感、意識が捉えているのは此処は不可思議な場所である事、脳が理解しているのは……歩けている事、歩く事が出来るその幸運には知りもしない神様に感謝しかない。

歩く、彷徨う、進む、とにかく足を動かし前へと進む。
妄想以外は何も考えず行き当たりばったり何か起きてから対処をしよう、頭の中はそれくらいけれども……。

誘われているとは思わず、通路を歩き、部屋を抜け、その結果大変わかりやすい『赤い扉』が視線に飛び込んでくれば、居扉の前で一度立ち止まりもする、……立ち止まりもするが。

「出口にしろ、入り口にしろ、選ぶしかないんだよな。
 ノックする?ノックはしない?まあ、何にせよ死中に活って奴だよな。」

迷いなどない。
立ち止まったのは深呼吸の為と自己への確認の為。
此処まで来て引き返したところで現状が良くなるとも思えず、思わず「ンッフフフ」っと半ば自棄気味の笑いを浮かべてから伸ばしたのは利き手とは逆の手。

ガチャ

とドアをあけて中へと飛び込もう。
鬼が出るか蛇が出るか……。

「お邪魔します!!!」

気合は十分。
誰がいるかわからないが、一先ず大きな声で挨拶を、だ。
表情は強張ってはいない、寧ろ未知なる事への笑みが浮かぶくらいである。

タマモ > 強い思考は、何となしに流れ込む。
感じている違和感、それでも先に進む意思、そしていくつもの未練。

どうして、こんな場所が組み上がったのか、それは己とて分からない。
だが、分からずとも、ここに招かれた事実は変わらない。
だったら、難しい事を考えるのは止め、これからの事を考えよう。

そろそろ、己の居る場所にやって来る…もとい、もう、すぐ手前まで来たか。
扉の先に感じる気配と、扉越しに聞こえる呟き。
挨拶の声と共に、部屋に飛び込んで来る、そんな相手を、まずは確かめよう。

期待させる程、とも見える未知かは知らないが。
どちらかと言えば飾り気のない質素な大部屋、その奥に佇むのは一つの人影。
ミレー族、らしき狐を模した耳と複数の尻尾、異国風の着物姿をした少女だ。
そして、その背後には、台座と、その上に置いてある箱が見える。
そんな光景を見て、どう考えるかは、任せよう。

「いやはや、意外と肝の据わった男子じゃのぅ。
もう少し、時間を掛けて、来ると思っておったのじゃが…」

そんな相手へと、挨拶代わりにと、ひらりと手を振り言葉を紡ぐ。
己は己で、とりあえず、やって来た相手の確認だ。
今のところは…まぁ、少年だ、と言う事くらいしか分からないが。

ダレット > 幼さの残る少年が抱くのは迷い。
成長のために必要な迷い。
ゆえにそこは一つに止まらず幾つものピースをちぐはぐに結びつけたパッチワークのような場所だった。

若さとは無謀でもある。
そんなパッチワークのような場所でさえ前に進み、招かれるがままに其処へとたどり着く。

赤い扉は不吉なものではなく熱意の赤。
そして半ば自棄混じりの気合十分な挨拶を終えて、中に飛び込めば――…正直拍子抜けの光景が広がっていた。

「……お邪魔します?」と再び零す声は相手に聞こえるか聞こえないかの蚊がすすり泣くような声で、扉を開けての侵入時とは真逆の声であるが、それは人がいたことへの驚きで零したぼやきであって……。

「や、ほら、のんびり歩いてきても何か好転しないかなって。
 こんばんは、それともこんにちは?もしくはおはようございます?」

部屋の奥に佇む人影から聞こえる声に対してスパっと挨拶をさぐりさぐりに返せば、後ろ手で『赤い扉』を閉めてから、臆する事無く質素では有るが大きな部屋の中へと更に進み、こちらを確認するような視線に対して、自分もこげ茶色の眼で視線を返す。

