2025/05/24 のログ
ご案内:「魔族の国」にネクロマリアさんが現れました。
■ネクロマリア >
魔族の国にもそれなりに街同士の行き来というものがある。
自走、飛行、魔術による転移。
そういった力を持つ者も珍しくない魔族の領内において、
人間の国…マグメールの王国のように整備の行き届いた街道というものは数は少ないかもしれない。
欲望の街と呼ばれる街がある。
主に戦いを好まない魔族達が集まる場所ともなっている統治エリアだ。
街があり生活が在るということは、ある程度の交易というのも行われる。
自給自足、地産地消だけでは活気のある街にはならないからだ。
そんな折りにはこういった街道を荷車が行き交うこともある。
当然気性の荒い魔物などが襲ってくることもある。
今日、魔族のキャラバンを襲った魔物の群れが実に不幸だったのは、
運んでいる積荷の殆どが大娼館リリートゥへの仕入れの品であったこと。
そして──そのキャラバンに娼館のオーナーである淫魔女王が同伴していたことである。
■ネクロマリア >
辺りには魔物が力なく横たわる。
それらは全て、片っ端から生気を抜き取られているかのように微動だにしない。
僅かに痙攣を繰り返し、その命が繋がっていることを報せる動きこそ見えようが、自力で立ち上がることの出来る魔物は一匹たりともいなかった。
「───ふぅっ……」
その中心で、桃色の光を帯びた瞳を薄く細める女が小さく息を吐いた。
キャラバンに追随していた魔族の戦士は若輩だった。
魔物…それも魔族の国の強力な魔物相手には力不足だったことも、否めない。
「ダメね。今度からシンマくん達にも声をかけてみようかな…暇、してたらだけど……」
当たりには瘴気にも似た色濃い霧が立ち込める。
普段、理性的に抑え込んでいる自身の淫香──女がしたのは、それを解放した。ただそれだけだったが。
出てきた女に近づいた魔物は一瞬でその生気を奪われ、行動不能となっていた。
──ひとまずそれでキャラバンは無事……。
「とは、言い難いよね…」
仕方ないことではあるが、当然この能力は無差別に影響する。
とどのところ、キャラバンの者達も全員ぐったりしているのだ。
■ネクロマリア >
魔王の伴侶を務める女が貯えている魔力は膨大である。
初歩的な魔術・魔法程度なら身振り手振りで扱える。
…とりあえずやることは。
長い長いウェーブがかった翠玉色の髪を攫うように、その場を突風が吹き抜ける。
一旦、それは霧を払い…その場から淫魔女王の淫香を流し払った。
あとは発露しないよう、自分で抑えておけば…死んでさえいなければ皆起きてくれる。
問題は、そのうち魔物も起きてしまうこと。
「のんびり待ってるわけにも…だし……」
どうしようかな…と思案。
──そして数分後、名案!とばかりにぽんと手を打った。
■ネクロマリア >
ナイトメア・アブソープ。
夢魔としての力も兼ねる淫魔のちょっとした力の応用。
ぐったりしてるナグアルのキャラバン隊全員の夢にお邪魔。
そのうちに一人、また一人と夢遊病者のように起き上がってゆく──。
「うんうん♪ みんなおっきしたねー♡
よぉーし、じゃあナグアルに向かって出発~♡」
ゆらゆら、ふらふらと。
十数人の魔族が荷物を抱え、荷車を押し、移動しはじめる様はどこかホラーな光景であった。
それを見守りながらぱたぱたと広げた翼でゆっくりと最後尾を飛ぶ淫魔女王と言えば、
そんなホラーじみた様相など全く気にしていないといったようなにこにこ顔であった。
■ネクロマリア >
時には囃すように手を叩いたりしつつ、がんばれー、と声援。
それが向く先は列を為して歩く夢遊病者の一団。
なかなかの光景である。
「ほらほら、ゴールはもう目と鼻の先よ~、がんばってー♪」
ここまでくれはもう危険な魔物はそう襲ってくるものじゃない。
ナグアルを治める序列の悪魔達の力の影響範囲である。
彼らを超える力を持った存在であれば別だが、そうそう何処にでもいるわけはない。
「やれやれ…一時はどうなることかと…。
うーん…どこかの魔王様にお願いして、魔族の国も街道とかをもっとたくさん作ってもらうべきかしら」
勿論あるところにはあるのだろうけど。
と、順調に街に向かってゆくキャラバンを見つめて、嘆息する。
■ネクロマリア >
とはいっても魔王なんてどこにでもいるわけじゃないし。
と思わせておいてどこにでもいたりもするし。
人間の国の王様みたいな感じじゃなくて自分の治める領域だけとかそんなんだったりもするし。
それでいて割とヘン…というか偏屈なお方も多いときたもので。
「自堕落すぎる魔王様とか、引き籠もってる魔王様とかもいるもんねえ」
飛ぶのをやめてふわりと街道に降り立って、少し離れた位置からキャラバンが無事ナグアルの門をくぐったところを見送る。
「うちの旦那様も魔王らしい魔王とはいえ、ちょっと考え方偏ってるし…」
統治能力に優れた魔王は果たして今の魔族の国にいるのだろうか。
いないかもしれない…。
前はもっといっぱい魔王がいたのにー。
■ネクロマリア >
「シンマくんやアルデバくんみたいに土木作業に向いてる力持ちさんもいるし、ナグアル主軸で進めてみてもいいのかなー」
でもあんまりやりすぎて他の街の人や魔王様に怒られてもイヤだしなー。
そんなことを考えながらふわふわと翠髪を揺らして、自らもまた大きな街の門を潜ってゆく──。
ご案内:「魔族の国」からネクロマリアさんが去りました。