2025/05/21 のログ
ご案内:「魔族の国」にルージェさんが現れました。
ルージェ > 辺獄───要は魔族の国の中でも辺境地にその森は存在する。
常に夜を抱く黒の森。
他者を拒む死棘の森。
姿を持たない夜魔が宿り憩うその土地を、外敵を阻む要害としての利用を黙認、あるいは時に差し出すのを引き換えに奥津城として定め、住まうのは一人の魔族。

陽光に不用意に触れることもないその場所で、一人、青白い光の中を歩む。
正確には個というわけでもない女の長く伸びた影の中に、より昏いものが蠢きはするものの、それらはすべて女の手指の延長戦のようなものだった。
畢竟それはこの森を囲う死棘が そう とも取れるのだが。

故にその足は、視線は、なにを警戒するでもなく、ただ気まぐれに歩む。
月明かりだけが照らす庭園に、夜にだけ咲く花が馥郁とした香りを齎す。

「────………」

森の外を彷徨くのも悪くはない。
閉じられた森の中では得られる情報はさして多くはないのは事実だからだ。
けれど、己が己として存分に振舞うことができるのはこの森の中だからこそ。
外歩きの間の変化を、森と自身に共有するように、裸足の爪先が音もなく柔らかな草地を踏んだ。

ルージェ > 足の裏をくすぐる、梅雨を含んだ冷たい刺激。
口許をわずかに弛め、赤い双眸を軽く伏せた。

衣擦れの音と、わずかな足音。
影を引きずり、伴いながら気まぐれな散策じみた歩みはそれこそ女の気が済むまで──。

ご案内:「魔族の国」からルージェさんが去りました。