ミレー族?獣人?のようだけど、断定は出来ない。
眼に移るは無数の尾、そんな不可思議な尾を持つミレー族は聞いた事が無い、それに服装が明らかにこの国ではなく異国情緒あふれる物であり、自分の知らない装束である。
その背にあるのは台座と台座に祭られた箱らしきもの。
でも視線は自然と自分よりは年上の少女の貌を眺めてしまい、直ぐにも下って異国の装束に包まれた胸元へ視線を送ってしまう、素直に直情的に。

「で、挨拶もそこそこにして、ここはどこ?
 もしかして極楽と言うところ?ミレー族が行く場所に間違って迷い込んでしまった?……だってミレーっぽい天使がいるし。」

矢継ぎ早となってしまうが当然の質問を当然のように挨拶の後に少女へと向ける。
表情は人にあった事で大変緩んで笑みさえ浮かべている。
けども視線は先ほどの通りに少女の貌と胸元に往復中だ。

そんな少年は冒険者見習いである。
誰が見ても極普通の人間であり、人間でも若く小柄な部類であるが、それは成長を予感させるものである。
そして身体からあふれる魔力もない、上級の冒険者が持つ覇気もない、ないない尽くしであるが逆に言えばそれは如何様にも染まる原石であり白紙である証拠である。

少なくとも異様な空間の先にいる少女に対して臆することはない、ちょっと不埒な視線を向けるが、それも若さである。

タマモ > うん、なかなかの反応だ。
確かに、意を決し、入った先がこれでは、拍子抜けもするかもしれない。
が、本来はそこに、油断を挟むべきではないのだが…

少年の視線、その向く先は、考えずとも分かる。
己の存在よりも、見た目に惑わされている、そんなタイプ。

「なるほど、踏み出せば何かが変わる、確かにそうじゃろう。
それは…あー…まぁ、おばん、じゃろうな」

好奇心旺盛なのは、己もそうなのだから、悪いとは言わない。
むしろ、歓迎すべきものだ。
だからこそ、こうして、己の元に訪れたのだから。
うんうんと、頷きながら、そう答え。
改めて、己もまた、少年を見遣る。

「さて、どこじゃろうな?
極楽か…ふぅむ、それは、お主次第やもしれん。
瞳に映るものが、どのようなものとなるのか、も含めてのぅ。
まぁ、あれじゃ………すぐに分かる」

くすっと笑い、問いには、軽く肩を竦めそう返す。
相も変わらず、視線を向ける少年を、己もまた見詰め続けながら。
最後の言葉と共に、一歩、まずは、少年へと歩み寄り始め…

ご案内:「夢現の領域」からダレットさんが去りました。
ご案内:「夢現の領域」からタマモさんが去りました。
ご案内:「街道の検問所」にジェイクさんが現れました。
ジェイク > 王都から離れる事、数刻。近隣の村落に通じる街道。
普段から人の往来が多い道を遮るように柵が設けられ、
脇には幾つかの天幕が建てられて、簡易的な陣営の趣きを為していた。
街路に立ち、通行する馬車や通行人を差し止め、積み荷や身分の検査を行なっているのは王都の兵士達。
曰く、最近、山賊や盗賊の類が出没するために検問を敷いているという名目であるが、
実際は隊商からは通行税をせしめ、見目の良い女がいれば取り調べの名を借りて、
天幕でしっぽりとお楽しみという兵士達の憂さ晴らしと私腹を肥やすための手段に他ならなかった。

「――――よし。次の奴、こっちに来い。」

でっぷりと肥った商人から受け取った賄賂を懐に入れて、隊商の馬車を通せば、
列をなしている次の順番待ちの通行人に近寄るように告げるのは一人の兵士。
何よりも厄介なのは、彼らが紛れもない王国兵士であり、市井の民が逆らえない事だ。
そして、その事を理解している兵士達は、国の為ではなく利己的に民を食い物にしている最低最悪な屑揃いであった。

ご案内:「街道の検問所」からジェイクさんが去りました。