2024/12/06 のログ
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ご案内:「魔族の国」にグラスシエルさんが現れました。
グラスシエル > 「――クソが」

魔族の国、タナール砦の更に奥。 その街道から外れた森。
――タナール砦への補給路を絶ってほしい
王国からの志願兵の公募、魔族サイドの領地に出張りその補給路を襲撃する。
真っ当な作戦とは思えない、やれればやるに決まってるがやらない理由は簡単でそんなことをすれば実行部隊は命がけ、どころかただの特攻、バンザイアタックだ。
ゲリラ的な襲撃部隊は少年含めて5人だった。

ヤク中で王国で犯罪を犯し恩赦を求めた男
家族の病を治すために秘薬を報酬で求めた男
貴族に返り咲きたい没落庶民、いわゆる元貴族
理由はわからないが一番真っ当に前を見ていた男
そして少年

王国に義理も忠誠もない。 ただ魔族とやり合う場所が欲しかっただけだ。 自分なら本当にどうしようもなければ一人で逃げられると思ってもいた。

襲撃は案の定失敗した。
囲まれ、全員殺されて終わりだと思ったがこの4人は思った以上には強かった。 補給部隊も人間から襲撃を受けるなんて想像もしてなかったのだろう、なにせここは魔族の領域だ。
何より――全員、なんとかして生きようとしていた

――だから、少年は戦った。
爪をふるい、雄叫びをあげ、ボロボロの翼を広げ、まるで化け物が威嚇をするように。
足を怪我したマヌケを担ぎ上げ、なんとかタナール砦まで運んで、追いつかれそうになった時少年は4人を先に行かせ一人で足止めをした。
隠れいつ、どこから奇襲をかけるかというフリをした。
奇襲をかけ、一人をしとめ、ほかが構えたときにはもう森に逃げ――追っ手の追撃をこちらに向かせた

「……くそが、なんだって俺が人間なんぞを身体張って守らなあかんのだ、くそがくそが!」

あらん限りの悪態を小さくつぶやき毒を吐き捨てながら手持ちの包帯で腕が壊死しそうなほどきつく巻く。
太い血管をやられた。 失血もそうだが血の匂いと跡で気取られる。 それに野生の魔獣に血の匂いをかがれたらたまったものではない。

タナール砦側はだめだ、もし援軍がきてたら確実に砦周辺まで押し寄せる。
高く飛んで上空からタナール砦に入ろうとしたところで魔族領側から飛来してくる翼持ちなんぞ全力で人間に叩き落される。
しばらくこの森でやり過ごすしかない

「クソが、あいつらこれで砦に逃げ切れてなかったらぶっ殺すぞ……」

グラスシエル > やられた腕の感覚があまりない。 利き腕なのが最悪だ。
体力も使い果たしてる、森の中で立ち止まったのは酸素がたりなさすぎて肺が悲鳴をあげたから。
視界がゆがむのは痛みのせいなのかダメージをうけたのか失血のせいだかもわからない。

ずるり、と木にもたれたままゆっくりと崩れるようにへたり込む。ぜ、ぜっと荒い呼吸音だけが森に響く。
縛った包帯からも血が滲んで土に落ちる。
致命傷ではない、失血死もない――それでも痛いものは痛いし失血で体温が奪われて寒くて仕方ない。

木のうろに腰をおとしたまま、うずくまる。すこしでも体力を戻そうと――万が一追手がくれば――その首に左手でも手刀をぶちこむだけの体力を取り戻そうと。

グラスシエル > 立ち上がろうとする、背中を木に押し付けてずる、ずる……
ただ、立ち上がるだけで何分間もかかるゆっくりとした動き

「くっそ、視界がブレやがる……」

気を抜けば崩れ落ちてしまいそうな身体を叱咤し、ゆっくりと森の中を歩く。 今は安全な場所へ、落ち延びないと……

ご案内:「魔族の国」からグラスシエルさんが去りました。